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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第4章 ~オルフェと呼ばれた者~
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過去編 ~幼き剣士~

アリアとオルフェ・・いえ、ジンの出会い

彼らがどのように出会ったのか

そして、始まります。

最悪の光景

それは、我には忘れられないこと

深い傷となって

やがて、蝕むのだ

そう、それが・・・。

夢ならば・・きっとよかったのに

現実はとても酷だったのだ・・・。


  *******



それはすべて始まりだった

幼い我と母に起こった悲劇

母上と我は何者かに襲われ

我は殺されかけた

けど・・母上は我を守って

血を流した・・。

それは、大量出血となり

もう・・手遅れだった


「オルフェ、よく聞きなさい・・誰の責任でもないことなの。」


「は・・ははうえ・・。」


「・・オルフェ、最期だけど、母はお前が息子でよかった

 あり・・がと・・ね。」


母の顔は安らかだった 

血を流しながら我を庇った母上は笑っていた

もっとも、それ以上我の心の傷となった出来事だ

世の中は、弱肉強食

まさに、そんな世界だった

その場にいたのは、我を守るように抱きしめた母の姿


我は、涙は溢れるばかりだった

王宮という世界は狭くて

そして、恐ろしくて


忘れることはできなかった・・。


「・・母上・・。」


茫然としているうちに、時は進む


葬儀の列に我はいた

我の母上は、父上の正妃だった

恐らく母を憎んでいる

何者かによりって



「涙を流すのはこれで最後だ。泣くな」

「ち、父上・・。」


幼い我は泣いていた


「つよくなれ、オルフェ」

「・・父上・・・。」

「大丈夫だ、母は、お前を見守っている」


涙はこれで恐らくもうないかもしれない・・。



月日は流れることは早かった

あれから、我は強くなることを決心したのだ

そのために修行を続けていた


「・・ぐっ・・。」


痛みを抑えながら今日も剣の修行

我は、信じるということがわからなくなった

ただ、母上の言葉だけが残っている


くすくすと笑う何かが聞こえた

「無駄よ・・無駄」


そこには、幼い少女がいた

青い目をした強気な少女


「・・・アリスティ姉君か」


そこには、偉そうな態度をしてふんぞり返っているまさに

女王様ってところか・・。


「・・ご苦労なこと・・こんな修行ばかりして

 なんになるというの?」


「・・ふっ、われにはそれしかないからな」


「・・くだらないわ。帝王学とか王太子はたくさん

 学ぶべきことがあるというのに・・!!」


学ぶべきもの・・か。

そんなもの守れなければ何も無い


「いくら知識があろうと本当に守れるものがなければ何もない」


「・・くだらないわね。」


フッと笑うその姿


「くだらない?」


ムカっとした我は睨みあうこと数秒

そのうち、頭の中で、なぜか

どうでもよくなり

去ることにした

アリスティは、ムッとして


「私たちは、王族よ・・!!他になにがあるというの!!」


「・・他に?」


振り返り、笑みを浮かべるオルフェ

アリスティは、怒りのケージが上がる


「覚えていなさぁぁぁい」


そう叫んで去っていく姿は負けを認めている証拠だ


「我は、それ以上もそれ以下もなく、守るべきものために

 戦う・・それだけだ」


独り言を我は呟いた

けれども、その相手には伝わることはなかったのだ・・。



「なによ・・」


イライラしながら

その辺の木に当たるアリスティ

父上の側室の母親を持つ

優秀なのに・・いいえ、違う

“混血”のくせに・・。

ズキっと何かが疼く


「なによ、ただか、血の違いなのに・・なぜよ。」


血の・・違い

純血と混血

その違いだけで私は疎まれている・・。


がさっと何かの音がした


「え・・。」


後ろに振り向いた瞬間光ったのは鋭い剣


「きゃぁ」


アリスティは、避ける


「・・あ・・・ああ、あなたは・・。」


「さるお方の命により、アリスティ第一王女様

 あなたの命を頂戴させていただきます」


「な、なんなの」


剣は鋭くアリスティに向かってくる


「いやぁ・・し、しにたく・・。」


混血の・・くせに

その暗殺者の声に私はもう心も体も

痛みを訴えている


「た・・たすけてぇぇ」


すると、ザッと小さな影が見えた


「なら、われが助ける」

「え・・。」


そこには、オルフェが暗殺者に立ち向かう

姿があったのだ


「お・・おるふぇ・・。」


「・・姉君は隠れていてくれ」


「む・・無理よ、あんなの勝てっこないわ!!」


「・・やってみないとわからない。」


我は、暗殺者から避け

鍛えていた剣で、戦う


「これは可愛らしい王太子様だ、手間がはぶけた・・やれ!!」


ザッとオルフェに向かってくる剣

我は、剣を前にして呪文を放つ

無駄な訳がない

この数年の努力

見せてやる・・!!


