少年、泣き虫の瞳
今回は・・・?
旬の夢の話から始まります。
シクシク
シクシク
シクシク
シクシク
シクシク
そんな声をあげながら
涙止まらないのか子供は、ずっと、ずっと・・そう、泣いている
悲しい
辛い
痛いと・・声をあげて
泣いている
それを別の視点から見ている・・俺がいる。
なんだか・・その子供は・・自分と似ていた
そう、黒い髪も
黒いけど・・少しだけ茶いろの入った瞳も。
幼い身体も
よくみれば
よくみるほど
これは・・・まぎれもなく俺だ。
そして・・ハッとした
これは・・幼い自分だと気づいた
「・・お・・おれ?」
俺は俺に近づいた
「ごめんなさい・・ごめんなさい」
ずっと、謝っている俺がいる
「・・・。」
・・そうだ、これは・・・幼い俺だ。
待っていても
待っていても
大丈夫だと言い続けた結果
・・・・・・。
旬は・・自分から目を逸らして
・・・・少しだけ・・悲しい顔をして
「ごめんな・・俺。」
それだけ・・言って
その空間の中で泣いている俺と何もできない俺が
そこにいるのだけだった・・・。
***
そんな夢を見ていた俺は
うっすらと・・・意識が浮上してくるのだ・・。
「ん・・・。」
旬はそっと・・瞳を開けた
そして、起き上がる
「・・・ここは・・。」
そう・・あれは夢か。
旬は、そっとあの時の夢を思い出している
泣いているのに何もできない自分がいた。
それだけが、旬の心にあったのだ
旬はそっと息を吐いた
それにしてもここは・・・?
「起きたか。大丈夫かー?旬」
そこには、たき火をして寝転がっているカズラの姿があった
「か・・カズラくん!」
なぜか、そこでのんびりとたき火をして平然として
寝転がっているのが見える
「僕もいますぅ」
「自分もッス」
寝転がったカズラの横には、たき火の上で魚をなぜか焼いている
ウッズとエミルの姿だった
「・・どうなってんのこれ?」
旬がガバっと起き上がって現状を聞くと
「ああ、旬は覚えていないか。あの時、吹き飛ばされたとき
旬は気絶したんだよ・・で、俺がウッズとエミルを掴んだわけよ。
感謝しろよな。旬」
どうやら、俺が気絶した後
カズラが、ウッズさんやエミル君を助けたようだ
「ホントウなの?」
すると、二人ともこくりっとうなずく
「そうッス。カズラさんが旬を助けるために自分たちを
掴んでさらに、重力を自由自在に使ってくれたッス」
「へへん」
自慢気だ。
今回はなんか、助かったからなんか言えないだよな
これが
「そのあと、旬は気絶していたから、カズラさんが旬をおぶってくれた
ですぅ。それで、ここで野宿していたですぅ」
「それは・・ありがとう。カズラ」
「いやいや」
それは、褒められてアタリマエのカズラ君がいる
まぁ、助かったのは事実だしね。
それにしても・・。
旬は空を見た
「野宿か・・・・ってか、何も見えないだけど。
夜の空もなにも」
霧で何も見えないのだ
不思議な空間だった。
不思議だったのは、どっから、その魚を獲ってきたのか知りたいよ。
「ほら、食えよ。」
魚を差し出すカズラに・・旬は思わず
「どっから、獲ってきたの。これ」
こんがり焼いて魚のニオイがプンプンっとする。
ようするに、食べごろだというのだろう
「あー、旬が気絶している間におぶった時みえた川だよ川」
「か・・・川っ!?ここは、仮想現実じゃないの?」
というか、ここもともと、王宮だったよね?
というか、川なんてなかったよ。
むしろ、あったことがすごいよこれ!
「あー、俺もよく知らねぇんだわ。ただ、あの女のことだ。
ついでに・・ここは・・最初は迷路だったんだ」
「迷路?」
それは知らなかった
それを聞いたエミルはこっくりとうなずく
「そうです。旬。ぼくたちが落ちた最初は迷路でした。しかし、突如
空気が変わり・・気づけばこのようなありさまです」
「自分も驚いたッス。どうしてッスねぇ?」
どういうことだ?
