少年、ヒトになれた獣
そろそろ核心ということで・・。
どんどん急展開になる81話目です。
さぁ、ヒトになれた獣とはどういうことなのか
とりあいず、本編どうぞ
イタイ
イタイ
白い小さな馬は痛みで涙を流し続ける
ニンゲンメ・・。
恨みと共に痛みに耐えていた
「どうしたの?」
イタイ・・。
ダレダ・・・?
「可哀想に怪我をしているね・・ほら」
優しい手でソレをいたわる
ニンゲン・・?
その時、ソレは・・顔を上げた
見えたのは・・優しい召喚士だったのだ・・・。
***
目を伏せたノエルの瞳に、俺たちは何も言えなくなった
辺りが静寂で支配される
ノエルは、プッと笑って
「君たちが、そんな顔をしていたらボクは笑ってしまうよ?」
場を和まそうとしてニコニコっと笑う
「・・でも。」
すると、ノエルは苦笑して
「ごめんネ。ボクとしては君たちにそんな顔をさせたく無かった」
「そんな・・。」
なんで、そんな顔をするんだろう
痛そうなのに笑っている
ノエルは、ニコニコ笑っている姿は
とても痛々しくみえたのだ
「気丈やな・・あんさん。」
ラミアは、いたわるように眉を八にする
「ふふっ。そうじゃないと、この子達を守れないし、ボク自身すら
守れないのさ・・・そう、なにもかもね。」
ポンっとジゼルの頭を撫でる
「しょうかんし・・。」
ジゼルは、うつむいた
どうして、ジゼルがうつむいたのか
俺は思い当たることがあった
それは以前、ここに来る前に
ジゼルが言った一言
”捕獲”これが鍵だ
その時・・自分自身の中で違和感を感じたのだ
「ねぇ、ノエル」
「何だい?旬」
俺は今・・聞くべきかもしれない
「・・・・ずっと、気になっていたことがあるんだ
聞いてもいいかい?」
俺は、ジッとノエルを見据えた
すると、ノエルはお手上げという風に手を挙げて
「・・ボクに、答えられることなら。」
「じゃ、手短に、どうして、ここにユニコーンがいるの?」
「え・・・。」
ノエルは驚いたかのように旬を見た
「旬・・召喚村だから当たり前やろうが・・何を言っているんや?」
ラミアはそう言うが俺は何故か違うと感じた
「・・・。」
「し、旬・・?」
「ずっと、気になっていたんだ。なぜ擬人化が可能で、
ココに存在しているのか矛盾ばかりなんだよ」
どうして、この子はそこに存在のか
なんで、人型ができるのか
最初の時はジンのような獣人だと思っていた
だけど、違う
じゃ、違うのなら・・なんで?
その疑問が出てくるんだ
ずっと、気になっていたことだった
ユニコーンという存在にずっと・・。
俺の答えにジンは目を丸くする
「旬・・!!」
すると、ノエルは顔を覆って笑いを耐えているよう
「ははっ。そんなことか。もっと、すごいこと
聞かれると思っていたよ」
すごいこと・・?
俺には想像以上なことをノエルは考えていたらしい
「旬の言う通り、この子たちは、元々この召喚士の森にはいなかったのだよ」
「いなかった・・?」
ジゼルは、何も喋らない
それどころか痛そうに・・心を抑えるのが見える
「そうだよ、あらゆる世界にに散りばめられ彼らは
世界を渡ってこの世界に来たんだ」
「な・・!!」
開いた口が塞がらないラミア
ノエルは紅茶で口を潤う
「ボクはね、召喚士村から逃げ出したのも・・この子たちのことも
あるんだよ」
「この子たち・・?」
すると、ノエルは、真剣な顔になり
「この子たちは・・捕獲対象なんだよ。伝説上の上にね
この森にも息を潜めてたくさんいるんだ・・同じような
境遇を持った・・。」
「伝説だから・・なのか」
ジンは呟くすると、ノエルは肯定して
「そうだね、この子たちはこの村に逃げ込んできたんだ。
人間から狙われて息を潜めて生きるしかなかった」
息を潜めて・・。
まるで、そうだ
そこにはいないように空気のように生きる
それは、辛いだけじゃない
屈辱かもしれない・・。
ラミアは思い出したようにハッとして
「そうや、聞いたことがあるで・・昔、召喚獣たちは
捕獲対象され鑑賞など娯楽の対象やった・・って」
「そうなの?」
