表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
召喚士村 ~神に愛された一族~
96/485

少年、嘆きの瞳

さぁ、2013年始まっての最初の更新になります

今回は、シリアスで暗いので

嫌な方は回れ右を・・

では、どうぞ。

楽園へと夢をみたのは・・誰だったでしょうか


随分、昔の話になりそうな気がする


確かに、幸せはそこにあった


でも、それもまた・・・



              ****


「・・・。」


ノエルは、ただ空虚に空を見上げるだけだ

俺はその瞳にはなにも言えやしない


召喚獣たちはノエルの衝撃発言にもう絶句している


だが・・ソレだけは違った


「よくも・・主を!!」


騒ぐ白い龍

青年の姿から変わった獣は


それは逞しい姿と強さ

そして、逆らうにもできなさそうな姿が見えたのだ


これが、高貴というものなんだろうか・・。


俺は、その白い龍に見惚れていた


だけども、村長はクスリっと笑う


「ほぉ、これは珍しい龍だ。確か、コイツはお前が

 使役していた獣だったな・・ノエル」


そして、ニヤニヤっと笑うのだ


「・・・。」


ノエルは黙るばかりだ


「リンドヴルムとは・・驚くばかりだ」


村長がポッリと呟くその言葉に

俺は、思わずその白い龍を見つめるのだ


「・・・!!リンドヴルム・・」


伝説上の生物は、高く俺たちを見下ろしているのだ

ただ、そこにある感情は怒り・・そして、憎悪だ。


(ゴシュジン・・マガマシイ・・キダ。)

「ああ・・そうだね。」


だけども村長は怯えていない

むしろ、余裕そうだ


しかし、どうして余裕そうなのか理解できそうもない


「捨てられた召喚獣が今更元あるじを怒りをもっているのか?

 怖いことだ」


歪んだ笑いは、どこか狂気だ。

怒りに震えるリンドは叫ぶ


「貴方は、主だけじゃない!!たくさんの人々を不幸にし

 私たちを見下した。」


「ふん、何を今更。不幸にした数ならば

 もう覚えていないな・・いや、無能なのは

 お前の元主じゃないのか・・?

 ユートピアに憧れていた無能風情が!!」


その時、その怒りは着れる


「主を馬鹿にするな・・”フレイムバースト”」


炎が渦巻いていく

だが、村長はニヤリっと笑って


「だから、お前らは奴隷のままなんだ・・返す」


それは、増幅し強い炎と変化し

リンドを襲う


「ぐぅ・・!!」


それは強い炎の技だった


「危ない”アイスブレイド ”」


炎と氷が相殺される


「・・あ、主・・」


「大丈夫かい?リンド」


荒い息を吐いて脱力する


俺は冷汗が出てきた

なにせ、魔法を十倍返しにきたからだ


「増幅して返してきたよね・・とんでもない

 使い手だよ・・。」


とんでもない使い手だ・・。

倍にして返してくる

これは・・魔法攻撃は無理かもしれない

そう感じたのだ


「おい、だいじょうぶなのか」

「そ、そうですわ!!リンド様が・・。」


横には、俺たちと対戦したコカトリスである

トアリスとサンダーバードであるシュリが聞いてくる


「う~ん、絶体絶命かもね」


「「はっ!?」」


「な・・なんで、あなたがそんなことを言うんですの!!」


「何か確証でもあるのか!?」



確証ねぇ・・。

一つだけ分かったことがあった


「あの(ヒト)、多分・・召喚士じゃないと思う。」


「えっ・・」


「・・俺にはなんとなく分る。”違う”とね」


「「・・・。」」


目の前で対立しあうモノたちを

その時、なぜか俺は冷静だったのだ

でも、内心は冷汗がダラダラだったが・・。


「これで分かっただろう。お前は勝てない。

 だから、主はお前を捨てたんだ」


その容赦ない一言に


「りんどさまに・・きさま!!」


ジゼルは今にも襲いかかろうとする


「ジゼルやめなさい!!・・奴は、強い」


「分かっているじゃないか・・お前の主は

 私の奴隷になったからこそ・・お前を捨てた

 お前は、捨てられたのだ!!」


「違う・・・主は・・主はきっと理由があるはずです

 それぐらい分かっています!!」


「ほぉ、結構なことだ」


ただ、関心するばかりだ。


「私はユートピアを目指していた主の傍でじっと見ていたんだ!!

