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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 五幕 アルタール  ~賢者のいる国~
457/485

少年、変った想い、変わらむ思い

今回は、カズラ君視点で続きます。

目覚めたのは増大なる闇の力


ほかにも目覚めた力はあるけど特に力が強いのが闇だ。


そして、人を惑わす変身能力


今の俺には必要なのかすらわからない力


ただ、俺には絶対に持つことのない力がある


それは”光”だ


当然、人を癒す魔法は使えない


浄化もできやしない


俺はあらゆることで、正反対すぎる力を持ちすぎている


なぜなら、俺の中で目覚めた力の理由・・・。


俺が持つ人への憎悪、嫌悪、悲しみから生まれた力


それに反応して闇の力が俺の一番の得意魔法になった


それに対しては後悔はしない


でもさ、同時にこの魔法は人にとってはあまりよくない魔法かもしれない


ずっと、ずっと悩んでいた


今は、その考えが変わった


この力が必ずとは言わないけど世界に役に立つ力であることを信じている


だから、いこう


光の向こう側へ・・・!



                      ****



虚空の瞳から光が戻る


カズラは・・意識を取り戻した


しかし、目の前何かがくるのが感じた


目の前に、鳥が迫っていくを・・見た


鳥?


違う


グリフォン・・・だ!!


今にも鋭い嘴で俺を喰いちぎろうとしている


カズラは身体を動かそうとしているが


ビクともしないことに驚く


俺、動けねぇ


動けない中で・・見える


それは、透明で粘着テープのようで・・


これは・・・糸!?


・・・!


もしやこれは、ワームの粘液から作られた・・糸か!!


強固で動かないように固定されている


このままでは俺・・ヤバイ!?


その時・・声が聞こえた


動けない中で・・誰かが自分を呼ぶ声だ


「カズラはん!!じゃまやぁぁぁぁ」


悪戦苦闘しているラミアやアニマを見て


次々、切り倒していくが、這い上がっていくワームに


ラミアとアニマが進めないことに苛立ちする


「どけぇぇぇ」


「ゲイル」


風の高位魔法の炸裂する


しかし、ワームたちは、一ヵ所に固まって

再生をする


互いに互いに傷をいやし


また、新たな一体に変化する


「進めん!!カズラはん!!」


動けない


でも・・このままじゃ


全滅する!!


皆を守るんだ


守るんだ


まもるんだ・・・・!!


マモルンダ・・・!!


その時・・カズラから大きな力が駆け巡る


「この、鳥ヤロガァァァ!!」


ウガァァァっとカズラは叫び


糸をすべてがバラバラになり消える


動ける!


身体が・・楽になった・・!?


「な!!?」


驚いたのはラミアやアニマだけじゃない


グリフォンだ


まさか、目覚めるはずがないと思っていたからだ


いける・・!!


カズラはその動揺の隙をついて


まず・・一気にワームたちを倒すために


「重みよ彼奴を沈めてしまえ!!」


「グラビトン」


「ぎしゃぁぁぁぁ」


一気に倒れこみ動けなくなる


動くたびにズシ、ズシっと動けないのかカズラを見て悔しそうな

ワームたち


さらにカズラは追い打ちをかける


「影よかのものを動きを止め縛り上げよ!」


「シャドゥ」


キィィィンっと闇の魔法

するとどこからか大きな闇がふさぎ込まされ


騒ぎ続けていたワーム達が


騒がなくなった


動かなくなり・・やがては、倒れる


「・・!?」


「殺していねぇよ。闇の深さに恐れがいったのさ

 ただ、それだけのこと」


・・まぁ、深い闇に囚われて身動きができない


そう、俺が解除しないかぎり無理なこと


ラミアとアニマが俺の方へと来て


それは心配した顔つきになって


「か、カズラはん!!あんさん、大丈夫か!?」


「か、かずら!!しんぱいしたんだぞ!!」


「ああ、待たせたな。さっさと終わらせよーぜ?」


ニヤリっと笑うカズラ


その笑顔に、安心感を感じたのか


ラミアはニッと笑い返し


「そやな。あんさんのことを気にせずに戦えるわ」


「そだな。あにまもようやくたたかえる」


スッと視線をグリフォンに向ける


「・・・。」


ラミアは冷静にグリフォンを観察し


何を思ったのかやがては・・一歩下がる


いきなり下がったことを不思議に思ったカズラはラミアに聞く


「どうしたんだ・・?」


すると・・ラミアは・・。


「・・・まぁ、今回はカズラはんにゆずるわ」


いきなり、何言いだす!?


