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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 五幕 アルタール  ~賢者のいる国~
482/485

少年、正義と正気との狭間の中で

長らく連載ストップしていましたが、ようやく文章をまとめることができたので

掲載します。

今回から新キャラ続々登場です

それと、ごめんなさい。編集した時点で気づくべきだったのに改めて内容が変な風になっていたので

慌てて直したしたので読みやすくはなったと思います・・。


ラミア達は、現在別行動中だ


どうやって侵入しているのか


今のところ騒ぎにもなっていないし

多分、ラミアのシーフの能力を使って潜入しているだろうと思う


ラミアの話では何か情報がつかめればよい方だと言っていたけど・・。


「で、結局僕たち、何をするべきなの?」


千里がモグモグっと口を動かしながら旬に問う


「情報収集だよ」


「それはわかるけど」


千里はこの異質なパーティの中、すべてが怪しく感じているようだ


「なんかどの人も怪しい人に見えるよ

 それになんか異様だと思う

 なんていうか色んな思惑がありそうな気もするよ」


「あ、千里もそう思う?」


「そりゃ、そうでしょう・・旬、僕をなんだと思っているんだか」


そりゃ、腹黒い・・いや。

そんなこと言ったら千里怒る


げんなりしている千里に旬は苦笑する


「あ、これうまいね」


旬は肉のステーキっぽい料理を皿いっぱいに盛り

それをパクパク食べる


「スルーしているよね?旬」


千里のジト目から逃れるように俺はごまかすように

味わいながら笑う


うまーい


旬は幸せそうに笑う


「旬、君は元気だね」


げんなりしていた千里は呆れていたけど

穏やかに笑っている


「あははっ。それが俺だから。」


「・・僕のことスルーしたくせに」


「あ、ご、ごめんって・・けして千里のことはら・・

 いや、なんでもない」


「腹黒いと思ったでしょ・・ぷっ。」


千里は笑う


年相応に笑う千里を見て旬はうれしくなる


「千里・・笑うようになったね」


「えっ・・。」


旬はステーキを食べながら飲み込む


「あの時の邂逅・・千里は表情も声もなかった

 記憶・・なかっただろう?


すると千里はコクンっとうなずく」


もう思い出すあの時のことだ


千里は記憶喪失の上


声もでなくて


そして表情もなかった


久しぶりに会った時は千里だとは気づかなかったくらいだ


俺は、そんな千里をどうしても元に戻したかった


だって、友達だからじゃない


幼い頃俺は千里に救われた


”   さん”がいなくなって


俺は悲しくて仕方なかった


だけど、千里はそんな俺の友達なってくれた


悲しい時も


辛い時も


楽しい時も


嬉しい時も


どんな時でもまるで双子ではないけども


兄弟のように楽しく遊び


そして喧嘩して


親友の千里があの状態になったのが


俺にはどうしてもそのままにしてあげることができなかった



だから、あのとき・・俺は千里に戦いを挑んだ


結果・・今がある


「俺は、千里たちが笑ってくれるなら自分のしたことは

 後悔ないと思う・・でも・・。」


「旬・・?」



一つだけ


とても大きな後悔がある


それは・・。


”さよなら”


