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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第4章 ~オルフェと呼ばれた者~
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過去編その⑦ 儚い想い

これで、オルフェ編は残すことあと1話です。

メノリ・・彼女は何者なのか明かされます。

では、どうぞ。

私は自分が誰なのかわからなくなる時がある

目の前が真っ暗になるほど

自分がなんなのか

誰なのか・・。

姿、形、すべて忘れてしまいそうだ。


狂ってしまうかもしれない・・。


「・・大丈夫だ。」


その暖かい手は、私にすべてを与えてくれたのだ・・。


                   *****




メノリは、にっこりと微笑を浮かべた


「お前・・一体何者なんだ・・?」

「・・・。」


オルフェは、問うが彼女は何も言わない

そして・・。


「私にはいろんな顔があるのは仕方ありませんけど

 ふとした時、何者かわからない自分がいるのも

 気づいているです。」


急に自分の顔についてのことを話始めた


「・・メノリ・・?」

「知っています?この容姿も偽物だとしたら、あなたも驚くでしょうね。」


「え・・。」


すると、今まで見せていた姿から

黒目、黒髪の女性が姿を現した

先ほどまでの、銀髪と青い瞳の(ヒト)からの変貌に我は

心底に驚いたのだ


「な・・。」


それは、この世には無い

黒い髪型

黒い目

ありえない程だ・・。

そんなわれの視線に気づいたのか


「王太子、信じないかもしれませんが、私は

 この世界の人ではないのです。」


「え・・。」


「・・ふふっ、変だろう?ありえないだろう?

 でも、これが真実なんだよ。坊ちゃん。」


「・・!」


そこには素に戻ったメノリが悲しそうに笑っている


でも、その瞳、言葉は嘘を言っているみたいには見えない

本当のこと・・なのか?


「仮に、お前がこの世界の者ではないとして

 なぜ、話を・・。」


「・・私にはもう与えられた時間がないんだよ。坊ちゃん」

「え・・。」


メノリはライドウの傍による


「時間が無い・・?」


「・・私自身、もうこの体では長くは持ちはしないんだ

 正確には、この世にいられる時間が少ない・・それだけのこと」


「・・長く・・ない?」


「私が表に出てきた本当の理由

 長くないからだよ。」


「・・・。」


すると、彼女はコホっと、何かを吐いた

それは、血だ・・。


「お前・・!!」


メノリは血を拭き取る


「痛くはない。痛くはな・・ただ、悲しいだけなんだ。

 そう、それだけなんだよ。」


「・・。」


狂っていく世界の中、メノリは黄昏る


「あたしがなぜ素性不明なのかこれで分かっただろう?

 でも、あたしにはまだまだ顔がある。あんたも知らない

 あたしの顔を」


「そのようだな・・我は疑うよ・・お前が

 魔女なのかと。」


すると・・


「ふふっ、そうだな・・もしかしたらのもう一つの顔は

 魔女なのかもしれないな・・笑えないよ。

 本物の魔女もきっと大笑いさ」


「・・。」


否定しないのか・・?

