フロンティア
30XX年。
人類は、宇宙に新たなフロンティアを見出だした。
「この星を調査した結果、木々や水があるなど、地球と環境が全く同じであることが判明しました」
大勢の記者達の前で、調査団のリーダーが発表しました。
この発表に、ある疑問を抱いた記者が言いました。
「地球と全く同じ環境があるのなら、当然そこには人類に準ずる生命体が居るんではないですか? もし居たのなら、我々のしようとしているのは侵略じゃないですか」
記者の発言にリーダーはこう答えた。
「最新の探査機を用いて星の隅々まで調べましたが、人類に該当する知的生命体及び、将来的に可能性のある生物はなく、また文明も有りません」
その後、何度も念には念を入れて調査を重ね、先住者の居ないことを確信した人類は入植を決定しました。
生活の基盤は、まず家です。開拓者らは、その星の木々を切り倒し、岩を切りだして建材としました。
家の次は食料です。人々は地球から持ってきた農作物と、星の植物を掛け合わせて新しい品種を生み出しました。
やがて、この品種は開拓地の大事な特産品となりました。
住、食が揃えば最後は衣です。人々は、自生するある植物の葉から繊維を紡ぎ出すことに成功し、服を作りました。
この繊維、非常に繊維として優れていたようで、夏は涼しく冬温かく、すり減り難く皺がつきくい、しかも伸縮自在と夢のような素材でした。でしたので、紡績が瞬く間に星の主要産業として活躍し、皆がお金持ちになれました。
さて、こうして開拓は大成功を納めた人類だが、実は一つ見落としていたことがある。
この星、元々ちゃんと先住民はいたのである。
彼らは人類と交信する術を持っていなかった。
結果、人類は彼らの声なき声に気づかず侵略を果たした。
もし仮に、気づいていたなら、どうだったのだろうか?
恐らく、結果は変わらなかっただろう。
人類は、最初から彼らを資源としてしか見ていなかったのだから。