番外編 ジン、出会う
番外編、ジン、出会うです。
これはジンの視点からの旬との回想物語です
では、どうぞ
我は人の間に生まれた存在。
獣と人との間に出来たハーフな存在。
もちろん、我の世界では常識的にいえばいる
実は、我は元々からこの森に住んでいる者では無いのだ
どこから来たのかはいずれ教えるが、今は教えることが出来ない
我は、討伐としてルストを対峙をするために
森へと来たのだった
それは、ある一人の少年との出会いでもあったのだ
*******
はぁはぁっと荒い息の中で血まみれになった青年が森のどこかで息をしていた
「・・ぐっ」
血を吐いて木にもたれる青年
「油断したな・・・。」
我は、人狼
気高き狼と人の子だ。
もちろん、名前はあるが秘密。
実はなぜこのような状態になったかというと
森の主と戦った後
ルストとの戦いで我はすでに瀕死だった
身体にも傷だらけで
血が流れていた
「ヴっ・・。」
歩いていると、身体に何か痛みを感じた
急に身体に異変を感じた我は、身体を抑えた
身体が光り、我は人から獣へと変化する。
「ガウ!?」
姿が人間から狼へと変貌する
これでは、ルストに対決ができない
(くそ、まさか魔力を奪われるなんて・・)
よろよろと意識が朦朧としていた
空を見上げると
(な・・!!)
空が奇妙に赤く染まっていた
そして、月も赤い
(な、何がおこっている!!)
我は錯覚でも見ているのか
なんだ、あの赤い月と景色は
すべてが、赤に染まっている
人狼は、よろよろとしながら歩き続ける
すべてがおかしくなっていた
だけど、それはほんの一瞬だけだった
すぐに、空の色が元に戻っていた
一体、何だったんだ?
青年は、考えこんでいたが
グキュルルル~っと景気よい音が聞こえ、
腹の虫が騒ぐことでそのことを考えるのをやめた
しかしながら、腹が虫が鳴く
何か食べれば・・
草むらの向こうからどこか声が聞こえる
ジンはよろよろしながらその声がする方に歩き出す
「うぎゃぁ、お、俺、子供になっとる」
少年だった・・幼く、十歳程度の子供
見慣れない服を着てキョロキョロっと辺りを見渡している
そして、どこか落ち着かなさそうな顔をしていて
不安そうだ。
どうやら、戦闘慣れもしていないようだ
(よし、あの少年を食べよう。)
我はその時、これ以上何も考えていられなかった
一刻も早く傷を治したかったのだ
人狼が人を食べるなんて共食いだが、他に方法はない
我は唸るように少年の方へと来る
少年は我を見て、かなり青ざめている
そして、後ろ、後ろへと下がるが
我は一歩、一歩、近づいていく
絶望に満ちた少年は、
手を振りかざす
(ふん、こんな子供が何もできやしない)
いきなり、空の様子がおかしくなり
ピカ~っと、何かの音がした
え・・。
少年が、手を振りかざした途端
ドシャーンっと音を立てて雷が我に命中した。
(ぐががぁぁ)
我は倒れた
この少年・・魔法使いじゃないか!!
しかも雷の技を使えるなんて・・。
我はその事を考えながら
動かない身体で気を失ったのだった・・。
*******
ドサっと音がした
我が気を失ってどれくらい立ったのか知らないが
どうやら、少年が魔法を使って
我を運んだようだ
少年は、お腹がすいているのか我をじ~っと見つめていた
我を食べる気か!?
我は美味しくないぞ!!
