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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 四幕 黎明の約束
411/485

少年、獣の咆哮と別れ

今回は・・?

ヘドロのようなその魔物


でも、間違いない


「グォォォォォォ」


その声は野太くて・・とてもじゃないがホワイトソウルとは分からない


でも・・わかる


この子は・・ホワイトソウル・・だ・・!


旬はまさかの状態に何も言えない


それどころか・・。


カズラは、動揺している旬に声をかける


「ちぃ、旬!動揺している場合じゃ!!」


旬は迷っている


そして・・焦っている


「・・・わかっている・・わかっているよ!!

 なんで・・・なんで・・!!」


旬は、もう何が何だかわからない


思考が混乱をきたしたのだ


それは、ありえない予想外ことだったのだ


まさか、三つの力のうちの一つが・・ホワイトソウル・・だったんだ


その時、ヘドロ・・いや、ホワイトソウルから魔法が放たれる


(ブラッディ・スプラッシュ)


雨とは違う飛沫が襲う


それは、当たれば・・大けがだけではすまない魔法だからだ


カズラは旬の手を引き、避ける


その様子を高み見物している無幻


「ふふっ、お気に召しましたか?」


裾で笑いを隠すがしかし・・歪んだ笑みは隠すことはできない。


「・・・てめぇ、何をしやがった!」


カズラが怒りを無幻に向ける


「私の領域ですから。その領域に踏み入れたことで契約を交わしたのも同然。

 すでにあなたの知る・・”自我”なきのホワイトソウルなのです」


自我なき・・・!


それは・・すでに、敵であることを示している


「・・・召喚獣の意志を強制的に・・!!腐ったことを・・・!」


「ふふっ。あなたの剣が使えないのもその剣がこの精霊と同じだから」


そうか・・カズラは、自分の持つ剣を見る


これは、精霊には反応しないのか。


いや、精霊に通用しないのではなく・・邪悪すぎるものがすでにこの剣を超えている


つまり、浄化の範囲が超えているのだ・・。


「・・・!だから、か・・くっ・・俺にも魔法は使えるだぜ!」


そう、何もカズラは魔法を使えなくはない


しかし・・性質が正反対すぎるのだ


「おやめなさいな・・・無駄ですわ。」


「しゃらくせぇ無駄かどうかはやってみなければわからねぇ。」


カズラが助走をつけて走る


「カース!」


カズラが呪いを発動させて襲うがヘドロの状態であるホワイトソウルは

動くことはなく・・。


(リフレクション)


呪いは反射されて・・攻撃へと返っていく・・・!


カズラの呪いの力が・・!


それに茫然としているカズラは受け身をもとうとしているが


それが危険だと気づいた旬はとっさに魔法を使った


「カズラ君!!バリア!!」


弾かれた魔法からカズラを守る旬


しかし、思ったよりカズラの、呪いの力が強いのか後ろへと下がる


「旬・・!!」


すると、さらに、上機嫌で笑う無幻がいる。


王座に座り・・観戦しているのだ。この成り行きを


「だから無駄というのでしょう。あなたの属性では、傷すら負わせることなど不可能なのです。

 そう・・そこの少年にしかね・・しかし、できるでしょうか」


「何が言いてぇんだ・・・はっ・・!!」


カズラは思わず旬をみた


旬は悲痛な表情へと変わる


「・・・強すぎる聖の魔法はそのものを消滅へとさせてしまう。」


淡々と旬は言っているが・・その言葉一つ、一つが重い


「でも・・番人では可能じゃねぇか!!俺が・・。」


すると旬はふるふるっと首を横に振った


「番人の場合は、周りに闇が渦巻いていて斬れば元に戻った・・つまり、まぁ

 卵のようにね・・つまり、本体である番人は無事なんだよ・・」


そうあの時はそれでよかった


でも、次は


そうはいかない・・!!


「まぁ、カズラ君の・おかげだった・・でも、これは 闇に覆われてはいるけど・・

 変質してしまっているんだ。その元あった性質からね・・・しかも、剣が効かないと

 なると・・・俺の魔法は・・。」


旬はそこで黙る


見かねた無幻が代弁する


より、悲痛になるような・・演技で


「そう、次に聖なる魔法を使えば命などたやすく消える。」


「!」


うふふっと笑う無幻


カズラは旬がなぜ、ためらっているのか気づいてしまったのだ


「選択などすぐ変わるものです。その選択・・あなたはどちらにいたします?」


究極の選択だった。


魔法を使えば、ホワイトソウルの命が危ない


使わなければ・・自分たちの”死


「・・・できない。」


旬は初めて魔法使いたくないと叫ぶ


「・・気持ちはわかるが・・!!」


揺れる瞳がカズラを映す


そこには、黒の瞳は不安と動揺で混ざって


どうしようもない瞳だった


「できないよ・・だって・・・あんなにも・・・声が聞こえるのに」


旬は耳をふさぐ・・だけども、それでも聞こえる声に


旬は嘆く


「旬・・・お前・・聞こえているのか?」


こくりっとうなずく旬


その声は、助けを呼ぶ声でもない


それは・・・。


旬は無言になり黙る


しかし、容赦なく、ホワイトソウルは次の魔法を使う


暴動しているのか、魔法発動には加減が一切ない


(デス)


