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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 五幕 アルタール  ~賢者のいる国~
452/485

少年、無限なき夢  ~鴉と出会った日~

今回は、カズラの過去が明かされる

さぁ、始まります

残酷描写気をつけてください。

皆は知らないか


俺は、俺である前はそれはもう


今とは全然違っていた


変わることなんてない世の中で生きてきた


それは、どこか不安だったけど


でも、それが幸せだったんだよ


だから、神崎葛という人間を造りあげてきたのだ


それは虚像でも構わない


だけどさ


俺は本当に色んなことがあったからこそ


信じたかったんだよ


ただ、それだけ俺は色んなことを経験したんだからさ



              ****



闇の中にあるさらに薄暗い闇の向こうには


小さな


小さな


光の玉がある・・。


その光の向こう側には・・・


俺にとって、薄暗い闇の始まりだった。


俺は、一人でこの異世界に来た


そう、コンビニのアルバイトを終え


早く家に帰りたかった。


だけど、その日は・・異様な雰囲気をもった空と


そして・・赤い・・赤い月だった。


俺はその赤い月を眺めていたら・・・。


気づいたら俺は・・。


おれは・・。


争いの声がする世界に落ちたのだ。


その異世界は・・大戦と呼ばれる大きな戦だ


平和でのうのうと暮らしていた世界とは違う


別世界だった


俺は、恐怖より・・最初に驚いたことは・・。


「からだ・・・こどもになっている!?」


身体も小さくて、どんなに動かしても小さいまま


俺は子供の身体で、この異世界に落ちた


すべての目線も小さく


ここで・・一人だ


俺はただ、茫然としていた


俺の今のこの身体は、恐怖よりも困惑の方が勝っていたから


どうしようもない程・・茫然としていて


ただ・・目の前で怒る大戦を見て


初めて・・震えた


そして、何度も思い返すのだ


ここにきた経緯を。


なんで、おれはここにいる!?


おれはいつものようにバイトをしてそしてその帰りに


赤い月をみて・・・!!


あかいつき・・!!


改めて状況を眺める


そして・・・恐怖で震えが止まらなくなる


ここは・・


ここはどこなんだよ!?


震える目の前は・・そこは・・・戦場だった


怖い


なんだよ


どうして人と


人が争っているんだよ!?


争う声が大きくなり


やがては、どうしようもなく声だけではなく


血が広がっていく


俺はなんで・・・。


木すら生えていない乾いた大地の中


歩き出す


そんな、中人が倒れているのをみて絶句する


「な・・・!!?」


その人たちを斬っていたのは・・。


大きな大男


手には・・鉈のような・・大きな、剣を握っている


「おー、こんな所に子供が、はっはっは・・・

 いい血がみれそうだな」


傭兵のような気がする


こんなの、ゲームか映画の世界しか見たことがない


カズラは・・一歩、足が後ろへと下がる


敵だけは違う、近づいてくるのだ


「お・・・俺は」


こないでくれ


そう思っても一歩


一歩


足音はまさに、近づいてくる


こわい


こわい・・。


一歩


「へへへっ」


下世話な声が聞こえる


ぎらついた剣が・・近づいて


足音も聞こえて


「・・・・あ・・・。」


座り込む・・そして、俺は死を覚悟した


ありえない覚悟だ


だけど・・その時・・。


「ぎゃぁ」


っと音をたて・・男は倒れた


「な・・・。」


俺は恐怖よりも先に、茫然とした


大男が・・倒れたのだ


「ちょーっと、いい気に乗りすぎ」


その声は・・・とても、俺と同じように


幼い声だった


「よわーい、ありえないから。こんくらいでぶったおれる?

 よわすぎ、よわすぎ」


目の前に道化師のようにケラケラと笑う少年


俺と同じ・・黒い髪


でも・・瞳は違った


真っ赤だ


まるで、血のような真っ赤な・・赤


そんな、真っ赤な瞳をした少年が俺の目の前でケラケラと笑っている


「・・・!?」


こんな、子供が今の・・あの大男を!?


