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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 四幕 黎明の約束
402/485

少年、8年の月日

今回は、どうなるのか・・?

旬たちを見送ったアウロラ


そして、霧に隠れた・・空をジッと見つめている


「どうした?」


そして、アウロラは、見えもしないそらをみて


あの頃を思う・・。


少しだけ目尻を下げて


「・・・8年というのは、私にはとても・・いや、かなり短いものです」


「そうだな。お前にとっては、人の一生はあっという間だよな。」


そう、私には人の一生など


ほんのまばたきをすれば・・一瞬でしたすぎない。


だけど・・。


「・・・人外を何百年やっていれば8年なんて短いものだと思ってはいましたよ 

 でも・・その8年が珍しく長く感じました・・・。」


そう、今はとても長いと思っている


そのまま、瞳を閉じて・・静寂が続くと思った


「それは人間も同じだ。アウロラ。」


その時・・私は・・そっと瞳を開けた


そこには、どこか、空虚なジェイドの姿があった


その言葉にアウロラも・・・なんとなく理解したのか


クッと口を緩める


「そうかもしれませんねぇ・・でも、私は、絶望と希望のどちらかに

 人は傾いていくんじゃないかと思うのです・・・今回もまた・・。」


アウロラは思い出す


小さな子供たちを置いていった人間


そして、その前日に・・自分がここにいなくなることを

話した・・人間。


絶望に傾いていったあの日を忘れない


「そんな悲観するな。」


思わずアウロラはジェイドを見た


「えっ・・。」


「お前は人間の底力を知らない・・どんなことがあっても諦めない

 力強さがある・・信じろ。」


「・・・!」


信じ・・る?


考えたことない言葉に・・理解ができそうにもないアウロラ


だけども、あまりにもジェイドの変わりように驚く中で


少しだけ茶化させるアウロラ


「ジェイド殿も少し、変わりましたね。あんなに、嫌悪していた人間に。」


そう、私は知っている。


ジェイド殿は、自分を嫌い


そして、自分の周りにいる人間すら嫌悪している。


自分の身内や仲間以外には辛辣だ。


「・・・旬に出会ったからな。」


「・・・あの子のこと?人間なのに、不思議です。」


旬は、初めて会ったときから不思議だと思った


真っ黒で少しだけ茶色が混ざった瞳を見つめられると

なんだか・・少しだけゾクっとしたのだ


それは、おそれなんかじゃない・・別の何かだ


「・・でも、お前は人間の為に力を使っただろう?」


「・・・。」


そのまま、くすっと笑って


「・・約束したから。」


クスっと笑うアウロラ


少しだけ過去を遡らせる


めったに、思い出すこともない過去を。


それは最後の懇願


消えるはずもない・・言葉は槍となり私の心を突き刺す


”アウロラ様、お願いします・・時がきたら、エミルとその仲間たちの

 支援をお願いします”


”お前、何言ってんです?”


”・・・今は、何も知らなくていいですから・・・。

 あなたは、きっと、人間になりエミルの友達に力を貸してくれる

 そう・・信じていますから”


”・・・もう、かえってこないのか?”


”・・・わかりません。だからこそ、アウロラ様・・私の最後のわがままです。”


そのまま・・・その言葉は未来予知の女の最後の言葉だった。


そう、知っていたということだ


これから起こる向こう側を・・。


「・・・・。」


唇をかみしめるアウロラ


それを見て・・ジェイドは何か気づいたのか


「・・・お前」


そうなる前に、アウロラは明るく笑う


「・・・なんてーね。ギルドの仕事ですからこのアウロラ・ターミガン

 旬君が帰るまで切れ目を閉じないように頑張りますよぉぉ。」


アウロラはただ、空間の切れ目を見て


静かに・・旬たちが帰ってくるのを待つことにしたのだった



                       ****


空間の切り目から入り込んだ旬たち


そこには・・・何も見えない


「霧だよ。旬」


「・・・そうみたいだね。周りを覆って何も見えない」


「見えないッス・・こ、怖いッスな」


「だから、うちの裾を握るな!ウッズ」


(アニマモ、コワイ)


