少年、考察する
今回は、これからやるべきことを決める旬です。
ウッズの言葉にピンっときたのか旬は・・
「明後日・・!ってことは、明日まで準備なんだね」
その言葉にウッズはどうやら肯定する。
「そうッス。一日で終わらないッスからね・・旬、どうしたッスか?」
どうやら旬は何か考えごとをしているようだ
その旬に気づきウッズは問いかけてくる
「・・・国落としの話を聞いて・・奴がなぜ、消えたのかその狙いは
わからないけど・・今、できることは警戒しないといけないし
知らなければならないこともある・・だから、祭りの夜・・王宮に
侵入するしかないかもしれない」
頭の中で構想するのは・・正体不明の国落としの影
それと・・祭りの夜のことを頭に入れる
すると、ラミアはフゥっと溜息を吐いて
「・・・やはりか・・うちも、王宮には用があるからなぁ
侵入は夜が定番やからな。」
どうやら旬の意見に賛同するようだ。
「例の話でしょ?」
例の話・・それは、国落としだけではない
スタイン博士のことも含めてだ
「スタイン博士は、シュネーにいた可能性も高い。
うちはあの婆の言うことは信じるわ。
まぁ・・・奴さんが、出てくれたらうれしいけどなぁ。
・・まぁ、期待はせんけど。」
奴・・つまり、聖女のことだろう。
ラミアなりに聖女が怪しいことを睨んでいるようだ
「旬、王宮に侵入するというのは・・警備が手薄になるからッスか?」
ウッズは旬にそう聞いてくる・・旬はそれは違うと首を横に振る
「・・・いや、厳重だと思うよ。恐らく、王宮も警戒すると思う。」
そう・・国落としのことを含めると恐らく祭りこそが警戒すべきことだと
王宮の方も気づいているだろう・・ありえる話なのだ。
「あにまもどういけんだぞ。にんげんは、こういったことにはびんかんだから」
「確かに、敏感やな。自分が殺されるとわかればどこの誰が手薄にするか。
うちなら、厳重に構えるはずや・・ま、後一日あるからな~どないしようか
旬は何をするんや?」
アニマとラミアは旬の意見に賛成のようだ。
ウッズさんは少し困惑しているようだけど・・・。
とりあいず、明日は普段通りに動かないといけないし
「一応、ギルドの仕事をするよ。俺、気になることがいくつかあるから」
そう、気になることは一応ある・・そう多くはないけど
「何や?」
「・・・一つは、ギルドかな」
「ギルド?」
「・・・ギルドも何か動きはないと思いたいけど・・俺のギルドの先輩がね
・・・何を起こすかわからないから心配なんだよ」
ラグナさんのことだ。
あの人の秘めた殺意・・狂気・・。
このまま、止めらなければどこにいくかわからない
ルリリさんもそのことでかなり悩んでいたからな
「ギルドの先輩がどうして?」
「そうッス。」
「・・・あまり、本人のことだから俺の口からは言えないよ。
でも、心配だしね。」
ラグナさんのことをあんまりいうのはやめにした。
ラグナさんかなりの有名の人だと思うだよね。
だから、黙っていた方がいいかもしれない。
そんな旬の様子を見て
「なるほどな。あんさんらしぃわ。それで、他には?」
「もう一つは、これかな。」
旬は、バックから出した宝石っぽい何かをラミアに渡す
「これは・・・!!」
ラミアは驚いた顔をする
俺も同じだ。
ラミアの話を聞いて・・心に引っかかっていたからね
「形やら、この宝玉とは少し似ているけど・・不思議な輝きを持っているだよね。」
「あんさん、これをどこで?」
ラミアが念の為に聞いてくる。
俺は正直に答えることにした
「ああ、ロザさんからもらったんだ。なんか、紛れ込んでいたそうだよ
これは・・オーブかな?」
そう、オーブ。
色が似ているのだ。だけど、形こそは似ていない。
すると・・ラミアはその宝玉を見つめながら
「いや、わからん。オーブにしては、えらく透明性があるわ。
でも、魔力が込められとるわ。強い魔力がな。
うちの持っているオーブとはまた違うな。これは驚くな。」
「どういうこと?」
「オーブの特徴は、魔力なんや。元々、オーブはお守りがわりのような
ものや・・だから、強い魔力が必要なんや。魔力が強いほどオーブは
透明性が見えるんや」
なるほど・・つまり、オーブは魔力が高ければ高い程
透明性がより・・。
すると、ラミア達の話に・・ウッズが覗き込み
そのラミアが持っている石をジッと見つめる
「オーブのことは自分も立ち聞きしていたッスが
錬成及び量産は不可能ッス。自分もオーブを見たことがあるっす」
すると、ラミアはそういえば・・っと思ったのか
「ああ、公爵家やったな。あんさんの家も」
すると、渋面になり・・。
「元ッス。その時だけど・・ケース越しだったッスね。
ラミアさんの持っているオーブは少し違うッス」
「違う?」
俺とラミアは首を傾ける
「はいッス。どちらかといえば、形は違うッスが
旬が持っているオーブの方がより近いッス」
より強い・・?
