少年、揺らぐ心
久しぶりに連載再開です。
では、一発目をどうぞ!
大きく
大きく
何かが変わろうとした
出会いは、一度だけ
だけど、その一度だけの瞬間が
・・・人を変えるキッカケになることを
わたしは知った
そして、また
そのキッカケが
オソロシイ結末を迎えることになることも
わたしは実際に
その経験をしたのだ・・。
その結末の向こうに待っていたのは
明るい未来なんかじゃない
薄暗い
闇のような・・・絶望だった。
*****
アゲハと別れた後
俺たちは宿に戻るために・・歩く
ザワザワしていて、あんな出来事があったのに
気づきもしないのだ
夕焼けの空はすでに暗く染められ
街頭は、ポォ、ポォっと音をたて
少しずつを光を灯していく
「なぁ、こんなに普段と何も変わらないのにな」
カズラは、ざわざわした街を眺めている
ただ、夜だからか、皆自分の家へと帰る人々の姿がちらほら見えた
「突然どうしたの?」
「・・・皆普段通りだ。」
立ち止まってカズラは自分にぶっかることもなく歩く
人々をみている
「・・・普段通りがどうかしたの?」
俺は立ち止まって
カズラを見た
「余計に俺は恐ろしいと思うよ。
普段通りだから、人がどうなろうと人は動きつづける
まるで・・俺たちには心がないようなそんな気がするんだ」
カズラは悲痛な顔になる
人が冷たく感じるのは、俺も同じだ
日本にいたころに感じたことがある
悲惨なニュースがあっても、人は忘れる
そして、何事もなく・・ふつうに生活しているのだ
それが、冷たい・・という意味になるだろう
それが、異世界でも同じようにカズラは感じているのだろうと思う。
「・・そうだね。俺たちは常に、歴史の裏方なんだよ。カズラ」
「・・!」
「俺たちは個人だ。それも、誰にも知られることもない人間
だよたとえ、どんなに偉いことをしても記憶に残ることな
んてないかもしれないんだ。そういう意味で言えば・・・
冷たいかもね」
俺は果たして有名になりたいだろうか?
有名になって勇者や英雄になりたいのだろうか?
答えは・・否だ。
カズラは旬の答えに苦そうな顔をしている。
「旬」「でも」
「英雄や勇者になれなくていい・・俺は、今あるこの現実に
立ち向かいたいんだ。それが、結果的にそうなったとした
ら・・それはそれで味があるような気がするよ」
俺の行動で何が変わるかわからない
でも、俺は・・結末を信じたい。
結末の先にある・・・未来を。
「・・・ははっ。オマエ、やっぱ俺の見込んだ男だよ。
・・そう、そうだよな」
カズラの中で・・何かが生まれ・・変わっていったのだ
「俺な。本当は、この世界にいる意味を感じたかった。」
「なんで?」
すると・・カズラは・・思い出し笑いをして
「・・・昔、助けたかった召喚士のねーちゃんがいたんだ。
すごい人でな。あの千里が師匠って慕っていた人なんだぜ?」
「!」
「あの人がこの世界にいる存在意義を千里と俺にもたらしてくれた
最高の人だったんだ」
「・・・聞いているよ。千里の師匠のことは」
そう・・千里の師匠は、とてもすごい人だったらしぃ。
千里はその人を尊敬している
今も変わらず
しかし・・その人はもう・・!
凄惨で悲惨な最期を迎えたと千里に聞いている
「・・・ああ。俺は、結局間に合わなかった助けられなかっ
たあの日は、異様な日だった。」
カズラは・・あの日を思いだす
たくさんの召喚士が死んだ日
・・そして、千里が・・感情を失った日
「召喚獣たちが騒いで・・そして・・村も異様な空気だっ
た。俺は・・あの日の光景を忘れねぇよ。」
友は変わり
そして、すべてが変わった日
カズラは・・その日をけして忘れない
「・・・そう。」
俺は何も言えなかった
そこには俺は・・いなかったから。
「・・・・俺は、その後、修羅へと堕ちた。それが、俺の結
末だったのさ。・・。」
その言葉は悲痛だった。
忘れられない思い出と共に
カズラの中で生き続けていく記憶なんだろう・・。
「・・・ごめんな。カズラ」
俺は謝ることしかない
「・・・謝るな。オマエは悪くないのだから
・・たまに、俺思うだわ」
「?」
「・・・旬があの時、俺たちと同じように異世界に渡ってい
たらどうしてたんだろう・・ってな?」
旬はハッとしてカズラをみた
「さぁ、帰ろうぜ。俺腹減ったー」
と陽気に笑うカズラ
旬はその背中を眺めることしかできない
その後ろ背中を眺めることが・・今の自分はやりきれなかった。
どうして、俺は皆と同じ時に飛ばされなかったんだろう
もし・・同じ時に飛ばされていたら
俺はやれることがたくさんあったんじゃないか・・?
