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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 二幕  ~ギルド協会の緩い糸と王宮の衝突~
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少年、特別な日

今回は・・ある人物の思いです。

その思いのむこうには・・何があるのでしょうか?

俺はレザンさんの依頼が終わった後、公園へと向かった旬たち


「ここ、公園やな。えっと、どこにいるやろうか?」


ラミアがグラムさんを探している


「でも、ラミアはグラムさんを知らないでしょ?」


そう、ラミアは、グラムさんの顔を知らない。


当然といったら当然だけど。


「あ、そうやったな。初対面だというのを忘れていたわ」


「・・・忘れてはダメだよ・・さて、どうしよう。」


どこを探していいのか検討がつかないのだ。


辺りを見渡しても姿が見えない


本当にここにいるだろうか・・?


その時、アニマが何か発見したのか


「あいすやがあるぞ。ごしゅじん。」


どうやら、公園に出店があるようだ。


しかも、甘い匂いがかすかに漂っている。


「本当だ。今日は営業しているみたいだね・・そうだ、あの店の人に

 聞いてみよう。」


「いこう、いこう!!」


どうやらアニマは甘いモノには弱いようだ


「いらっしゃいませ。アイス”ロメリー・ベリー”へ。

 今日は、人気のメリー・ベリーアイスが美味しいよ。」


どうやら若い女性が売り子として働いているようだ。


ロメリー・ベリー・・なんか、人の名前のような店だ。


でも、店からはとても甘い匂いが漂っている。


「おいしいそう。」


アニマはよだれをたらす勢いだ


「なんや、こんな寒い日に営業するんか?アイス、売れるんか?」


すると、店員は優しそうにわらって 


「意外に売れるですよ、これが。寒い時にアイスを食べる人もいるんでね。

 それに、このアイスは特殊加工によって、冷えを感じないアイスなんです。

 食べると冷たいとは感じるですけどね。」


「へぇ、それは面白いなぁ」


そういって商品の紹介をしている店の人に

旬はそれよりグラムがここに着ていないか聞いてみることにした


「えっと、すみません。ここに、グラム・ガラントという背が高い人なんですけど・・

 見ていませんか?公園にいると聞いたので」


すると、女性は、にっこりと笑って


「ああ、ガラント商店のオヤジさんか、先ほどまであの聖女様の像を見てあと

 酒屋の方面へと歩いていったよ。ここから北西になるね。」


聖女像・・なるほど、公園には聖女像があるもんね。


「どうもありがとうございます」


「いえいえ。」


すると、クィっとアニマが裾を握る


「ごしゅじん。あいすたべたい」


キラキラっときれいな瞳を向けるアニマに負け


「あ、先ほどのメリー・ベリーアイスクリームを3つお願いします。」


「はい、3つで300ルナ。甘いから格別に美味しいよ。」


渡されたアイスにアニマはとても嬉しそうだ。


俺たちはベンチでアイスを食べる


「おいしいぞ。ごしゅじん」


アイスにとても嬉しそうに舐める姿はかわいいな。と思う。


「ああ。寒い国やけどアイスは格別やな。不思議なアイスや

 身体が全然冷えないな。さすが、シュネーやな」


ラミアも美味しそうにアイス舐める


「うん。甘さがちょうどいいね。冷たいのに身体が冷えない。

 不思議だね・・このアイス。」


そんな不思議なアイスを食べた後、旬たちは次の北西にある

酒屋に向かった


「ほぉ、ここが酒屋か。」


酒屋”イカロス”っと書かれた酒にアニマは鼻を抑える


「さけのにおいがぷんぷんだぁ。」


「・・・いい匂いという訳でもないね・・。」


ここは酒屋だから、当たり前かな・・


そう思いながら旬は酒屋に入り


「すみません」


すると、中からおじさんが出てきた


いかにも酒屋にいそうな人だ。


活発そうだよね・・。


「いらっしゃい!!今日はやすいよ!!聖女祭前だから、特別セール