 だから、私は主のため、仲間のためにユートピアに行くことが

 義務だと信じていた!!」


「りんどさま・・。」


ジゼルは寂しそうな瞳をしてノエルを見つめる

当然、リンドも動揺に強い意思が宿った瞳をノエルに向ける


当然、ノエルはその瞳にビクっと震えるのだ


真っ直ぐな・・召喚獣の瞳に・・。

そして、寂しそうな・・召喚獣に

尚も、リンドは続ける


「だから、私は・・今でも聞きたい。本当に貴方は

 私が嫌いで・・私との契約を切ったのか!!」


それは、静寂だった


「・・・。」


「・・・。」


酷く、切迫した時間

そして、静かにそれは終わりを告げられる


「・・・違う・・。」

「え・・。」


見せた瞳は・・哀しみよりも強い絶望の瞳だ


「ボクは・・お前が嫌いじゃない。だから・・ボクは

 お前たちに失望してほしくなかったんだ」


「・・失望・・なぜ!!私はあなたがどんな存在でも

 失望などしない!!」


リンドは、ノエルに鋭く答えを要求するようにすがる


「奴隷になれば失望するだろうに」


村長の笑い声が聞こえる

でも、ノエルは・・。


「違うよ・・・ボクは自分の力に失望したんだ」


それは、負のノエルの姿だ

どこまでも、遠い過去を思って

抜け出すこともできない過去を

背負った・・ノエルの姿だ


「ノエル・・?」

「主・・。」


ノエルはギュッと自分の服を握る


「ボクの負荷のことだけどボク自身は負荷はなかった・・」


「・・負荷が・・なかった・・?」


俺はどういうことなのかさっぱりだ

でも、確か、あの村長が確か

ノエル自身が負荷を背負った・・といったよね?


「あの実験でボクは今までにないくらい大きな力を得たんだ

 でもね・・そのせいで、たくさんのことを喪失したんだ」


喪失・・・それは重たい言葉だ

どこまでも重くて哀しくてむなしい・・言葉


「なにを・・喪失したの?」


聞くのがとても怖い

でも、聞いていないといけない


「家族、友達・・皆・・死んだ。どうすればいいと

 思っただろうう。」


ノエルの言葉でリンドは・・辛そうに顔を歪める


「しょ・・しょうかんし・・。」


ジゼルは哀しみと辛さを同時に感じたのか



「ボクの負荷の対象は家族だった・・皆、ボクのせいで

 死んだ・・成功しても・・そして、ボクは

 力を与えられても・・心は空虚になったんだ

 だから、君にそんなボクの姿を見て欲しくなかった

 本当にくだらないボクの・・身勝手な判断さ」


(ノエル・・!!)

(お父様・・お母様!!)


思い出せば悲しい程

忘れてしまいたい記憶


それが、ノエルの頭に響くのだ


(なんで・・よぉぉ。)

(・・どうしてよぉぉぉ)


幼い少女は・・涙を流して

自分のみじめさを恨んだのだ・・。



俺はその時・・ピキンっと何かが頭の中に

駆け巡った・・

そう、今までの話をすべてをつなげていくことで

見えていく・・最悪な答えに


「・・・もしかして・・ノエル・・君の言う

 もう一つの召喚士の秘密って・・。」


すると、ノエルは頷いて


「ああ・・そうだよ。もう一つの秘密は実験による・・

 損失だった。あの計画でどれだけの人が犠牲

 になったことをこの男は・・王族だけは知られて

 はならなかった。」


「知られたらどうなっていたの?」


「恐らく、普通じゃすまなくなるだろうね・・

 この男の命はあっという間に・・ね。」


ノエルは冷えた瞳で村長を見つめる

それは、俺ですらゾッとする瞳だ


「このワシをコケにしてくれよって・・。」


村長は、震えている

どうやら、最大の秘密をバラされたことに対する怒り

なのかもしれない。


「遊びは終わりだ。秘密がバラされた以上

 お前たちは・・ここで終わりにさせてもらう」


それは、強い力との拮抗

俺が使う風よりも強い力を感じられた


「うわっ!!」


(ゴ、ゴシュジン。)


