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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 五幕 アルタール  ~賢者のいる国~
460/485

少年、貴婦人は謎だらけ

今回は、貴婦人の容姿が判明!

そして、冒涜は千里の過去が・・チラリっとうつります。

では、どうぞ

行きなさい


生きなさい


その言葉は永遠に忘れることはない


師は笑顔で僕を送った


それは、別れ


僕は、あの日・・・確かに絶望したんだ


一人前の召喚士になると同時に


別れは近づいていた


そのことに気づけばきっと・・・


師は・・助けられていたのか


今でも、その考えを忘れることは・・なかった。


僕は・・忘れない



ずっと・・永遠に


              ****




息が荒い


そして、同時になにかをなしたような気分になる


な、なにせ


5キロ歩いたんだから・・!


こ、これはき、きつい



「はぁはぁ・・つ、ついた」


な、長い道のりだった


5キロってと、遠いね・・!!


「と、とおかった・・ッス・・・ぜぃぜぃ」


こちらもまた息が荒いウッズさん


「二人とも体力なさすぎ」


千里だけは全然息を乱れていなかった

こ、これも差か!?


なんとか息を整えようと・・周りを見ると


「・・・あ」


泉のそばで佇む女性


それも、町娘のような恰好をしているが

雰囲気にあわない貴婦人


あの時は気づかなかったが

緑色の髪と青緑色の・・瞳をしている。


・・今更になって、その貴婦人が美しい人だと気づく


「あの人が?」


千里がコソっと聞くと三人に気づいた貴婦人は微笑む


旬に近寄ってきて


青緑の瞳をキラリっと光らせ


「泉の伝説をご存じざます?」


「えっ・・。」


「ちょうどいいから教えてあげる。

 昔、この土地は魔獣しかいない土地で人間が住める場所ではなかった。

 そこには魔獣・魔物が住む荒れた土地だった。人間たちは

 近づくこともできずに遠くを眺めているだけ・・・。

 そんな時、一人の妖精族の娘が現れた」


いきなり話が伝説へとうつる


だけども、話に引き込まれ旬たちはジッと話を聞くことになる


「妖精は、魔物たちをどうにしかして人間や自分たちが住めるために

 考えた・・そして、天に願いをかけるために・・涙を流した。」


妖精が願いをかけるかのように涙を流した


「妖精が流した涙は結晶化とし、魔獣たちはその力に恐れてしまい

 立ち去った。そのことを喜んだ人間は妖精の娘に感謝した。

 人間たちはこの国を作り、妖精族には森を渡した。

 意向、アロネの森と名付けられた妖精族の住処の森の名前となる。

 ・・さて、フェール泉に関しては、事実としてはなぜ泉が

 生まれたのは・・それに関しての文献は残っていないとされる」


「・・あれ?」


「の、残っていないッスか?」


「そうざます。どうして、こんな水が流れるようになったのか

 残ってはおりません。ですが、妖精族がこの泉を

 作ったのではないかという諸説が残っているぐらいざますね」


ニコっと笑う


そんな、すごい泉なんだな・・と旬は改めて思う


そして、謎の貴婦人はクスっと口元だけを緩めて


「という訳で、お久しぶりでざます。まさか、また会えるとは思いもしなかったですわ」


本当にそうだよ


まさか、また出会えるなんて・・ね。


「こちらも・・というか、詳しいですね」


「歴史学を昔習っていたもので。フェール泉は、神秘の泉ですの。

 これでも、研究者はたくさんいたみですが、今でも誰にも

 真相がわからない泉でざます。」


くすりっと含み笑いをしている


どうやら、歴史学を習っていても謎は謎のままか


それもそうだ・・なにせ、誰もわかっていないことだしなぁ・・。


「にしても、すごいねー。泉が聖水になるくらいだもん

 僕でも驚く、驚く。」


すると、不思議そうな女性が千里を見て


「あなたはどなたざます?」


ひょっこりと話に加えていた千里に貴婦人は見ない顔だと問うと


「千里。旬の幼馴染だよ。召喚士してんの」


「この年で・・ですか、一人前なんですね」


その言葉で千里は感嘆する


薄目で・・それも何かトゲのある・・含み


「へぇ、わかるんだ。」


今・・・空気が変わった?


「はい。召喚士の一人前になったものは、証がある

 本で読んだことありますわ。たとえば

 あなたが持つ・・その石とかね」


その時・・千里は何か感じたのか


目つきが鋭くなる。


「・・・。」


千里は黙り・・やがて杖を見て・・ハッとしたのだ


そして、また・・貴婦人を見た


貴婦人は・・ニコっと笑う


千里は苦々しい顔をしている


「千里?」


千里は旬を心配させまいとニコっと笑っているが


・・・千里、口元がひきつっているよ・・?