その言葉にラミアと旬は顔を見合わせ
「・・もしかしてこれ・・・?」
「・・・ああ、錬成陣も何も使っていない
天然の可能性があるな」
天然・・・。
「・・・・なんで、そんなものがロザさんの荷物に紛れ込んでいたんだろう」
疑問に感じる
俺は頭に残るのは・・ロザさんのあの背景の薔薇と笑顔だ。
濃い人だからなぁ・・ロザさんは。
すると、ラミアは腕を組んで
「さぁな。うちかて理解できんわ。まぁ、のほほんとしたロザさんなら
ありえるかもしれんな・・ちっ、あの時、もうちょっと安くしてもらえば
買えたのにな。」
まだ言っているよ・・よほど、値切れなかったことが後悔しているようだ。
なんだか、明日もしそうで怖い・・色んな意味で。
「たしかに奇抜な人ッスからねぇ。ロザさんは」
うんうんっとウッズはうなずいた
「とりあいず、旬」
「何?」
宝玉を返すラミア
「あんさんがこれを持っておいたほうがええやろ。もらったものは
もらった人が管理するもんや。」
どうやら、ラミアは俺が持っていた方が良いと判断したんだろう
俺はどうすればいいかわからないし・・ちょうどいいかもしれない。
「ああ、そうだね。そうするよ。」
バックの中に入れた旬
「他はないな?」
「うん。以上かな」
他にも気になることはあるけど・・まぁ、今はこの2つかな
「とりあいず、旬は明日はギルドで仕事ッスね?」
ウッズが再度旬に確認の為に尋ねてくる
すると、旬は頷いて
「うん。そうだね。ウッズさんはどうするの?」
「自分は明日もしものために、抜け道を探しておくッス。
自分は、王宮にはよく入っているッスから。よくも悪くも昔から
知っているッス。とりあいず、探しておくッスね」
「お願いするね。さて、ラミア達も一緒にする?」
「そうするわ。うちも暇やしな、アニマ」
「そうだな。ごしゅじんといっしょにしごとをするのも
あにまはたのしみだ」
「そやな。」
ラミアたちの和やかな会話を聞いていると
ウッズは気になっているのか・・
「先程から気になっていたッスが・・その子は、なんで旬を”ご主人”と
呼ぶッスか?」
どうやら、アニマのことが気になるようだ
確かに、普通の子供は、言わないような・・。
まぁ、嘘は言わない方がいいね。
「ああ。アニマは獣なんだよ」
すると、ウッズは驚愕した顔で信じられないのか
「獣!?でも、人間の子供に見えるッス」
すると、アニマはえっへんっとした自慢気に
「あにまは、にんげんにばけれるからな。いずれ、おまえにもあにまの
ほんとうのすがたをみせてあげるぞ?」
「そ、それは、楽しみッス。」
次回の持ち越しになりそうだ・・アニマの本来の姿については・・。
そんな会話後に・・ウッズさんはひと段落がついたのか
「ああ、そろそろごはんッスね。自分がつくるッス」
ごはんの用意をはじめるウッズさん
「そういえば、ウッズさん、仕事は?」
すると、ウッズさんはニコヤカに笑って
「今日は、珍しく午後はお休みになったッス。だから、帰ってきたッスよ」
「なるほど、だから早かっただね」
「そういうことッス。さて、つくるッスね。」
「ほんまか!?うち楽しみだわぁ~」
「あにまも~」
どうやら楽しんでいるようだ
二人とも・・喜んでいるね・・。
旬はそう感じたのだ
その日は、とても美味しいごはんと話が進んだ
初めて、会ったはずのラミアとアニマに仲良くなったのか
話が進んで楽しい日をすごした。
食後、旬は、椅子に座りながら本を読んでいる
「旬、何をしているッス?」
洗いモノを終えたウッズが本を覗きこんだ
もちろん、となりの席にはアニマがいる。
前にはラミアが武器を拭いているのが見えた
「調合だよ。基礎だけど」
ウッズに見せた
調合の基礎と書かれた本に・・。
「何か作りたいッスか?」