なんだ、この強い力


「・・くっ・・引きづられる!!」


「貴方、主の仲間なんですよね」

「ああ、そうだよ・・っう、」


リンドは、後に控えている仲間を見て


「バリアを・・トアリス、シュリ」


「ええ、わかっています」


「かしこまりましたわ」


傷だらけのトアリス

氷で手錠されているけど立ち上がるシュリ


「あ・・ありがとう」


「礼は後だ!!少年、我らも力を貸すだから・・使え」


そして、強い力が杖に宿ったのを確認した俺は


「俺に力を貸して・・”バリア”」


ピシピシっと強い力で今にも崩れそうになる

アニマはその旬の様子を見て

ノエルに言うのだ


(オイ、オマエ・・オマエ、ショウカンジュツガツカエル

 ダロウ!?コイツヲドコカニトバスコトモ

 カノウノハズダ!!)


すると、ノエルは手を震える


「駄目なんだ・・ボクには召喚士としての資格がない。

 大事な人を何人ものを亡くして・・その誇りすら失われた

 怖いんだ・・また、同じことがあることが・・。

 こんな力・・要らないだよ・・!!」


ふるふると震えるノエル

 

「・・違うよ・・ノエル」


「旬・・?」


「要らない力なんてないんだよ・・俺は・・知っているんだ

 何か意味があってこの力は授けられたんだ・・。」


「意味・・。」


俺もここに来たとき

与えられたこの魔法

俺にとっては贈り(ギフト)だからだ


「だからこそ、そんな悲しいことを言わないでほしいんだ

 俺は・・この力をもてたことが嬉しいんだ」


一瞬だけ見えたのは・・

泣いている俺

それは、思い出したくない・・コト


「・・・。」


「旬・・?」


そして、旬は、真っ直ぐに村長を見つめる


「村長さん・・あなたは可哀想な人だ・・この証でしか

 人を支配することしかできない・・真に哀れだ」


「哀れ・・?それはノエルのことやこの村全体のことだ!!」


旬は首を横に振った


「それも違う・・ノエルは、どんなに惨めでも生きようとした

 それは、村も同じはずだ・・」


その言葉に苛々したのか

憎悪をこめて叫ぶ


「子供のくせに・・大人に偉そうなことをいうな!!」


すると、俺は肯定する


「そうだね。俺は子供だよ。手だってちっさいし守れるもの

 だって本当に限られてくる・・だけど、子供でも分る」


本当にそうだ

俺はなんで子供なんだろう

たまに、忘れそうになるけど

でも・・子供だ。

どうしてこの姿なのか・・・


きっと何か意味があるんだと思う


そんな姿をしていても分るんだ・・。


この男の・・本性を・・。



「貴方は・・哀れな存在であることを!!」


「な・・・。」


村長は絶句するそして、ワナワナを震えて


「哀れなのはお前らだぁぁあぁ」


増幅する怒り・・憎悪


「・・・。」


その時、声がした


「滑稽なのは、あんたやないか・・。」


その声と共に


「雷鳴剣」


風は強い雷に負けてなくなる

俺は思わず声がする方へと見上げる


「よーゆたわ偉いで」


関西弁でとてもノリが良い声が聞こえる


「それでこそ、旬だな」

冷静で・・でも、優しい声も・・聞こえるのだ


「ラ・・ラミア、ジン!!」


それは・・待っていた仲間だったのだ・・。

これからどうなるか分らないですね・・

では、そろそろ召喚士村編も終わりに近づきます

最後までお付き合いしてくださいね~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