そのウッズの後ろで怖がっているのはアニマだ。


「・・・霧で覆われて何もわからないですぅ・・旬、本当に

 ここにマリンが・・?」


「おそらくね・・どうしたのカズラ、千里?」


「いるぜ。この嫌な感じ」


「・・・僕も感じるよ。この嫌な感じだけは・・。」


辺りを見渡すカズラと千里


その様子は、ひどく警戒しているようだ


「これは、面白い。」


「・・!!」


すると・・霧からこちらと歩いてきたのだ。


そこには・・妖しい雰囲気を持った、桃色の瞳と白髪を持った


どこか、浮世ぼれしていそうな女性が現れた


ヒールを履いているのか、カツーン、カツーンっという音が聞こえる


「だれや。あんさん」


ラミアはナイフをだし威嚇する


千里も、カズラも・・武器を持ち・・それはもう威嚇どころではない

今にも戦闘に入る勢いだ


女は、桃色の瞳を揺らして


「ようこそ、霧の城の内部へ。」


そう・・いったのだ。


「霧・・の城!?」


しかも、内部といった。


すでに、入り込んでいるわけか。


まぁ、アタリマエか。


「そう。今はここはわたくしの支配下。

 霧は私の専売特許・・。さて、初めまして

 私は、無幻。」


その言葉と同時に・・カズラと千里が攻撃を仕掛ける


「てめぇの話はどうでもいいんだ・・去れ!」


「そうだよ。僕たちはお前がいるだけで虫唾が走る!」


千里は、水の魔法を使い


「ウォータスプラッシュ」


水しぶきが襲う


そして、カズラは無の魔法


「グラビトン!」


カズラは、重力の魔法を使う


しかし・・・


「通りむけた・・!?」


そう、攻撃が効かないじゃない・・


幻のように通りむけるだけ


「・・残念でございました。わたくし自身は、幻の身なので

 攻撃しても効きません。おわかりでしょうか。」


上品だが、どこか俺たちを見下すような感じだ。


なんか、腹立つ


「本体はどこにあるんや。あんさん、自身は。」


「あらあら、本体・・そうですわね・・きっと、あなたたちが知っている場所かと

 思われます。うふふ」


「なんか、腹立つわ」


(アニマモ、ナンダカスゴクイラダツゾ。)


それぞれが、その無幻の言葉に腹が立っているようだ


だが、旬だけは冷静に


「何が目的?」


「目的ですか。小さなお姿ですのに、しっかりしておりますゆえに。

 ふふっ・・そうですわね・・未来予知の復活をさせると言ったらどうしましょうか?」


その言葉に・・エミルの顔色が変わる


「お前!!マリンをどうするつもりです!?」


エミルの怒りの叫びに、無幻はあらあらっと頬に手をやり


「嫌だ。怖い怖い・・未来予知はあらゆる可能性が含まれいますの。

 そう、8年前に、あれは別のやつらに奪われてしまいましたが

 あなたの妹は・・われわれがいただきますよ。うふふ」


その言葉に、カズラが叫ぶ


「てめぇ・・!」


「許せないよ。僕が、お前を・・!」


どこか怒りに呼応されている千里とカズラ


「許せない・・ぼくが・・!」


それを見た旬が三人を止める


「落ち着いてカズラ、千里・・エミル君も!」


「わかっています・・でも、でも・・許せない!

 マリンをこいつなんかに!」


それは、怒りよりも憎しみだ。


ラミアは・・エミルの頭をコツンっと軽くたたく


「ラ・・ラミアさん」


「・・落ち着けや。腹が立つけど、相手の思い通りになってはあかん。

 なぁ、無幻はん」


ラミアが、どこか退屈そうにしている無幻に問いかける


「なんでございましょう。」


「あんさんのところに行くにはどないすればええ?