そう聞かれると迷わず旬は答える
「うん、栄養剤だよ」
「栄養剤・・ああ、もしかして外の鉢のことッスか?」
「鉢?」
ラミアが気になっているようだ・・・武器を拭くのをやめて
旬を見ている・・・それも興味深そうに・・。
「うん。そうなんだよ・・芽が早く出るようにおまじないのような
ものを作ろうと思って・・でも、栄養剤が載っていたからこれで
でもフラスコないし調合器具一式買わないといけないかな?」
「ああ。それなら以前、もらったモノの中にあるッス」
ポンっと思い出した
そういって、使われない箱から古いフラスコを取り出し
そして、調合器具一式を旬に渡される
「なんか、いらないとか言われてもらったッス。
自分も使わないのに貰うのもどうかとおもったッスけどねぇ~」
「へぇ・・すごいね。」
確か、ウッズさん見習いだったよね?
しかも、魔法を使えないのに・・調合器具っているものだろうか?
と旬は疑問に思った
「調合好きな人なんッスけど・・変人ッス。その人からなんかしらないけど
貰ったッス・・でも、使わなくてずっと箱に入れていたッスけど
旬に、役に立てるなら自分も嬉しいッス」
一体どんな人なんだろう・・。
いずれ会えるだろうか・・?
この時、旬は知らない
まさかの対面することになることを・・。
「はぁ・・じゃもらうよ。」
一式を貰って旬は早速、調合に励むことにした
「なになに、薬草だらけやな。ネピー草やアルピ草、キュア草など
色々必要そうやな」
調合の本を読みながら必要なことを読みはじめるラミア
「薬草なら、結構あるから大丈夫と思うよ。」
旬は薬草袋を見せると・・ラミアは
「さすが旬やなぁ・・確かにこれならいけるかもしれないな。」
「あにまもてつだうぞ!!」
「ありがとう。じゃ、ラミア、読んで」
「はいはい。えっと、薬草はすりつぶしてフラスコの中に
水と・・配合を2;3で。」
あれこれとラミアは読みはじめる
それを聞きながら慎重に調合をはじめる
「後は、火をつけて・・フラスコの中に魔力を込めるだけや
・・まぁ、魔力を注ぐのは難しいからなぁ・・頑張れ」
アルコールランプに似た品物に火をつけてフラスコがボコボコ
いう前に・・旬は、魔力を込める
「うわっ・・・込めすぎた!!」
旬が気づくのは遅くフラスコはボコボコ・・・ボンっと音を出た
辺りに充満する煙・・。
「ケホケホ・・なんや、この煙。」
「けほけほ。」
「けほけほ・・すごい煙ッス・・・」
すると・・旬は、煙の中から見えた
フラスコの中にある栄養剤を見た
「・・・・」
「・・・・。」
「・・・・」
「・・・・。」
じっと・・見たのだ・・。
無言が続いた
そしてラミアが本を読みながら
「えっと、な・・黄緑と書いてあるで?できたら」
「・・・これは・・ちょっと・・。」
ウッズは苦笑い気味だ・・
「・・・。」
アニマは黙っている・・どうやら、呆然としているようだ。
「うわっ・・少々失敗かな・・黄緑じゃなくて・・緑だ」
フラスコの中にある液体は・・黄緑ではなく緑だ。
それも、栄養剤とは呼べるだろうか・・という色だ。
「ええんちゃうの?これも、最初やし・・・」
「そうッスよ」
初めてなのに、二人共俺に、元気を与えている
ってか、慰めてくれている・・俺、ちょっとショックだ。
「うん・・なんか、調合難しいね。」
思ったより配合やら、魔力の注ぎ具合は難しい
初めてというのは・・きっと、こんな感じに
ショックから始まるのかもしれないと・・旬は感じた
「確かにな。まぁ、一応書いてあるで・・緑色になった場合は
あなたの魔力を注ぎすぎですと。逆に、黄色になった場合は
魔力が足りません・・とな。」
「難しいッスね・・」
ウッズは、気難しい顔をしている
「まぁ、まだ初めてやしな・・・ふわぁ。
