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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第5章 ~ある学者の忘れ形見~
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閑話② ある王女と従者の攻防と疑惑

今回はシリアスとコメディーが入っています

では、どうぞ。


前に進む力をくれた少年

それは、あたしにとって初めてだった。


でも、今はそれどころじゃなくなるほど

イライラしているのだ・・。




            *****


大量の書類の中でため息が聞こえる


「はぁ・・。」


とため息を吐く少女



「はぁ・・。」


またため息だ


「ミリカ様、ため息ばかり吐かないでくださいよぉ」


ミリカははぁ~っとため息を吐くたびルークを恨めしそうに見つめる


「そんな目で睨まれても困るよ。第一まだ、あの日のことを

 恨んでいるですか?」



「あんたが邪魔をするから、あたし言えなかったのよ」


「・・・それ以外に、いつでも言えたはず。

 それを言わなかった、あなたが一番マヌケだよ。」


「くっ・・その通りだけど・・腹立つ!!」


イライラしながらミリカは思わず羽ペンをボキっと折る


「っぅ~コレ、捨てて」


折れた羽ペンをルークに渡す


「またか、そんなにイライラして大丈夫?」

「うるさいわね。気がたっているのよあたしは!!」


その言葉に、ミリカはミシっと机に圧力をかけながらもルーク

に威圧したが本人は平然としている。

だが、ルークのまたいらない一言・・。


「まった、羽ペンを壊すとは、経費泥棒だよミリカ様」


その言葉にプチンっとミリカの中で何かが切れる音がした


「何度も言うけど、あんたが余計なことをしてくれたおかげで

 あたしは旬に伝えられなかったのよ!!そのおかげで

 ここ最近イライラしているだろうがぁぁぁ」


そういって、怒りをぶっけるミリカ

ルークはしれっとした顔で


「・・・だったら、一緒に行けば良かったと思うけど」


すると、ピタリっと動かなくなり


そうだ、行けば良かったのだ

あの少年の顔を思い出すたびそう思ってしまう


「・・・・でも、できなかった」


ミリカはポッリっと呟いた


「・・・王族だから?」


ルークの言葉にミリカは首を横に振る

哀愁を漂わせている


「いいえ、違うわ」


そう、違うのだ。

あの時、旬に言うべきだったこと

言えなかった

あたしは怖いのだ



「自分のコトが一番怖いからよ・・記憶がないあたしが

 だから一緒に行くことも、伝えたいことも言えなかった」


あの戦いで、言われた母親のこと

お兄様は、母を魔女と呼んだ。

あたしには、母の記憶がない。


「・・・・。」


「あんたは、お母様のことを知っているのよね?」


「そう・・一番よく知っています。」


ルークは母のことを知っている

あの時の言葉をあたしは思い出した


(違う、メノリ様は・・あの方は魔女でも無かった!!

 たった・・ほんの少しだったけど・・あの方が妃であった

 あの頃のことは僕が一番よく知っている!!)


ルークは言ったのだ。

そこまで感情を露にして言うくらいだから

あたしの耳にははっきりとこびりつく程残っていた


「今は、教えられないよ。まだ・・その時ではないから」


その時ではない。

そうルークに言われた時

私はなぜか怒りを抱かなかった

それよりかもう一つだけ思い出したことがあった


この間の病床にいる姉にも同じことを言われたのだ。

母のことを聞こうとすると、姉は寂しそうに

”その時”ではないと。


「・・・姉様にも言われたわ。病床で。」


「そう。」「でも」


でも、あたしは感じるの

もう、その時は・・。


「近いかもしれない。」


「・・・・。」



そう、近いような気がした

あたしの中で感じるのだ。

その気持ちも心もすべて


「その時は、あんたもあたしも受け入れる時がくるのよ」

「・・・。」


そう静寂した時間が過ぎていく

あたしは、収まった怒りを忘れ

再び書類へと向き合うのだった。


               *****



カチコチっと時計の音を聞きながら

静寂の中、書類と格闘する


「しかし、少年たちは無事かなぁ。あの砂漠は

 蟻地獄はかなりあるし死ぬこともあるしなぁ。」


ルークは心配そうにしていると

ミリカは書類を書きながら


「大丈夫よ。たとえあそこがかなり危険な砂漠だと分かっていても

 旬とお兄様・・ラミアがいれば多分乗り越えられるわ

 それに・・恐らく、あの方もあの村に立ち寄っていると思うわ」


その一言にガタっと音を立て立ち上がる


「本当!?」


信じられなさそうな顔をしている

無理も無い

なにせ、あの方は、今もどこにいるかあたしたちですら

把握ができない存在だから


「・・本当よ。クロスお兄様が教えてくれたわ。あの後

  かなり頑張ったみたいよ。お兄様も旬が気に入っているみたい

 調査結果あの方があそこにいるみたいだしこれもまた偶然。」


「偶然・・?」


「あ、間違えた・・必然だったわ。偶然ならあの方はそこにはいない。

 導かれようとしているのよ」


「・・あの少年には運命を握っていると・・?」


「・・・多分ね。」


あたしは思う

そうでなければ

オルフェお兄様やあたしたちに会うことは無かった


「だけど、今回ばかり無理かもしれない・・。」


ルークは心配そうにミリカを見た

あたしは不思議に思って


「どうして、ルーク。あんたはそう思うの?」


すると、切迫するように


「だってあの召喚士村一族は

 神の力を授かり唯一、神の使いと名乗っているんだよ!?

 簡単に上手くいけそうにもないような・・。」


ルークはそう言葉をこぼす


確かにそうだ

あの一族は、とても難しい

たとえ、砂漠を抜け

その召喚士村に無事に着けたとしても・・。

恐らく難しいだろう


「・・・そうね、召喚士は誇りと信念の一族。その敬愛を元にし

 一族は成り立っている。だけど、外の世界・・外界を嫌っている

  そしてその、外界に住むあたしたちも酷く嫌っている」


外界を嫌い、干渉すら許されない

それが・・召喚士一族。


「・・・大体、僕は一度会ったことがあるけど

 腹立つよあれは!!無言と静寂は!!」


キィ~っとハンカチを噛むルーク

実は旬が来る前に、召喚士一族は一度ここに来たことがあるのだ

もちろん、王太子で争っている中、あたししか対応できる

人物はいなかったのだ

その時のことをルークは思い出しているんだろう


「確かに、いきなり、無言で紙を渡された時は驚いたわ

 しかも、要求は外界との切断。」


それも王族とも関係の切断届けだ

すでに、切断しているのに届けまで出すのはあたしでも意味不明だ


「・・あの時は大変だった。正直、無言で会話なんてできるはずもない

 無言・・本当に、噂通りに僕たちを嫌っているみたい」


そう嫌っているのは、外界の存在すべて

どこを嫌っているのかあたしには理解できない。

しかも、あの村は現在かなり問題をかかえている

ある意味、面倒な村だ。


「まったく、失礼すぎる。だけど、罰することすらできない

 それが難しい村でもある。」


そう、罰はできない。

あそこは、あたしたちでも無理なんだ。


「あの村の問題は大きいわ。でも、旬たちなら

 大丈夫・・そんな気がするわ・・。

 そして、あたしもいずれ旬たちの元へと行くような気がする」


「ええ。」


「さてと、引き続き終わらせるわよ」

「・・はぁ・・」



あたしの思い出すのも近い記憶

そして・・・。

訪れる一つの手紙

それが、あたしたちのすべてを巻き込ませる

始まりとなる。

それは、また別の話・・・。



これから、どうなるのか

それはまた別の話で・・。

では、またどうぞ

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