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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 三幕 ドライアド ~番人に守られる国~
377/485

少年、羅刹の音

今回は・・・?

カツーン


カツーンっと音が響く


ジェイド・アクリプスに連れられた旬たちは


この謎の空間の奥の奥の底まで案内されることになる


案内されながら旬とラミアは辺りをキョロキョロっと


「着いた。ここだ」


「ここが、ジェイドさんの言っていた見せたいモノがあるの?」


「そうだ。入れ。」


踏み入れたそこには・・。


「うわっ。すごい」


そこには・・旬がありえないものを目撃したのだ


「あ・・この本だな・・時計があるわ。それも針がない。

 そしてどれも同じや・・!」


そう時計だ。

この本棚のすべてに時計がある


しかし、不思議なことに針がない。


時計に針がないが、でも時計だ


「針がない・・どうして?」


「ほんまに変な時計やわ。

 どれも針がない・・なんでやろう?」


ラミアは一冊の本を出す


しかし・・・


「ま・・真っ白や・・!?」


「えっ・・!」


ラミアはその真っ白なページに唖然としていると・・。


ジェイドは笑いだす


「ははっ。驚いただろう。これは、時の図書館の管理者・・もとい、館長の私しか

 解除は不可能な時計の棚だ。ラミア君、この本を戻してみてくれ」


「ああ・・・そやな」


ラミアは本を戻す


そして、ジェイドは、時計に触れる


「うわっ・・ジェイドさんが触れたら針が・・出た!?」


そしてジェイドは器用に針を回す


すると・・カチ、カチ、カチカチカチカチっと音を立て


時計がクルクルクルっと螺旋状回りだす


やがて・・ガコンっと音が出て


本棚の辺りが緑色の光に包まれる


「ほら、もう一度、その本を取ってくれ」


ラミアがその本を取って開けると・・。


「うわっ・・文字がびっしり・・!?」


それは驚くほどに、先程の真っ白のページの本から


知識がびっしりと書かれているのをみてラミアは驚く


「これは・・!?」


「時さ。時の管理より、この本は守られているのさ。

 もし、侵入者がこの本を盗んでも簡単に読めないようにしているのだ」


「最強の防犯やな」


ラミアは呆れる


旬は、でも・・っと口に出して


「・・でも、あそこの本は真っ白じゃなかったよ?」


「ああ。あそこの本棚は侵入対策用の練成陣の罠だからだ。

 ・・そして、時価数百万という所だが、実際にそこまで他人に影響を

 与えすぎる本ではないのだ。どちらかといえば、貴重だが、ここの

 本棚には負ける。」


それでもかなりすごいような気がするけど?


むしろ、俺達だけなんだろうか?その価値観に対しての認識の違いが・・!


「それはそれですごいね・・で、ここにある本棚は?」


「・・まさか・・影響を与えすぎる危険な本棚か」


「いかにも。そうだ。」


そのあまりにも真顔であるジェイドの言葉、表情に


ラミアは顔を真っ青にする。


「うわっ」


ラミアは慌てながら今、持っている本を本棚に戻す


その手はプルプルっと震えている


「ら、ラミア」


そして、ごにょごにょっと口に出しながら


「うちは、見てへんからな・・うん」


見てへん、見てへんっと自分に暗示する姿が見える


それを見たジェイドは・・フッと口元を緩ませて


「ははっ。冗談だ。」


「冗談には聞こえないよ」


「そやそや。びびったわ!!」


むしろ、冗談でもなかったよ!!


あれは半分くらい本当の話なんじゃないの!?


むしろ、そうじゃないの!?


