少年、アリアの懺悔
すべてが終わる64話・・残り、1、2話で、ついにおわります。
お次は召喚士編も予定しているので
どうか、お楽しみをでは、どうぞ。
忘れたくない
忘れたい
こんなに矛盾しているのに
あたしにはもう答えが無かった
待っていたのは・・きっと、辛い現実だけだから
忘れよう・・。
でも、本当は忘れたくない
どうすればいい?
あたし・・。
その時
囁く声がする
”ワスレテ”
その時・・陣が発生したのだ
おか・・あ・・さま。
******
キラッっと光った・・石。
「これは・・・あの時の石・・。」
俺はその石を拾った不思議な輝きだ
そっとその石に俺は触れた
すると、となりにいるアニマがフンフンっとその石の臭いをかく
(ゴシュジン、コレハクリスタルノカケラダ。マリョクノニオイ
プンプンダ・・コレヒトツデヒシャソセイノジュツハデキルホドノ)
ゾクっとしたこの欠片が・・。
ギュッとその石を握る
向こうでは、アリア達の魂をカンテラから出している姿が見える
「・・・俺、これからどうなるのかな・・?」
どうすることもできないのは俺だ。
まだ
まだ
俺は、弱い
(ゴシュジン?)
「アニマ・・俺は、強くなるよ。だから、また力を貸して」
するとアニマは旬の頬をペロっと舐めて
(ボクハ・・イツデモゴシュジンノミカタ・・マタヨンデ
イツデモヨンデボクハ・・ミンナモキミガヨンデクレルノヲ
マッテイルカラ)
そして、アニマは光の玉のように再び本の中に戻っていった
俺はその光景に魅入られたいたがやがてハッとなり
「・・・皆?」
その疑問を口に出した。
その時、後ろから声がしたのだ
「旬、帰るで~アリアはん達を運ばなあかん」
「・・ああ、分かった」
まだ、疑問が多いこの場所
ただ、俺は・・夢を見たような気がした
この場所に対して・・。
でも、夢ではない。
これは現実であり嘘ではないのだ
さぁ、俺も帰ろう
そして、俺は振り返りもせずにラミア達の後を追いかけた
これからどうなるのか分ることもなく・・。
*****
あれから、王族の中ではすべてが終わったようだった。
例の王自害の件では、王弟であるレイアス卿が牢屋に入れられた
自白によれば、王である兄を恨んでいたようだ。
だからこそ、姪のアリアを暴走させるために陣を使い
そして、自分の甥であるオルフェを失脚させることに成功した。
その次に、トウリやクロス、ミリカを失脚させるという
世にも恐ろしい計画を立てたようだ。すべては自分が王になるために。
実は、あの黒ずくめの集団は、すべて、この人の差金だったみたい
ちなみに、あいつらは召喚獣に襲われ大怪我しているようだ。
現在、こいつらも牢屋に入れられている。自業自得ってやつだ。
他にも理由がありそうだが、俺に教えてくれたのかそれぐらいだ
当然のことだろうか・・周囲では信じられないという形だったのだ
無理も・・ないことだ。
レイアス卿は、温厚で優しい人だと周りは思っていたからこそ
このような悪事を企んでいたことは驚愕だったようだ。
次に、第2王子トウリだ。
彼は禁術、誘拐、共謀・・様々な罪がある。
自白によると、王である父の死からこの計画は開始されたそうだ。
計画の一端には、アリアやソリドゥス、ジン巻き込むことも最初から
組み込んでいたそうだ。
今は、王族専用の牢屋に入っている。
でも、ミリカやクロスの助言より・・罪はだいぶ軽くなるようだ。
彼は、ただ会いたい人がいた。
それだけだけども・・。
それは、誰でも願う夢が狂気に変わっただけだから。
俺は、トウリを許せるような気がした。
あ、そうそう
王位継承権に関してだけど
もう、争う必要性は無くなったみたい。
まぁ、それは当然だけど。
でね・・その時俺は見たんだ
鮮やかな世界だった。
そして夢のような所だった
今では夢のようだった。
純血の血をもったミリカ
混血であるクロス
二人が力を会わせて・・新しい王宮を作り上げる姿を。
まだ、難しい所はたくさんあるだろうと思う。
純血と混血の時代は昔からだった
それは今も変わることはなく。
だからこそ、変えることになるはずだ。
きっと、一筋縄にはいかないかもしれないけど
彼らは・・大丈夫だと思った。
後に、この二人が英雄と言われるのは・・まだ先の話だ。
さて・・魂抜けになったアリアだけど
あの後、無事に魂が戻ったんだ。
だけど・・魂抜けによって彼女は療養しなくてはいけなくなった
彼女は・・どんな気持ちなんだろう。
俺は、今・・アリアの自室の前にいた。
俺はラミアと一緒に来たのだ
ジンは・・一緒には行ってくれなかった
きっと、彼なりに思う所はあるだろう・・。
「じゃぁ、旬・・ええな?」
ラミアが聞くと
「・・うん。」
「コンコン」
ラミアは遠慮がちにドアをコンコンっと鳴らした
すると・・。
「どなたですか?」
アリアの声だ。
