少年、お人よしの旬
今回は・・?
旬はマリンの行方を追うために
ラミアの”探知”を使いマリンを追うことにした
玄関の前で、ウェインと旬たちは話す
「本当に大丈夫ッスか?」
ウッズは、心配する
いくら、旬と千里の治癒魔法で傷の大半に癒えたとはいえ
まだ、万全ではないのだ
「わしのことは大丈夫だ。後片付けしないといけないのでな」
荒れたクラバットの後片付けをするようだ
「・・おじいちゃん・・。」
エミルは、涙目だ
すると、わしわしっと頭をなでる
「泣き虫が、いい加減に泣き止め」
「・・・ぐずっ。」
それでも泣き止まないエミルにふぅっとため息を吐く
「旬、エミルを頼んだ・・こんな泣き虫でもわしの孫だからな。」
すると、旬は承知したのかこっくりっとうなずいている
「はい。ウェインさんも、少し、休んでくださいね」
「そやそや、もうじじいやからな。」
ケラケラっと笑うラミア
すると、憤怒していたが・・やがて、ニィっと笑って
「じじいとは失礼な小娘じゃ。しかし・・ありがとう」
すると・・少し頬を赤くして
「ふ・・・ふん//」
照れたラミアはそのまま、そっぽ向いて
「道はつながっているうちに急ぐからな
休めや!じじい」
そう捨てセリフを言って
さっさと探知からでてきた青い影を追うラミア
そんなラミアを見て
「あ、待ってくださいッス」
「早いな。ラミア俺もいくぜぇ。」
カズラとウッズは走り出した
その様子を見ていた旬は一言こう思った
照れ屋だよ。ラミア
旬はそのことを心の中で思った
本当は、ウェインさんのこと嫌っていなかったみたいだね
あんなに喧嘩をしていたけど・・。
気分は、ツンデレってやつ?
旬はそう思っていると・・横から、どこかため息を漏らした
ウェインの姿があった
「素直じゃない娘じゃ・・旬」
だけど・・その顔は怒っていなかった
そう・・朗らかに嬉しそうだったのだ
「・・・ラミアは、照れ屋ですから。」
なんだか・・本当のことをいえば・・仲が良いのかもしれない
そして、真剣な顔になり、旬の頭をなでる
「・・・けがをするなとは言わん・・ただ、無事に帰ってこい」
その手は・・やはり、孫のように優しい手だった
エミル、俺、千里の順に頭をなでてくれた
(ジジイー、アニマモナデロ!)
ナデロ、ナデロっと騒ぐラミアを見て
「おや、・・もしや、あの童か?」
(アニマハアニマダ。ジジイ、ハヤク)
腰を下ろして・・アニマの目線を合わせて
「よいよい、めんこいのぉ」
(フフン、アニマハマスコットダカラナァ。)
気持ちよさそうに目を閉じるアニマ
そして・・また立ち上がり
「気をつけてな。」
「・・ええ。もちろんです。」
「任せてよ」
「行ってきます。おじいちゃん」
ウエインに見送られ
旬たちはクラバット邸から離れる
ラミアたちの所まで歩く旬
少し歩いて・・アニマが立ち止る
(ゴシュジン。キリガハレナイナ)
アニマは空を見上げてそういと・・
旬も空を見上げた
千里も・・エミルも同様だ。
霧は月を隠し
空を覆う
まるで・・何かを始めるかのように
空を覆う・・・霧は、妙に不気味で怖い
旬はそれをじっと眺め・・やがては・・。
「・・さぁ、行こうか」
その言葉を聞いて
千里は・・旬に
「旬、僕は、力になるから」
「ぼ・・ぼくもです」
千里の覚悟した顔
あわあわっとしたエミル
「期待しているよ」
千里とエミルがコクリっとうなずく
「しゅーん」
「はよせぇ」
ラミア俺を呼ぶ声がする
「さぁってと、俺もいこうか」
(マッテー、ゴシュジンアニマモイクー)
アニマは、旬に着いていく
その後ろ姿を見ている・・千里、エミルは・・。
「不思議な存在ですね・・旬は、見知らぬ何も言わない
ぼくに・・力を貸してくれる・・。」
旬の後ろ姿を見て・・そう言って
どこか、下を向いてるエミル
なんていうか、落ち込んでいるのがわかるのだ
そんな、エミルを見て・・千里は、少しだけ
寂しそうな顔をして
やがては・・明るく笑う
「それはきっと・・生粋のお人よしだからさ」
「お人よし?」
思わず顔をあげて千里をみた
そこには、明るくて、前を歩く千里の横顔が見えた
「僕は、旬の親友を何年も続けているけど・・旬は、昔から変わらない
困った人を見捨てない・・どんな理由があっても最後まで力になってくれる。」
千里は過去を思い出す
救われた自分の・・記憶を。
そして、だからこそ力になりたいという思いがある
振り向きエミルにニコっと笑う
「・・・!」
疑う必要性なんてない・・笑顔だった
「・・だから、安心してよ・・エミル君のことを見捨てないよ。
この僕だって見捨てない。」
その言葉で・・エミルは・・涙を流そうとしたが
泣いちゃダメ・・!