「「はっ!!?」」


二人そろって声をあげる


すると、ラミアはクスリっと笑って


「・・・因縁があるんやろ?」


その言葉にカズラはハッとした


「・・あのグリフォンの瞳・・深い憎しみ、悲しみ

 それが渦巻いている瞳や・・今にもあんさんを殺したい

 そんな飢えた獣や。」


・・・カズラは知っている


グリフォンの瞳の理由を・・知っているんだ


あの時の憎しみのまま今があるのなら


きっと、今以上に俺を含めた人間を恨んでいるだろう。


だから、呟く


「言葉は・・届かない。」


ギュっと手を握る


「かずら・・。」


それは、おそらく


和解な無理だということだ


その時・・ラミアはコッンっと軽く頭を叩いた


「でも、それは今までや」


カズラはラミアの瞳を見た


それは、どこか慈愛のこもった優しい瞳


「・・・!」


カズラは無言でそして・・・・。


「変わったんやろ?」


その言葉で・・・頭の中にあった様々な負が飛散した


俺はどこか・・吹っ切れた


心は・・今よりもっと・・強い


「ああ、俺は変わった。」


そう、変わったんだよな


俺は、あの時の悲しみを背負って泣いた俺じゃない


憎しみを苦しみをただ背負って生きてきた


前の俺じゃない


「・・・いけよかずら。」


アニマが俺の背中を手で押した


「アニマ・・?」


そこには、幼い子供のアニマがニカリっと笑っている


「かっておわらせてこいよ。かなしみもにくしみも

 どんなこたえになってもあにまはおまえの

 なかまなんだから」


「・・・ありがとな」


背中が温かく感じた


それは、熱いというものじゃない


優しい・・温かさだ


もう・・あの頃じゃない


そう・・・今は・・いるから・・。


カズラは正々堂々と前に出る


そこには・・未だに困惑、驚愕な瞳でカズラを見る


グリフォンがいた


「バカナ!!ジャガンハカンペキダッタ!!」


すると、カズラは冷静に受け答えをする


「ああ、そうさ・・完璧だった。もし、何もしなかったら

 永久的に俺は閉じ込められていただろなぁ」


そう、そこから出ようとも思わなかっただろう


あまりにも、思いが強すぎるぐらい


そこは居心地が良かった


もう一度、思い出すことができたんだ


クレーエの最後の顔


そして・・・。


優しい笑顔で笑ってくれた


リシャーナ姉ちゃんの顔を


思い出すことができた


・・・忘れていた想いを思い出せた


「じゃ・・ナゼ!?」


「・・・さぁ、俺でも分からねぇけどな・・」


引っ張りだしてくれた謎の存在


俺に過去に留めさせてはくれなかった


結局、アイツは何者なのか俺もわからねぇ


俺に勇気を与え


過去より未来へと歩き出す力をくれた


おそらく、俺の考えでは・・・・・・。


さらに、グリフォンは憎しみの言葉を乗せる


「オマエノヨウナコゾウガ・・アノトキノクルシミノママ

 エイエンニクルシメバヨカッタ」


「ビジョン」


強力な支配魔法だ


風や木・・動物、魔物、魔獣、すべてを使役できる強力な力


目を見ただけでもおそらく、支配されてしまうだろう


しかし・・俺にはそんなの効かない


カズラは・・・声をのせる


「マインドアウト」


軽々しく打ち消すカズラ


またもや驚愕する


「な・・」


「遅ぇよ・・俺には闇魔法のほかにも、力はそんなに強くないが

 土魔法・・・そして、何でも無に帰す・・無魔法、死魔法を使えるんだよ」


最初からあったのは闇魔法、土魔法だけだった


しかし、俺は、あの時から・・無魔法、死魔法が覚醒した


人の憎しみ、俺自身の悲しみ、絶望から生まれた力


俺には旬たちのように人を治す力はねぇ


でも、今はそれがうれしい


なぜなら・・俺だからこそある力だと思っているんだ・・!


