少年、王族の風格
いよいよ、ジンの正体が明かされます
まぁ、核心へと進む物語となります。
では、どうぞ。
運命の歯車は少しずつ動き出している
誰も止められない
本当は、俺は、分かっているだろうか
いや、もしかしたら違うかもしれない
信じていたいことが大きくて
何もできやしない
そんな、自分が嫌だ
まぁ、俺がどうなろうと関係ない
運命に対して何をしたとしても、俺はその歯車に愚弄されるだけなのさ・・。
****
アリアは、俺達に見せた王女の顔
それは、すべてを明らかにすることになった
「改めて名を言うわね・・私はアリスティ・アルティア・ラウ・クランティア
クランティア王国の第一王女よ」
「クランティア・・ああ、あの有名な王国やな」
ラミアは、何かを思い出したかのようにポンっと手を叩く
「王国・・?」
自慢みたいな顔で
「そや、産業で有名な国やで?今、かなり発展しているらしぃしな
しかも、王族は、全員、獣人の血を持った特別な王国やからな」
特別か・・。
俺には、よくわからないな
それより、獣人・・。気になるな
「ねぇ、そんなに、獣人って少ないの?」
「いや、多いほうやで・・ただ、獣人には特に純血が少ない・・あの国の王は
純血がなるべきだという古い格式があるみたいやで・・。」
「・・純血・・。」
「そや、その姫さんがその王権があるという話や」
「・・・。」
俺はアリアを見る
彼女も絶対権力の持ち主なのかな・・?
「じゃ、君も王権が・・?」
アリアはため息を吐き
「残念ながら、私にはその血は流れていない。私は
混血だからね・・。」
「え・・。」
「くすっ。」
含み笑いをした。
でも、ヴェール越しに見える瞳はとても悲しげに揺れている
まるで、そういう価値がないかのように・・。
「姫様・・。」
ソリドゥスが労わるように寄り添う
ラミアは、う~ん、と考えこみ
「でも、変や・・。」
「どういうこと?」
「ああ、数年前に、純血の中もとても強い力を持った
王太子がいたんや。」
考えこむように、ラミアはグシャグシャと髪をかき乱す
それは初耳だ。
なにせ、俺はあんまりそういうのはわからない。
ラミアの情報網はハンパないのだ。
「・・・。」
王族側は、黙ったままだ
まるで、沈黙を守っているかのように
ラミアは、話を続ける
「けど、数年前に、その王太子の権利を放棄して失踪したらしぃで
でな、それで、今、王宮は荒れとる。」
「荒れている・・?」
「そや、王太子の座や・・それしかないしな」
「でも、なんで王太子が・・?」
「色々、噂は流れとるけど・・真実は分からんもんや」
「・・ふぅん。」「けどな・・。」
「ここに、丁度よく王族がいるし聞いてみる価値はあるはずや
そやろ・・先ほどから黙っているけど・・事実なんやろ?」
そこには、王女として明かしたアリアは静観しているようだが
ピクリっと反応する
「・・そうね。もし、身近にその王太子がいるとしたらどうする?」
「うちやったら、身ぐるみをはがすな」
「いや、それは犯罪だよ、ラミア・・ってか、なんで」
「冗談や。」
ケロリっと言う呆気なさに俺は呆れる
今、冗談には聞こえなかった
それよりか、本気なんじゃないかと一瞬だけ疑問に思ってしまった
「で、旬、あなたならどうするの?」
「・・俺なら・・きっと、怒ることもない・・つまり、納得するだけだよ」
「それこそ、貴方らしぃわね・・いいわ。教えてあげる」
「本当?」
「ええ・・だって、そこにいるもの」
「はっ!?」
アリアは、笑みを浮かべて
「そこにいる人物こそが・・貴方達が、探し求めている・・純血の血よ・・。」
視線を向けると
そこには、ジンがいた
「ジン・・?」
「も、もしかして・・あんさん、失踪した王太子か!?」
今まで、沈黙を守っていたジンが見せる瞳
それは、王の証の瞳
黄金の瞳だ・・。
俺が圧倒をさせるような瞳だった。
「オルフェ・ロウデア・ラウ・クランティア
元、王太子だ。」
シーンっと当たりが静寂した。
ジンが名乗った時、俺は今まで疑問が一気に解決したような気がした
“やはり・・そうなんだね”
俺はなんとなく心の底では分かっていた
だから、納得した
ラミアも始めは興奮していたけど
やがて、考えこみ始め
「・・・そうか、それなら辻褄あうな」
何かブツブツと独り言を言い出す
ラミアは、ポッリと話だす
「ラミア・・?」
「あ・・ああ、ごめんな・・噂があったんや。」
噂・・・?
