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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第5章 ~ある学者の忘れ形見~
49/485

少年、疑惑の中に潜むもの

少年シリーズ49話目

次で記念すべき50話目になります。

番外編・・何か書くのか悩むばかりです。

その前に連載をしっかり書くべきですね。

では、どうぞ

帰ってこないと知った日

あたしは涙を流した

そして、その瞬間何かが発動したのだ。

あたしは、動くことができなかった

意識だけが・・薄れていく

長い眠りにつくようなそんな気がしたのだ。

小さな体は床に落ち

少女の意識は・・そこで終わったのだ。


            *****


少女は高慢的に笑みを浮かべ


「正式には、ミリカ・カルディア・ラゥ・クランティア

 獣人にもなれるわよ・・見る?」


ニコっと邪気なく笑う姿に俺はとりあいず


「いえ、いいです」


俺はと首を横に振る

少女は心底に残念そうな顔をして


「残念だなぁ・・」


と呟く

本気で残念そうな様子で少しだけ驚く

そして、俺はため息を吐いた。


俺は、チラリっと、王女の横で倒れた少年に目を向けた


「ねぇ、この人結局誰なの?」


目を回して倒れている少年。

淡い紫が混じった髪をして琥珀の瞳だ。

16歳前後だよね・・多分。

俺の本来の年齢と同じか・・?

そして、王女は倒れている人物に対して面倒そうな顔をして。


「こいつは、ルクウェアあたしの従者よ。今は目を回しているから可哀想だけど・・。」


目を回して倒れている従者にため息をつく

この子が自分で気絶させたんじゃ・・。


俺はジッと見つめると少女はニコリっと笑う

いや、やめよう

なんだか、肌寒く感じたのだ

女・・怖い!!


話変えよう、なんだか怖すぎる・・。

ブルっと肌が震えたのだ。

気を紛らわそうと

とりあいず、そ、そうだ

俺は情動不信を隠しながら話を始める


「ねぇ、王女サマ」

「王女・・というよりミリカと呼んで。サマもいらないから」

「はぁ・・。」


少女はキラキラした瞳で俺を見る

とりあいず、俺といえばただ釈然としないままだ。

ミリカはなんでも聞いてという顔をしている。

とりあいず、聞ける話にしよう。


「ねぇ、王族では、従者がつくのは当たり前のことなの?」

「・・・そうだっけ。」

「え・・!!?」


俺は思わずミリカを見た

早速か・・!!


「あたし、王族のことあんまり知らないのよね・・こいつは

 あたしの従者になったのも小さい頃からだしね・・。」



のびている従者を見つめる姿は、やはり・・。

俺は、気になったことを聞いてみることにした


「ねぇ、ミリカ・・。王族になったのは覚えているの?」


すると・・。


「どうだろう・・?王族になったのは最近・・いや、

どれくらい前だろう3年、4年・・ごめん分らない。」


う~ん、と考えこむ

どうやら真剣に考えているようだ

俺は一瞬思った・・もちろん口には出さないけど

あの、()見かけによらずに・・阿呆?


そして、結論に至り


「忘れたよ。王族に来たときのこと。」


ニコっと邪気なく笑う


「わ・・忘れた」


呆気を取られる一言を告げられる

隣で呆然としている俺と違ってラミアは鋭い瞳を向ける


「・・あの、つかむこと聞くけどな・・あんさん、王女やろ?」


「うん。」


すると、ラミアは腕を組んで


「なら、変やん。だって、年数ぐらい覚えているはずやろ」


「だって・・・知らないし、第一、覚えていないもの」


知らない・・?

しかも・・覚えていない・・?

どういうことだろう・・?

