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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 五幕 アルタール  ~賢者のいる国~
477/485

少年、完結した国

更新しました。

冒涜はないです。

なぜなら、物語は動き出したので


振り返るとまだ手をふっている神父の姿が見える


旬は手を振って


来た道へと戻っていく


「ねぇ、ウッズさん。完結した国ってどういう意味?」


「物語にも終わりがあるッスよね」


「うん。物語の終わりだよね。」


「・・それをそれを国を例えたようなことッスよ

 完結した国・・つまり、終わった国ッス」


「終わった国」


この国が終わった国・・?


それはどういう意味なんだろう


「ツアイトさんも同じように言っていたよね

 終わった国」


あんな恐ろしい顔で


憎悪を含んだ声で


"何度悲劇を起こった

 何度喜劇を見たか

 何度・・・何度"


"私は繰り返しつづけなければならないのか

 この絶望を・・あなたたちは知らないから

 言える"


"・・・・君たちは、知らないのだ。この国はもはや終わっていたんだ"


カズラの口から語られた言葉といえ


その時は絶句し、そして・・旬の耳はまだ残っている


ウッズは、立ち止まって


どこか彼方を眺めている


「・・旬、妖精族がいたことは知っているッスよね?」


「うん。確か今はいないと。アロネの森が今は魔獣の住む

 森だって」


ここには俺も知らなかったが


妖精族がいたそうだ。


しかし、今はもはや


「そうッス。有名な種族ッス・・今は魔の森と呼ばれる

 かっての妖精族の森は・・妖精がいなくなったせいで

 森は荒れ、水は普通ではなくなったそうッス」


「うん、聞いてるよ」


「魔物を住み着いて今では立ち入り禁止ッスけど」


ラミアとカズラ君が行ってくれた


手強い獣がいたそうだ


俺はどんな獣なのか会ったことはないが


ラミアが言うと


知らないようで知っている獣やったよ


と言っていた


その意味はちょっと分からなかったけど・・。


「自分も噂しか知らないッスが

 昔、この国は、妖精と共生する

 国だったッス」


深い森の中には妖精が国の繁栄をもたらす


もっとも、妖精に愛された国


繁栄が許された国


と言われていたそうだ


「この国にはとある妖精のお姫様がいたそうッス」


「妖精のお姫様・・?」


「噂では、とても強い力を持っていて

 妖精では珍しく錬金術も使えていたそうっす」


「本当に妖精なの?それ」


妖精なのに錬金術それは、すごいどころの話ではないよ


「あー、確か半分が妖精の血を受け継いだ人間と聞いているっスよつまり、妖精と人間のハーフッス」


「それは、またすごい血だね」


「自分もそう思うッス。」


旬は町並みを眺めながら答える


ウッズはだけど・・寂しそうに悲しそうに


「だけど、もう8年前に亡くなっているッス。」


「えっ・・?」


「8年前・・!」


どうも、ここ旅をしていると


8年前というキーワドが出てくる


「詳しいことはわからないっスが、当時では深く話題に切り込むことを禁じたぐらいッスから」


「なぜ?」


「賢者が命じたそうッスよ」


「え・・なんで?そこに賢者が出てくるの?」


ウッズは言いづらそうに・・。


「噂では、賢者の娘だったそうッス

 亡くなったのは」


旬は西にある賢者の城を眺めた


「・・なぜ、亡くなったの?」


ウッズは首を横に振る


「わからんッス。ただ、賢者が一切娘について深追いするのを禁じる程ッス」


「深追いを・・なぜ?」


なぜだ・・・?


旬は違和感を感じていた


「自分も父からその話聞いたッス。父はこうもいっていたッス」


 ”あんなにも溺愛していた娘の死に関して深追いを禁じたの        

  はおかしな話だ”


 ”きっと、我々には知られていない何かがあるだろう”


 ”その何かが・・知ってはいけないようなそんな気がする”


珍しく神妙な顔で

母と自分に話していたのを今でも自分は覚えている


幼い自分には内容の意味はあまりよくわからない


でも、今の自分ではわかる


「溺愛していた・・娘」


旬は、見えない何かに覆われている

何かを感じ取った


しかし、それがなんなのか・・違和感だけが残るだけだ


「自分は会ったことすらないッスが、父は賢者とは旧知の仲

 だったッス。だから、よく知る者としての発言だったと

 今では思っているッス」


どういうことだ?


いろんな複雑に絡んだ何かに


旬は深く考え込む


しかし、答えが見つからない


なぜなら、材料がないからだ


答えを得る材料が今・・ここにはない。


「・・・シュネーもまた、完結してた国ッスね。

 王が死んで、聖女が国を治める。」


「・・・そっか。」


シュネーという国は王はいない


今は聖女が国を治めている


だからなのか俺自身は


王様の事何も知らない


「ウッズさんは、王様を知っているの?」


「そりゃ~、祖父ッスからね」


祖父・・!

