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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章番外編 記憶の欠片の旅② ~希望は光を求め、絶望は闇へと誘われる~
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少女、実現不可能な魔法

今回は、リーフルの視点からのお話です。

リシャーナとの日常は楽しくも優しい日常でした

さぁ、どうぞ

いつから日常が終わった?


始まりはなんだった


オイラは今を出せない


リシャーナ


リシャーナ


オイラはあの日から色んなことを考えてきた


でもただ、一つだけ


どうしてオイラには内緒しているのか

あの時から


わからない


子供の頃から一緒にいるのに


どうしてにゃ?


猫はあの日を忘れない


いつか帰ってくるという言葉を残したあいつの為に


リシャーナと自分は待っていた日々を


そこは、残酷な現実と残酷な結末しか残っていないことを

リーフルは知っている


                   ****


その日は、オイラは寝る準備をしていた


世界はどんどん混沌にいこうとしているのを猫は知っていた


この間はあの国がなくなったと聞く


今日は、あの国が勝ったと聞く


どんどん混沌が広がっていることを猫は知っていた


知っていても何もできない自分がいる


自分は精霊であり力はあるけれど


人間達に力を貸すことができる存在であろうとも


オイラたちではこの混沌を終わらせるこはできない


でもそれでもオイラ達はその混沌の中に今を生きている


それでも、眠くなるし

お腹だってすく


変わらない日常であるけど


オイラは満足はしていた


ただ、この間からオイラの機嫌が良かった


「にゃんにゃんーもうねるにゃ」


今日も一日が楽しかった


その時


どしゃーんがらーんっとすごい音がした


「にゃっ!!?」


慌ててリーフルは音がする部屋へと駆け込む


そして、その部屋にバターンっと音を立て


開けると


リーフルはため息を吐いた


「リシャーナ、何をしているにゃ?」


「お、起きてたの?」


「いや、あんな音を立てたらそりゃ起きるにゃ」


「あは」


「笑って誤魔化すのは良いがこの惨状を見て

何かいうことが他にあるにゃぁ」


「ごめんなさい。手伝って」


ほがらかに笑うリシャーナ


オイラの主


とても優しい主にゃ

でも、ドジなのが玉にキズにゃぁ


「良いにゃぁ。」


オイラはにぱっと笑って

片づけることにした


あちこち錯乱した本や書類やら集めて

リシャーナに問う


「なにをしていたのにゃ?」


「うーん。資料を探していたの」


そういいながらリシャーナは本を元の場所に戻す


「資料なんでまた?」


リシャーナの家は召喚士一族の村の中でも



「うーん。エル君のお願いなのよ」


エル君・・エルヴィンのことか

リシャーナの恋人のエルヴィン


召喚士として優れた人物だ

オイラは、奴の強さを知っている


だからこそ、今のエルヴィンは確か


「エルヴィンの?でも、エルヴィンは戦場にゃ」


そうエルヴィンは戦場へと旅立った


あんな優しいあいつが戦場へ


それもあいつの両親と一緒に


「知っているわ。ずっと帰ってこないのは」


「でも、この間帰ってきたにゃぁ」


そう、帰ってきた


いつもような優しい笑顔で


あいつ一人で


なんで一人なのか分からなかったが


だけど、エルヴィンが帰ってきたのは嬉しかった

オイラ達村のみんなは喜んだ


一番嬉しかったのはリシャーナだ


リシャーナはあの時はとても喜んでいた


「ええ・・次はいつでしょうね」


その時、エルヴィンはリシャーナに何かを

お願いしたという話だ


「・・そのエルヴィンのお願いはなんなのにゃ?

 珍しいにゃ。エルヴィンがそんなことを

 するなんて」


そうだ


エルヴィンがお願いすることすらありえないことにゃぁ


「うーん、実現不可能なお願いよ」


「実現・・不可能?」


オイラは理解できなかった


実現不可能な魔法なんてこの世にあるのか?という

ことを

現に、リシャーナはその答えを探して


資料を探していたようだ


「・・・そうなのよね~だから、こうして資料を探して

 いるのよ。エルヴィンは、色々資料残していると聞いていたから」


「それはエルヴィンの家で探せばよいのではないかにゃ?」


オイラはまともなことをいうと


「リーフルは知らないの?エル君は、ここでよく滞在が多かったことを」


「まぁ、確かにほとんどの実験とかは大体ここで行っているのは知っているにゃよ?でも、どうしてここに?」


確かに、エルヴィンはよくここで研究やらやっていたが


「うーん。詳しくは分からないわ。」


リシャーナはトントンっと散らばっている書類を片付ける


「エルヴィンがお願いごというなんて珍しいにゃ

 あの物欲がないあいつがそこまでお願いするのは

 明日は槍でも降るかにゃ!?」


そう、エルヴィンは物欲がない子供だった

誕生日に、その辺に咲いている花でもエルヴィンは喜び

ある時の誕生はリシャーナの手作りお菓子でも喜び


とにかく、エルヴィンはなんでも喜ぶ子供だった


エルヴィンはオイラが誕生日にあげた鳥の羽でも

喜んだ(ちなみにその鳥の羽はサンダバードの羽である)