疑惑が疑問に変わる

そして、俺は問いかけようとすると

ヒュッと何かがかするような音がした

パラっと、俺の髪が切られた


「・・・!!」


すべては一瞬だった。

髪の毛がサラサラっと流れていく

それは、槍でしかも俺の方へと向いている


「ヒッ・・。」


声にならない悲鳴を浮かべ

俺は思わず下がる


ラミアはすぐに俺を守るかのように戦闘態勢に入っていた

目を回しているはずの人間は、怒りの目を俺達に向けていた。

憎悪・・それに近い目だ。

ルクウェアは尚も警戒を緩めない

そして、ラミアは無表情の顔で


「なんや?旬に攻撃するとはええ度胸や。」

「・・・。」


ルクウェアは、何も語ることは無かった。

それどころか、警戒を緩めることは無かった


「それ以上、姫様に近寄るな」


ただ一言、警告だ。

ミリカは、そのいきなりの攻撃に対して抗議をする。


「やめなさいよ。彼らは、何もしていないじゃない

 ただ、話をするだけよ?」


すると、ミリカを言い聞かせるように


「駄目。姫様は、これ以上話すことはないよ。

 さぁ、行こう」


「だけど・・。」


「ミリカ様、あの方に怒られてもいいんですか?」


ビクっと震える


「そ、そうね・・それは嫌だわ」

「それはそうでしょう・・では行きましょう」


少年の催促をするがミリカは名残おしそうに旬を見た


「また・・会える?」


俺の方を見た少女は、心配そうに見る


「多分・・確証ないけど」


すると、パァっと笑みを浮かべ


「そう、じゃぁまた会いましょうね。」


ニコニコっと笑って去っていく

その時、強い殺気を感じた

俺はそのビシビシっとする何かに

その視線をたどるとそこには・・。

少年はすごい目つきで俺を睨んでいた。

俺は言うと、ポリポリっと頬をかく


それから、さっさと去っていく姿に俺はため息を吐く


「ふぅ。」

「ふぅん。旬、あんさん、モテるなぁ」

「ラ、ラミア・・?」


そこには、不機嫌なラミアが腕を組んで俺を睨んでいた


「ひぃ、ど、どうしたの!?」


俺はビクっと震えるばかりだ。

なんでこんな目ばかり・・。

ラミアは俺の手を引っ張り


「ふん、さぁ帰るでぇー。」

「ちょ、引っ張らないでぇぇぇ。」


俺は、ラミアがムッとした顔をして

引っ張られながらも

ふと、あの少女のことが気になった


あの平然とした顔

そして、自分がどれくらい王族にきたのか覚えていない様子だった

違和感だらけだ。

隠しているだろうか・・?

嫌、あの様子じゃ本当に知らない顔をしていた。

とりあいず、成果はあったので良かった

それよりラミア、なんで怒っているだろうね。

これ以上言うと・・うん・・やめよう

俺、今のラミアを鎮める力ないや。

      

                     ******


部屋に戻ればそこには、アリア達は、無言だった

そして、俺達を見て

「おかえりなさい、二人共」

「・・・うん。」


そこには、話を終えた三人が柔和な笑顔で迎えてくれた。

そして、アリアは心配そうな顔をして。


「旬、元気ないわね・・外で何かあったようね

 だけど・・ラミアさん、あなたは不機嫌ね」


「ふ、ふん。」


すると、フフッとアリアは笑う


「外はどうだったかしら・・?」


俺は、少しこのアリアという人物像に疑問を抱いたのだ

瞳を見れば黄金の瞳だけど・・なんだか、少し怖く感じた。

何故か、分らないけど・・。


「別に・・何もなかったよ」


すると、アリアは・・。


「そう・・。」


表情を曇らせた。

どうした・・だろう?


「オルフェ、じゃ私たちはもう行くわね」

「・・ああ。」


曇らせたままアリアは俺達に何も言わずに去ろうとする


「ソリドゥス、行くわよ」

「はい・・。」


そして、アリアは俺達を見て哀しそうに笑みを浮かべた


「・・アリア・・?」

「・・ごめんなさい。」


謎の言葉を残したまま、彼女は去っていった

残された俺達・・そして・・。


「旬だった・・かな?」


ソリドゥスが俺の目の前に来て


「・・そうだけど。」


そして、俺の視線が交わせるように視線をあわせて


「君に頼みたいことがある」


「頼みたいこと・・?」


こくりと頷いて


「オルフェのことを助けてあげてくれ」


「え・・。」


いきなりの発言に、俺は驚くばかりだ


「私は、何もできなかった。オルフェが失脚したときも

 本当に何もできなかったですよ・・私は。」


俺は、ソリドゥスの揺らぎが見えた

そして・・。


「ソリドゥス・・俺も何もできないよ・・しかも、俺は子供だよ?」


そう、どんなに立派なことを言えても俺は子供

そして、16歳とはいえ子供なんだ。

見た目も中身も・・。


「・・私は君が子供に見えない。」

「・・。」


「君は、もっと大きな何かに見える。」


俺はもう黙るしか無かった。

「俺が何者なのか聞かないのですか?」

俺の呟きにソリドゥスは笑って


「・・聞く必要性がない。それが私の答えだ。

私は・・これから、アリア様と共に行動する

何が起ころうと・・私たちを信じてくれ」


「・・・。」

「ソリドゥス、早くしなさい」


急ぐ声がする


「アリア様が呼んでいる。私は行くよ・・・

 旬・・私たちを・・いや、やめておこう」


何かを言おうとした・・でも、ソリドゥスは首を横に振る

そして、口を引き締めて去っていった。


「・・・ジン?」

「・・・・。」


黙っているその姿

そして、俺達に笑みを浮かべ


「さぁ、お茶でも飲むか、ラミア手伝ってくれ」

「はぁ・・分かったわ。」



カチャカチャっと音がする中で

俺はただ、一人

何かが起きるような・・気がしたのだ。



  ~小閑話~


扉から出ていったアリアにソリドゥスは


「アリア様、良かったでしょうか」


ソリドゥスは心配そうに見つめた

アリアは、ため息を吐く


「・・・いいのよ。決断はするべき時はすでに見えている

 人形王女であるアリスティ・アルティア・ラゥ・クランティア

 私たちが私たちであるために戦うしかないわ」



「・・・終わらせるですね。」


「ええ・・絶対・・奴らを許しはしない。」


無表情で前を見る姿は凛として美しいが

だが、どこか気迫が違う

静かなる怒り

そして、憎悪


「・・・それが、貴方の答えなんですね?

 いいのですか・・あの少年に何も言わなくて」


すると、アリアは一瞬だけ浮かべた

あの子供のような・・奇妙な少年のことを。


「・・・あの子は、子供のようで考えは大人。

 巻き込ませたくないわ・・私たち

 獣人の争いには・・。」


「・・。」


「・・・さぁ、行きましょう。」


「ええ・・。」


そして、去っていく

そして、その時

ソリドゥスは何かを感じたのか


「アリア様・・・!!」


「え・・・。」


そして、その叫びを聞くこともなく

振り返ることもなく・・暗転する。




「旬・・?」


「いや、なんでもないよ。」


何かとても悪い予感がする。

それは、王宮を覆う何かの序章だった。

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