「ソンナ・・バカナ・・。」


「俺の属性があんたの幻術より上まわった

 それだけのことさ・・・けどな」


カッと瞳を大きく開き


「・・俺はなぁぁぁ、嫌いなことが2つあるんだよ?

 知っているか?」


「いや、うちも知らん」


「あにまも。」


後ろで傍観しているラミアとアニマはシレっとツツコミする


「影でウジウジと小細工するやつ・・おまぇだよぉぉぉぉ!!」


しかし、それを受けたグリフォンはビクゥゥっと震える


「言いがかりやな」


「ほんとうだ。かずらあくにんだー」


外野は傍観者よろしく解説している

というか、俺をけなしている


気にしないけどな!


ビリビリっと痺れる声にグリフォンは怯える


「ヒィ!?」


そして、カズラは一気に間合いをつめる


グリフォンは慌てるがカズラの方が詠唱が速い!


「ナ・・・!!ハヤ・・・イ!!」


「我はカズラ、汝の力を使いこの者を磔よ!」


カズラは手をグリフォンに向ける


「クルーセフィクション」


その途端、浮き上がり磔られたグリフォン


「グハッ!?」


動けないのかジタバタしている


そして、また邪眼を使おうとすると


「あめぇよ!!お前、俺が二度も同じ手には乗らねぇ」


手が青く光る


「ショック」


「グハっ!」


その衝撃により・・グリフォンは動けなくなる


カズラは近づいて・・声をかえる


「まだやるか?」


「・・ナニガネライダ」


「・・・・。」


「オマエモナカマノヨウニ・・コロスノダロウ?

 ウラギルノダロウ!?」


怯えてそして・・人を信じられなくなった瞳


カズラは・・否定する


「ちげぇ・・そんなのしねぇよ。」


こんなのはただの言い訳


でも・・・俺は・・。


「・・・!」


「俺は、そんなのしても同じだって気づいたんだ

 ・・・俺たち、人間のせいで・・ごめんな」


グリフォン達召喚獣は人間に使われ


そして、その恨み、怨みをもっている


一日で解決できる問題でもないことを俺は知っている


「・・・イマサラ・・・アヤマッテモラッテ

 ナニガ・・ナニガ!!」


その声は憎しみ

そして、悲しみ


「ああ。そうだな。今更なんて虫が良すぎるだろ?