そう思ったのか手で涙を拭く
そして、涙でぐちゃっとした顔を拭いて
どこかさっぱりした顔つきになった
「・・・なんだか、うれしくなりました・・ぼく・・かならず
旬や千里さん・・そして、みんなの力になります」
「その意気さ・・さ、行こう」
千里はにぱっと太陽のように笑う
それを見て・・
歩き出すエミル
その顔は、先ほどまでの悲しみの顔じゃなかった
何か・・・大きな決意をした姿だった。
****
「どうやら、短い距離みたいやったな・・・。」
探知の青い影は・・・どうやら、旧王宮通りから・・まっすぐ
つまり、王宮へと続いていた
そして、青い影は・・王宮の中へと消えていった
「王宮みたいだね」
ピタっと止まるラミア
それぞれが王宮を見ている
そして、驚くことに気づいたウッズ
「・・・!鎖が解き放たれているッス!」
「えっ・・・ほ、本当だ」
旬は、鎖で中に入れないように厳重だったのに
最初から鎖なんてなかったかのように・・開放全開だった
しかも、怪しい異空間が見える
「ぼ・・ぼく、久しぶりにみたですぅ・・こんなに、開放された
王宮をみたのは・・。」
エミルはジッと、その扉の奥を見つめている
どうやら、開放されているのを見るのを久しぶりだったようだ
「どうやら、わざわざあの穴に侵入せんでええなぁ・・って旬、千里はん
どないしたん?」
旬と千里は、この巨大な魔力を感じ取っているのか
二人にして・・嫌そうな顔をする
「罠・・だよね、旬」
「・・・禍々しい何かを感じるよ。とても強い・・力だ」
すごい、嫌な魔力を感じる
なんていうか、飛び出し禁止という何かを感じる
「俺、入りたくねぇ・・見ろよ、城は赤く禍々しく光ってやがる。
・・あんなの、俺だったらお断りだ。」
カズラが指摘されて改めて全員でその・・王宮・・もとい、城を見た
そこには、赤く光って王宮・・そして城
赤く光っている・・なんだ、この色は。
「なぁ、先ほどの時は・・あんなに光ってへんかったよなぁ?」
「確かに、俺も見たけど・・光っていなかったよ」
そう先ほどと言っても半刻前だけど
なんだか、ちょっと、見ないうちに全体的にヤバイ
嫌な予感がビンビンしかしない
「入りたくないッスな。なんか、いやな予感しかしないッス」
ガクガクっと震える足を見て
ラミアはため息を吐き
「んな、ゴタゴタっと言わずにはよせんか」
ラミアがウッズの後ろを軽く押す
「うわっッス」
その時・・・バチィっと音がした
「・・・ウッズさん!」
本人は手がバチっと当たった程度で
そんなに大きなけがではないようだ
「い、痛いッス・・今、バチバチっと・・!」
ふぅふぅっと自分の手を冷まそうとするウッズ
すると、千里は門の前を杖で触れると
バチバチっと音がした
「・・これは、結界だ。用意周到だ。あの女。
・・・面白いことをしてくれるね。まったく」
「俺たちを入れたくないんだろうな。
あの女の考えることなんて理解したくないぜ」
今にも、クスっと笑う千里・・そして、嫌悪の表情のカズラ
その結界を見て・・ラミアは一言
「どないする?旬。うちでもこれは無理やわ。」
(ゴシュジン?)