「すべてを無に変えよ・・残無剣」


すると、暗殺者の間に、ブラックホールが出る


「な・・なな」

「いけ!!」


オルフェの声と共にブラックホールに吸い込まれる

やがて、一人もいなくなった


「なんで・・私を助けたの・・!?」

「・・・。」


我は無言になる


「・・知っているでしょ?私は混血なのよ・・この曖昧なる存在

 獣人にもなれやしないの・・そして人でもない。この恐れた

 曖昧なる存在・・恨めしい存在・・。」


曖昧なる存在・・。

そう、今のこの王宮にとって混血は、苦しい世界だ。

だから、姉上は今まで・・。


「・・そうよね、私は殺されて当然なのよ・・」


うつむいて何も言わない


「・・・我は・・そうは思わない。」


だから、言える

ここで終わりなわけがない


「え・・。」


「死んでいい人なんていない。姉上が、混血だろうと

 我は関係ない・・だって、我にとって姉上は

 家族だから・・。」


その一言で、アリスティの姉上の瞳に涙が溢れる


「・・そんなの、ただの戯言じゃない・・。」


そして、泣いたアリスティは

それはもうすごかった

でも、何かすっきりした顔になり


「・・・私の名をアリアと呼んで」


「姉上?」


「・・これからはオルフェ、姉としてではなく一人の王族として

 貴方を支えるわ。それが答えよ」


「そうか・・。」

「だから、姉なんて関係ない・・アリアと呼んで」

 よろしく、オルフェ」

「・・よろしく、アリア」


それから、我とアリアはまもなくして

ソリドゥスを加えた

三人で行動する

それは、また別の話だ・・。


        ~月日は、流れる~


「オルフェ!!」

「なんだ、アリアか」


そばにはソリドゥスを仕えている


「アリアか、じゃないわよ」

「見なさい・・あれを!!」


「白衣・・?」


見慣れない白服に、ジンはまばたきをする

アリアはその姿を知っているのか


「誰だ、あの方は?」

我は首を傾けた

見慣れない白の学者である証の白衣


「・・あれは、メノリ・カルディア様だわ」


「メノリ・カルディア?」


聞いたことない名前だな・・。


「・・そうね、いずれ、メノリ・カルディア・ラゥ・クランティアになる

 予定の方ですもの」


ピンっときたのだ

この名前を使うということは・・


「・・・父上の新しい、側室候補か?」

「そうなるわね・・。」

「あの方は、一体・・?」

「あの方は学者。・・ほら、この本」


ポイっと投げられるのは一冊の本


「・・・ニルの絵による考察?」

「ええ、彼女は学者ともう一つ顔、作家の顔もあるのよ

 他にも顔はたくさんあるけど・・素性のしれない人よ

 何をしているのか顔がたくさんありすぎて

 わからない人」


素性がわからない

それは、我にはピンっと来なかった

そして、その学者と共に手を繋がっている少女


「ほぉ・・で、その隣にいる子供は?」


「恐らく、お父様の隠し子ってことかしら」


「・・ふぅん」


幼い少女は、びくびくしながら王宮へと上がっていく


「・・あの少女、すごくビクビクしているな」


「仕方ないことよ、まさか、父親が、うちのお父様となれば

 見慣れない世界には驚くばかり・・。」


そう呟くと、突如にメノリがこっちにむいたのだ


「・・こっちに向いたわね」

「・・・ああ。」


一瞬、メノリ・カルディアは笑みを浮かべてこちらを凝視していた。


それが始まり

そして、終わり

一歩、一歩、運命の歯車は近づいていく・・。





ついに、過去編に登場。新キャラクターです。

とはいえ、何話目かに彼女について書いているので

見てみるのはいいかもれませんね。

では、次話で。

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