そんなことを考えている旬


その時・・ジェイドは、本棚に近くに寄って

本棚に触れる


「・・・だが、ここにある本はすべてとはいえないが・・・

 ”危険”と”謎”に満ちた本や・・その他には、世界から消えたといわれる

 本もあるのだ。」


「つまり絶版や初版のこと?」


「そうだ。」


ジェイドはうなずいた。


そして何かを思い出すかのように・・口に出す


「特に代表的なのは、”ログ・マジック・ブーフ”」


「ろぐ・まじっくぶーふ?なんやそれ?」


ラミアは知らないのかこてりっと首を傾ける


「世界から消えた本だよ。幻といわれる本だ。

 ・・世界にはもう2つしかないといわれる

 古代の魔法、古代の知識・・そして、千年前に起こったと

 される人々・・そして、争いの先にあった魔女たちの話が書かれているのさ」


「魔女たちの話・・?」


旬は、不思議そうな顔をしていたのだ


あの本・・そんなことを書かれていたのか


アニマはその本について触れることを許されなかったし

詳しく知りたいと思っていたし・・ちょうどいいと思った


それにしてもあの本・・。


むしろ、世界に2冊しかないというのは初めて知ったよ。


「これ以上は知らないが、だが・・そのログ・マジック・ブーフは

 人々の失くしたといわれる”究極魔法”について書かれている

 という噂だ」


「きゅ・・究極魔法」


ゴクリっと旬は息を呑んだ


もしかして・・あの見えなかったあの文字は・・。


旬はすくならず動揺を隠すために顔に出さないことにした


「そういや、いつだったか。うちも聞いたことがある

 より、優れた究極の形・・その魔法があると。

 でも、まだ残っている究極魔法もあると聞いているで?」


そういえば・・究極魔法といえば・・。


シュネーの5人しかいない魔導師たちの中でも究極魔法を使える

魔導師はいたのだろうか?


いや・・いそうだよなぁ。


あんなすごい魔法が使えるくらいだし


聞けばよかったような気がする


「そうだ・・魔法の中でも特に優れた魔法今ではないとされている・・が、中には

 そういう知識を語り継がれていく者の中には・・”究極魔法”を使うことの

 できる魔導師、魔法使い又は魔女はすでに少ないというか把握はできもしない。

 そんな究極魔法の数々がその絶版された本にあるというのだ!」


その力説はどこか力が強く


そして、未知の本に対する興奮が伝わってくる


「ちなみに、あんさんの所にはそれはあるんか?」


否定するジェイド・・。


「残念ながらないが・・噂では、時の流れる通路

 つまり、どこかの流れにその2つの本があるという噂だ

 あくまでも噂だがな。」


じゃ・・もしかして俺が持っているこの本は・・。


ギュっと服の裾を握る旬


「そか、それはもう驚きやな。そんな流れにある本なんて

 きーたことないわ」


「ははっ。それはわかる。どこかでその流れによって

 今もそうなっている可能性がある本だ。

 希望と夢が広がるだろう?」


「本好きにはたまらないかもしれんな。うちにはよー分からんけど。」


二人の話している中・・・旬は疑問が頭に駆け巡る


グルグルグルっと・・ずっと頭の中へと・・!