 してあげるよ!!」


その言葉にラミアがキラーンっと瞳が光って


「セール!?」


セールという言葉に弱いラミアは、瞳がキラキラっと輝いている

若干、アニマは引いているようだ。


旬は冷静にラミアの暴走を抑える


「・・・ラミア、目を輝かせないで・・目的わすれているよ。」


「ああ。そうやったな。あかん、セールは、あかんなぁ」


「せーるひんがすきだもんな。らみあは」


「そやそや。血が騒ぐわ。」


なんか言っているよ。


あいからず安いという言葉に目を向けるラミアとアニマ・・


どんな生活をしているんだ?と思った。


「どうしたいだい?」


「あの、グラム・ガラントという

 背が高い男の人なんですけど。酒屋に行ったと聞いたので

 寄ってみただけど・・もういないね。」


「なんだいオヤジさんの知り合いなんだね。」


「そうです。お酒を買いにきたのですか?」


すると、おじさんは、コクリっと頷く


「グラムさんだね。特注の酒を買っていったよ。」


「特注ですか?」


「そうだよ。特別な日だからね。明日は。」


「特別・・な日?」


ラミアは不思議そうに首を傾け


「なんか大事な日やの?聖女祭やから?」


すると・・・おじさんは寂しそうな顔をして


「ああ。そうだな」


おじさんは本当に寂しそうだった。


哀愁という奴だろうか・・とても強い悲しみが見えたのだ


「・・・それで、どこにいったですか?」


「ここから西に・・ある跡地があるんだよ。今日は特別な日だから

 きっと、ガラントのオヤジさんも。そこに行っただろうねぇ。」


「どこにあるんや?そこは?」


「ここから少しあるいていくと西方面に雑木林があってそこを道なりに

 歩けば、すぐだよ。少し、歩くけど道には迷わない。一本道だからね。」


おじさんは快く教えてくれた。


これなら、目的地はすぐだ。


「そうですか・・あの、俺もその特注のお酒でなくてもいいんですけど

 お酒ください。」


ラミアがセール、セールと騒ぐから買ったほうがいいだろうと思った。


「ああ、分かった一番安いのでいいかい?今、セール中だから

 まけておくよ。」


「うん。ありがとう」


安い酒を見積もってもらって旬はお酒を手に入れた


旬たちは酒屋を出て


「ほな。いこうか。」


「ここからみちなりだったな。あにまもあるくよ」


「うん。それじゃ行こうか。」


そして雑木林の目印に道なりに歩いていく


「なにがあるんやろうか?」


「あとちっていっていたぞ」


「・・そうだったね。何があるんだろう・・?」


旬は道なりに歩くと・・そこには何もない広大な土地だった。


「えらく広い土地や・・。」


「あにまもおなじことをおもう。」


「旬・・?」


旬は真っ直ぐとその広大な土地を歩いていく


すると・・・その中心に背が高い男がいた。


どうやら、その広大の土地の真ん中にはポッンっと墓があったのだ。


「あれが・・グラム・ガラントか。」


「おおきいなぁ。」


「・・・。」


旬は、目の前にくると・・男は振りかえる。


「よぉ、きたか。おっと、見慣れない嬢ちゃんと小僧だな。」


「俺の仲間であるラミアとアニマです。」


「ラミアや。」


「アニマだよ。」


「そうかい。元気そうな奴らだ。」


少しだけ・・寂しそうだ。


酒瓶をもっているグラムさんに旬は問いかける。


「・・・ここは?」


そこは・・・何もない土地だった。


広大な土地だけが広がっている・・・。


お墓がポッンっと・・本当にあるだけの寂しい土地だ。


「公爵家の跡地さ。」


ここが・・公爵家の跡地・・!?


ウッズさんの実家があった場所だ・・・!!


そうか・・ここが・・。


ウッズさんが燃える屋敷を眺めていた・・土地。


「なんや・・公爵家の土地だったかい。」


すると、グラムさんはいつものような豪快な様子をみせないで


寂しそうに・・ただ、跡地を見つめる


「・・・そうだ。5年前までは公爵家があったんだよ。

 残念ながら5年前により、焼け落ちて・・ここには、

 何もない・・跡地だがな」


そういえば・・どうして身内ではないのに来たのだろう?


