少女、天空の階段
リーフル視点によるあの日の事件
さあ、どうぞ
「急がないと・・・!!」
走り出すリシャーナの瞳には迷いなどない
「待ってにゃん!!」
リシャーナの後を追うリーフル
世界が一変した村の中を走る
オイラは迷いのなく走る
悲しい気持ちよりも先にどうしようもない
焦燥感がそこにあった
辺りの光景は最悪だ
本当ならオイラも他の皆のことが心配だった
この嫌な予感しかないと分かっている
でも・・でも
今はそれよりもリシャーナのことだとにかく心配にゃった
それが正解だと知るのはすぐのこと
その時はオイラは知るはずもなかった
ただ、走って
地獄の道を走り続けたのだ
「やっぱり・・!!」
リシャーナは息を荒くして
祭壇が開いているのを確認したのだ
「あ・・本当だニャン。ひ、開いているにゃんよ」
いつもは固くに閉じていて
開く気配もない扉だ
それなのに今は違う
淡く光って
なにか、異常事態を感じるのだ
「入るわよ」
「あ、リシャーナ!!!」
リシャーナの後を追うオイラ
その光景は・・驚くばかりだ
「にゃっ・・!?」
天井の先の先まで階段が続いている
「な・・なんにゃぁ・・」
カーンと何かが発動した音が聞こえる
「な、なんの音にゃ!?」
リーフルはかすかに大きな魔法を使用したのを
感知したのだ
なんにゃ・・?
それはなんらかの力を感じているが
リーフルは知らない力の気配だった
急に響き渡る音
「~♬」
音が聞こえるのだ
「さ・・賛美歌にゃっ・・?」
そして、どこからか賛美歌が響いているのだ
どうしてここから声が?
どこから?
リーフルはきょろきょろと辺りを見渡すのだ
「どこからこの歌が聞こえるかにゃん?」
すると、リシャーナが息を整えながら
上を指さす
「上よ・・。」
上から・・?
美しい賛美歌だが・・?
誰が歌っている!?
でも、なぜ歌うだろうか?
始めてだここで賛美歌なんて
「いや、そもそもなんで聞こえるにゃん!?」
ここは、響くような場所ではない
静寂と神聖な場所だ
こんな音聞いたことすらない
知らない場所だとリーフルは思う
だからこそ叫ぶように
「我ら召喚獣を呼ぶ特別な祭壇にゃよ・・ここは!?」
ありえない光景にリーフルは興奮するが
リシャーナは冷静のまま
「ええ。我々、召喚士が一度は必ず通る試練の間」
「でもそれは・・!!」
するとこくんっと頷いて
「分かっているわ。通常ではありえない何かが起こった
それだけよ」
「で・・でも」
「上へとつながる道はあるそうね」
リシャーナは奥の奥を見て
ギリっと唇を噛み締める
通常ではありえないこの状況
異質すぎるこの状況をリーフルは考えるが
答えが見つからない
音の発生源は上からというのがわかる。
「・・・。」
でも、リシャーナは何もいわなかった
むしろ、何かを決意して唇を噛み締めていた
「行きましょう」
天空へと続いているような螺旋階段をあがっていくリシャーナ
「嫌な予感しかしないにゃぁ・・。」
リーフルは後を追うことにした
階段を昇ることで不思議な感覚が支配される
普段とは違うこの状況
だけど、この不可解な現象にリーフルは問いかける
「どうして今日にして祭壇の階段が・・?」
いつもは祭壇だけあって階段はない
祭壇は、平常は、祈りの場として使われる
そして、オイラが知る限りこのような階段が出るのは
特別なコトをする神聖な可能性であることが高いのだ
例えば、一流の召喚士になるための試練場を与えるのに
祭壇は、力を貸してくれる
元はオイラの故郷はもっと遠い世界であるのだ
しかし、ある日契約者によって呼ばれ
力を貸すことなった
それが、この祭壇の力なのだ
オイラも仕組みはよくわからないが
未熟者と呼ばれた召喚士が一人前になることで
召喚士はその苦難の先にある力を手にし
特別な力を授かるのだ
数ある試練を乗り越えた者に力を与える
それが召喚獣であればもっと別の力をもらえる
それは、一人前になった召喚士ではないと
その詳細を知ることはできない
「おかしいにゃぁ・・今は、やれないはずにゃよ?