そんな、優しいエルヴィンの珍しいことなのだ


あの日、エルヴィンが激化する戦争に参戦することになった


リシャーナとオイラは止めた


だけど、優しいエルヴィンはただニコっと笑って


オイラ達の頭をなでて戦争に行ったのだ


あと何年で戦争が終わるのかわからない


今日か明日か


オイラはその読みがわからないまま


村の入り口でリシャーナがエルヴィンの

帰りを待ちわびているのを一緒に

待っている日々だ


だからか


リシャーナは何が何でも


エルヴィンのためにやろうと思っているのだ


オイラは当時、その気持ちの強さが

まさかあんなことを起こるキッカケになることは

当然知らないまま


無知のまま


ただ、リシャーナがすごいとか思っていたのだ


リシャーナはにこにこと笑って


「リーフルたら、確かにエル君は物欲がないのよね

 でも、そんなだからこれを実現不可能でも

 絶対してみせるの」


「ちなみにその実現不可能なことってなんなのにゃ?」


「ふふっ。聞きたい?」


「それは、オイラだって聞きたいのは当たり前のことにゃ」


実現不可能なことなのだ

エルヴィンがそれをわざわざリシャーナに

頼むのは・・なんとなく不吉な予感がしたのは

気のせいではないだろう


だけど、リシャーナはニコっとイタズラっぽく笑うのだ


「でもだーめ」


「どうしてにゃ?」


「だって、失敗したら恥ずかしいもの」


「恥ずかしいってそんな術なのかにゃ?」


「・・そうね。そんな術かもね

 でも・・あの術は」


「あの術は?」


「エルヴィンが考えた魔法この村のためになる特別な魔法

 でも、術でもあるわね」


「なぜ、そんな術を・・?」


「・・エル君の真意はわからないわ

 でも、託されたからやるしかないの」


そういって切ない目をしてリシャーナは

オイラ頭を撫でるのだ


その日のリシャーナは瞳を揺らいでいた


何を考えていたのかわからない


ただ、迷いもあの時のリシャーナにはあった


それだけエルヴィンのお願いは

実現不可能な術であることを知ったけど

それ以上のことは分からなかった


オイラは、教えてくれないリシャーナに

少しだけ胸がちくりっとしたけど


それでも、毎日変わらない


朝は千里やカズラの修行をして


時々はクレーエを構って


それで一日が終わる前にオイラたちには習慣があった


リシャーナが毎日夕方になると村の入り口の前で

待つ日々だ


夜が暮れるまでオイラは退屈な日々とか

考えたことがなかった


村の入り口は鮮やかな花がたくさん咲いている楽園だ

オイラは、花が好きだから退屈じゃなかった


ただ、ちらりっとリシャーナを見た


リシャーナは切なく瞳を揺らいで村の入り口を見る日々だ


今日か明日か明後日か


一ヵ月後か


三ヵ月後か


一年後か


いつか終わると信じて待つしかなかった


だけど、どんどん時間が経っていく


その時間が季節の移り変わりが何度かあった


そして、色んなことがあった


色んな国が荒れたという情報が入った


ただ、召喚士村の召喚士については

情報が入ってこない


毎日が過ぎ去っていく


オイラとリシャーナは苦しくなる日々だ


そして、苦しくなる日々はさらに続いた


でも、オイラたちには、希望があった


エルヴィンが去る一年前に

この村に来た子供達


千里とカズラ・・クレーエだ


オイラ達にとっての希望だ


エルヴィンにも紹介したが

のりがよいカズラはエルヴィンと友達になり

千里はにこにこっと笑うばかり


クレーエに至っては何を考えているか

わからない


そんなひとときのことをリーフルは思い出していた


楽しかったあの時のことを


「あれ?師匠」


千里が姿を現す


「あ、千里にゃん」


「千里、どうしたの?」


「どうしたのって、また待っているの?」


「ええ。」


「エルヴィンさん、優しい人だよね

 異世界人の僕たちでも歓迎してくれたし」


「ふふっ、優しい人だし、温かい人よ」


「うん。僕もそれはわかる

 師匠・・ずっと、待っているの?」


「えっ?」


「いつか帰るのがわからないのに

 それでも待っているの?