あ、そうか


確か、ウッズさんのお母さんは・・王女様だ。


ウッズさんのお父さんは確か・・公爵家の方だ


「あ、なるほど」


「母方の祖父に会えたのは、たったの10数回だけッス」


「10数回・・それはまた少ない」


「ああ。子供のころあったことあったッスね。

 自分があったころは、すでに病床だったッス」


「病床・・そんなに身体が弱い人だったの?」


「・・・あるッスよ。持病を抱えていた人だったッス。

 いつも、ベットで寝ていたことが印象的な王様だったッスよ」


幼いウッズが聞く


どうして、寝ているの?


それを聞いた王の優しい顔が・・ウッズは忘れない


私には、大昔のツケが今・・きているんだよ。


ツケ?


そうだよ、大昔のツケだよ。


王は皺だらけ手でウッズの頭を優しくなでる


ウッズはまた思い出していた


病床の祖父が生前話していたことを


いろんなものを背負うのが王だが背負いすぎたな・・私は


背負うことは悪いことなの?


幼いウッズが問いかける


ウッズはまだ幼いな・・そうだな、背負うことは

運命を向き合うことなんだ。


運命・・?


そう、わたしは・・その運命の流れに逆らえなかった


笑いながら


ウッズの頭を撫でた


それ以上のことは聞けなかった


優しい手だった


そして、同時に・・愛の手だった。


あるとき・・もう王はだめだと聞かれた


ウッズは病床の祖父の傍にいた


最後もまた自分の頭を撫でてくれた


今度は・・冷たい手


そして・・別れの手だった


国が、終わることを知らないまま


王は静かに・・息を引き取った


父に見送られ


母に見送られ


そして、自分に見送られ


たくさんの人に見送られ


王は・・旅立っていった


その・・半年後


あの大事件がおきたのだ


父も母も死に


ウッズ一人残されたあの・・記憶


恐ろしい記憶だった


だけど同時に思い出されるのは


祖父の温かい手


そして愛の手だった


祖父である王に愛されて


父や母に愛された記憶はあるかぎり


ウッズはこれからも生きていく


だけど・・思い出すのは


王のツケの話


「ツケ・・?」


コクリっとうなずく


「自分はそのツケの意味が分からなかったっす

 確かに、王は幸せだけじゃない苦しみだってあるッス

 でも、あの時のあの方の瞳は・・それだけじゃないような・・。」


ふと、旬は思い出す


少女と青年王の写真を


ずいぶん古ぼけた写真だった


あの写真からどういう経緯で撮られた写真なのか


・・・。


考えてもわからない


「ずいぶん、昔のことッスけど。

 なんか、本当に最近のことに思えるッス」


「・・・そうだね」


「あ、元の道に戻ったッスな。そのまま、宿に戻るッスか?」


「近くに公園があるから。そこで何か食べよう」


「そうッスな、宿に帰っても誰もいないッス」


「そりゃ・・そうだろうね」


ラミアのあの形相をみれば

無理もない


恐らく夕方まで戻ってこないだろう


哀れカズラ君


旬は今頃荷物運びで大変な目にあっているだろうな

と想像している


旬たちは、近くの公園に向かい


いい匂いする


旬は近くのベンチに向かうと


「あ、旬、何かのもうッス」


「あー、うん」


「あ、パンが売っているッスな。買ってくるッス。

 旬は、ジュースなんでもいいっッス?」


「うん」


ウッズは食べ物を買いに露店に行った


旬はベンチに腰をおろして


ふぅっと息を吐く


思ったより、この国の事情


重いと改めて感じた


旬は考えをまとめることにした


どうも旅を続けていると


8年、5年というキーワードが出てくる


まず、俺が知る限り8年


どう考えても大戦があった時期だ。


そして、5年


教会がこの国に動き出した時期であり


そして、ウッズさんの国が崩壊した時期だ。


どうも答えが見つからない


おまけに疑問にしていた謎は

解けるどころか深まるばかりだ


その時


ベチン


と何かを弾いた音がした


「ん・・?」


旬はその隣のベンチを見ると


隣では、なぜか楽器を壊したあの時の青年がそこにいた


じーっと壊れた楽器をみている


ベチン、ベチンと壊れた楽器の弦の音をだしている


「パウル・・さん?」


すると、旬に気づいたパウル


「また会えたね。うれしいよ」


ニコっと笑ったのだった。

次はパウルさんの話をして賢者のパーティに旬は参加します。

お楽しみに

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