召喚士が二人いないとできないはずにゃぁよ?」
そうなのだ
できるわけがない
「たとえできたとしても召喚士は、一人では無理よ
私が例え適任者だとしても・・かなり難しいこと」
さらっととんでもないことを言うリシャーナ
「し、知らなかったにゃ」
すると、昇りながら試練の間について話すリシャーナ
「私達、召喚士は熟練と未熟者。二人だけでは無理よ。
最低でも、三人いないと成立しないのよ。本当なら」
「そうなんにゃ!?」
「いつからか、ならず者という変な制度ができてから
おかしくはなったけど・・。」
リシャーナは静かに螺旋階段を昇りながら
リーフルの疑問を答える
「リシャーナ・・?」
「不可解なことをしてくれるわ」
「どうしたのにゃん?」
「・・リーフル。あなたはこの村の現状を良く知っているわよね?」
「・・この村は、多くの召喚士の死に至り
現状、祭壇を開けることすら不可能にゃん」
この村の現状はよりよくいえば最悪だ
大戦により召喚士は村から離れた
当然、召喚士は簡単になれるものではなく
村はどんどん衰退の道へと少しずつ・・。
「・・その通りよ。たくさんの召喚士が大戦で消えた。
あの人も・・。」
ギュッと胸を握りしめる
痛みを抑えるようにリシャーナは下を向く
「リシャーナ・・。」
現状、村の状況は悪い
少なくなった召喚士
それを支えているのがリシャーナだ
「それでも」
「にゃっ?」
「・・村の異常事態は必ず理由があるわ止めないといけないの」
リシャーナのアクアマリンの瞳が揺れる
「オイラは、何か強制的な力によって開いた可能性も
あるじゃないかと思うニャンよ」
「強制的な力・・?リーフル。あなた感じているの?」
「もちろんにゃ。ここに入った瞬間・・とても大きな力の気配
オイラは感じるにゃぁ」
それがなんなのか?
オイラにはわからない
「・・・私もここに入った瞬間、言いようのない緊張感を感じているわ
強い力の気配・・おそらくそれは・・・。」
「リシャーナ」
「・・・。」
リシャーナは静かに螺旋階段を昇っていく
その時は気づかなかったが今思えば
まるで、楽園への階段のようにも感じたのだ
出現したのは天空へと導かれるような
幻想的な階段
そして、流れ続ける賛美歌
言いようがないオイラは不安な気持ちが少しずつ
膨れ上がっていった
上へ
上へ
昇っていくと
どんどん
なにか違う力の気配を感じるのだ
「怖いにゃん。いつもと違うにゃよ」
「どう違うの?」
「波動にゃん。流れがいつもと違うにゃん」
「・・・流れ」
「いつもは穏やかな力を感じるはずにゃが
今日は明らかに何かを強制的に
引き出しているような・・」
ピリッと感じる
オイラは召喚獣だからわかる
明らかにこれは普通の状態ではない
「ような・・?」
「巨大な何かの力をオイラは感じるにゃん」
「何を・・?」
「びしびしっと感じる・・まるで、何かを召喚するかのような」
すると、リシャーナは、ハッとして天に向けて
静かに目を見据えて
「・・・今日が、その日だった」
リシャーナは淡々と告げる
天に向けた瞳は・・静かで
アクアマリンの瞳は大きく揺らぎもなく
ただ・・虚空を見つめていた
そして、限りなくいつものリシャーナではなかった
「その日・・?どういうことにゃん」
なんだろうその日とは?
「そうか・・そうだったのね」
リシャーナは何かを納得したのだ
その時の顔はオイラは見たのだ
アクアマリンの瞳がギラリっと
輝いたのをオイラは見たのだ
それは一瞬のことだった
何を感じていたのか
分かりはしない
ただ、気のせいかもしれないけど
「・・・。」
リシャーナはまだ無言を貫くのだ
「だんまりかにゃん。リシャーナ」
リーフルが聞くと
「・・・ごめんなさいね。リーフル」
そうして謝るのだ
どうして謝る必要があるのかオイラには分からなかった
「どうして謝るにゃん。リシャーナはこの状況が
どうして起こっているのか知っているのかにゃん?」
「・・今日がその日だから。しか言えないわ」
今日がその日・・?
「だからそれはどういう」
「条件が重なった日。としか言えないわ」
リシャーナはまた一段、一段とのぼっていく
今日がその日・・それはオイラは分からなかった
条件が重なった日
それは、どういう意味なのか聞きたかった。
でも、どうしてかこれ以上聞けなかった
一段、一段
どんどん、近づいていく天空の道は
近づいていくにつれて強い気配を感じていく
得体の知れない恐怖と共にオイラは
リシャーナの後を追いかけるしか
なかったのだ。
リシャーナは、何に気づいたのか?
彼女は、ミリカの冒険でもキーパーソンな存在です
リーフルの視点からあの事件の追想に付き合ってくれると嬉しいです。