 どうして?」


千里が何気ないことを聞いてくるのだ


「どうしてって、どうしてだろうね」


「聞いてるのに質問を質問で返すの?」


千里は子供の姿ながら不思議そうに聞く


「うふふ」


「千里、リシャーナはこういう性格にゃんよ。

 諦めにゃん」


「はぁ・・待つことは大変なのにどうして待つの?」


「・・きっとね、帰ってくる姿を見るのが好きなだけよ

 待つことは悪いことばかりではないの」


頬を赤くして答えるリシャーナに

千里はポリポリっと頬をかく


「なんか、カズラ君がかわいそう。ご愁傷様

 とか言いたくなる」


「なんでそこにカズラ君のことがでるのよ?千里」


「ふん。鈍感な師匠のくせに生意気」


「な、なによぉぉ」


訳が分からないリシャーナの顔にオイラはくすくすっと

笑ってしまう


オイラだって知っている


カズラはリシャーナに淡い気持ちが少しずつ育ってきてる

それは憧れに近い感情


そういいながら千里は笑う


「かえってくると良いね」


「ええ。」


「・・僕も待つだろうな。」


「えっ・・?」


「なんでもない。師匠、後で召喚術の稽古お願いしますね」


「ええ。任せて」


「待つことは苦痛じゃないのにゃん?」


「ええ。」


「好きだからにゃん?」


「・・それもあるけど

 一番は、あの顔が見たいから」


その日も、暮れるまで待っていた


でも、帰ってこなかったけど


あの日以上にいつもよりか


待つことがこんなにも幸福なんだと


オイラは思ったのだ


だけど・・時間は残酷なのだ


楽しい日常は終わりを告げた


いくつかの最悪な出来後が起きた


その一つがエルヴィンの死だ


そしてエルヴィンの死を知ったリシャーナはある日


「・・エル君」


エルヴィンの死を知らせの手紙を

わなわなっと震えていた


リシャーナはぐしゃっと握りしめる


リシャーナは涙をためていた


もう帰ってこないと知ったあの日

一晩中・・。


村の入り口の前でずっと待つリシャーナの姿を

オイラは苦しくてたまらなかった


帰ってくるはずがない


それでもリシャーナが待っている


朝がきたあの日


リシャーナは一筋の涙を流したのだ


リシャーナは気づいたのだろう


待っていてももう帰ってこないことを


その日からリシャーナはもう帰りを待つことをやめた


それでも戦争はさらに苛烈になる


そして、ある日


リシャーナは何かを決心をしたのだ


「・・・決めたわ。」


「・・にゃっ?」


「エル君の願いをかなえるわ

 実現不可能なんてなんてことを

 考えていたのかしら?」


ぶつぶつっとリシャーナは言っていのだ


決意の瞳だった


「リシャーナ・・?」


それは、見たことない気迫だった


瞳は強いから


「エル君の死は無駄にしない

 やれるべきことをしなければ」


もうリシャーナは泣いてはいなかった


あの日リシャーナは泣くのを見たのが最後だった


オイラは、その時のことを忘れない


何かを決心した人間は


何かを得るために必死に頑張るようになる


必死に何かを成し遂げようと頑張っていた


しかし、リシャーナはその術にたいして

挫折を何度も繰り返していた


「なぜ・・できないのかしら」


リシャーナは悩む日々が増えていった


なんの術を実現させようとしているのかわからないのだ


どんなに聞いてもリシャーナは教えてくれなかった


そんなリシャーナに悪魔のような手が少しずつ

忍び寄るようになる


オイラが知らない間にリシャーナは何かを

進めていたようだった


ある日、リシャーナが何かに葛藤している姿をみた


それは、乱雑に広げられている報告書


何かを書いてある紙


リシャーナは何かを思い悩んでいた


正解か不正解か


リシャーナは苦悩をしている


オイラはそれが理解できなかった


「リシャーナ、いい加減に教えろにゃ!!」


「駄目よ。」


「なぜニャ!!?」


オイラは怒鳴る


なぜ、ダメなのか!?

どうして教えてくれないのか


「これに関わったらリーフル・・あなたは戻れなくなる」


戻れなくなる・・?


オイラは理解できなかった


「えっ・・リシャーナ・・?」


「どういう意味にゃぁ?」


「・・・」


何も言ってくれなかった


リシャーナは何を隠しているのか

分からなかった


そして、リシャーナは涙を浮かべていた


何かに後悔して懺悔をこうようにして答えるのだ


「予想外のことを引き起こしてしまっているのよ」


「えっ・・?」


ぽっりっと呟く


「それが正しいことなのか・・もうわからない

 あの日、エル君の言葉を聞くべきだったのか

 もう・・わからない」


リシャーナは呪いのようにつぶやくのだ


「リシャーナ・・その実現不可能なことは

 エルヴィンは一体何を・・?」


そのとたん、外が騒ぎ始めた


「何ニャ!?」


「始った・・!!行かなければ」


「行くって!!どこににゃ!?」


リシャーナに問いかける


「外よ・・!」


そして、あの事件が起こる


あの事件が始まります。

リーフルの視点からによる過去はどのようなものなのか

直前まで一緒にいたからこその絶望

そして、少しの希望

次回へと続きます

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