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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 二幕  ~ギルド協会の緩い糸と王宮の衝突~
296/485

少年、守られることのない約束

今回は、ラミア視点で送りします。

では、どうぞ

涙を流しながら少年は・・・・あの日を思い出す


「ヒック・・・」


少年が枯れた花を見て泣いていた


「どうしたのデス?若。」


一人の女性が現れる


優しげだが、魅力的な女性だ


だが、黒のロープがそれを台無しにしているのだ


「せっかく・・育てた花が枯れてしまったんだ・・折角、みんなが僕の誕生日

 にくれたのに」


枯れた花を見せるとアラっと声をだして


やがて・・ニッコリと笑って


「大丈夫デスワ。ほら・・ワタシの魔法を使えばいいのデスワ。」


枯れた花に手をかざすと・・みるみると元の美しい花に戻った


「わぁ・・・ありがとう。ユラ」


枯れた花の鉢を抱きしめる少年


相当大事にしていたようだ


「どういたしましてデスワ。他の魔導師たちも出払っていますノニ

 どうしてこんな所ニ?」


「お父様が、最近切羽つまっているんだ。だから、ここにしか

 場所がなくて・・・。」


ポッリっと寂しそうに笑った


「・・・・。」


彼女は知っていた


これから、起こることも


魔導士として・・・


「・・・・王様もみんな・・切羽つまっているんだよ。

 ねぇ・・何が起こるの?」


心配させないように笑顔で諭す


「・・・・大丈夫デスワ。公爵様にはワタシ達魔導士がいます。

 王も公爵様も・・必ず・・守りますカラ・・。」


少年に優しく微笑みかける


「・・・うん。みんながいるからきっと・・大丈夫だよね。」


「約束デスワ。必ず・・守る・・って。」


「うん。約束。」


そして、その言葉を最後に・・・


次の日・・・王と公爵家の世界は・・終わった。


誰の声も叫びを聞くこともなく


魔導士たちは・・ただ・・・薄れゆく世界を


眺めることしか・・・できなかったのだ・・・。


ある者は悔しさを


ある者は嘆きを


ある者は怒りを


ある者は虚しさを


ある者は・・・・憎悪を・・。


それぞれを宿らせたのだ


そして・・少年との約束は・・・


永遠に守られることは・・・なかったのだった・・。




              ****



「ほんまに厄介な枝や。ええい邪魔や邪魔」


先ほどから植物の枝や蔦がラミアの邪魔をするのだ


ほんまに邪魔な草や・・!


ラミアが捕まらないように逃げる


「ブランブル」


ユラがそう杖をラミアに向けると・・・鋭い枝が発生する


「こんくらいで捕まるか」


ラミアはヒョイヒョイっと避ける


迫る枝をナイフで斬る


それも、一瞬だ。


あっさりと消えてしまった枝に・・ユラは対してなにも思うこともなかった


それよりか・・怒りよりも先に・・見えたのは・・・


魅惑的で蠱惑的な・・・笑み


「面白いワ・・・でも、この形態では、駄目ね。

 そうだわ。」


そういって何やら杖が怪しい光が発生する


「うわっ。」


ラミアはその怪しい光から目を逸らす


突然、地形が変わる


壁がさらに植物で生い茂り


さらには・・・


「く・・・草が・・トゲに!?」


ラミアは足を抑える


「ウフフ」


辺りが植物園のようになる


「ウフフ。これで面白くナッタワ。」


「・・・あんさん・・!」


ラミアは、嫌な予感になる


自分は魔法つかいではないからな。


速さだけでなんとかなるか・・わからんけどな。


そんなラミアを見て


「ねぇ、貴方は戦うのはスキ?」


「・・・なんや、いきなり。」


こいつ・・・うちで遊んでやがるな。


ラミアは胡散臭い顔をしてユラを見た


「ワタシは、戦うのが好キヨ。それがヒトなりの本能。」


狂気の瞳を向けられるがラミアは・・ポッリとつぶやいた


「・・・うちは、そんなの本能というより衝動に見えるがな」


そう・・こいつの戦いは本能には見えない


一時的な、衝動や。


けど・・なんや、この・・・笑みは・・


「さぁ、次の攻撃ネ」


ニコニコっと笑うと・・巨大な枝がラミアに迫る


「こんなの避けるわ。」


ラミアは避けるが・・


「甘いワ」


その途端・・ラミアの目の前に枝が飛び出る


しまった・・!!


油断していたラミアは、足と腕から・・


「ツゥ・・」


ポタ・・・ポタ・・・と血が流れる


痛・・・ッ。


その途端、枝は・・ラミアを血を吸っていく


なんや・・こいつ・・うちの血を・・吸っている!?