「旬、どないした?」


「なんか、頭の中が弾けようとしたよ。

 真っ白になりそうだ。」


本当のこと言えば・・冷や汗がでてしまいそうだ。


でも・・この動揺を知られたくない


「そうだな。子供には難しき内容かもしれぬ。

 忘れてくれ」


ポンっとジェイドは旬の頭をなでた


ラミアはクスっと笑っている


ジェイドさんの手も・・なんだか、とても冷たい


でも・・優しい手だ。


今は、何も言えない


俺は・・実にいえば、本当に動揺している


この動揺を悟られない為にも・・あえて、目を瞑ったのだった。


「旬、気持ち良さそうやなー」


っと、クスクスっと笑っている


勘違いされている・・まぁ、いいか。


カバン・・というか、バッグの中に眠る・・ログ・マジック・ブーフのこと。


もちろん、ラミアに至ってはその本のことを教えていない


いや、教え忘れただけど・・。


いずれ、教えようと思う。


ジェイドさんの手が離れて


俺は瞳を開けた・・そして・・。


旬は目を細めて・・。


「結局ここにある本は、貴重であるということだけは確かなんですか?」


旬の問いにジェイドは本棚を見渡して・・。


「時の図書館では、貴重であり希少な本の取り扱いに厳重である故に

 厳重に管理しなくてはならむ。国の混乱がないように・・っとな。」


「えっ・・そうなんですか?」


「というかなんでうちらにこんなものを?」


「・・・まぁ、お前たちは特別だ。さてと、スタイン博士とロラン博士の書を今

 持ってくる・・待っていろ」


そしてどこからの本棚を触れ・・針が現れた途端


クルクルクルっと螺旋状になり・・


カチコチ・・カチカチカチカチカチ・・ガチンっと大きな音をたて


2冊取り出すと・・それを旬に渡す


「残念ながらスタイン博士とロラン博士の書は1つしかないのだが

 まとめてお前たちに渡しておこう」


渡されたのは・・2冊の本


「・・・これが、スタイン博士の書・・ロラン博士の・・?」


「2冊だけやな。」


そう、2冊だけだ


なんでだ?


すると、どこか残念そうな顔をしているジェイド


「我々の国でもたった2冊しかないのだ。その価値は、秘密だ」


「秘密って。」


本当に秘密なのか!?


というか、堂々というそのセリフに呆気がくるよ!?


ため息を漏らしそうになるが・・耐えて


何気に人外っぽさがあるジェイドさんに疑問があった


もしかしたら・・この人は番人のことを知っているというか

自身ではないかと思ったのだ


この人外っぽさが妙に・・。


だから、俺は聞くことにした


「ねぇ、時の図書館は中立的と聞いたけど・・それは、番人と呼ばれる人物

 ・・あなたもそうなの?」


「・・・いきなり旬なにを」


ラミアは驚いているようだ


旬は・・気になるから聞くのではない


確かめないといけないのだ・・これから起こることの為に


「・・・そうだな。残念だが、違う・・。

 私は、番人ではない。」


「・・違うの?」


違うのか。


残念。


かぎりなく人外っぽいからそう思ったけど違うか。


「じゃ、中立的ということは、この時の図書館だけなんだね」


「そうだ。」


ということは、今回は敵か味方かもわからないということか


毎度、毎度、なんだか頭が痛くなりそうだ


「・・・生まれながらにして莫大な知識と共に生まれその力は

 私以上に異常にめぐられた・・あの方にはな到底敵わない。」


「うちもあんさんが番人だと思っていたんやけど

 違ったことで落胆したわ。」


「あ、ラミアも思っていたんだ」


どうやら俺と同じ考えを持っていたようだ


「そやそや、あの”人外”がキーワドやからな

 あんさんからも人外さがプンプンとあるからなぁ」


確かにプンプンだ。


だけど、違うというのならそれを肯定として受け取るしかない。


「あくまでもここの管理者。番人ではない。

 だが・・お前たち、もし・・番人に会いにいきたいのなら

 ・・遺跡に向かえ」


「い・・遺跡?」


何、遺跡って・・。


なんだか、もっともらしい所に行けと言われたよ・・今!


「そうだ。そこにあるのがすべてが分かる。この国の秘密だけではない

 番人という悲しい運命(さだめ)を断ち切ることすらできやしない

 哀れな人外のことを・・」


「・・あんさん自身も十分人外っぽいけどな」


そのラミアの補足に、クックックとジェイドは・・。


「ははっ。良く言われるよ。でも、まだ・・人だよ。

 限りなく・・な。」


そこには・・どこか憂いを秘めた・・ジェイドの姿があった。


「えっ・・・?」


一瞬のことだったが、旬はその一言を聞き忘れはしなかった


「・・・ふっ。その本をやるからおまえたちはさっさと帰れ。

 この時の図書館の最深部にいると色々とおかしくなるぞ?