「君、日本から?」


突然、そう聞かれた


「えっ」


日本・・?


こいつ・・。


とりあいずうなずくことにした


「僕もそうだよ。同じ出身さ。」


「・・なぁ、ここは・・夢なのか?」


カズラは・・問いかけた


どうか、夢だったらうれしいと思ったが


しかし・・。


「残念だけどこの世界もまた現実さ」


ニコっと場にそぐわない笑み


その時・・斬られたはずの男が起き上がる


「き・・キサマ」


「まだ、生きていたわけ?あーあ、残念。」


少年・・子供は、面倒そうに目を細めている


「子供のくせに!大戦の英雄になるこの俺様を

 愚弄するなど万死値する!」


すると、少年はプッと吹きだす


「・・あははははっ、ばかじゃないの。

 ・・そんなの、ただの無能がそういうんだよ。

 それこそ、歴史に名すら残せない奴のセリフ」


その途端、少年の赤い瞳が大きく輝き


「きさまぁぁぁ」


剣をふりかぶるが・・。


「永久に彷徨え。命あるだけ。マシと思いな」


その途端・・その光を受けた途端


「邪眼」


その赤い瞳によって・・。


「ぐわっ。」


男は倒れ・・意識を失った


「鴉の眼をみてしまえば・・お前は死確定だ☆」


鴉のように・・赤い、赤い


赤い瞳


「オマエ・・・誰なんだ」


俺はおそるおそる問いかけた


「僕は人呼んで”道化師”と呼ばれているんだ

 ・・・僕はクレーエ。本名は秘密だよ☆」


バサっと黒いツバサを広げる


子供なのに


この威圧感はなんなのか


クレーエは、それはもう凶悪に笑う


目の前の男を見て


「・・こいつ・・死んだのか」


「まさか、夢の中で彷徨わせただけのことだよ

 刺しても・・まぁ、無事だったみたいだしぃ~」


ニコニコっと笑う


まさに、反応が子供だ


でも・・先ほどの表情は・・。


うすら寒い


それは・・なんていうか現実から遠のいた世界だと


改めて気づかされる


クレーエは俺を見て・・なにか咎めるかのように


「・・君さ、初めてこの世界にきたのは悪いけどさ

 ・・こんな薄気味悪い世界にいるだけで君は勝手に死んじゃうよ。」


あっさりといった


それは重い一撃だ


「・・・・し・・死ぬ。」


リフレインする


死、死、死が頭の中でグルグルと回る


「そうそう、今大戦中だからさぁ、あっちこっち暴徒が多い訳

 おまけに・・」


まだまだ、争いをやむ声はしない


「こんな風に、荒れ狂った人間が多い訳。

 誰も止めるにも止められない。

 これこそが本当の悪夢なんだよねぇ。」


戦慄


茫然


すべてが、恐ろしく寒気を感じた


ぬくぬくとした日常から遠ざけられた不安


どこか、怖くて


どこか、恐ろしくて


だけどな


その時、俺は・・この目の前の少年の行動が


どこか・・勇ましく見えた


気づけば・・・俺自身がどこか高揚していた。


きっと、この状況の中、救ってくれたことで


感情が麻痺してしまったかもしれない


「で・も、君見たところ・・僕と同じように特別な力を感じる。」


俺に・・・力・・・?


その手を見ても何も力を感じ取れない


「・・・!」


その呼びかけは・・どこか、甘い誘惑だった


「どう?一緒に来ない?」


「・・・・。」


その時の俺はとても・・とても興奮していた。


そう、恐怖もあったけど


それ以上に・・心の中に・・何か生まれたのだ


「なぁ、俺・・強くなりてぇ。」


手が震えて・・笑いだけが口から出る


「妄信。ってなわけでもなさそうだねぇ

 その瞳・・興奮しているだけじゃなさそうだ

 恐怖、興奮、様々な表情が渦巻いた結果だねぇ。」


そう・・俺は今


興奮だけじゃない。


自分の中に生まれた感情に・・驚いているだけだ


「君・・名前は?」


「俺は神崎葛かんざきかずら・・。」


「神崎葛・・なんていうか、読みづらい感じだよねぇ

 ・・そだ☆」


そういいながらニコニコっと笑う


「君、今度からカズラ君と呼ばせてもらうからねぇ」


「はっ!?」


葛・・カズラ!?