おれは一つの声を思い出していた


赤い目のアイツは助けられなかった


同じ異世界からきて


鴉ような人だった


初めて会った時は、その強い狂気には理解不能だった


それは、倒すべき敵だと俺は認識していた


でも、違った



確かにクレーエは狂気の人だったけど


あのとき俺は見たのだ


本当のクレーエを


孤独な瞳をしていたけどとても強い想いを抱いていた人だと


そして、俺を守るように

もしかしたらそうではないかもしれないけど


でも、立ち向かっていった


結果、それが最期だった


正直、クレーエがしたことは許せないことだ


たくさんの悲しみだってあった


でも、でも


それでも


死んでほしくはなかった


戦いの果ては何もなくて


残ったのは・・後悔というズキズキした気持ちだけが続く


「クレーエのことでしょ?」


「うん」


ニルという神と一緒に消えた


あれは良かったことなのか


悪かったことなのか


俺は、正直いえば悪かったことだと思っている


人は救えない時がある


それに痛感したのだ


手からこぼれ落ちていくのだ


ボロボロっと

どんなに頑張っても手からこぼれ落ちるのは


助けることができない


救えないというこの悲しみだけじゃない虚無感


この無力が


今でも忘れない


クレーエ・・俺は忘れることなんてない


千里はポッリっと旬に話す


「・・・僕はあいつのことあんまり知らない

 どこからきたのかどこで何をして

 ここまできたのか。」


千里ですらクレーエの事何も知らなかった


知る機会はもはやないだろう


もうすべてはブラックボックスへと消えた


もう会うこともない・・。


でも、千里は少しだけ知っている


「千里も知らなかったのか。なら、最初からああだったの?」


本名すら知らない


彼が何者であったのかそれを知る人物はもう限られている


すると、千里は首を横に振る


「クレーエに至っては本名については一度本人に聞いたことはある

 だけど教えてはくれなかった・・そして、やつは普通だった

 いえば正解だと思う?」


「えっ・・普通?」


それは驚く程


俺が知る人物とは遠く離れたクレーエの話だった


「そうだよ。普通だった。どこにでもいる人

 でも、正義感は独特でありどこか危うい存在だった

 かくゆう僕は・・いや、僕達は、そんな

 クレーエに救われたわけなんだよ」


「えっ・・救われた?」


千里は思い出す


殺されそうになって


助けが呼べなくて


もう旬や家族に会えないという絶望の中で、

少年・・千里は、鴉に出会った


それは、遠い過去のようで


そして昨日のことのような話


「そうなんだよ。僕が落ちた時は、それは荒れた世界でね

 僕、殺されそうになったわけなんだよ

 なにせ、今の旬のように子供の姿でさ

 思うように動けないわけで」


ハハハっと笑う千里


「うわっ・・で、どうしたの?」


「で、そんなときにクレーエが助けてくれたわけで。

 当然、クレーエも子供の姿・・でも、強かったわけで

 僕は驚いたよ」


千里は懐かしそうに笑う


あの日は確かに恐ろしかった


でも、救ってくれたのはクレーエだったのだ


「へぇ・・意外あのクレーエが千里を助けるなんて」


そう意外なのだ

あの狂人が人を助けるなんて・・!


「見えないだろ?でも、現にカズラ君も救ってくれたんだよ。

 クレーエは」


「本当にそんな人間がなぜ・・?」


本当にそうだ


あんなに狂人になる理由がわからないくらい


「さぁ、どんな理由で助けたのかは今でも知らないけど

 でも、元々クレーエは最初から狂った人ではなかったんだ

 でも、脆い部分や危うげな存在であった

 ・・内面の限界が超えたんだ」


「内面の限界・・?」


「・・精神の部分さ。クレーエは独特の正義感があった

 その正義感があっても脆い部分があった

 その部分が崩壊したのさ」


千里は・・その時のことを忘れないのか

痛ましい顔で語る


「そう、いろいろあったんだ。そのせいで

 クレーエはそのうち壊れたんだ」


その生い立ちは俺は知らない


何者であったのかすら


俺は、クレーエの本名も知らない

名前すら知らないままアイツは消えた


何も知らずに


今千里の言葉で改めてクレーエのことを別の人物のように

見えてきたのだ


「千里・・。」


「僕も人の事言えないよ。僕も壊れた。

 ・・カズラ君だってそう」


「カズラも?」


千里はうなずく


「いろんな事があった。僕たちは人としての感情を保てない程の

 追い詰められた」


「千里・・。」


旬は唇を噛み締める


俺は、なんで千里たちと一緒に異世界を渡る

ことができなかっただろう


それだけが悔しい


その様子を旬を見て千里は食べるのをやめて


「旬、君はいつも過去のことを思って

 いつもここすればよかったとか思うだろう?」


「・・うん」


「それは違うよ。旬」


「えっ・・。」


違う・・?


「僕は、旬の心の傷を増やさなくてよかった思っているんだ。」


千里の言葉に俺はズキっとした


千里はモグモグっと食べているのだ


「俺はそれでも構わないのに・・」


「それでも、僕は親友の君がこれ以上苦しんでほしくなかった

 それだけのことだよ・・。」


俺はほんとうにそれでも構わないと思ったんだ


痛みを共有できるなら

きっと、何かが変わっていたかもしれない


でも・・それは、本当に・・。


旬は悩む


それは傲慢ではないのか?という渦巻くのだ


「・・・だから、僕はそんな旬だから

 親友でいたいと思っているだよ」


千里は旬の頭をなでながら笑う


旬は不思議そうな顔をする


「?」


「ははっ。旬にはわからないか。」


千里はニコニコっと笑うのを見て旬には


千里は不思議なことを言う


俺は・・俺だから・・か


旬は、食べ物を飲み込む


今もあの時のことを思い出せばグルグルっと自問自得する


答えを出せないままなのだ


そんな俺は千里たちの救いになっているのかわからない


だからこそ、次は間違えたくない


旬はギュっと片手を握りしめた


その時・・。


キュィィィン


何か感知したのか旬は辺りを見渡し


音か?


いや、何か今発動したんだ


旬は、食べるのをやめる


「旬・・?」


千里の声が聞こえていないのか旬は周りをきょろきょろと

視線を動かす


皆怪しい・・。


その一言しか出ない


でも、なんだろう


この嫌な


それに、なんか妙な感じがしたのだ


この会場そのものに何かあるかのように


覆う何かを旬は感じた


何を発動したのか旬には感じとれないが


周囲を見渡し


そしてカズラを見た


カズラからか・・?


