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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
召喚士村 ~神に愛された一族~
98/485

少年、楽園への真実

気絶した旬はどうなるでしょうか?

そんな所から始まる第98話

では、どうぞ

信じていたのは

ボクだけではない

皆同じなんだ


でも、たまに思う


もし、本当にユートピアがあったなら


きっと、ボクは・・彼らのために・・使っていたと思うから


                  ****


リンドは、驚く

まさかのノエルの言葉に


「あ、主・・貴方は召喚に失敗したと・・。」


「違うよ・・リンド。ボクは成功していたんだ」


成功していた・・。

それは、すべての者に衝撃を与えていた



「すべては、ボクを含めた数人の人工神と呼ばれた

禍々しい実験からすべてが始まった・・・

ユートピアに行くために・・この男が

ボクたちを利用したのだよ・・。」


もちろん、成功はした。

それは、もうボクらは喜んだ

あんなに苦しんで実験をして

そして、身も心もズタズタになりながらも

必死に生きたボクたちは報われると思った



だけど・・・。


「その場所は・・・何もなかった。」


「・・・。」


なにも無い・・つまりは、焦土だった


植物も生物もいない

楽園でもなんでもない

何もなかっただから・・。


ボクたちは息を飲んだのだ・・。


「・・ボクを含めた数人は・・その世界に絶句した

 ボクらがしたことはなんだっただろう・・?

 皆が、望んだ世界ではなかった

 だから・・ボクらは呆然としたのさ

 事実を目にしたから」


「そ・・そんな・・。」


皆、静寂するのだ

唯一、ダラダラっと汗を流すのは・・村長だけだ


「ほんなら・・あんさんは、知っていたんやな

 事実を・・いや、真実を」


肩を抑えていたラミアが問いかける

ノエルは肯定する


「・・そうだよ。だから、村長はボクたちが邪魔だった

 ボクはやがてあの村にはいられなくなった。

 ボクを含めた数人は・・あるものは村を出て

 あるものは息を潜めて村に生きて・・そして

 あるものは、森へと消えた・・それがボクたちの

 末路だった・・。」


哀しみを憎しみもない

あるのは、空っぽな心


満たすことも満たされることもない


得られたものは力だけ


損失したのは大事な人を亡くしたこと。


それが、ボクに何をもたらした


あの頃のボクに何が残っていた・・?


それが、きっかけだった。


怒りと憎悪に支配された召喚獣を眺め


そして、ボク自身すらも・・。

でも、そのうち気づいたのだ


このままではいけないと・・。


そうしなければ・・きっと・・。

ボクは壊れてしまうかもしれないから


村長と同じになりたくなかった

だからこそ

そうなる前に・・自分の身勝手な判断で

すべてを始めたのだ


「だから、ボクは本当は・・ボクの判断でお前を契約を解除した

 真実を言う機会は無かった・・。この烙印のおかげでも

 あったけどね」


左の頬に残る・・憎しみの証

それが、ボクの心に永遠の苦しみが残された


「そんな・・・!!」


リンドは信じられないと言ったのだ


「もし、言ったら君たちはボクをきっと恨むだろう・・なにも言わなかった

 ボクを・・この力があったからこそ・・ボクはお前を不幸

 するかもしれない・・それが・・怖かったんだ。」


それは恐怖よりも

拒絶されることの方が重い


「なんで・・。」


「・・・。」


「なんで・・言ってくれなかったですか」


リンドの瞳から・・ボロボロっと流れたのだ・・涙が

それは、真実を知ったからこそ・・流れる涙だった


「・・君は、ボクの横で召喚獣として共に理想を語ってくれた

 それ以上にボクは・・言えなかった。」


(主、ユートピアに行けば・・きっと我々は

 自由になれます。)

(そうだね・・)


理想を信じていた自分の召喚獣に

これ以上・・苦しませたくなかった


自分も心のどこかで苦しかった


この数年・・ずっと・・。


この、辛い気持ちだけ・・ボクは戦っていたのだ

真実を突きつけられたリンドヴルムは黙り込む

そして・・一言だけ


「一つだけ・・言ってもよろしいですか?」


「・・うん。」


ボクはうつむいた

きっと、罵倒だろうと思ったからだ


「それでも、私は多分あなたについていくと思います

 どんなことがあっても・・絶対に。」


すると・・ボクは初めて・・リンドの顔をみたのだ

それは、どこまでも優しい顔だった


ボクは・・ただ言えたことは


不思議と心が軽くなったのだ

あの日・・ボクは、きっと何か言っていれば


変わっていたのだろうか・・?


