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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第5章 ~ある学者の忘れ形見~
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獣の血脈

さぁ、61話目です。

今回は・・獣人についての話し。

では、どうぞ。

摩擦する思い

どれだけ強く願っても衝突すればするほど

心は廃れていく

それだけ、分かっている


嘆く獣は、これ以上失うモノはない。

そして、それは・・・。



               ****


「がぁぁぁぁ」


叫ぶ獣

嘆きと共に、ただ叫ぶだけだ

その獣の嘆きはどこか哀しく響く

そして、異様な姿を変化した獣は。


もう、人でもなんでもない・・姿だった。


俺は、その狂気にのまれた獣を見つめた

グッっと杖を握るが・・少しだけ手が震えたのだ。


「・・ジン、これからどうするの?」


俺は、ジンにそのことを悟られないように聞くと

やはり、ジンは見抜いたのか


「旬、魔法は使うな」


ビクッと俺の肩がふるえた 


「え・・。」


「我が動く」


「だけど・・俺が力にならなければ・・。」


俺はラミアの前では平気でそう言った

実際目の前にしてみると・・。

やはり、恐怖の方が勝るのだ。

その情けない姿なのにジンは、ポンっと俺の頭を撫でる


「大丈夫だ、我がこの不始末にケリをつける」


「やはり、兄弟だから・・なの?」

「・・・・。」


ジンは無言になる。


「・・トウリがあのようになったのは我の責任でもある。

 止められるのは、もしかしたら我だけかもしれない」


「しかし、どうやって・・?」


すると、トウリの姿を見たジンは何かを決心したかのように


「・・まぁ、見ていろ。なにせ、獣になれるのは我だけではない」


すると、キィィンっと音がして陣が発生する

やがて、ジンの身体は口が裂け、耳が生え

いつか見た、獣の姿へと変化したのだ


「ガロォォォ」


銀色の美しい獣・・狼が姿を現した。

狼化したジン遠吠えでトウリを威嚇する

トウリはギラギラさせた瞳で襲う姿もう理性すらない

ジンとトウリの激しい攻防が始まった


俺はというと、共に戦うことができないことが少しズキっとした。

激しい攻防は続く、ジンが圧倒的にトウリを押しているのが見える

やはり、俺の力は必要なかっただろうか・・?


その時、フワリっと何かが俺の前に現れた


「旬、君は獣化について聞きたくないかい?」

「うわっ、いつの間に」


あいからず、気配なしで現れる謎の人物だ。

彼のサイドテールの髪がふわりと揺れる


・・・クロスさん、あなた本当に何者なのっと


問いかけたくなるのだ。


「獣化・・って、ジンたちがいまの?」


「・・そうだよ、純血だけ出来る芸当さ。

 混血はそれはできない。獣化は血によって可能になる

 そう、それこそが純血、混血が争う理由になったことさ」


「はぁ・・でも、獣化できるという点は俺でも目から鱗だよ」


「・・まぁ、仕方ないことだよ。遥か昔からのコトだから」

「遥か昔・・?」


すると、トウリは、ジンたちの戦いを見届けながら俺にある話をしてくれた


「我ら一族は、太古の昔は獣だった・・だが、一人の神により

 獣は人になることも可能になった。それが今の世にも続くのさ」


「・・獣が人に・・。」


「事実かはわからないけども・・真実味があるだろう。」

「はぁ・・。」


「獣化は、純血の子だけに受け継がれる特別なコト

 そして、混血は獣化もできない。ただ、獣としての優れた

 聴覚や嗅覚・・ただ、それだけの力しか与えられていないのさ」


クロスは、ただ淡々と言うだけだが瞳は揺れている

彼なりに獣化に関して思うことがあるのだろう


「それより、君は、理性のあるとないはどちらが一番強いと思う?」

「え・・。」


突然何を言い出すだろう・・?


