少年、伝えたいコト
ついに66話目
これで学者の忘れ形見編は終わります。
まぁ、閑話を一つ入れて次は召喚士村へと入ります。
では、またどうぞ。
「クロス・・?」
そこには月に照らされた姿がよく見えた
アイスブルーの瞳は輝いていて
あいからずサイドテールの姿は中性的な姿だと分る
クロスは申し訳なさそうな顔をして
「旬、すまないね。こんな所で」
俺は別に構わなかった
謝る必要性など無かったからだ
「・・・いんや、別にいいけど、いきなりどうしたの?」
「自分は君に伝えておきたいことがあるんだ・・。」
そうクロスは言った
「伝えておきたいこと・・?」
なんだろう・・?
すると、クロスは俺を直視して。
「ああ、君は見ただろう・・召喚士を」
「・・・!!」
そうだ俺は見たんだ
あのフードの謎の人物を。
でも、あの人物は・・どこかで懐かしい感じがしたのだ
クロスはクスリっと笑って
「その様子じゃ、知りたくてたまらないという顔だね
いいよ。教えてあげるよ。」
ニコっと笑う姿に
「なぜ・・そこまで俺のためにしてくれるの?」
怪しいと思っているとクロスはくすくすっと笑う
「ははっ、面白い子だ。君は本当は子供でもない
姿はそうであっても内面は違う・・そうだろ?」
クロスの眼差しに俺はただ・・一言
「だから話すというの?」
「それもある。今の君は・・仮の姿でしか過ぎない
この姿に疑問なく存在ことが、どう考えても不自然すぎだよ」
「・・そうだね、身体と心が似合わない。そう言いたいでしょ?
そのちぐはぐな姿に皆疑問ばかり言うよ。」
俺は、今まで出会った人に言われ続けたから
もう慣れている。
元々、隠す気は無かった。
こういう時は、ふてぶてしく笑うのが一番だね。
そうすると、クロスはおかしくなったのか
「ははっ、そうだよ。君は・・何か大きなことを隠した子供」
「・・それを聞いてどうする?俺を殺すの?」
すると、クロスはクックッと大笑いする
「あはははっ、さすがだ。見直したよ。君は度胸がある。
自分以上に」
「・・・。」
そして、クロスは自分の顔を覆って笑いを耐えているが
やがて、見えたのは・・無の瞳だ。
「・・・!!」
「自分はね、人には言えない職をしているからたまに抑えられない時がある
そう、こいった場面には・・血の気が強くなる。」
一瞬見えた捕食者の瞳
どうやら、彼はタダ者ではなかったようだ
以前見せてくれたあの衣装
アサシン(仮)だと思っていたようだけど
どうやら・・彼自身の職業だったみたいだね・・あれは。
クロスはどこか吹く風のように・・。
「これか自分は、多分闇として生きるしかない。
それ以上に、光に憧れているんだ」
「・・・王太子こそ、光なんでしょ?」
俺が問うとクロスは月を見て
「自分は、王になるつもりはないよ」
クロスは告白したのだ。
自分が王になるつもりはないことを。
「自分がもっとも王になってほしい人は昔から一人だけ」
「・・それが、ジンだといいたいの?」
すると、ああっと肯定するクロス
「兄上こそ、王にふさわしい。それ以外に王座にいることは
自分が許せない」
吐き出すようにクロスは言った
そう、初めて見えたのだ
「・・・本性はこれだったんだ。」
「・・・・。」
なんとなく俺は読めた
クロスという人物像を・・。
「で、ジンを王族に戻すの?」
すると、クロスは首を横に振る
「今はしないよ。兄上は王族から一度除籍されたヒト。
そして、今は貴族がうるさいから。」
確かに、うるさそうだな・・イメージが浮かぶ
「いずれにしろ、自分は君が何者なのか・・なんとなく
分かった気がする」
だけど、あえてクロスは俺が何者など話はしない
「・・・そう。」
「それに、自分はこれでも16歳だし。謳歌しないとね」
「・・16歳だったんだ」
「そうだよ。いくつだと思ったの?」
俺とおんなじなんだね・・。
でも、老けて見えるな・・本当に16歳なんだろうか?