「ああ。なんでもないよ。」


旬に言うが・・しかし、貴婦人を見る目は鋭い


ヒソヒソっとウッズが旬に涙目になりながら


「し、旬、ど、どうにかしてほしいッスよ」


この空気をどうやら耐えたがいようだ


「そ、そうだね。さすがに、この空気

 ・・俺も耐えられないよ」


なんか、千里が召喚士である”一人前”の話に触れると


ピリっと何か・・感じるだよなぁ


「じ・・自分もッス、し、旬

 た、たのむっす!!」


「・・・仕方ないなぁ。」


旬はため息をつきたくなるのを抑えて


「・・あ、あの、とにかくこんな泉に呼び出してまで

 依頼は・・?」


空気を変えようと話題を変える


すると・・貴婦人は・・。


「・・・思い出でざますよ」


「思い出・・?」


旬がつぶやいた


思い出って・・何だろう


「・・少女時代、私はこの国で歴史学を学ぶために訪れたことがありますの」


「「はぁ」」


「・・・。」


話を聞いている旬とウッズ

しかし、千里だけは・・なぜか、静かに沈黙を守っている


「・・あの頃はこのアルタールも妖精族と暮らしてにぎやかでございました

 その時、私は・・幸せな時代の象徴として大事な思い出品を探していますの」


「それは・・・何なの?」


「・・・腕輪でざます。」


貴婦人は自分の何にもはめていない腕をさする


遠い思い出なのか


貴婦人は・・そのないはずの腕をあるかのようにをさすっているんのだ・・ずっと。


「私は、この昔。大事な腕輪を失くしてしまいましたの。

 この、国に。」


「でも、なんで・・何度も訪れる機会はあったハズッス?

 そんなに大事なモノなら」


そして伏し目になり


「・・・理由があってここにはこれなくなってしまったざます。

 ・・・どうにかしてここに来れた時。

 腕輪はどこにあるのか・・分からないざます」


「・・・!」


「そもそも、どうして手放したッスか?」


「・・私は、そうしなければならない絶対的な理由があるでざます


そう・・・貴婦人は・・。


言い切った


「絶対的な・・理由?」


「そうざます。その理由のために・・私は今日まで

 腕輪を探すことを諦めていました・・驚いたことに

 ・・まさか、またあなた達出会えるとは思ってはいませんでした」


「・・・俺もです」


その偶然なのか必然なのか

判断はできないけども


けして・・・簡単なものでもない


なにかわからない・・縁・・運命を感じる


「自分もッスよ。まさかと思ったッス

 まぁ、5キロも歩かされるとは思わなかったッスけど」


ここまでの道のりを考えると


意外と5キロは遠かった


しかも、戻るのもまた5キロ


往復で・・10キロか。


何て面倒なんだ


「そうだよね・・何気に遠いよ。5キロ」


「あら、移動魔法陣使わなかったざます?」


「・・そ、そんなのあるの!?」


「ありますざますよ。移動魔法陣・・街の入口と、そこの泉のそばにも

 って・・どうしたざますか」


うなだれる旬とウッズに・・声をかける貴婦人


「・・・すごく大変だったのを感じたッスよ」


「・・・ああ。俺も」


すると・・微笑んだ


「うふふ苦労かけさせてごめんないね・・でも

 ・・前回の依頼の時・・私はあなた達の

 そのやさしさがうれしかったざますよ」


貴婦人は旬の視線に合わせるようにしゃがみこんで


旬の頭を優しく撫でた


「・・あの・・?」


その手は・・不思議だった。


冷たかった


まるで、氷のように・・冷たい手


とっても・・。


でも・・同時に・・心は温かくなった


「わかりました。見つかるかどうかわからないけど

 引き受けます」


「自分も頑張るッスよ」


「・・・ありがとう。旬君。ウッズ君

 そして、千里君」


「・・えっ・・!」

 

「あなたが疑問に思うことはおそらく・・私がなぜ知っているのか」


「!?」


千里は図星なのか顔色が変わる


「でも、それが内緒ざます。それも、理由の一つですから」


「・・・。」


千里は黙る


そして、その答えに肯定も否定も何もせずに


・・貴婦人は微笑んだまま


「・・・・・この話はここまで。

 ・・・また、すべてが終わった後

 ・・待っていますざます」


そして・・去って行くのを見届けた旬


「不思議な人ッスね。」


「・・うん」


やはり、不思議な人だと思う


「はぁ」


その時・・脱力した千里の声に


「・・千里さん大丈夫ッスか」


「はぁ・・旬たち、何も感じなかったの?