「ありがとう。それだけ言えればいいよ・・ボクは

 ようやく・・楽になれそうだ」


朗らかに笑い・・そして・・キッと睨みつける村長を・・。


もちろん、ジゼルの聖なる力により動けるはずがない

びくりっと震えるのだ


「あんたに、本物のユートピアなどいらない

 偽物こそがふさわしい・・」


強く、陣が発動する


「貴様・・よくも・・。」


それはもう人ではない・・ギラギラっとした瞳

そして、欲にうもれた・・獣そのものだ・・。


「・・ユートピアのためにどれほど多くの人が苦しんだのか

 あんたは、嘲笑ったんだよ・・」


「あいつらは自分から志願したのだ・・わしの責任でもない

 あいつらはわしにしたがえられて幸せだったはず」


ノエルは首を横に振る


「・・違うね。あんたは、お父様たちに、理想や夢を与えた

 それは感謝している・・でもね・・それが、村へと浸透したんだよ・・

 ・・皆村のために生きたんだ・・未来のために・・。

 それが、犠牲という殺戮こそ・・あんたの狂った

 思考が人や獣を不幸に陥ったんだ・・。」


「ノエル・・。」

「しょうかんし・・。」


「罪深いあんたはもう要らないのだよ・・。」


「な・・そんなはずがない・・!!わしは、村に

 必要とされているのだ!!」


すると、ノエルは哀れなモノをみるような顔になる

そして、憎しみの瞳も同時に・・。


「村だってそろそろ気づくはずなんだよ

 あんたが必要?そんなわけない。なら、どうして

 犠牲した人になにもないように振舞った?!

 あんたは・・ あんたは自分の利益に目を眩み村

 やボクたちを・・見捨てたんだ!!」


カッンっと音を立て陣が強く発動する

それは、ユートピアの門へと村長を飛ばすつもりだ


ノエルは呪文を長く続きやがて・・


「我の力よ・・扉よ開け!!」


現れたのは大きな扉だ


「扉や・・」


ラミアは驚くばかり


だが、先ほど比べて、村長は怯えていたが

状況が変わる



それは・・最悪の方向へと・・


「話を聞いておけば、わしの悪口ばかり言いおって

 そうじゃな・・わしのさいごの悪あがきとして

 お前も・・お前たちも道連れにする!!」


とんでもないことを言い放ち

そして、それは始まったのだ


「な・・!!」


「しっこい奴や・・!!」


「ああ、しぶとい。」


ジゼルは、驚いた


「ふが・・じょうしょうしている・・!!」


ノエルはさらなる聖なる力を高めようとするが

村長の負はさらに上回る


「くっ・・しょうかんし、はやくとばせ!!

 こいつをこうそくするちからがもうもたない!!」


ジゼルの叫びに必死に集中するノエル


「分かっているよ・・扉よ」「させん!!」


その途端


「ぐっ・・」


ジゼルが危険と感じたのか

それよりも早く負がジゼルをおそう


「うわぁぁ」


ジゼルは壁にぶっかる


「ジゼル!!」


ラミアの声が聞こえる

ジゼルはよろよろと立ち上がり


「しょうかんし・・くるぞ!!