さて、うちもうねるわ。今日一日色んなことがありすぎて
眠いからなぁ」
ラミアが眠そうにこすりつけている
「あ、部屋はこっちッス。」
どうやら、寝る所を案内しているようだ。
「ほら、旬。失敗しても栄養剤ッス。
外でやってくるッス」
「そうするよ。」
失敗しても栄養剤・・うん、確かにそうだ。
と旬は納得して
「じゃ、外にいくよ」
「あにまもいくよ」
といって旬とアニマは外に出て
鉢を見て
「これがごしゅじんの?」
そう聞かれると・・・旬はうなずいた
「うん・・・全然、芽がでていないけどね。」
旬はフラスコの中にある液体を見て・・・
溜息を吐いた
思ったよりショックだよね・・まぁ・・仕方ない
初めてだし・・。
旬は鉢の前で願う
「・・・芽が出ますように・・。」
「あにまをねがうよ。ごしゅじん」
どこまでも主人思いのアニマに旬は涙を流した
色んな意味の涙だ・・。
そして、願いをかけて・・少しだけ栄養剤を入れた
少しだけ鉢が光ったような気がした
「ひかった?でも、きえたぞ」
「・・・・とりあいず、毎日入れておけば・・・多分、大丈夫。
・・・自信ないけど」
すると、そんな旬にアニマはニコっと笑って
「あにまはうまくいくとおもうぞ。だって、ごしゅじんが
がんばってそだてようとしてくれるだから」
その言葉で・・旬は少しだけ思う。
どこまで優しいだろうか・・と。
「アニマは優しいね。俺は、アニマたちを別れを言ったあの時の自分を恨めしいよ。」
「ごしゅじん・・?」
あの時のことを思えば・・苦い思いになる。
別れを言って・・二度と会うことはないと思っていた自分に・・。
「本当のこといえば、自分は・・他人任せしてしまうほどの情けない存在なのに
・・・アニマはそれでも俺についてきてくれる。」
そう・・本当のことをいえば自分程情けない人間はいないと思っている
仲間に別れて・・もう会うことないと思ったのに再び出会う自分
旬は自分がどこまで女々しいのかと・・思う。
そんな旬の様子を見て・・・アニマは・・。
「・・あにまはしっているぞ。ごしゅじんはあのたたかいでつらいおもいをした
だから、どうしてもこれいじょうたたかいたくないから・・たにんまかせをした
・・それは、にげでも・・あにまはそれでもよかったとおもう」
「それはどうして?」
すると・・アニマの瞳の奥には・・あの戦いが見えた気がした
「・・・あにまは、ごしゅじんにえがおでいてほしいから。
たにんまかせでもいいから、ごしゅじんがこれいじょうつらいおもい
してほしくなかったから・・・そのあんまりいえないんだ・・あにま・・」
その言葉だけで十分だ・・。
旬は、アニマの頭をなでた
「ありがとう・・あにま。」
「ごしゅじん・・」
本当のことを・・吐露することにした・・俺
「俺さ、実にいえばこのままじゃ、駄目なのは最初から気づいていたんだよ
他人任せをしていてもいずれは、自分に返ってくるのも知っている・・
怖かっただけなんだよ・・俺は」
もしかしたら・・俺は弱虫かもしれない
自分が思っている以上に・・。
「ごしゅじん。」
そして、旬は・・空を眺めた
今は夜で・・もう星が見えている
「・・・でも、きっと乗り越えられるとも信じている・・だって、アニマ達がいるから
仲間がいれば・・きっと・・。」
今度は乗り越えていきたい。
自分の弱さと戦える力を持って・・・戦えるように。
「あにまもちからになれた?」
「うん。もちろんだよ。そろそろ、寝ようか。明日も早い」
「そうだね。ごしゅじん。」
俺はその後寝ることにした。
色んな気持ちが押し寄せてきたけど・・・我慢して寝ることした。
調合は得意ではない旬は、これからどうなるのかお楽しみに
というわけで、次回は、ある人物との出会いです




