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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 五幕 アルタール  ~賢者のいる国~
472/485

少年、見守る人

お久しぶりです!

細々と生きております。

というわけで、今回から新キャラを中心にして

物語の核へと始まります。


変わった


変わった


この国は変わってしまった


青年は今度は・・・夜の夜空を見上げた


そこには・・星も一つもない


闇がただ・・ただ


広がっているだけだった。


青年は・・・また。


星くずのような・・・涙をひとすじ流す


それは・・喪失


もう戻りもしない


日常への涙だった


                    *****


「見守る人・・?」


聞いたことのない役職だ。


というか、何ソレ


「代理?」


そうつぶやくと、少女は緩く唇を動かす


「そう。今、その人がいないから。わたしが代理で

 お役目をこなしているの」


淡々と答える


「お役目ねぇ・・あんた、賢者派や教会の連中じゃねぇのか?」


怪しむかのように悪態をつくカズラ


ふるふるっと首を横に振って少女は否定する


「・・・わたしはそんな低俗な奴らと一緒にしないで。

 ・・まぁ、限りなく低俗なのはわたしも・・か」


どこか何かを諦めたかのように

淡々と・・喋るだけだ


「・・?」


「君が・・この結界を?」


こくりっとうなずいた


「なぜ?」


そう聞くと・・。


「・・・この国の異変に気づかせないため

 わたしはそのためにいる。」


そう・・話す


「いへん?」


月が・・うっすらと雲から出てくる


・・・少しずつ周りが明るくなっていく・・。


少女は・・幻想的な雰囲気で・・ただ、淡々に


「・・・どうせ、ほとんどの人は気づいてはいないでしょう。

 ・・でも、そうしなければこの国は壊れてしまう」


旬たちは一瞬沈黙した。


「「はっ!?」」


「・・ふふっ。意味が分からないのも無理ないか。

 だって、貴方達は知らないから」


知らない?


この子は何にたいしてのことを言っているんだ?


「どういう・・こと?」


「この国を巣食う闇を」


瞳の奥で・・薄暗い・・闇の瞳を今


俺たちは少女の瞳を通して・・見てしまった


「・・・あんた、知っているのか?」


戦慄している旬をみたカズラは


旬の代わりにおそるおそる


少女に・・問いかけた


「もちろん。わたしは何年も、何年も

 この縛り付けられいるのだから

 闇を知らないなどありえない。」


それならば・・この少女は俺たちの前になぜ


現れたんだ


「忠告・・・のためにきたのか?」


すると・・こくりっとまたうなずいた


「・・・教会には気をつけなさい。」


「えっ」


「奴らは、危険なモノを飼っている。」


「危険なモノ・・?」


「答えねぇのか?」


「答えることができないわ。なぜなら、見守る人・・たとえ、

 代理であるわたしがこの国の秘密をペラペラっと話すことは

 ・・禁止されているから」


「制約があるの?」


「・・・そうね。あるわ。私には10の制約があるの。

 ・・その制約により喋ることはできない」


その途端、俺は見てしまった


少女の手足に・・・鎖が・・!!


まるで蔦のように


逃げられないように・・・。


ごくりっと息をのんだ旬


なんか・・想像絶する・・世界のような気がする。


「その一つがその国の秘密だというのか?」


カズラが問うと・・うなずくだけだ


「そう・・じゃぁ・・喋ることはできないんだね」


妙に俺は納得する。


少女は喋らないのではない


喋ることを禁止されているから


俺は納得するしかないんだ。


「・・でも、貴方達を害をする予定はないの。

 わたしは忠告にきただけ」


「忠告・・一つだけだろ?」


「・・・違うわ。もう一つ。」



「?」

 