 じんをみだすことがこいつのねらいだ!!」


何かの衝動で陣が崩れようとしている

慌てながら陣を維持するノエル


「主!!」


グラグラっと揺れる


「なんや、地震かいな!!」


そして地面が崩れるように落ちようとする

ジンはハッとして


「このままでは崩れるぞ・・!!ラミア、旬を!!」


その声にラミアは


「ああ、もちろんわかっとるわ」


旬の方へと向かうラミア

だけども、


「?!グラグラと揺れて・・動けへん!!」


ラミアはしがみつくことしかできない


「ほんま、どないしよう・・旬!!」


叫んでも旬は起きることもなく

反応がない


「起きろや!!頼む!!起きて!!旬!!」


それを見た、リンドが


「お前たち、主の仲間を助けろ!!」


「ハッ!!」


トアリスたちは獣化してラミアたちを助ける

シュリがラミアの元へと向かって


「あんさんら、旬を優先せぇ!!」


「何言っているのよ!!」


「ええから、はよ!!」


シュリは困っている

ラミアはハッとして村長の行き先を見たのだ


「あかん!!あいつがまた旬の所に

 はよ、シュリはん!!」


「分かっているわよ!!でも、この氷が邪魔をして

 術が放つことができないわ!!」


くっ・・シュリは苦戦する

ガチャガチャっと音がする


「あぶない!!しゅん!!おれさまのせいなるちからで・・」


ジゼルは、叫ぶ

だが、よろけた身体を必死にムチをするジゼル


間に合うか・・!?


「旬を守らなければ・・でも、陣を乱すと終わりだ」


ノエルはどうにかして陣を形成し

旬の元へと向かいたい


「我が・・術を!!」


剣を構えようとするがトアリスが止める


「ダメだ!!また倍返されるぞ!!」


「だが・・このままいけば旬が!!」


「分かっている・・どうすればいいんだ!!」


トアリスの声が鋭く聞こえる


「どうしよう・・旬!!」


どうにかして強制的に陣を止めようとするが

ノエルはその扉が開きかかっていることに

息を止めたくなる


「ふっ・・これまでか。この少年を道連れ

 だけではなく・・終わらせよう」


村長の手は・・旬へと向けられる


誰も動くことはできなかった


その時


「グォォォォォォ」


村長の甲高い悲鳴が聞こえた


「な・・・!!」


なんと、村長の手がピシっと音を立て

血が流れてくるのだ


「な・・何が起こっている!!」


「しゅ・・旬!?」


そこには、意識がないけれども

魔法を放っている旬の姿があった


目をつぶり


魔法だけを維持をしている


(マニアッテヨカッタ!!)


となりには、意識がない旬を支えている

アニマの姿があった


(ゴシュジン・・ムイシキデジュツヲハナッテイル)


「な・・貴様・・気を失っているはずでは・・」


(ゴシュジンガヨンデクレタ。オマエ

 アニマヲ・・ゴシュジンヲアナドルナ!!)


アニマは自分の主を眺めたのだ

無意識でそして、皆を守るために


旬は・・動く


そして、ジゼルが使う技よりも

遥かに強い聖なる魔法が村長をおそう


「な・・この少年は・・。」


旬は、強い光りが眩く全体へと光りだす

光りの縄が村長を縛りあげる


「う、動けない!!」


(オワリダヨ・・オマエハ)


「ま・・まだ、終わりじゃない!!」


すると、アニマは冷笑を浮かべ


(・・カミヲアナドルナ・・オマエハ、コレカラ

 ジゴクガマッテイル!!バツヲクダルノハ・・・

 オマエダ!!)


その言葉と共に、村長は扉へと引きずられる

なんとか、扉から逃げようとうするが


(ノエル!!)


「・・門よ、そのものをこの世の果てまで飛ばせ!!」


その言葉と共に門により

村長は・・扉の中へと消えていったのだ


むなしい叫びと共に

村長は扉と共に消えていったのだ


その時、揺れが終わる


「な・・たすかったのか?」


「旬!!」


ラミアは旬の元へと向かう

同時に旬は倒れる


「良かったわ・・!!」


(ゴシュジン・・ユックリヤスンデ)


その時、何かを感じ取ったのか



(ソコニイルノハダレダ!!)


アニマが、感じ取ったのは・・


「にゃははははっ。」


甲高い笑い声が響いたのだった・・・


それは、一匹の猫の王様の登場だった・・。


それぞれの気持ち・・そして、

猫の王様の出番です

さぁ、核の登場です!!

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