最初は迷路だったって。
でも、今は・・ここは迷路でもなんでもない場所だ。
「・・・まぁ、考えられるのは一つしかねぇさ」
カズラが言葉を切り出した
「どういうこと?」
旬は、焼き魚を食べながらカズラに問う
「誰か空間を斬ったんだよ。で、そこのボスやらを倒したんだろうよ。
それで、空間は別々にあらわれ・・まぁ、俺たちがここにいるってことよ」
となると、ラミア達ということか。
「ふぅん。じゃ、ラミアたちが・・。」
「だろうな。空間を切り裂くことはふつうはできねぇ。」
「無理なんッスか?」
それは、また・・初めて聞いたことだ。
「そりゃそうだろ。そういうのはできるのは逸脱している人間だよ。
まぁ、ラミアたちはその逸脱に入るからいいけどな」
「・・・いいんだ。それで」
むしろ、それはそれで困るよ・・いろいろ。
「ははっ。旬の仲間だからなぁわははは」
「笑っているですぅ。」
「・・・すごい豪快に言っているッスな」
確かに、言っていることが豪快だけども否定できもしないところが
当たっているからしょうがないだよね。
「出る方法はあるの?」
すると、ふるふるっと首を横に振って
わからないと意志表示するカズラ
「さぁな。ここが、何なのかわからないかぎりは無理だ。
・・・まぁ、あの女の考えていることはわかりたくもないが
一つだけ言えることは・・ここは、空間を切り裂いても無理だということだ」
「・・・!」
「・・でもま。出る方法はあるだろう。気軽にやろうぜ。気軽に」
その言葉に旬はますますあきれる
「気軽すぎだよ。カズラ君」
「本当に、すごい人なのかそうでもないのかわからないッス」
「でも、ホッとするですぅ」
その言葉にカズラはニッと笑って
「だろだろ?」
あいからず。マイペースだ
でも、憎めないんだよね。これ
「とにかく。ラミアたちが無事だということが
わかったし。よかった」
そう、無事だとわかっただけでうれしいというのは本当のことだ
「本当にすごい人みたいですぅ。ぼくは・・驚きました」
どうやら、エミル君は知らなかったようだ
当然か。
初めてあったうえ、そこまで実力あるなんて知らないもんなぁ・・。
「まぁね。ラミアと千里・・アニマは大丈夫だとわかるだよ。
・・千里は、召喚士だし、アニマは神獣。そして、ラミアはシーフだし」
「考えてみれば、バランスが良いよなぁ。」
カズラの一言に・・ウッズは心配そうな顔をして
「・・・じ、自分たちは大丈夫ッスか?」
「ははっ。安心しろって」
ニコニコっと朗らかにそれも気前よく笑うカズラを見て
安心するウッズ
そして、カズラは自分の肩を手でトントンっと叩きながら
「いやー、疲れた。疲れた。俺、もう寝たい。」
その言葉に・・。
「カズラさん、寝てばっかりですぅ」
「何いっているんだ。前は前・・今を大事にしようぜ。
エミル君」
キラっと輝く言っているが・・何気に・・。
「今って何いっているッスか・・ダメ人間のセリフッスよ」
「駄目人間以上ですぅ。」
それぞれの辛辣の言葉
しかし、カズラはめげない
それを見た旬は・・ため息を吐く
「・・・カズラ君らしぃ言葉だね。俺には少しうらやましいかぎりだよ」
「だろ?眠るのは大事だぜ。疲れ癒せるしな。」
カズラはニッと笑って近くの木寄りかかりゴロリゴロリっと横になる
「ふぅ。疲れたぜ。ここ最近、大変だったからなぁ」
その言葉で・・旬はピクリっと反応する
「大変だった・・・何かあったの?カズラ」
すると・・カズラは横になって・・ある話を始めた
「ああ。俺たちはな。旬を追いかけるのと同時に・・8年前について
調べているんだよ」
「・・8年前ッスか?」
「そうだ。」
こくりっとうなずくカズラはたき火を見つめている
そのせいか・・瞳は赤く見えたのだ
「・・・俺はな、どうも気になる噂が、最近出回っているんだよ」
「気になる噂・・?」
すると・・カズラは真剣な顔になって
「・・・ああ。その中でも面白い話があるんだろ。
旬、あの女・・無幻が言っていたろ。
今度こそ手に入れるって」
そういえば・・言っていたね・・あれは・・
意味がわかないことが多かったけど
「ああ。そういえば、未来予知がどうのうかと・・・・・あれ?
・・・でも、待てよ。マリンちゃんが、そうだとすれば・・・」
そうだ・・マリンちゃんの不思議な力のことだ
旬は・・・今感じ取ったピリっと今空気が変わった・・と。
「・・・カズラ・・まさか」
「ああ。そのまさかだ。未来予知がいるんだよ・・というかいたんだ。
この国に」
このドライアドにいたのか・・・!
未来予知が・・。
「・・・!」
そして・・カズラはそれぞれの顔を見て
ある人物の様子が変わったことに気づいているようだ
それをお構いなしに、話を続ける
「旬・・おめぇ、アイリーン・クラバットって知っているか?」
「アイリーン・クラバット?」
聞いたことない名前だ・・。
ウッズは、うーむっと考えている
「アイリーン・クラバット・・・・はてそういえば、自分、どこかで
聞いたことがあるような・・・。」
「聞いたことも何も・・お前は知っているはずだぜ。
エミル・クラバット」
すると・・エミル方に視線がいく
クラバット・・・!
そうだエミル君の名字だ
「・・・・。」
黙るエミル・・それを肯定だというのを確信させる
「アイリーン・クラバットだな。エミル・・お前の身内だろ?」
その言葉に・・ウッズはハッとして
「思い出したッス・・!八年前の・・未来予知の・・!」
その言葉で、エミルは・・どこか・・浮かない顔をしていたが
やがて・・は、顔つきも変わる
「そうです。アイリーン・クラバット・・僕の・・・・
お母さんです。」
そういって・・・エミルは初めてどこか切ない笑みを浮かべたのだった。
次回、アイリーン・クラバットの正体及び、マリンの秘密を暴きます。
お楽しみに




