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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第5章 ~ある学者の忘れ形見~
57/485

少年、愚かな願い

57話目です、そろそろ、この忘れ形見編は終わる予定です。

あと5、6話ぐらいで・・とりあいず、そこまでお付き合いをお願いしますね。

儀式はもうすでに近い

心だけが呼応される・・ついに実現するのだ


笑いが収まらない

だけども、なんだろう・・この気持ちは


そう、誰かがこちらを睨んでいるのだ

それも遠い所から

恐らく・・私がもっとも嫌っている弟からだろう。


病弱でありながらも、どこか掴めない男・・。


「よろしいのですか?」

「ああ、奴らはもうここに来ている」


ニィっと笑う

ただ、その笑みは冷えた・・瞳

そして、挑発的だった。


「お前たちは、奴らを足止めしろ」


「しかし・・あの方たちは貴方様のご兄弟ですよ!?」


フルフルと頭を横に振り

違う、違うと叫ぶ


「違う・・あんなのは私の兄弟ではない!!」


変わり果てた王子の姿

もう、かっての気品もない。

狂気だ。


「オルフェ様がいらした頃はそうではなかった」

「・・オルフェ兄さんの話をするなぁぁぁ」

「きゃぁぁ」


叩かれていく従者

嘆く者達


「ト、トウリ様!!」

「兄の話をするな・・行け!!」


「ハッ!!」


集団が消えて行くのを見て

頭を抑える


自分は、あの人に会いたいだけだ。

それだけ・・それだけなんだ。

だから、どうして

こんなに・・涙が・・流れるんだ・・?



            ****


俺達は、クロスが自身満々で豪語する姿を眺めていた。


「・・情報王子?」


ドンっとなんでも言えと胸張っている姿


「自分はこれでも情報を多く持っている方なんだ」


「王宮から出られないのに?」

「・・・・。」


すると、黙るが・・。


「・・まぁね、でも部下を従えておけばそれも可能

 何を隠そう、ソリドゥスをアリアにあげたのも

 自分だからね」


「え・・そうなの?」


「・・実は、僕もそうなんだよ。少年。」


ルークはため息を吐いてクロスを見る

どうやら、元の主だったらしい・・クロスは。


俺は、目はパチパチとするばかりだ


「本当なの?」


すると、二人は肯定する

どうやら事実のようだ


「ふふっ。自分はこれでも王子だよ?まぁ、母親の方に力があるだけで

 その力を引き継いだって所かな・・。」


「引き継いだ?」

「なんや、あんさんの母親は貴族やなかったんかい?」


ラミアが不思議そうな顔をすると、ミリカが説明する


「クロスお兄様のお母様は、ある貴族の生まれ・・だけど

 それは表の顔よ。」


「お、表・・?」


なんか、今とんでもない話を聞いた気がする

衝撃だよね・・毎度のこと。


クロスは自分の生い立ちについて話し出す


「自分の母親は、すごく情報に顔が聞く人でね。その集団を率いているんだ

 いわば・・裏稼業って所じゃない?」


裏稼業・・そんな人達がいるのか・・。

でも、軽すぎないか・・!?


「・・・って、貴族でしょ?」


貴族って、俺たちよりすごいだよね

身分的にも財政的にも

保証されていることが多いのに

どうして・・裏稼業を・・?


その疑問を思っているとクロスは空を見上げて

そして、俺達をみた


それは、空に憧れる瞳を・・していたのだ。


「・・母さん自身は、貴族生まれじゃないんだよ」

「え・・。」


クロスは、遠い過去を思う


「孤児の母さんは、貴族の養子になったんだ。それから色々あって

 今では、妃になって・・そして、自分がその後継者となった。

 王太子と同じように・・・ね・・。」


「・・・。」


「それからね・・・母さんは事実上・・メノリ・カルディアから

 ルークを引き取ってほしいとお願いされていたんだ」


「!」


「色んなことがあって・・ルークはミリカを守るために

 ここにいる。でも・・。」


その瞳に・・俺はその王子の違和感を感じ取った

そうか・・なんで、寂しそうに笑うのか

この人自身の深い・・闇だ。


王宮という狭い世界で生きて

そして、外にでることもない

どんな・・・気持ちだっただろう・・。


すると、俺の表情を感じ取ったのかクロスは


「君がそんな顔されると、自分まで悲しくなるんだ。

 優しいね。」


ホエホエと優しく笑うクロス


「・・俺は・・優しくなんか。」


ギュッと拳を握った

優しくなんかない・・。


だけど、クロスはそれをなんだと思ったのか首を横に振り


「いや、優しいよ。だから、自分は握手したんだ

 そうだろ・・坊・・いや、旬。」


なんで、この人、俺の名前を・・。

俺、あの時名乗ったような記憶は無いのに

どうして・・?


「さぁ、話を変えようか。名前のことは

 情報で聞いているからね。深く考えななくてもいい。」


「・・。」


考えなくていいのか!?

むしろ、大丈夫なの!?

疑問ばかりだけど・・!!