さすが、異世界だね。
そんな妙な関心をしていると。
「君は、これからどうするの?」
「・・行き先は決めていないよ。召喚士のことは気になるけど
どこに行けばいいのかも分からない」
そう、召喚士のことを聞いても
どこにいるかそもそも、なんなのか
よく、分からない一族なんだ。
「旬、だから自分がいるんだよ」
「え・・?」
俺は、思わずクロスを見る
クロスは得意そうな顔をして
「さつきも言っただろう・・?自分は君に伝えねばならないこと
があるんだ・・その召喚士についてね」
「!!?」
「とりあいず、自分が掴んだ情報によれば
召喚士村は、ここから南の砂漠方面にあるとされていると」
「さ・・砂漠」
なんとなくお決まりに少しため息を吐く
「うん、灼熱砂漠の向こうに存在するみたいだよ。
まぁ、暑いし、危険なモンスターも多いから
誰も近寄らない場所だしね」
き、危険なモンスター
「そんな所にあるの・・?」
「なにせ秘境中の秘境だからねぇ・・まぁ、砂漠を超える前に
旅したくとしてアズールという村があるからそこに行けばいいよ」
そういってクロスは地図を渡してくれた
地図をよくみると、砂漠方面に小さな村に×が書かれている
おそらくここがアズールだろう。
それを見ながら、俺はおそるおそるクロスを見る
「あ・・ありがとう。同じこというけど・・本当に気前がいいね」
「自分は君を買っているんだよ」
「え・・。」
「・・それに、知っているかい?召喚士村にはね
君と同じような人間がいるんだろ・・噂があるのさ」
「でも、そんなのあくまでも噂じゃ・・。」
「噂・・?そんな訳ないさ。なにせ・・この王宮でもいるくらいなんだ
もう・・この世にはいないけど・・。」
その時、ハッとしたのだ。
以前、ジンの過去話にあったメノリ・カルディアの話
彼女も帰りたいと言っていた
もしかしたら・・・・。
この世界にも俺と同じような境遇の人がいるはずだ・・。
俺は、希望が少し見えてきたのだ
「どうやら、旬。決めたようだね。」
「・・ありがとう、俺に何から何までも」
俺が御礼を述べるとクロスは頭をかいて
「いや、本当はもっと確信にめいた話をするつもりだった
ったく、あの婆にお願いする予定だったけど
その婆もどこにいるのかわからないし」
「あの婆?」
俺がきくとクロスはため息を吐く
「・・自分たちの専属占い師さ。でも、今は行方不明。
一体どこで何をしているだか・・肝心な時にいないとは」
クロスは本当に困っているようだ
よほどその人物は普段からどこにいるか行方不明のようだ
すると、クロスはスッと俺に手を出し握手を求める
「とにかく、君にこれから加護があるように願うよ」
「ああ、俺も。君たちにあえて良かった
また、どこかで」
ガシっとあの時のようにまた握手をした
向こうではまだ、ミリカとルークの争っている声が聞こえた
俺は、ただ・・月を眺める
また、新しい世界に旅にでることができるようだ
****
そして、別れの日
ミリカたちが来てくれた
アリアはまだ病床だから来れなかった
けど、ソリドゥスは来てくれたようだ
「お世話になりました」
と俺がペコリっと礼をすると
「あら?お世話になったのはこちらのセリフよ」
そこには、ニコっとすがすがしく笑うミリカ
そして、横には青あざと傷だらけのルークの姿
「・・あんさん、大丈夫か?」
思わずラミアは心配すると
「・・・・・・恐ろしい猛獣がいた。」
ブルブルっとルークは怯える
ミリカはホホホっと笑う
俺は女が少し怖いと感じた
「旬・・あたし、言いたいことがあったけど
こいつが邪魔したせいで・・くっ。」
そういって握りこぶしを見せて
怒り狂っているようだ
「み・・ミリカ!?」
「絶対いうからね、また来なさいよ!!」
グワっとくるミリカに俺は思わず下がる
「あ・・はい。」
押されているな俺・・。
「少年、またきなよ・・・・・・・・・・・・・・・・
ミリカ様の機嫌のために。」
そういって渋るルーク
そして、クロスはジンを見て
「兄上」
「・・何だ?」
「兄上、いつか帰ってきてください」
「いや・・我は・・。」
すると、クロスはギュッとジンの手を握りしめ
「いつか・・・お願いします」
その姿に、ジンは一瞬だけ呆けたが
「・・・いつかな。」
そう、うつむいたジンに
クロスは嬉しそうな顔をして
「自分もミリカも・・姉上も・・待っています」
クロスはそう言った
照れくさくなったのかジンは
「じゃぁ、旬・・我は先にいくぞ」
「あ、うちも待ってぇな。」
ジンとラミアは先に行ってしまった
「じゃぁ、俺もいくよ・・ありがと」
そう言ってさっていこうとすると
「また来てね、旬」
ミリカは笑みを浮かべる
その姿にかすかだけど寂しい気がしたのだ。
そして、ラミアは俺の横を歩きながら
「旬、ミリカのことええんか?」
「・・何が?」
すると、ム~っとした顔をして
「この鈍感・・やな」
「そうだな」
ジンもラミアも頷くばかりだ
「・・?」
俺は本当に不思議に思ったのだ
「これからどこに行くん?」
ラミアが聞くと
「ああ、とりあいずは目指すは召喚士村かな」
「召喚士村か・・楽しみやな。」
「まぁね、じゃぁ行こうか」
「ほな、じゃぁ行くでぇぇぇ」
グィ~っと強く握り締められる
「うわぁぁぁ、引っ張らないでぇぇ」
まだ見えない何かがそこにある
それを信じて俺は歩き出す
目指すは召喚士村へ・・。
旬は鈍感です。
さて、この物語のそれぞれの年齢を言いますと
まず、旬(16)→10歳ぐらいになった。
ジン(19) 普通に年上。だけど、老けてみられる。
ラミア(17) 今時、女子高生という奴です。お嬢ちゃんと言われるのが嫌い
ミリカ(14) 中学生の年齢ですねぇ。
アリア(20) 嫁ぎ遅れ・・?
ソリドゥス(19) ジンと同じ年齢です。
ルーク(17)ラミアと同じ年齢・・だけど、ミリカの方が最恐
クロス(16) 旬と同じ年齢。実はここでネタバレかれのジョブは
アサシン・・!?
メノリ(??)・・・謎の深い人物、年齢不詳。
とりあいず、これくらいですかね。
また、誰かの年齢を知りたければ
野上月子まで・・では、次話は、閑話に入ります。