「うわっ・・死の魔法くそぉぉぉ」


カズラは、旬に振り坂る魔法を振り払うように剣で斬る


後ろへと押されるカズラは劣勢だ


しかし、カズラは負ける気は全然ない


むしろ、立ち向かっていくのだ


「うぐぉぉぉ、俺をなめるなぁぁぁ」


勢いよく火事場のバカ力で押し返す


そして、カズラは・・。


茫然と震えている旬に大丈夫かを聞く


「・・・旬、しっかりしろ!!」


「だって、だって・・俺・・!!」


それをうわごとのように繰り返す旬


できないんだ


あんなに・・・あんなに変わってしまって


助けてすら言わない・・


それどころか、聞こえるのは・・・。


「余所見は禁物でございますわよ」


魔法が振りかぶってく


旬は動かない


カズラは舌打ちをして


「こなくそ!!」


「ダーク・インパクト」


カズラは闇の衝撃で相殺させる

しかし・・


相殺された力はさらなる大きな力となる


カズラは吹き飛ばされる


「ぐぁっ・・!」


壁に身体ごと壁にぶち当たるカズラ


旬は、カズラに駆け寄る


「か・・カズラ・・。」


旬は・・不安でおろおろしている


そんな旬を見て・・カズラはバチンっと旬の頬を軽く叩く


「いい加減にしろ旬。オマエは・・足手まといだ。」


「・・・!」


「言っただろ!!情をかければ死へと回避は難しくなる

 お前は・・俺たちを殺す気なのか!?


「俺・・・俺・・・。」


・・・。


カズラは、旬の揺れている瞳を見て


痛い・・頬が痛いじゃなくて


心が・・とても・・とても痛いんだよ。


旬は・・歪む顔を見せる


カズラは・・そんな旬の瞳をまっすぐ見つめて


「・・・俺は、ホワイトソウルがどんな召喚獣なのか知らねぇ

 でも・・お前には、どのように見える?」


「えっ・・。」


旬は・・カズラからその視線を逃れようとする


しかし、カズラは・・。


「前を見ろ・・下ばかり見ないでくれ。俺の眼は不安か?

 現実から逃げる旬を追い詰める邪魔者か?」


そう、カズラが問いかけると旬はふるふるっと否定する


「チガウ・・カズラは違うよ・・でも・・俺は・・!!」


「・・違わないんだ。今だってお前は俺にそう思っている。

 だけどな・・気づけ・・お前にはホワイトソウルは

 何を訴えている・・受け止めろ。お前自身がやるべきことだ。」


どう・・見える?


旬は・・その向こう側を見る


そこには・・。


「グォォォォォォ」


雄叫びが聞こえる


それは、禍々しい声だけど


でも、旬には、別の声が聞こえる


(オネガイ・・・キッテ。)


その声が聞こえたのだ・・旬はこみあげてくる悲しみが襲う


それは、助けてではないんだ


もう・・暴走している自分自身を斬って・・・と言っているのだ


ムリダヨ


俺は、助けたいんだ!!


救いたいんだ!!


それだけなのに・・どうして・・!!


「・・・なんでだよ。どうして・・まだ助かるだろう?」


旬は語り掛ける


(コウイ・・ショウカンジュウハ・・オオキスギルジャキニヨワイ。

ココマデニナッタラ・・モウ・・ジガナキ・・シュンヲ・・コロソウトイウ

・・・ガイネンシカナイ)


明らかな拒絶


おそらく、それを覚悟をしてホワイトソウルは旬に語り掛けているのだろう


「嫌だよ・・救えない自分が・・弱くて」


(チガウ・・シュンハヨワクナイ。キミハ、ゼンリョクデヤクソクヲマモッテクレタ。)


「・・・・。」


グッと唇をかみしめる


(コカツノゲンインヲサグッテクレテ・・アリガトウ。

 ・・・イッショニモシカシタラタビデキタカモシレナイネ。)


「・・・・俺もだよ。」


もしかしたら、俺にも素質があるのなら


きっと・・楽しんでいけたかもしれない


(サァ・・シュン・・オネガイダ。

 キッテ・・ラクニシテクレ!!)


ホワイトソウルの決意の声が聞こえた


「・・・・・」


旬は杖を持つ手が震えるが・・・やらなきゃ。


旬は・・まっすぐに・・・。


「・・・今、楽にしてあげるよ・・・。」


杖をホワイトソウルに向けたのだ


「・・!」


無幻が驚いたのだ


旬がいきなり決意をしたことを


「旬・・・覚悟ができたんだな。」


カズラは旬のその光景を見守る


強い光が旬の杖に宿る


「光よ、無へと返せ!この場に静寂を!」


旬からあらゆるまばゆい光が集まる


ごめん・・ごめんよ


助けられなくて・・ごめんよ・・!!


「ルミナ」


美しい星の輝きのような大きな光が襲う


それは、今までにもない美しい浄化の光


それは、すべてを無に返すほどの強い魔法なのだ。


「グウォォォォォォ」


それを正面に受けたホワイトソウル


やがては、ピキピキ・・・っと音をたて


ガラガラっと崩れていく音がした


旬は・・その音を聞くたび


悲しくて・・苦しくて


たまらなくなっていった。


心はズキズキと傷んだ


魔法は、やがては・・すべてを無に帰したのだ


静寂へと・・導いたのだ


その時・・旬の手に淡い・・小柄な魂が収まり


(アリガトウ・・・シュン。)


小柄な魂は旬の手に収まり


小さな・・小さな召喚獣が姿を現した


それはもう・・息もしないのだ


旬は・・・顔を上げることはなかった


ただ、そこには・・泣かないと決めた旬が


今・・・一粒だけ涙を流した瞬間だった・・。

精霊の別れを経験し・・悲しみの旬

ですが、残る敵である無幻を倒すために

旬の決意とは・・?

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