「俺でもできるけどさ・・なんか、攻撃が跳ね返ってきそうで怖い」
「それなら、僕がバリアを張ろうか?」
「うん、そうしようか。一人でやるとなると
かなりキツイし」
旬はその結界に何か思うのところがあるのか
杖を取り出し、魔法を唱えようとすると
「待て」
どこからか声が聞こえた
面々が振り向くと・・そこには・・。
知的なメガネと長髪の水色の髪、アメジストの瞳
中立であることを望む
図書館の館長・・ジェイド・アプリクスさんだ。
なぜか、そこにいつのまにたたずんでいたのだ
気配もなく
「なんで、ここに?ジェイドさんが?」
「だ・・誰ッス?」
(ダレダ?)
「ジェイド・アクリプス・・噂では、この国の
中立的な図書館の館長だね。」
千里が詳しく解説している
「ほぉ・・そうなのか?」
静観している面々
すると、うっすらと射抜く瞳
それをヒッと声を出す・・エミル
「か、館長先生・・なんで・・ぼくを止める気ですか!
ぼ、ぼくは止まりませんよ!」
エミル君がそういうと・・ジェイドはフッと笑う
「大丈夫。お前たちの不利益なことはならない。
むしろ、止めることはしない」
その言葉にエミルはホッとしたが・・またハッとして
「で・・でも、なんで館長先生が・・!」
エミルがおろおろとしていると・・・ジェイドはジッと
その王宮を見て、そして旬たちを見渡して
「妙な気配を感じてきてみれば・・開かずの王宮が開いていた
・・君たちを待っていたのだ」
待っていた?
「うちらを・・待っていたんか?」
すると、コクリっとうなずくジェイド
「なんで・・ッス?」
すると・・旬に深く礼をするジェイド
「えっ・・!」
驚く旬
「・・・番人の件・・ありがとう、旬・・そしてそこの・・小僧も」
「小僧?俺のことか?」
カズラは自分のことを指にさす
そして、それにうなずくジェイド
「そうだ・・結果的に、何もできないからな、図書館の館長としては・・中立的な
立場を保つ者には・・横入りは不可能だった。ありがとう」
そうか・・中立的なジェイドさんは干渉はできないんだ。
だから、あの時も・・あんな顔をしていたのか・・。
「いえ、どちらかといえば・・カズラのおかげですから」
隣でヘヘっと自慢気で笑っているカズラが見える
当然、後ろではそれぞれが、しらーっとした瞳でカズラを見ていることを
カズラは知らない
「・・そうか。とにかく、礼をしようと思う。
ここの結界を開けることができる」
「えっ・・!でも、それは俺がしますよ?」
旬がすかさずそういうと・・ふるふるっと首を横に振る
「これは、ふつうの魔法では開かないのだ」
「えっ・・魔法ではダメなんですか?」
「・・・ああ。解除法を知っているのは私と番人
・・そしてもう一人だけだ」
そういって門の前をたたずむジェイド
それを聞いたエミルは驚く
「か、館長先生が開けるですか?」
「その通りだ・・私がこの入口の結界を壊そう
と、その前にこいつにも協力をしてもらおうと思ってな
もう一人の解除者だ。」
「こいつ?」
キョロキョロっと姿を見ても
誰の姿も見えない
「姿・・見えないッスけど」
「な、どこにおるんか?」
すると、ジェイドは苛立ち
「さっさと、しろ・・!いつまで隠れている気だ。」
すると・・闇から姿を現した一人の人物
「へいへい、そんなに怒らなくていいじゃないですか館長どの
出張だっていくらでもしますって・・そのために、ギルドはあるもんだし」
どこか呆けたような言葉を出す声
「この声・・!」
そうして闇から姿を現したのは・・。
「あ、アウロラさん」
そして、旬を見て・・
そこには、緑色の髪・・そして・・琥珀の瞳
うっすらと光らせる瞳・・。
「アウロラ・ターミガン。ただいま参上いたしましたー。」
そこには、ギルドの受付のはずの
アウロラ・ターミガンが姿を現したのだった。
旬は、優しいです。でも、たまに人を見ると
心の中でつねにモンモンっと考える現代ッ子です
さて、アウロラ・ターミガンの正体とは?
次回、明らかになります。