心でそっと答える
もちろん、叫ぶことはできない程弱っていた我は何もできなかった
その少年は我を食べるか食べないかで葛藤していた
我は、その少年の行動を見つめている
ジ~っと。凝視していた
動かない身体で少年の面白い行動を見つめる
ついでに我を食べないで欲しいと懇願の瞳と共に
少年を射抜いた。もちろん、少年は、困った顔をしている
葛藤は終わりそうも無かったがそれは杞憂になる
すると、少年は決心したのか
「この狼を助けてあげて」
魔法が発動したのか我の身体の傷や異常状態を治してくれた
(ぐっ・・。)
痛みがまだ少しあるが
回復しているのかそこまではない
起き上がり、我はその少年を見つめていた
すると、グ~っとお腹が鳴った少年を見て
我は、警戒するのが馬鹿らしくなった
そのまま、クルっと、向きを変えて歩き出す
当然、後ろを見ることも無く
その少年から離れても
頭から離れはしなかった
我は、なぜだか少年を襲う気もしなかった
なんで、自分を助けただろう
この世界は弱肉強食だ
なのに、何で・・。
目の前には果物や、薬草
川で魚が飛び跳ねている
あの少年はきっと、お腹すいているだろうな。
戦闘慣れもしていないようだし
きっと、採集の仕方も知らないに違いない
(・・・。)
仕方がないとため息を吐いて
我は、魚や果物を採り
口には魚
背中には果物
少年の所に戻ることにした
案の定、少年はグッタリとしていた
お腹がすいているのだろう
(おい!!)
そう叫ぶと
「うぉっ」
慌てて起き上がる少年
もちろん、警戒をしている
我は、少年の前に果物を置いて
後ろに下がる
「・・・食べていいの?」
我は頷いた
「あ、ありがとう」
少年は美味しそうに食べて
すべてをたいらげた
そして、少年は
「ふぅ」
満足したため息を吐いた
「ありがとうな。俺は旬。よろしくな」
(・・ふん。)
旬っと名乗った少年は、警戒心がなくなっていた
我はそっぽむいた少年は笑って
「助かったよこれもお前のおかげさ。」
我は感謝をされた
少年はそのままファ~っとあくびをして
ゴロンっと横になった
我はその少年を見た
なんともいえない少年だった
不思議な少年
旬と名乗った謎の少年
どこから来たのかわからなかった
その日は、我は少年を守るように眠ったのだ
パチっと目覚めた時
辺りは朝を迎えていた
光が溢れていた
我は守っていたはずの少年の姿が消えていた
心配した我は臭いで探すことにした
少年はすぐ近くの傍で顔を洗っていたのだ
「おっ、ごめんな。顔を洗っていたよ」
(・・そうか)
「心配してくれたんだな。ありがとう」
ワシャワシャっと我の頭を撫でた
とても優しくて暖かい手だった
「なぁ。いつまでも狼扱いじゃだめだな」
(なんだ・・いきなり?)
「名前だよ。お前の」
少年は、我の名前を一生懸命に考えてくれる
腕を組んで悩んでいたが
すぐに、パッと思いついたのか
「そうだ。今日からお前の名は、ジンだ」
(ジン・・いい名だ。)
その時我は、この少年に一生着いていこうと思ったのだ
自分を救ってくれた少年
そして、暖かい手をもった人間
我はとても嬉しかった
我には前の名ももちろんあったが
それよりもそのジンという名が気に入ったのだ
ぐぅぅぅ~っと少年は腹を抑えていた
どうやらお腹がすいたようだ。
「まずは食料からだな、教えてくれ、ジン」
(いいぞ。)
「行くぞ!!ジン」
(ああ!!)
そして我と旬はこうして出会ったのだった
*******
「おい、ジン。行くぞ」
森の外には旬が我を待っていた
もちろん、もう我は人間の姿になっている
「ああ、分かっている。」
我は森を見上げた
とっても短い森の生活だったが
とても充実していた
楽しかった修行や出来事を。
これからは旬と共に冒険の旅に出ることになる
もちろん、我は着いていく
なぜなら、旬に救われたんだ・・。
人狼は、救われた命の恩人には恩恵を持ち、義理高い人種だ。
その救った人間を主として仕える。それが我だ。
もちろん、そのことは旬は知らない。
少年は我に名を与えたことで主人になった。
そのことは知らないけれども
我は、主人に一生ついていきたいと思う。
それが、忠誠となることを。
「ジン、冒険行くか」
「ああ。」
少年はニヘラっと笑っている
とても純粋な笑顔だ。
我は願おうと思う
この冒険に少年が、すべての謎を解き明かせることを
そして、誓おう
共に戦うことを。
そして、我と旬は森の外に出た
新たな、冒険の旅に。
いかがでしたか?
ジンの回想は?
さて、いよいよ、旬が森の外にでます
では、またどうぞ。