もしかしたら・・彼女は自分の存在が何なのか分かっていないかもしれない

それだけの存在だ。


「誰もあたしの存在は知らない。そう、娘さえも。」


彼女は自分の存在に疑問を持つ

それは・・奇妙な光景でもあったのだ


「・・お前・・。」


すると、メノリは気絶したアリアに近寄る


「アリアお嬢ちゃんには申し訳なかった

 王の狂気に気づき対処をしていれば・・。」


我は分っていた。

彼女は、優しい。

でも、彼女はそれを否定するだろう

それは、自分の存在がなんなのか分かっていから・・かもしれない。


「それともう一つ、アリア嬢ちゃんのことだけどな・・。」


我は思わずメノリを見た


「何かあるのか・・!?」


「・・彼女は恐らく元の瞳に戻れない可能性がある。

 力を限界まで放出した結果、後遺症が残る可能性がある。

 黄金の瞳から普通の瞳に戻るのはほぼ難しいかもしれない」


「元に戻すことは?」


我は絶望の中の希望を見出そうとした

だが、帰ってきた答えは絶望という言葉だっうた


「・・恐らく、不可能。恐らく王もそれが分かっていて

 あえて、アリア嬢ちゃんの力を放出させたのだろうな

 このままいけば力は放出されないまま、最悪だと死・・としてね」


「そうなのか・・・?」


絶望・・だけど、事実を知れば

良かったことでもあったのだ


「・・アリア嬢ちゃんはこれからその瞳に悩まされるだろう

 それが、ただ一つ何もしてあげられないあたしの・・後悔。」


「でも、お前は我たちに全力を尽くしてくれた

 きっと、アリアも・・。」


アリアは気を失って

起きる様子は無い

その姿にメノリは哀しそうな顔をして


「オルフェ、あんたは何も知らなさすぎだよ。」


「・・それは違う!!」


「いいえ、何もしらない。この世界もこの黒い歴史も

 だから、あんたはあたしを善人だと思ってしまう・・コホっ。」


「だ、大丈夫か。」

「・・まぁ、大丈夫。」


彼女には残された時間はもう少ない

それでも我に向ける瞳は強気だった


「・・・知らないか・・そうかもしれない。」


そう、知らない

だから、彼女の言ったことも

何もしらないから困るのだ

メノリは我を見て


「もし、貴方が王になるのなら・・外に出な。

 それが答えになるだろうよ。」


「外に・・?」


それは真剣な顔


「外にはオルフェ・・あんたの知らない未来や夢がある。

 だから・・生きろ。」


恐れる・・?

我はずっと王宮から出ることは無かった

恐らく、ずっと


「・・あんたは籠の中の鳥ではないの。だから、なんでもできる

 どこにでも行ける。それが出来るのもあんた次第。」


「我・・次第?」


「そうよ・・あたしはそこで王と出会った。彼もまた

 外にでたことで自由を知ったのよ・・。」


父も出ていた

でも、われにはそれを話してくれなかった


「・・これを受け取って」

「・・これは?」


それは、古ぼけた懐中時計だった

鎖がついて上品だが。

不思議な光沢感があったのだ


「・・それは、時・時計というモノよ。」

「・・時・時計・・?」


「ふふっ・・ある魔女が私にくれた最初で最後の贈り物

 最期の宝。」


魔女・・?


「・・受け取っていいのか?」


「ええ、あんたが悪用しないことを願うよそれに、どうせ渡すなら

 アリア嬢ちゃんに渡すのものいいねぇ。

 でも・・あんたが持つともっといいかもしれない。」


彼女は我に託したのだ

そして、それを握るのだ・・我は・・。


そして、我はメノリに今後のことを聞くことにする

恐らく、彼女はもう覚悟を決めているはずだから・・。



「お前はどうする気だ?」


すると、強気の瞳を我に向ける


素から・・仮面を被った女性の最後の笑みだった


「私は王と共に逝きます、それは妻であることを当然だから

もっと、あなたがたに話せばよかったかもしれません

 そしたら、答えはもっと違っていたでしょう」


違っていたか・・。

恐らく、我もそう思うだろう

もっと、メノリに関わっておけば

結果は少しは変っていたかもしれない。



「でも、仕方ないことです。もう終わってしまったことだから

 貴方にもう一つだけお願いがあります」


「何だ・・?」


「私の娘を頼みます。あの子は、私の宝です

 学者でありながら私はあの子に何もできなかった

 ですが、後悔はありません・・」


ニコっと笑って

すると、彼女は笑う

それは別れだった。


「お前の娘だろ・・?」

「私の娘だからこそ、守ってほしいです。私には

 これ以上はできません。娘には私の死に顔をみせたくない

 それだけです」


「決意は変わらないんだな?」

「・・ええ。」


変わらない決意

もう、我には止められないようだ

だからこそ・・。


「・・最期に一つだけ・・・」


「・・なんでしょう。」


「お前の望んだことは結局、何だったんだ?」


「・・そうですね、私の願望ですか・・教えておきましょうか」


「・・・ああ」


「私の望みはですね・・”帰りたい”それだけです。」

「・・・。」


「それは叶いませんでしたが、後悔はありません

 もう話はいいですね・・。」


交わる瞳

それは、親として人としての覚悟だ

彼女は、結局叶わなかった

そして・・。


「さぁ、行きなさい。私はここで終わります・・

 ありがとう・・・オルフェ」


初めて彼女は我の名前を言ったのだ

本当に最期・・だとその場で実感した


「・・お別れなの・・だな。」


「・・ええ、さよなら。若き王になる者よ

 あたしは、あんたに出会えて

 良かったよ・・娘を頼む」


「・・・。」


我は、振り向かずに去っていく

そして、刃物のザクっと音がしたのを

我は・・聞いたのだ。



「・・・さよなら、メノリ・カルディア・ラゥ・クランティア」


我はツゥ~っと涙を流した

それが、最初で最期の我の涙だったのだ・・。




メノリは王と共に生き、そして死ぬ

それが彼女なりの心情です。

それでは、残り一話となったので

最後までお付き合いしてくださいね・・それでは。

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