「おかしな、噂が出回っていた時期があったんや・・まぁ
すぐ、信ぴょう性がないということで消えたけどな・・
今、思えばあの噂もなんかあると思う。」
「・・その噂がお前は事実だと思うのか?」
ギロリっとラミアを睨むジン
だが、ラミアは恐れることすらないように
悪戯っぽい顔をして
「まさか、うちには真実と事実は紙一重やと思っとる」
ピリピリとした空気が俺に伝わる
俺を他所に二人は話を進める
何の話をしているんだろう?
俺にはちんぷんかんぷんだ。
ラミアは、ジンを真っ直ぐと見つめ
「昔のうちなら、そうやな・・脅すとかするけど
今は、旬がおるし、目に毒や・・けどな、吐いてもらうで?」
そう断然する、ラミアに俺は呆れる
「脅すって内容変わっていないよ、ラミア」
「言葉のアヤや。」
「・・はぁ。」
どちらにしろ、ラミアはジンを脅す気満々だ
そして、ラミアは悪戯っぽい顔から真剣な顔になり
「とにかく、あんさん、何したんや・・?あの王国で」
「・・・。」
ラミアの瞳に圧倒されたジンは黙るだけ
沈黙だ。
ジンは静かに、周りを見た
「・・ここで話すのはマズイ」
「・・そやね。なぁ、姫さん」
アリアは、ソリドゥスに目を向け
「・・・ええ、わかっているわ。ソリドゥス、馬車の用意を」
「はっ」
ソリドゥスは、歩き出す
そして、ジンを見て
すまなさそうな顔をしている
「・・すまない、オルフェ。」
「・・謝るのは、誰にでもできることだ。」
「・・そうか。」
「だが、それは我も同じだ。」
「・・・。」
そう言って、ソリドゥスは微かな笑みを浮かべて
馬車の用意に入った
「・・旬。大変なことになったわね。」
アリアが俺の傍に来て、話し出す
「アリア、君も知っているのだね・・?」
「・・ええ。そうね」
平然としているアリアに
俺は、言いたいことを言った
「俺たちを狂わせる気かい?この、君の問題・・そしてジンの問題・・にね。」
俺はアリアに問いかけた
すると、アリアは首を横に振り
「いいえ、それは違うわ。
狂うのかは・・・貴方しだい。」
まるで、狂うのは自分の責任と言っているようだ
俺は、アリアの底のしれない何かに恐れを抱いた
「・・・。」
「だけど、私もオルフェ・・いえ、ジン、はあなたを
怖がらせるつもりはないわ・・そして危害を加えない
あなたを・・裏切ることもない・・それだけは信じて。」
「・・分かっているよ。」
そう、分かっている
彼女は俺を裏切ることもない
分かっている
でも・・だから嫌な感じだ
自分対して
こんなに、モヤモヤしている。
そんな、自分が一番恐れている・・。
馬車はアリアや俺達の前に止まる
「アリア様、準備ができました」
「じゃ、乗って」
そして、俺達は向かうことになる
運命の歯車はもう・・動き出している。
これからどうなるのか・・。
まぁ、いつもどおり
急展開というところですね。
とりあいず、また次話をどうぞ。