 でも、俺はそうしないといけない気がした。

 ・・心に負を持つことは永遠の苦につながる

 ことを俺はしっているから」


そう、ずっと見てきた


いろんな悲しみ、憎しみを・・・。


あの日・・俺にとってあの日は・・・。


この世で一番・・恐ろしく悲しい日


それを味わった俺だからこそ・・。


「・・・!」


カズラはギュっと・・口をかみしめる


驚いた顔をするグリフォン


その隙にカズラは術を解く


磔られる苦しみから解放される


「なぜ・・!!」


カズラは視線を伏せて


「・・・・行けよ。俺はもう何もしねぇよ

 ・・ただ、あんたがこれ以上暴れ、小細工するのなら

 容赦はしねぇ」


それは、警告


言葉の意味が分かって


「・・・ワカッタ・・ヒコウ。」


潔く引いてくれた


しかし、カズラを見て・・・。


「オマェ・・カワッタンダナ。」


カズラは、ハッとしてグリフォンをみた


「・・!」


グリフォンは、切なくてつらそうな顔をした


「ワタシニハモウヒトリキョウダイガアル

 ウマレタトキモイッショノキョウダイが」


グリフォンは一人ではなかった


そう・・・たった一人の・・兄弟がいた


それが・・カズラの知る


「・・ああ、召喚士村にいるやつだろう?」


「・・・アア。キョウダイニアイニイッタンダ

 ソコニハ、モウ・・アノトキノヨウナ

 ニクシミハナカッタ・・タダ

 タダ・・オダヤカッタンダ」


信じられないわけじゃない


召喚士村の召喚獣は敵意が完全になくなった訳じゃない


ただ・・なぜだか、前よりも召喚獣たちは人間に寛容になった


その理由を知っている俺は・・なぜか、わかる気がした


・・・。


「ワタシハ・・キョウダイノヨウニ

 ニンゲンニカンヨウニナレナイ」


同じ存在に生まれ


同じ存在として育ち


そして、憎しみも同じ


すべてが一緒だった


だからこそ、変わったグリフォンに


もう一体のグリフォンは恐れたのだ


「・・・・ワタシハ・・・カワレナイ。

 ・・・カワルコトナドデキヤシナイ」


それは苦しみ


簡単に抜けられないからだ


だけど・・俺は言える


今なら・・。


「・・それでいいんじゃねぇの?」


「・・・!」


ハッとして驚いた顔を見せる


「・・・変わることですべてが決まるわけじゃねぇ

 変わらなくても・・いいときだってあるさ」


「・・・!」


そして、ニッと笑う


「まぁ、俺は変わるべきだと自分で思ったから変わっただけの話。

 ・・それでいいんじゃねぇ?」


そう、自分で変わりたいと俺は思った


だから、変わることにしたんだ


そうでなければ俺は・・あの薄暗い闇の世界で


一人だったから・・。


ボソリ・・グリフォンは話す


「・・・キョウダイハマエニイッタ。

 ニンゲンニモ・・イルンダト」


「?」


存在いる


「・・・オモウチカラガアルニンゲンガイルコトヲ

 リカイデキナカッタガ・・スコシダケ

 ・・・・リカイシタ」


バサっとツバサをひろげ


漆黒に近い茶の羽が広がる


「ワームタチハダイジョウブカ?」


そういえば・・忘れてたな


カズラはパチンっと音をたてると


ワーム達が姿を現す

そこには・・ぐったりして動けないのだ


「・・あー、なんとかなるんじゃねぇ?

 軽く何日間は動けねぇけど。」


カズラがそういうとフゥっとため息を吐く


「・・・ソウカ。ソレハソレデカマワナイ

 ジカノウスイワームタチニハチョウドイイ」


そのまま・・カズラを見て


「オマエニハイウカ・・”コノクニ”ハ、キケンナクニ

 ・・キヲヌクナヨ」


「・・!?」

 

チラリっと何かを見ている


そこには何もない空の方向だ


そして・・忌々しそうに・・グリフォンは吐き捨てる


「コノクニノレキシヲサグレバワカル。コノクニハ

 ”ジャキョウ”ノクニダ」


「邪教の・・国。」


今までだまっていたラミアが・・声を出す


「あ、あんさん、どういうことや!?」


「そうだぞ・・!!なにをしっているんだ」


すると・・。


「・・ジブンノメデミテミロ。コノクニノゲンジョウヲ

 ・・ワタシハコレイジョウハカンチシナイ

 ・・サラバダ。モウアウコトノナイダロウ」


そういって消えていったのだ


「・・なんやの」


「・・・カズラはん・・・?」


カズラは、グリフォンが見た


何もみえないはず(・・)の空の方向を見上げた


「見ているんだな・・。」


それだけをつぶやいた


画面の向こうから男は・・。


「いよいよ、始まった・・邪教の国の真実を

 知る者が現れたか・・・・!」


男は・・画面からclearという任務達成の証が浮き出している


そう・・男は画面にいるカズラを見つめていた・・。

カズラの方も・・その画面に見えないはずなのに

・・凝視していたのだった。


カズラ君は闇と土の力が最初に覚醒しました。

もともと持っていた属性でもありましたが

そんなに強い力ではありませんでした。

しかし、あの日を境にカズラ君は絶望、悲しみを持ち

どうじに深い憎しみと怒りをもとに生まれたのが

死と無の属性です。


基本的に、カズラ君と旬は対照的な存在です。

旬の力の覚醒には、勇気、正義、優しさ、慈しみが備わり

それが力の源です。

しかし、カズラ君の覚醒には、悲しみ、憎しみ、絶望、苦しみ

二人は対照的でありながらも、人を想う気持ちは同じです。

旬に出会ってカズラ君は変わりました。

そして、旬も同じです。

色んな気持ちが混りあっているからこそ

これからこの邪教の国はどんな風になるのか

旬とカズラ君の活躍をお楽しみに!

次回から、旬の視点に戻ります。

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