 あの女の人のこと」


「・・えっ」


「・・僕は感じたよ。あの人・・まるで・・・いや、今はそんなことはいいか」


「・・千里?」


千里は何かに気づいたのか・・険しい顔をしていたが


やがて、言うのをやめたようだ


「旬は召喚士が一人前になる方法は知っている?」


「・・えっ。」


突然、何言っているのか・・・分からないよ


「わかる?」


姿形・・・いつもの千里


どこにも違和感がないからわからない


「全然。いつもの千里と変わらないよ・・ってか、ウッズさんわかる?」


「ぜ、全然ッス。そもそも、一人前なんかあるんッスか?」


どうやら、俺たちでも分からない


「・・・正解を教えてあげるよ。」


千里は杖をだし・・杖の先にある対になっている赤と青の宝石を


一つを取り出す


「その宝石は?」


蒼い宝石だ。


キラキラっと光っている


まるで、アクアマリンよりも深い蒼の宝石だ。


不思議な・・蒼。


底が・・見えない


「・・・僕が僕が一人前になった時にもらった

 大事な宝物・・そして、形見さ」


「形見」


宝石は蒼く光輝いている


形見・・か。


「きれいっすねー。」


「うん。宝石なんてよく買えたね千里」


「これは宝石ではなく魔石なんだよ、旬」


「魔石?」


聞いたことないなぁ・・魔石。


宝石みたいなのに・・魔石なんだ・・。


「うん。魔力を大量に浴びた石なんだ。

 召喚士は召喚獣を召喚するだけでかなりの

 魔力が必要になる・・この魔石はその手助けをしてくれるんだ」


この宝石・・いや、魔石がねぇ


「・・へぇ」


「・・でも、この杖じゃこの魔石の本来の力を使うことはできないんだよね」


今もっている杖は、どうやら


千里が以前使っていた杖ではないようだ


そのせいか・・本来の力が使えないという


「本来の力?」


「うん。召喚の働きが弱いんだよこの杖。

 あまり、表には言いたくないけど

 ・・弱点だし」


「弱点?」


「・・・高位召喚獣を呼べないんだ」


「呼べないの?」


「いや、無理して呼ぶことはできるよ。ただ」


「ただ?」


どうやら、千里は・・無理して呼ぶことに対して


何か・・あるようだ


「杖は壊れるかな・・それも跡形なく

 しかも、杖が壊れると抑制していた力が暴走するんだよ」


「・・・!」


「それって、大変なんじゃ」


「そうだよ、召喚獣の中では突然、暴れてしまう狂暴な

 召喚獣だっているんだよ。そういった例で召喚なんて

 してしまうと・・」


ブルっと千里は震える


「契約者の意志を無視して勝手に行動するんだよ

 ・・これって、コワイことなんだよね」


「怖いッスね」


「俺も・・経験したことがないからわからないけど

 なんか、伝わってくるよ」


「でも、現時点は杖が壊れることのないからいいけど

 ・・今後はわからないよ」


千里は、蒼の魔石をもてあそぶ


哀愁をこめた瞳で・・ソッと魔石を撫でる


「・・・・初めてもらったのも・・もう何年前だろう。何年以上だろう

 だけど、これだけはどうしても手ばせなくて・・・・あの日も

 ・・持ちだしたんだこれだけをね」


そうか・・あの日、帰る時・・俺は何も持って行かなかったけど


千里は・・・持って行っただね。


「僕は、この魔石をくれたのは師なんだよ

 ・・そして、これが一人前の証になるとき

 ・・師から受け取るのが代々の習わしなんだよ」


「・・そっか、一人前ならでは・・だね」


「あ・・あの、その人はいまどうしているッスか」


千里は・・。


「死んだよ。もう昔にね・・僕が弱かったから。」


その言葉でウッズは痛ましそうな顔をしているのをみて


千里は・・くすっと安心させるように・・。


「・・そんな顔をしないでよ。僕は何を言えばいいかわからないから」


「自分・・無神経なこといってしまったッス」


「いいよ。大丈夫だって。だけど僕は師のことは・・一生忘れないから

 ・・思い出だけは消えないから」


「・・思い出か・・。」


薄まらない記憶


…幸せな思い出は・・嘘はないはずだから・・。


「話は戻して召喚士にとって一人前というのはとてもきわめて重要なことなのさ

 ・・一人前であることは召喚士であることに対して誇りを持つことになる」


千里の背中にはうっすらと傷が残る


「・・・僕は一人前にしたことは・・”死”の体験だった。

 あんなに恐ろしい体験はないと思う」


ど・・どんな体験なんだろう?


「・・・!」


「だからこそ、召喚士の一人前のことを知る人は少ない

 なぜなら、知らないのだから」


「・・・妙ッスね」


「うん。だからこそ思うんだ。召喚士のシステムを知っているということを」


まさに、謎だった。


だから・・謎の貴婦人なんだろうと思う


ただ・・俺は・・。


あの人の去る前に見せた


哀愁の瞳は


忘れることはできないのだろうと・・俺は思うんだ。

貴婦人が何者なのか

千里は何を気づいたのか

そして、召喚士の慣習とは

それは、現在連載中少女、運命に導かれるに出ます。

千里が語るのは一部の予定!

次回をお楽しみに

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