「くすくす、よろしくぅ

 さぁ、この戦の世をかけようか。

 舞台はととのっているから」


舞台


それは・・この戦の世界でも言いたいのか


「・・・俺・・・生き残れるのか?」


その言葉に・・クレーエは


「世の中は汚い奴らばっかりだよ。カズラ君。

 そんな奴ばかりが生き残る世界だ。

 ・・それならば、世界を変えるしかないでショ。」


ニコニコっと笑った


「変える?」


それはそう・・、興奮が渦巻いて止まらなかった


「そう。そうなんだよ。カズラ君。この世界は悲しみも憎しみも

 すべて紙一重の世界なんだよ。だからさ、金なんていくらでも稼げるし

 それがすべてなんだよ。」


「俺・・・金なんか・・。」


バイトは好きでしていた


お金のことそんなに深く考えたことがなかった


突きつけられた事実が恐ろしく・・現実だ


クレーエは・・その喧噪の中・・俺に悪魔のささやきを言った


「人間、生きるには金がいるよ。

 ・・そして、それが問われる時なんだよ

 生きるか・・死ぬか」


「・・・!?」


生きるか・・死ぬか


それは、究極の選択だった


「君は・・・どっちだい?」


赤い瞳は・・問いかけに・・


俺に答えを与えているように・・それは、期待をしているんだろうか


「どっち・・・?」


ニコっと笑っているのだ


その時こそ


俺は


答えは一つだった


そう、変えられない過去


そして・・始まり


「イキタイ」


生きたい


生きたい


死にたくない


こんな所で俺は、渇望した


「何をすればいいんだ?金をかせぐならば

 俺は・・なんでもする生き残れるなら」


俺は必死にすがった


生きたかったから


とにかく、生き残りたかったから


「・・そうだねぇ、まずはこの大戦をくぐりぬけるとこからかな

 今・・意外と初めての中で邪眼を使って消耗しているだな

 これが。」


途端、クレーエはハァっと重いため息を吐く


「!」


よく見れば・・少年・・クレーエもまた手と足が武者震いをしていたのだ


「オマエ・・。」


偉そうなこと言う少年は全然、おびえていないように見えていた


でも、今冷静になれば・・俺となんら変わらない少年だった


「なぁ・・ここは・・どこなんだ?」


よくみれば荒地だ


でも・・向こう側は森が広がっている


「・・ここはね、なんと召喚士村付近なんだよココ」


「し・・召喚士・・村?」


初めて聞く名だ


召喚士ってあのゲームなどよくあるジョブだよなぁ


精霊や召喚獣を使役する・・そんなゲームのような


世界だけど


でも、現実だ


「そう、君は幸運だった。僕がこの村で、あるお方と一緒に

 戦っていること・・そして、召喚士村という僕たちのような

 落とし子たちが保護される幸せな村さ。 

 ただ、今は戦に巻き込まれたかわいそうな村になりそうなんだけど」


その時、俺は希望を感じた

 

「ほかに俺のような・・仲間はいるのか?」


そう、俺意外にも落ちた人がいることを


「いるよ、さぁいこう・・戦の世にある幸せな召喚士村へ」


「ああ。」


そこは、楽園でもなんでもない・・戦場だった。


でも、俺はどうしても生き残りたかったから


隣にいるクレーエに安心していたんだ


その時はまだ


クレーエも大きな狂いもなく


無邪気に笑って、真面目なことをしたり


ただ、たまに泣き虫になる普通の子だった。


そう・・あの方に会うまでは


クレーエは・・まだ、普通だったのだ・・・。


俺は、今でもそう思える


最初に落ちたあの日は


確かに俺は救われたのだから・・。



クレーエはこの時はまだ普通でした。

しかし・・すべてを変えてしまったのちに

まだまだ、続きます。

次回をお楽しみに

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