と思う
でも、どんなに、渇望しても無理なんだ
時は戻せない
そうなれば・・・俺がするべきことは・・何だ?
「・・・俺は、なんの意味があってこの世界にきたんだ?」
旬は・・西の塔を見上げた
そこには、賢者の屋敷が視える
ずいぶん明るく・・そして、美しい景色が広がっているだろうか
華やかな感じがした
その時・・。
「ん?」
今何かとんだ?
西の塔の方だ
男?
女?
どっちかわからない黒ずくめで見えない
一瞬、星を崩したような・・瞳と目があったような気がした
それは、ほんの一瞬だと思う
クスっと笑ったような気がしたのだ
「どうした旬?」
「・・・あ、何でもない」
旬は、ふるふるっと首を横に振った
今のは・・・なんだ?
幻影?
それとも・・・?
そんなことを考えていると
「旬。お帰り。」
どうやら、俺は・・気づけば宿の前に着いたようだ
「ラミア」
そこには・・・。
「旬。待っていたッス」
「ごしゅじん。」
「待っていたよ。旬」
それぞれが待っていてくれたようだ
どこか、皆安心したような顔している
代表してラミアが旬の頭を撫で
「短いうちにいろいろ考えたようやな。旬」
「ラミア?」
「・・ふふっ。お腹すいたやろ?」
「え・・あ・・」
その時、グ~っと、お腹の音が鳴いた
「な、ごはん食べようや」
ニコっとラミアは笑った
優しい笑顔だ。
たまに、ラミアは姉のように感じる時がある
俺には、兄弟がいない一人っ子だから
なんだか、こそばゆい気持ちになる
「うん」
「あれ?ラミア、俺には?」
すると、ラミアは、顔を般若のように変え
「あんさんは、旬をあっちこっち連れすぎや!!
というか、なんであんさんは汚れているんや!!」
すると、千里がカズラを上から下まで眺めて
「本当だ。どうしたの?ドロドロだね。」
「あー、ちょっとな。へへっ」
「風呂に入るッスよ!!」
「ええー、俺このままでいいと思うけどなー。」
「何言ってんの。カズラ君。さすがに衛生に悪いから。」
千里ははぁ、っと呆れる
「しょーがねぇな。ほら、旬、おめぇも行くぞ」
「あ・・俺も?」
「当たり前だろ?ってか、お前も汚れてるぞ?」
ニヤリっと笑ってカズラはさっさと宿に入り
風呂を目指して歩く
「そんなに、汚れているの?俺」
あっちこっち服を眺めているとそんなに汚れてないと思うよ俺
「なに、のんきなの。旬。ほら、行くよ」
千里に引っ張れる旬
「なんで俺までー」
実は俺・・風呂嫌いなんだよ!!
風呂の水・・頭を洗うのがものすごく嫌い
いつも鶴の行水如くだ。
逃げようとする旬に千里は旬の腕を取る
ズルズルっと引きずられていく旬
「ごしゅじんはふろきらいだからなー。あにまもいくー!」
「旬の風呂嫌いも困りもんやな」
ため息をはくラミアだった
俺はそのあと、風呂に強制的に入れられた
正直嫌だったが
汚れているとなると・・仕方がなかったのだ
その日の夕飯は・・
おいしくいただいた。
その日の出来事は・・その時だけ忘れることができた
美味しい食事と皆の笑顔が・・。
俺を癒してくれたのだから・・。
その後、部屋に戻り
旬は今日あったことすべて話す
カズラを追いかけた先にあった突然の奇襲
そして出会った少女・・アゲハのこと
そして、訪れる沈黙
「そか。面白い出会いがあったんやな」
「そうッスか。自分たちはうだうだと考えている時にそんなことが。」
俺たちが・・あった出会いはきっと、何か意味があるだと思う
ただ・・あの奇妙な・・
「・・そういや、旬。賢者のパーティか・・明日だね
僕、ドキドキするよ。」
「あれ?明日だったの?」
「そうだよ。旬。」
「忘れていたッスか?ほら、この招待状貰ったッスよね」
「あ、そうだった」
そういえば・・アルカさんからもらったな。
旬は・・まじまじっとその招待状を見た
丁寧な言葉で記された白い招待状だ。
ジッとみていると・・ラミアがふと何か思い出したのか
「あ・・そうや、あんさんにいわなあかんことがあったな」
「何ッス?」
不思議そうにウッズが聞くと
「うちな、これでも情報やねん。」
「そういえば、そういってたね。」
「そや、でな。この国に関して妙な噂話を聞いたんや」
「妙な・・噂はなし?」
「そや、奇妙な噂や」
それは、ラミアが話す不思議で不気味な話
奇妙で・・そして、妙な・・噂話だった。
ラミアから話すこの国の奇妙な噂とは?
では、次回もお楽しみに