カズラは、あいからずなんか芸をして観客を楽しませている


わずかながら闇魔法を使う気配もある


微量だけど・・でも、コレではない


もっと、別の何か


そう・・よくない何かの気配だ


でも、どこからなのかわからない


何かに覆われそうなこの奇妙な感じ


旬は辺りを研ぎ澄ませようかと考えた瞬間


「旬!・・どうしたの?」


旬は、千里に囁くように小声で話す


「妙な感じがする」


「妙な感じ」


「なんていうか、よくない気配を感じる」


「それは、カズラ君が使う・・闇の力?」


「わからない。なんていうか、よくわからない何かが感じるんだ

 ソレが、なんなのか見当がつかなくて」


「・・・何か・・。」


俺は、そのわからない何かを調べないといけないような気がする


それには情報が必要だ


しかし、目の前にいる人々は全員仮面をつけているからか


余計にわからないのだ


仮面をつけるだけでこんなに印象が変わる


なんか、皆怪しく見えてしまう


旬はうーんと悩む


今の俺は明らかに子供の姿だ


忘れられているが、子供だ。


必要以上に話しかけたら怪しまれる


さて、どうしよう


千里に頼んだほうがよいかなぁ・・?


「どうした?」


「いやさ、この姿の俺が話しかけたら怪しまれない?」


千里は、上から下まで旬を見てうーんっと考える


「子供の姿じゃねぇ・・うーん、僕が代わりにしようか?」


「いいの?」


「うん。情報収集は大事だよ。旬は隣で見ていなよ・・ん?」


千里は何かに気づいたのか・・やがて


「・・でも、案外、その必要もないね。」


「どうしたの千里?」


千里はメガネをくいっとあげて

ニンマリと、笑う


「旬、大物は意外と早く現れる

 どうやら、嵐はすでに起き始めているようだね」


千里は、何やら向こう側をみてる


「えっ?」


「見てよ。旬・・僕達のお目当てが同時に現れる。

これは、願ってもいない機会だよ。最高の情報源」


俺はとある集団をみた


向こうから流れるように集まる集団


その集団を見るなり道を譲るかのように避ける人々

自然とそういう決まりでもあるかのように


誰も文句も言わずにその集団の行進を

眺め、そして、ある者は尊敬を


また、あるものは、畏怖をこめて


その圧倒的なオーラをもって


その場を制圧するとある集団がいた


千里はその集団を知っているのか


「教会そして、賢者だ」


「・・・!!」


あれが・・


そこには、大きな2代勢力だった


一つの勢力は教会


そこには、仮面パーティなのに異質だ


皆着替えもせずに修道服


だが目元には、仮面をつけている


その先頭にいるのは、やたらゴテゴテした宝石の指輪をたくさんつけている

のがシスターや神父を束ねるリーダーなんだろう


修道服に不似合いの指輪


そして、青の瞳に金髪ときた優男でそして、若い男だ


だけど、一番印象的なのはミトラをかぶっている


おそらく高位的な存在なんだろうと旬は思う


「あれが・・?」


すると千里の瞳は鋭く射貫く


「・・・・そうか、司教になったのか

 ずいぶん、出世したようだ」


ギリっと口元を噛んでいる


まるで、何かを耐えるかのように


「千里・・?」


「・・・。」


千里は顔を隠すかのようにうつむく

その千里の姿を見ながら


千里どうしたんだ?突然、様子が変わった


旬の視線の先にいる・・教会の司教を見た


旬はその人物を観察していた


どこか、違和感を残す司教だ


こいつらからか?


この妙な力の源は・・?


旬は断言できない


なぜなら、その違和感に答えがでないのだから


そして、その集団を睨むようにきたのは・・。


もう一つの勢力は賢者だ


50代くらいの男性


白髪で意思の強いアメジストの瞳をしている


賢者はまるでゲームにでてくるような黒い服装をしている


とても大きな杖を持っていて


振りかぶるだけでもダメージ出そうな杖だ


彼らは、パーティにうまく溶け込んでいたようだ


次々と、賢者の後ろに牽制するかのように現れる


互いに睨みあう様子は異様だ


「こわっ。何、この空気」


「・・ピリっとするね」


空気がピリっとまるで電気が走っているみたいで

触ると感電してしまいそうな空気だ


すると司教は目の前の集団を見ながらニコヤカに笑う


「そこにいるのは、賢者様ではありませんか。」


「司教か・・息災には・・・みえるな」


「はい。ここには5年になりますか。ですが初めて会ったのは

 10年前・・長い付き合いになりますねお互い」


「・・・。」


にこやかに笑う男に賢者はその10年と5年の言葉にピクリっと反応する


「先月、お会いしたばかりですが、どうやら元気そうですね」


ニコヤカに笑う男に・・賢者はしかめ面だ


そして、睨みつける


「お前を呼んだつもりなどない。

 ・・どうやってここに入った?」


そう問いかける


えっ・・?


招待客ではないの・・?


旬は目を丸くする


「ふふっ・・ツテ、あるもので」


「お前を呼んだはずがないのにな?・・ふん、裏切り者がいるんだな」


「ふふっ。それはそれは・・。」


ざわっと招待客が揺れる


呼んだはずではない?


そして、裏切り者・・!


なんていうか


睨むあう両者


そこには、大きなうねりを俺は感じたのだった

ついに、賢者と司教の物語が動きます。

千里とカズラ・・この章に関連していきます。

キーワードは、8年前の戦

賢者に至っては・・・?

次回は、5月3日に掲載予定です

次は、教えらせには載せないので順次更新していきます。





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