「それは・・理性がある方が・・強いんじゃ・・。」「違うよ」


すると、クロスは苦笑する


「理性は確かに、力を思う存分に使うことは可能さ・・

 でも、野生の本能・・理性を無くしたものは異常な力を

 発揮することもある」


「・・・ま・・まさか」


俺は青ざめていくクロスは、静かに


「そう、このままいけば・・オルフェ兄上は・・死ぬ。」

「!!?」


俺はハッとして二人の戦いをみた

確かに、圧勝しているように見える

だけど、どこかジンの顔も焦っているように見える

このままいけば・・。


「ど、どうするの!?」


「・・そのために、自分がいるんだよ」

「・・え・・・。」


そして、何かの袋を見せた


「な・・なに?」


「これは、自分の魔法道具入れさ」


「はぁ・・魔法道具」


「まぁ、見ていてよ」


ゴソゴソっと何か探しているようだ


「あった、コレコレ」


すると、出したのは・・・。

一つの棒付き飴だった


「あの~棒付き飴ですか?探し物は・・?」


「あ・・間違えた、これ自分のおやつだ」


そして、また魔法道具入れにゴソゴソっとさがす


「あった・・今度こそ」


出したのは数枚の札だ。

それも、呪文でビッシリっと書かれた札だった


「これは・・?」


「あるツテで見つけた特殊な札さ・・これさえあれば

 強制的だけども、兄上たちを獣化を解くことが可能になる」


「へぇ・・すごいね。この札が・・・?」


「だけども、その札は特殊な方法でしか発動しない。」

「と、特殊な方法・・。」


すると、誰かが俺のとなりに来た


「獣の血ね。」


そこには、ミリカがいた


「ミ、ミリカ」


「話は聞いていたわ。」


「獣の血って・・どういうこと?」


「文字どおり、獣の血で発動するのよ」

「・・はぁ・・この札が?」


「この札は我ら先祖が獣化の暴走した時に、使う札をね。

 いつかこういう時がくると思って密かに隠しもっていたんだ」


「予感していたの?」


そう聞くと、クロスは首をフルフルと振る


「まさか、自分でも半信半疑さ。だけども、あの婆が占いで言うから

 仕方なく・・まぁ、いっか。」


ため息を吐く、あいからずマイペースな所は変わらないようだ。


「・・あの婆?」


「専属占い師のことよ。王宮のね。まぁ、陰気臭い所はあるけど。」


ミリカもどうやら知っているようだ


「とにかく、あの婆の予言のおかげでこの札を持っているのさ

 さぁ、旬。使うよ」


「使うって・・獣の血が必要なんだよね?」


「そのために、ミリカがいるのさ・・」

「・・これでも、純血だからね。」


「・・純血・・だったんだ」


改めて知るその事実に、ミリカはフフッと笑う


「あら、言っていなかったわね・・あたしも純血なのよ

 でも・・お兄様の言うとおり、本当に血の違いなのよ。」


血の違い。

それは、確かにそうかもしれない


「さぁ、話はここまでだ。」


そして、陣を作り上げていく途中に俺は呆然としていた


「少年・・・。」

「ルークさん?」


「・・トウリ様の哀しみはすでに始まっていたんだ

 そして、オルフェ様は、トウリ様を止めようとしている」


「・・・ええ。」


ジンは懸命にトウリの譲れない思いのために戦っている


「これが、本当に良い答えなのか分らない

 僕でも分らない。」


その時、カッと音がした。

周りに陣の発動させたようだ


「な・・何!?」


「どうやら、幕引きするためのステージは終わりそうだ」


ルークさんは、二人の戦いを見届ける

その途端、札によって二人の獣人二人は倒れた


すべてが終わる


果たして、これでよかったのか分らない

不完全燃焼な・・気持ちだけが

残っていたのだ・・。


そして、ドクン、ドクンっと何かが音をしていた

ヨンデ・・。


そう、聞こえたのだ・・。




旬の気持ちは不完全燃焼

でも・・?



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