 時に惑わされて自分の時が分からなくなる前に。

 去れ。」


そこは、どこか旬たちをこれ以上・・知られたくないようだ


ジェイドのあの憂いの秘めた顔


そして、何か空気のような飢えたような気がしたのだ


「・・・。」


旬は、ジッとジェイドを見て・・やがて察したのか


「うん。そーするよ。ありがとこれ。」


手際よくバックに2冊の本を入れる旬


「あ、あっさりやな。旬」


ラミアは、上手く状況を呑みこめていないようだ。


「だって、なんだか疲れちゃったよー。足がくたくたで

 筋肉がパンパンで痛いよー。」


棒読みになっている旬にラミアはそかっと口に出した


「じゃ、うちらも帰るわ。出口はどこや?」


「あそこだ。既に造っておいた。」


そこには、うっすらと光満ちた出口が見えた


「さすが、仕事が早くて助かるわ。」


ラミアはホォっと口に出して絶賛する


「さぁ、旬。行くで?」


「あ・・ちょっと待って」


旬はピタっと止まって


再度・・ジェイドの顔を見て


「・・もうひとつだけ聞くよ」


「・・・なんだ?」


「この国は・・維持できているの?」


旬の問いかけ・・それに否定も肯定もどちらでも構わない


ただ、はいか、いいえ・・どちらでもいいのだ


「ああ。できているよ。あの方が維持してくれているからな。」


その言葉で何か確信したのか・・旬はにっこりと笑い


「そう。じゃ、ありがとう。また話をしよう。」


そのまま去っていく


「うん。ラミア、行こうか」


「あ、待ってや。旬」


出口へと消えた旬


ジェイドはボソリっと呟いた


「やはりあいつにどこか似ているな・・。」


ジェイドはどこか懐かしそうに・・旬の後ろ姿を見ていたのだった。


                    ***


旬たちはその光に溢れた出口へと・・向かうと。


そこには・・・。


「おおっ、ここは時の図書館の入り口やな

 不思議や」


そう、それは・・図書館の入り口になぜか立っているのだ


ふつふつと思うが・・やはり、魔法なんだろう。


かなり高度だよねぇ。この魔法


いつか聞いてみたい気がする


その時・・。


「「あー、見つけたー!!」」


っと大声が響く


何事かと振り向けば・・そこには・・!


「あー、旬、ラミア探したッスよぉぉぉぉ」


「ごしゅじーん、らみあ・・さがしたぁぁぁぁぁぞぉぉぉぉ」


「「うわぁぁぁぁ」」


ドーンっと音を立て


旬たちは倒れこむ


「な・・なんや、あんさんら」


「ぐぇ・・お、重い。」


地味に体重が重い


二人の身体がやけに重すぎてグェっと声がでてしまった旬


「ひどいっすー。エミル君に聞いてもどこにいるか分からないしッス

 図書館中走り回ってようやく、ようやく、見つけたっすぅぅぅ」


「ごしゅじんたちがきえたからあにまたちはしんぱいしたんだぞ!」


どうやら俺達を心配してくれたようだ


「・・あははっ。ごめんね。俺達はちょっと野暮用があったから」


「野望用ッスか?」


「そや。お目当てのモノが手に入ったちゅうことや。」


その言葉にアニマとウッズも顔を見合わせて


「それは、良かったッスー。」


「だよなー。」


なーっと顔を見合わせ笑ってアニマとウッズを見て


「その前に、二人ともどけや。重いわ」


「ごめんッスすぐ、どくッス」


二人分の重さがなくなったので旬とラミアは立ちあがる


「さてと、エミル君は・・まだ、仕事か」


「先ほど、会ったッスが、ものすごく忙しそうだったッス」


「だよなー、なぜかなみだをながしそうないきおいだっただぞ」


そりゃ、そうだろうな・・。


事情も知らない人からすれば恐ろしいことだったと思うし


「さて、旬。次はどこに行くッスか?」


「・・そうだね。依頼かな。今日中に話を聞こうと思っているし

 行こうか」


「それはええことやな。さぁってと、うちらも行くで?」


その声と共に旬たちは時の図書館の後にしたのだった。

次回、旬は依頼人に話を聞くことになります

事態はやがて・・大きく動き出す・・!

お楽しみに

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