「・・賢者のパーティ・・ナニガ起きても

 貴方達・・とくに、あなた」


旬に視線をよこす


そこには・・何か、重い緊張感が漂う


「はい」


「・・・絶対に動揺しないで。」


視線から逃げられない


それだけ強い思いを少女から感じ取った


「えっ・・。」


「それだけ。」


視線を逸らしたのは・・少女の方だった


「はぁ・・・?」


ただ、俺は・・どういう意味なのか分からない


焦らされたのかカズラは・・。


「・・・おい、お前」


「何?」


「オマエの目的はなんだよ。俺なぁ・・お前が胡散臭いわけ。

 ・・・何をたくらんでやがる」


ぎらりっと睨み付ける


すると・・空を見上げ


少女は歌うように風とともに声をのせる


「憐れな一人の男がいた。

 身寄りもない男は一人ぼっちだった

 ある時一人の女と恋仲になり

 一人ぼっちから解放され幸せに暮らしていた

 しかし、運命は残酷であり獰猛だった

 女は国の命令で男と離れなければならなかった

 男は女を助けようとしたが

 結局・・助けることができなかった。

 女は、その後死に・・男は一人残された

 男に残されたのは一滴の秘宝だけ。

 男は今も尚・・悲しみの涙を流しているのだ。」


少女は淡々と告げる


「今のは・・おとぎ話か?」


カズラは問いかける


「さて・・・どうでしょうか。

 ・・あなたたちはコレをおとぎ話だと思う?」


「・・・。」


「・・・俺は、お伽噺なんか聞くつもりはねぇよ。

 というか、結局目的はなんだよ!」


すると・・。


「無理よ。」


首を横にふる


「えっ・・・。」


「わたしには、制約がある。

 それがあるかぎりわたしは目的をいうことができない。」


「もし、破ったらどうなるんだ?」


カズラが問う


「さぁ・・破ったことがないから

 どんな罰が下るかわからないわ」


無表情で・・そういうんだ。


何にも感じる気がない


空虚だ・・。


でも、俺はたまらなく・・痛くなる


「・・・痛そうだ。」


ポッリっと旬はつぶやく


「・・・えっ・・・。」


少女は目を丸くする


「あなたの瞳・・とても痛そうな顔をしている

 どうして・・そんなに痛そうなのに

 気丈に振るまえるの?」


旬は痛む心を抑えることもなく


感情のまま訴えた


そして、目を丸くしていた少女はやがて


目を細め・・クスっと笑う


「・・・あ」


「オマエ・・笑えるんだな」


率直な感想を言うカズラ


少女は何を思ったのか・・自分の掌を見つめて


やがては・・・旬とカズラをみた。


「・・・そうね。久々に、口を開けて声を出して

 笑うのは・・。」


そして、旬とカズラを見て


「気に入ったわ貴方達のこと。」


「「はぁ・・・?」」


カズラと俺は、なんだかよく分からない展開に

ついていけない


「ねぇ、君たちの名前を教えて?」


その言葉にピクリっとカズラは反応する


「怪しいやつには名前を教える気ねぇぞ。」


カズラは辛辣だ。


警戒を緩める気はないようだ。


だけど、俺は彼女が悪い人には見えなかった


むしろ・・・。


「俺は旬。だよ。カズラとは仲間で親友。」


なんだか、仲良くなれそうな気がしたんだ


どうしてかわからない


ただ、本当にそう思ったんだ


だから、まずは、隣で


その言葉にカズラは気をよくしたのか


「俺はカズラ。旬の親友だ。よろしくな」


ニカっと笑う


先ほどの警戒が嘘のようだ

カズラ・・・ちょろい。



いつか、何かに騙されそうな気がするよ・・カズラ

少しだけ、カズラのちょろさに旬は心配する


すると・・少女は・・・。


 「・・・わたしの名前はアゲハ。

 アゲハと呼んで」


アゲハと呼ばれた少女は妖絶に笑む


そして、空を見上げた


「もうすぐ、結界が解ける、君たちは早く宿に帰った方がいい」


「結界・・ああ、人払いの?」


「そう。人払いの結界のこと。もうワルイモノはいない。

 だから、解かれる。」


「・・・そう・・なんだね」


ワルイモノ


それが、アレだというの・・?


「・・・あんたはどうする?」


カズラは問いかける


この結界を解いたら・・アゲハはどうするつもりなのか


聞いておきたかったようだ


「わたしは見守る人。この国を見守るために歩かないといけないの。

 ・・職務のようなものだと思って」


「はぁ・・?」


「じゃぁ、またね」


少女は去って行く


「不思議な子だね」


「ああ。アゲハという少女不思議だな」


「・・・うん」


旬たちはアゲハの後ろ姿を見送っていた


すぐに、姿は見えなくなり


そして、あんなに静寂な世界がザワザワっと人が交じりあう

場所へと変化した


「人払い魔法が解けたわけか・・旬」


カズラは、ふぅっとため息を吐いた


「何?」


「・・・これから何が起こるのか分からねぇけど」


「うん。わかっている。動揺はしない」


あの子が言った今のように


・・・動揺はしないほうがいい


覚悟をしなければいけないのは俺自身だ。


旬は引き締めるような思いでカズラの言葉にうなずいた


「ちげぇよ。」


ポンっと旬の頭を軽くたたく


その手はやはり・・温かく感じる


「何があっても俺はお前の味方。

 だからさ、一人で抱え込むなよ」


「・・・カズラ。そんな恥ずかしいセリフをよくいえるね」


「へへっ。」


でも・・・。


「ありがとう。さぁ、帰ろう」


カズラの言葉がうれしかった


味方がいるだけで俺は・・歩いていける


でも・・あの子は。


もう見えなくなった少女の姿を思いだす


・・・今はよそう。


考えるだけで・・不明確でわからなくなる。


旬はカズラと共に少女の消えた方向とは逆方向に帰っていく


一度も振り返ることもなく・・旬たちは、去って行ったのだった。




次回、旬たちはいよいよ物語の核「賢者の屋敷編」が始まります。

お楽しみに!

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