そんな悶々とした俺を他所にクロスは、木に寄りかかって話だす


「自分は、ここまであらゆる手段でこの世界のことを調べたんだ」


「調べた?なぜ・・なんや?」


「気になる?父上が、なぜ王の子に呪文を教えても

この世界のことは教えていなかった」


「・・・そりゃ、嫌やったからやろ?」


干渉を嫌っていたのなら・・そういう意味にもなるかもしれない

クロスは、フッと


「・・・それだけなら、自分も動かないさ。

 もし、この世界にクリスタルという存在があると

 したらどうする・・?」


「ク・・クリスタル・・。」

「いきなり、すごい話がきたな・・」


まさかのクリスタル発言

そして、ミリカは高揚したような顔で


「お兄様、クリスタル・・そんな、すごいモノがここに眠っている 

 ですの・・?」


「自分は、王太子候補の時、ある文献を見たんだ。その時

 この世界にバラバラに散ったクリスタルの存在が確認された」


「でも、なんで・・そんなモノが・・?」


すると、そっぽむくようにクロスは


「詳しいことは、アリア姉上に聞くといいよ」


「あ、アリアが・・?」


どこからか棒付き飴をだし

舐めはじめるクロス


「姉上の方が、そういう系は強いしね。伝承や伝記

 そういう話が得意」


アリアの姿がかすかに見える

確かに、博識そうな姿もあった・・な。


「自分は、ただそのクリスタルに巨大な力を持っているという事実。

 そして・・トウリ兄上はその力を悪用しようとしていること。」


「「「「!!?」」」」


「トウリ・・お兄様が・・。」


ミリカはふるふると震えている。  

仕方がないことだ

ミリカはトウリを恐れているからだ


「王子、トウリ様がここにいられるということは

 あの方は一体何をするつもりなんですか?」


ルークが問うと


「その前にこの世界について話すか

 王の世界・・ここには、先ほども言ったように

 強い力を秘めた世界なんだよ」


「強い・・力」


「ありえへんな、そんな力があるとは思へんけど

 でも・・この水の清純さを見れば分る気がするな」


確かに、きれいな水だ。

この世界は暑さも冷たさも感じる

チャプっと音だってする

だけど・・どこか違和感だってある。

もしかして・・この世界は・・。

似せて造られた・・世界じゃないの・・?


「ねぇ・・この世界は、仮とはいうけど

 疑似(ぎじ)世界じゃないの?」


俺がそういうと4つの目が向けられる

視線がいたいけど仕方ない


「なんや、疑似(ぎじ)世界って」


ラミアが意味がわからなさそうな顔をしている


「本物に似た世界のことだよ。ここには太陽だって

 水も暑さも冷たさも感じる・・だけど、本物でもない

 幻の世界」


「・・幻の・・世界」


ミリカが呟く

無理もないだろう。

俺だって最初はこの世界が現実の世界だと信じていた

だけど、違和感があるのだ。


だから、俺が思っていることを話す

それが・・答えだったならば・・。


「もし、この世界にクリスタルという存在があるのなら

 この世界を造ったのもクリスタルによって補うことで

 保たれている・・ということになるよね。

 そうだよね・・クロス」 


すると、ハハッとクロスは笑い


「本当に君は・・子供のようで子供でもない

 やはり、自分が見込んだ通りだ。旬。君になら、話てもいいだろう。

 この世界が幻想世界だと気づいているのなら・・。」


「クロス・・?」


クロスは真剣な顔で俺と向き合う


「我兄のトウリの目的だよ・・。」


バッとクロスは高い山の向こうを見る

見る目がとても厳しいような気がする


「・・愚かな考えを持ち・・そして、実現へと目指そうとする

 その求心的な所は、自分でも認めるよ。でも、兄がやろうとしている

 ことは・・人間も獣人でもっともしてはならないことだ。」


「・・・。」


クロスは、とても厳しい目で


「一体・・何をする気や・・?」


ラミアがおそるおそると聞く

ミリカは知っているのか震えている

ルークは、うつむいている。


「・・・クロス・・?」


彼は口を噛んでいる・・そして、口から血が流れた


「兄上はね・・人の流れに逆らって。

 究極な願い・・死者を蘇らせようとしているんだ。」


「・・・!!」


それは、愚かな考えで

そして、誰もが願ったこと

それは、究極的でもあり

そして、してはならない禁断の証


「だからこそ、自分は兄を止めるために

 動いているんだ・・。」


クロスは、静かにそう言ったのだ

ミリカもルークも青白い顔をしている


どうやら、とんでもないことに

なってきたような気がする・・。


「なぁ、うちら、ただの王位継承を見るだけやったのに

 とんでもないことに巻き込まれたようやな」


「・・うん。」


すべては、必然

俺は、そのとんでも無い話を聞いて

ただ、呆然とするばかりだったのだ・・。



愚かな願い・・それは、トウリが望んだこと。

誰でも一度は願ったことはあるかもしれません

そんな、小さくて・・そして、愚かだけども

トウリにとってはとてもかけがいのない願いです。

では、そんな所で、次回をよろしくお願いします。

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