 あんた、わざとうちらを待っていたんやろ?」


ラミアは鋭く尖るような・・獣の瞳を無幻向けた


そう・・ラミアも怒っている。


それもものすごく。


だけども、その激情を抑え込んでいる


俺だって、怒りが半端ない


でも、冷静でいなければ・・敵の思惑になり、思うつぼだ。


「そうですねぇ・・・あなたたちは、これからバラバラに散っていただけます。

 そう、この迷宮と言える、この霧の城の迷宮にね。」


「霧の迷宮・・。」


旬がつぶやく


そして、何か怒りに触れたのか・・カズラが叫ぶ


「てめぇ・・!俺らをバカにしてんのか!?」


その言葉に・・フフフフフフっと笑い続けている無幻


「・・あなたたちと賭けですよ。無理難題をこなしてきて

 ごらんいれなさい。そして、見事たどり着いた場合には

 私自身がお相手にすることをお約束いたしましょう。」


「約束は、守ってくれるだよね?」


旬の言葉に無幻は・・ウフフっと笑って肯定する


「ええ。この無幻。約束だけはお守りしますわ。」


それは約束という名の勝負が始まった瞬間だった


その言葉にそれぞれが・・宣言する


「そう。じゃ・・楽しみにしているよ。」


旬のその言葉に面々も同じように・・。


「ああ・・首を洗ってまっていろよ・・俺が、お前を倒す。」


カズラはガルルルっと獣のように吼える


「そうだよ・・せいぜい、命日だと思いなよ」


「そうッスよ・・・自分も許せないッス・・必ず行くッス」


(アニマモ・・ソノクビヲ・・ナ。)


「ぼくも・・お前を許せないから・・必ず倒す!」



なんか、言い方が怖いというか荒い


まぁ、容赦なしということか。


しかし、目の前の無幻が笑顔だ。


崩すことのない笑顔に不気味に感じる旬


「あらあら、血の気荒いですわね・・まぁ、よいでしょう。

 ・・・吹き飛ばされてしまいなさいな。」


突然、突風が舞う・・・飛ばされた旬たち


その瞬間、その空間ガグニャリグニャリっと変化しだす


「うふふ。では、お待ちしておりますわね。」


うふふっと高笑いが響きそのまま・・霧の中に消えた


「旬!」


「カ、カズラ」


「大丈夫か!?」


「ああ・・俺は・・」


向こうでは・・ラミアの周りには、アニマ、千里がしがみついているのが

見える


「・・・ラミア!千里たちを・・!!」


へばりついている、アニマと千里を落とさないように握りしめる


すでに、放り出されようとしているラミアは旬に叫ぶ


「ああ・・わーっとる!あんさんは大丈夫なんやな!!」


「うん。」


「うちらは大丈夫。あんさん・・死ぬなよ」


そのまま、どこかに放り出されたラミア、千里、アニマ


「必ずまた会える・・旬・・あいつらを助けよう」


「う・・・うん!」


そのまま、旬とカズラは、放り出されているウッズとエミルの元へと向かう


「うわぁぁぁッス!エミル君、自分につかまっているっすぅぅ」


「は・・はいですぅ」


突風の中で、捕まるウッズとエミル


「旬、いくぜ」


「う・・うん!」


旬は杖をもって


「ムーブ!」


そのまま、エミルとウッズを自分の元へと引きよせる


そして、手を差し出す旬


「ウッズさん、エミル君・・・俺につかまってぇぇぇ」


その途端、グニャリっと大きく曲がる


「「「「「・・・・うわぁぁぁあ」」」」」


それぞれがグニャリっと曲がった瞬間


それぞれが・・・別々へと放り出されたのだった。

次回それぞれの視点からはじまる

迷宮に迷い込んだ旬たちは・・?

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