「・・・何か関わりがあるんですか?」


すると・・グラムは・・。


「5年前、俺の実家は公爵家に恩恵をもらえたんだ。

 小さな店だったが、公爵様は良くしてくれた・・

 その時・・出会ったんだよ。」


「出会った?」


「・・・公爵様の妹・・リフレイアにな。」


聞き慣れない言葉だ・・。


「リフレイア・・?」


「ああ・・忘れることないさ、彼女は聡明で美しい人だった。」


それは愛しいと感じる時にみえる優しく偽りのない・・愛の瞳。


だけど・・・それは、悲しみだった。


過去を・・・思う気持ち・・。


「だった・・もうこの世にはいなんやな」


すると・・懐かしむように・・目を閉じるグラム


「・・俺の奥さんだった人だ。もう、5年になるがな。」


「おくさん・・なんだ。」


アニマも寂しそうで辛そうだ。


誰かを亡くすといのは・・本当に辛い話なんだ。


「小さな店に嫁いできたんだ。公爵家という身分を捨て

 俺よりか豪快な嫁さんだった。誰よりも誇らしく

 誰よりも優しい・・そんな人だったんだ。」


公爵家の妹・・さんか。


「じゃ・・あなたは・・ウッズさんの知り合いなんだ。」


ウッズさんは、公爵の息子だと言っていた。

となると、リフレイアさんはウッズさんの身内の人となる。


すると・・グラムは旬をみて何か気づいたのか


「・・・なるほど。ウッズ坊ちゃんの居候というのは小僧のことだったか」


「うん。ウッズさんにはとてもよくしてくれたよ・・・その、もしかして

 その墓は・・?」


「俺の奥さんのな・・正確には、この土地全体が墓のようなものだ。

 公爵家のモノは・・みんな、死んで何もなくなったから・・・

 この土地に墓があるんだ。」


とても寂しい土地に・・一つポッンっとある墓だ。


グラムは・・その墓に酒をかけた・・。


「5年前だな・・俺の奥さんは、死んだんだ。命日が明日だ。ちょうど

 公爵家に来ていた嫁さんは・・例の事件に巻き込まれ死んだ。」


例の事件・・・もしかして、例の・・国落としの事件か・・。


公爵家の人は・・ウッズさんを残して死んだ。


恐らく、リフレイアさんも巻き込まれたんだ・・その事件に


「はっきりいえば、なぜ、あの時逃げ出さなかったのか問いかけたかった。

 逃げ出せば良かったと言いたかった。だが、嫁さんは逃げ出すこともなく

 兄である公爵と共に・・炎と共に消えちまった。」


そこにはもうない屋敷を見つめているグラムさん


それは哀愁だ・・。


そして、旬に振り替えずにグラムは問いかけてくる


「小僧。お前はどう思うか?この国を見て。」


その問いかけに・・俺は迷いもなく・・答える。


「・・・不安因子が多すぎですよね。はっきりいって」


そう・・ラグナさんのこともあれば


王宮とギルドの緩い糸・・。


とにかく、不安因子が多すぎるのだ。


すると・・グラムは苦笑いをして


「見抜かれているな。自分より年下でおまけに娘と同年代の子供に

 言われちまっている。」


そして・・遠い瞳になって・・過去を思う。


「嫁さんが死ぬ前でも、この国は、はっきりいえば不安定だった。

 それが脆く崩れただけの話・・だが、死んだ嫁さんの弔いに復讐心はある

 だが・・それが不思議とやりたくないんだ。」

 

墓をながめて・・グラムさんは答えた

すると、ラミアは疑問になったのか・・。


「・・・どうしてやの?憎いやないの?」


その問いかけに・・グラムさんは・・・。


口元をかすかに緩めて・・。


「・・・悲しむからだよ。嫁さんは、公爵という身分を捨て・・そんなしがない

 小さな店であった俺の前に来てくれた。今度は、この国の未来のために・・

 ガラント商店をより大きな店にする夢を持っていた。」


誰よりも店が大好きで


自分のような大男に嫁いでくれた人


誇らしい夢を持った・・人


「夢の前で死んだだときは・・悲しくて苦しくて・・小さな娘の前で泣いた。

 公爵様も死んだ時も・・復讐心がいっぱいだったのに・・それを変えて

 くれたのは・・・坊ちゃんだった。」


「・・・ウッズさんだね。」


ウッズさんは・・強い人だ。


悲しみに怒りを任せることなく前に行ける人だ。


「ああ。坊っちゃんが一人生き残った時、あの悲愴感は忘れられなかった。

 泣き出しそうな絶望なのに・・前を向いて歩いていったよ・・・

 両親がいないのにそれでも・・粗末な暮らしをしても

 けして・・弱音を吐くこともなく、元気に働いている。

 そんな、坊ちゃんがまさかの王宮で見習い兵士をすると

 聞いたときは驚いた。反対したんだがな。」


その言葉にラミアはピンっときたのか


「なんや、反対をしたのはあんさんだったのかいな。」


どうやら、ウッズさんの周囲の反対については

この人も含まれるようだ。


「まぁ、そうだな。あんな危険なところに行くなんてそりゃ

 身内としたら反対するだろう?でも、ウッズ坊ちゃんは・・・

 それでも行くといった。」


「真実を知る為・・ウッズさんは、あの日を忘れられないから。

 だから、でしょうね。」


「・・・ああ。あの強い瞳でいえば俺だって折れたさ。

 ・・・復讐よりも真実を掴む坊ちゃんの姿には感激したさ。

 俺も恐らく・・あの日を忘れることなど二度とない。」


その瞳は・・どこまでも忘れることのない決意


そして・・・ラミアは溜息を吐いて


「・・・結局、夢はどないするの?嫁さんの夢はあんさんにとって

 とても大事な夢やないの?」


すると・・・ニッと笑って


「・・・もちろん、叶えるさ。王宮の規制が入っているが

 嫁さんの夢は広大。だが、その夢を叶えるのが旦那である俺だけの

 役目だと信じているのさ。嫁さんは、いつか、世界にガラント商店

 を知ってほしいと思っている。その夢のためには・・復讐はいらないはずだ」


「・・・復讐はいらへんか・・あんさん、辛くないんか?」


その問いかけに・・少しだけ影をもっていたが・・やがて・・。


「・・・辛いさ。だけど、商売をしていくためには復讐は捨てる。

 ・・俺の娘も、強いしたくましい。だから、俺は泣いてばかりじゃ

 いられねぇ・・強くなると決めたんだ・・がははは」


「強いですね。」


「ああ。強くならなければいかねぇな。商売人の名にかけてな」


悲しみを乗り越えた先には・・待っているのは妻の夢のために

奮闘する


それは人として・・尊敬出来る人だ。


「それとお前たちに明日のことを忠告しとこうと思ってな。」


ガハハっと豪快に笑いながらグラムは旬たちにある忠告を聞くことに

なったのだった。

グラムという人物は、優しい人物であります、少々豪快なところがあるけども

そんなキャラですけど・・温かい瞳で見ていてくださいね。

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