「ああ、王族でも今はそういうことはないが
かっては、そうだった・・まるで、召喚獣をモノのように
扱う連中がいたんだ」
モノのように・・。
ジゼルの顔は曇った
ノエルは、苛立つように口を噛み締める
「村もね・・同じだった。より強い召喚獣を集め続ける
弱い召喚獣を痛めつけ、強い召喚獣は、より強いステータスとした
当然、召喚獣たちは権利もなにもない・・。そんな状態だったのさ」
「最低な奴らやな。反吐がでるわ」
「・・村は今も同じことをしているよ。くだらない栄光のために」
ギリっと拳を握りしめる
今にも血が流れそうだ
「だが、なぜ彼らはそこにいる・・村から離れているとはいえ
なぜ・・その森に?」
「・・彼らも村に縛られているのさ。この村から出さないために」
すると、思わず俺は大声を出す
「・・酷すぎるよ・・召喚獣だって、権利があるはずだ!!」
俺の悲痛の声に、ノエルは事実を話す
「仕方ないのさ・・これは変えようのない事実で
もっとも嫌悪したくなることだ。」
「変えようのない・・事実」
「だから、ボクはね。彼らを人の世界に紛れ込むために
考えたのさ・・それが、実験の成果だった。」
「すごいな・・そんなコトができるなんて」
「くすっ・・並大抵の苦労じゃなかった。彼らのために
ボクができることをした・・だけど、だけど、ボクは・・・
それがよかったのか分らない」
すると、遮るように今まで黙っていた人物が動く
「よかったんだよ・・おれさまたちは」
ポッリっとジゼルは呟く
「ジゼル君・・?」
ノエルは、ジゼルを見た
「おれさまたちは、しょうかんしやヒトにひどいめばかり
あわされてきた」
ジゼルは、長い歴史の中で生きているのか酷く老いたような姿に
一瞬見えたのだ
俺たちは黙って聞くしかなかった
遮ることはできなかった
「じゆうはなく、ただつばさはあるのにそらはとべない
それをおもいしった・・でも、しょうかんしのじっけんで
おかげで・・。」
コポっとカップの水面に写るジゼルの顔は曇っている
「おれさまたちのなかでうまれたかんじょうができたんだ・・。
にくしみ・・そして、さまざまなかんじょうを。」
ジゼルは、手を見る
獣の手ではなく普通の人間の手をみて
緩やかな笑みを浮かべたのだ
「・・・!!」
何故か、俺は嫌な予感がした
どうしてか分らない
これ以上喋らせたら悪くなるはずなのに
止まらない
ジゼルは、手をワキワキっと閉じたり開いたり
感触を確かめ緩く笑み浮かべる
「ヒトになれたときのことはかんしゃしている。
だけど、それいじょうにおれさまたちは、
あのむらとにんげんをうらんでいる」
ジゼルからは、無表情だか静かなる怒りが見えた
「おれさまのなかまがいつかは・・いつかはと
ふくしゅうのきかいをねらっている。それが・・いま
じっげんしようと・・している。」
「・・・ジゼル君?」
ノエルは、もうジゼルが何を言おうとしているのか分かっているようだ
「・・・きょうは、おれさまはちゅうこくしにきたんだよ
このさかなはほんとうはそのてみやげだった。」
「・・・・。」
ノエルは無言だ。
それでも、ジゼルは言葉を続ける
止まらない・・。
止まることができない
「・・・しょうかんし、おれさまたちは」
一言息を吸ってジゼルは今まで見たことのないような
獰猛な瞳で
「あのむらにふくしゅする・・。」
「な・・・。」
ガタっと俺たちは立ち上がる
ジゼルは、無表情で紅茶を飲んでいる
「・・あんさんも・・やるのか!?」
ラミアは顔を青くする
どうやら規定外のことのようだ
すると、ジゼルは首を横に振り
「おれさまはちょくせつかんよはしない」
だけど・・と呟いて
「でも、あのかたたちは、あのむらのどうほうたちをかいほうすることを」
ジゼルは、ギラギラと光った瞳を俺たちに向け
「いまでもねがっているのさ」
そう、鮮やかに笑ったのだった・・・。
ジゼル君のとんでもない話が始まりました・・。
ジゼル君はコメディーキャラでもいいですが
やはり、シリアスキャラもいいかもしれない・・。
そんなことを考える作者です。