どうやら起きているようだ
「ラミアや、旬もおるで・・入ってもええかな?」
と聞くと
「・・・。」
「・・・。」
一瞬の静寂になった
その静寂を打ち破ったのは・・。
「入って。」
アリアの一言だったのだ
そして、通された部屋では
ベットの上で、起き上がっているアリアの姿だった
心なしか、沈んでいるように見える
だけど、前よりか棘がなくなったように見える
あんなにあった・・憎悪も・・。
「・・旬、きてくれたの・・。」
「・・・うん。」
そこには、静かな声で人形のようなアリアが俺を出迎えてくれた
そばにはソリドゥスがいたのだ。
「・・・。」
「・・・。」
俺たちは何も話すことは無かった
だけども、ピリピリもしていない
ただの・・静かな一瞬だったのだ
「ごめんなさい・・旬。」
「え・・。」
突然、アリアが泣き出した
ポロポロっと真珠の涙を流した姿があった
俺は、思わず
「・・何が・・ごめんなさいなの?」
俺は優しく聞くとアリアは首を横に振りながら
「私、心が憎悪が支配して・・家族に手をかける所だった
だからトウリは私が死んでもいいと思ったかもしれない。」
「・・アリアはん・・。」
ラミアは、哀しそうな顔をする
「でも違うのにね・・恨んでも何もならないことを今分かったわ
私ね・・意識が沈んだ時・・薄暗い世界にいたの」
アリアは目を瞑る
抑揚のある声は・・。
どこか、哀しくも聞こえるのだ・・。
「・・そして怖かった。初めて分かったの。
復讐をしても誰かの代わりに恨んでも・・報われもしないし、
何も変わらない。残るのはとても哀しくてドロドロとした
感情だけだって・・きづいたの」
それは、とても哀しい感情だ。
誰も浮かばれない
苦しい感情
アリアは、俺を見てクスっとかすかに笑う
「トウリ(弟)を見たわ・・最後に、とても怖かった。
今思えば、私たちは間違えていた・・それだけのこと
弟を見てそれに気づいた。」
アリアはギュッとシーツを握った
その様子を見ていたラミアは
「これからどうするんや?あんさんらは?」
「多分、私は私なりに彼らのためにできることはあるはず
そうそう・・貴方に渡しておきたいものがあるの」
そういって渡されたのは一冊の本だった
「これは・・?」
「貴方に約束していた本よ。伝説系に関して書いてある本
御礼だと思ってうけとって」
旬の手に握らせた本
「いいの?」
「・・・私は、トウリだけでもない。ミリカにもクロスにも
侘びなければいけない身・・それに気づかされたのは貴方のおかげよ
あなたが受け取る価値はあるに決まっているでしょ?」
ニコッとアリアはその時、初めて心から笑ったのだ
「・・もう大丈夫なんだね?」
そう聞くと・・。
静寂の末・・アリアの出した答えは・・。
「・・・・・そうね。」
その一言だけだった。
でも、俺もラミアも
その一言だけで良かったのかもしれない
「ねぇ、アリア・・最後に一つだけ聞いていい?」
「何かしら・・?」
「・・・ミリカの母親であるメノリ・カルディアのことだけど・・。」
アリアはハッとした顔をして
そして・・。
目を伏せたのだ。
「ジンたちの話では、メノリ・カルディアは優秀な学者であった。
と聞いているけど、事実上・・どのくらいだったの?」
アリアは遠い過去を思うように黄昏る
「メノリ・カルディアは、たった少ししか妃にはなれなかったわ。
そして、多分・・妃に関しては優秀で惜しみのない方。」
「たった・・少し?」
アリアは頷く
「そう、たった少しの期間。ほんの数ヵ月だけの妃。
そして、死んだの」
「・・・・。」
アリアは、追憶をする。
「あの頃は、ミリカは泣いてばかりだったわ。同時にオルフェも
いなくなった後だから・・」
アリアは、その時のこと覚えているのか
そっと、心臓に触れる
「そう・・なんだ。」
「でもね、その後ミリカは母親のことを忘れ、
そのことに関する思い出や記憶も全部・・失ったわ。。」
「え・・・。」
その時俺の中で、ミリカの顔が浮かんだ
何も覚えていない・・無垢の顔を・・。
初めて会ったときの顔も
あれは、演技でもなく
本当に知らないという顔だったのだ
「どういうことや・・!?姫さんが・・母親の記憶を失ったって・・。」
アリアは渋るように
「・・ミリカは4年前、忘却の術を使い。自分の記憶を無くしたのよ」
「あんさんは・・知っているのか?」
すると首を振って
「いいえ、忘却の術を使った経緯は詳しくは分らない
今となれば・・謎ね」
そう呟いたアリアの顔
本当に知らないという顔だった。
果たしてこれはどういうことなのか俺には分からない
でも・・その時あったのは。
無邪気で笑う
何も知らない・・ミリカのことが頭の中に駆け巡ったのだ。
学者の忘れ形見・・ついに、核・・ですね。
では、ミリカについて次話で書きますね。
では、またどうぞ。