ゾッとするラミア


「ウフフ・・植物たちも美味しそうに血を吸っているわ。」


ラミアは・・


「悪趣味やな。うちの血はマズイから。吸ってもどうにも

 ならんで?」


ヘッと強気で笑うラミア


「うふふ・・それはないワネ・・・こんなにも植物が

 嬉しそうダモノ・・きっと、全身から流れる血は美味しい

 カモシレナイワ。」


「・・・はん。気色悪いわ。」


「ふふっ・・それよりもあなたのチカラはこんなものカシラ?

 正直イッテ・・期待ハズレヨ」


「・・・ふん。」


ラミアは・・・まだ技を一度も使っていない


そう・・理由があるのだ


「反抗的はキライ・・ヨ!!」


その途端・・またもや攻撃をしかけてくるのでラミアは軽やかに避ける


「まだまだ・・アナタモアマイワ。ワタシたちは魔導士

 ・・・甘く見てもらったら・・コマルワ。」


反対の方面からも・・鋭い葉っぱがきたのだ


「同時魔法か・・しまった!!」


ラミアはズサっと大きく腕が斬られた


「ガハっ・・」


ラミアは、腕を抑える


「もう駄目ネ。強いと思ったケド・・弱いわ。」


血が流れてうずくまっているラミア


「なぁ・・・一つだけ聞いていいか。」


ラミアは・・顔をあげることもなく問う


「またかしら?最後の悪あがきとしてなんでも

 聞いてイイワ。」


「そか・・それならば、あんたのなかにある感情はなんや?」


ラミアの問いに


「・・・・あるのはそう・・虚しさ」


「・・・・。」


「なにも残らずになにも返してはこない。

 チカラがなければ・・ワタシたちはなにもできない

 ・・・ウフフ、何言ってるダロウ・・ワタシハ

 ウフフフフフフ」


虚しさ


それが・・・このユラという魔導士を支配しているものか。


「・・・虚しさ・・それが、あんさんを豹変させる切欠か。」


すると・・


「チガウ!!」


「・・・・アノヒトは・・ワタシたちに自由をクレタ!!

 もう、聖女に従わなくてイイ!!ワタシタチは

 自由ダ!!」


アノ人?


どういうことや・・?


まぁ・・ええわ。


「・・・・ふぅん。これが自由か?」


「・・・!」


「あんさん・・多くの者を不幸にして・・これが自由か?

 ・・・はん、笑わせんなや。」


ラミアは立ち上がる


「これが自由なら・・なんで、あんさんは囚われた瞳をしているんや?

 自由ならば・・・なんで、この国から出ないんや」


そう、自由ならばいくらでもこの国を出ることができた


それなのに・・それをしない理由や


つまり・・このユラは・・・


縛り付けられているだけや・・・。


「チガウ・・・チガウ・・・チガゥゥゥ

 ワタシは!!チガウンダ」


頭を抑える


そして・・・見せたのだ・・・


ツゥ・・っと・・・涙を流したのを


「・・・・タス・・・ケテ」



大筋の涙・・・・


だが・・それは一瞬だった


すると・・ラミアは・・・。


「・・・・ああ。助けたる。楽にしたる。

 ・・悲しい戦いは、これ以上せんでええんや。」


「ウルサァァァァイ!!」


ラミアは迫ってくる魔法を避ける


先ほどまでとは大違いの速さだ。


「な・・・・」


コキコキっとラミアは腕鳴らしをする


「そろそろ、本番に行こうかな。」


「な・・・!?」


まるで痛みを感じないつもりなのか


足やら手を動かしている


「な・・・もう動けないハズ・・!?」


すると、ラミアはあっけらんとした顔で


「ああ。あんさんの気持ちを聞きたかっただけやわ。

 腕とか足とかほんまに言うと痛いけど・・・

 まぁ、ええ収穫になったしええな。」


「あ・・・あなた!?」


ニッとそれはもうすごい笑顔だ。


「あんさんと直接対戦するとうちは

 勝機はないわ。はっきりいえばな・・けど、うちはシーフ。

 シーフなりの戦いをあんさんに見せたる」


今までにない・・足に光の陣が現れる


ラミアの反撃が・・始まる

ラミアが狙っていたのは、真意です。

そして、もう一つ・・魔導士たちのそれぞれには

豹変させる切欠があります。

その一つが・・彼女の中にある感情

”虚しさ”です。

これがどう展開していくのか次回

お楽しみに~


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