少年、信じる心とお人好し
今回もまたラグナと旬の会話
旬とラグナは裏通りの中でもあまり人の入らない
路地裏のそれも深い闇へと・・入って行った二人
ラグナは辺りを見渡して
「闇だな・・それも完璧な闇、旬大丈夫か?今から戻ろうと思えば
戻れるが」
俺はフルフルっと横に振る
こんな濃厚な魔力に引き寄せられた者としては
今更戻る気がしないだよね・・これが。
「いや、大丈夫だよ・・じゃなくてです」
慌てて敬語を使うとハハッとラグナは笑う
「今更敬語じゃなくていいぞ?ちみっこ」
「そう?じゃそうするね」
それならば俺は敬語を使わずに話すことにした
「闇が深いな。前がすでに見えない。」
そう闇が深すぎて見えないのは俺も同じ
だけど・・俺の前には・・細い糸が見えるのだ
魔力の・・糸が
「うん。だけど、細い糸があるから大丈夫だよ」
向こう側へと続いているその糸を辿れば
目的地に恐らくつながっているはずだと・・思う
断言できないけど・・。
「お前、魔力の流れが見えるのか?」
すると、こればっかしは嘘は言えないと思って
うなずいた
「うん。闇でも見えるよ。糸が見えるから。暗くても
それを見失わなければ大丈夫。」
「そうか。じゃ、俺はちみっこの言うとおりに進むな」
「信じるの?」
なんだか、普通の人ならこういうことって不信に感じるのに
この人はなんていうか・・変わっているね
「・・なんだ?嘘なのか?」
「それはないけど。」
「ならいい」
その言いながら、歩くラグナさんの潔い姿に俺は気になった
「・・・どうして、ラグナさんはこんな子供の俺を推薦してくれたり
助けてくれたりしてくれるの?」
「どうしたちみっこ?」
「だって、おかしいとか思わないの?こんなに、子供のような姿の俺を見て
どうして・・信じてくれるの!?」
その言葉に驚いたラグナだが・・やがて、旬の頭をポンっとなでた
「ははっ。それはな・・お前の瞳さ。」
「瞳?」
「色によって茶色に見えたり黒に見えたりする・・その不思議な瞳。
なぜか、その瞳を見ると・・期待してしまうんだよ」
「えっ・・?」
「お前なら、ギルドに新しい風になってくれると・・な。
直感でもうしわけないけどな」
旬の頭をなでた
それは・・かって感じた・・あの優しい手のぬくもり
いつかどこかで・・・。
「新しい風・・。」
旬は呟いた
それは・・ラグナさんの言う新しい風
俺にとっては・・なぜか、荒れ狂う風にも見えた
今まで感じたことのない・・何かに俺は知らずうち
服をギュッと握った
「さぁ、行こうか」
「そうだね」
俺とラグナさんは再び
暗い闇の世界に歩き続ける
もちろん、旬にはあいからず細い糸が見えているのだ
だからこそ、迷うことのなく足を進めている
そんな・・旬に今度はラグナが問いかけてきた
「なぁ・・ちみっこ」
「なに?」
旬は迷うことのなく歩きながら
「お前に聞いておきたいことがある」
「?」
なんだろう・・聞いておきたいことって?
新しい風のこと?
そう俺は思っていると・・。
「なぜ、ギルド協会に所属しようとおもったんだ?
王宮でもお前はいくらでも雇ってくれるのに」
なるほどね・・鋭い所を突くね。
なんていうか・・まぁ・・色んな理由があるけど
もちろん、一つは自分の力を隠すことになる。
とはいえ・・俺の本当のことを言えば・・
それはどうでもいいことなんだよね・・。
「・・俺には、国を背負う力はありません。例え、巨大な力を持っていても
上にたっている人間になる気もない」
「・・だから、ギルドにしたのか?」
「・・それだけじゃないですよ・・」
「・・!」
「単純な理由は、俺も守りたい人たちがいるから・・守れるようになりたいからだよ」
アリエルさんの依頼を受けた日から俺は考えたんだ
ギルドなら・・俺にできることがあるはずだと・・
思ったんだよね・・。
だからこそ、さらに聞いてくるラグナ
「・・どうしてだ?」
俺は顔を背けた・・そして・・深い記憶を思い起こす
「・・・海の向こう側の世界では、悲しい別れを経験したんだ。
・・あの時以上に悲しいことはなかったんだ・・自分の力不足に悔やんだ
この小さな身体ではできることが少ないと気づかされたんだ。」
そう・・止めることのできないこの力に恐れた
すると・・ラグナはフムっと考え込み
「それは、お前がまだ幼いからじゃないのか?
お前には、それを抑えきれる程の力がなかった・・それだけ
じゃないのか?」
すると・・旬は静かに・・。
「・・そうだね。そうかもしれない。」
そう・・俺は、多分、自分が元に戻っても
恐らく・・救えない
それほど・・俺は幼いからかもしれない
的確な答えを言うラグナに・・なぜか嫌味も感じない
なぜなら、純粋な答えであるからこそだ。
「だったら、これからだ。ちみっこ」
「えっ・・」
俺は顔をラグナさんに向けた
「今のお前にできないことは、ギルドで俺たちがお前にできるかぎり
サポートするさ。幼いからだけじゃ片付けられないことなんてお構いなしに
なるほどな。」
「・・・。」
なんだか、ラグナさんって・・本当に懐がいい人だ。
俺が今まで会ってきたどの人よりも・・。
だから思うだよね・・同時に
「お人好しって言われません?」
「・・よく言われるよ」
ヘヘッと邪気のない顔で笑われると
「あ、ちみっこ、店が見えたぜ・・あそこじゃないのか?」
ポッンっと見えたのは・・一筋の灯り
「・・本当だ。今まで闇ばかりなのに・・あそこだけポッンっと灯りで
光っている」
そういって俺たちが近づくと・・ソレは店だった。
「ここから、強い魔力の気配を感じる」
旬は、その強い気配を感じ取っているようだ
「なるほど。あいつが言っていたのはこの店か。
確かに、魔力の糸が見えないとこの店には
たどり着くのは不可能だ。」
ラグナはジッとその店を眺めている
旬は、なんだか見覚えのある店に何やら考えている
この店・・どこかで見たことがあるような?
いや、でも・・確か、あの店はここにはなかったようだけど・・?
「よし、ちみっこ。入ろうか」
「あ、うん」
ガチャっと音を出し
ギィィィっとその扉を開けると・・・。
そこには・・・。
「・・すごいな」
ラグナは、その店に入るなりそう感想抱いた
その店は、アーティクだけじゃなく武器、大量の本で溢れている店だった
不思議な世界・・といえば簡単だ。
「すっごいな・・こんな不思議な店は初めてだ・・って、ちみっこ?」
「・・・!」
旬は、辺りを見渡す
「これは・・!!」
旬は以前見たことがあるばかり本に・・・。
何かを確信した
「ホッホッホ。やはり、来てくれたか」
「・・・!!」
ラグナは驚いて振り向くと・・
そこには・・初老の老人がニッコリと自慢のヒゲを弄っているのが見えた
「久しぶりじゃな。旬君」
「・・・・おじいさん。ここの店をやっていたんだね。どうりで
見覚えのある店だと思ったよ。」
「えっ・・ちみっこの知り合いか!?」
すると・・おじいさんは笑う
「さすがじゃな。あのヴェルター・ブーフ以来じゃな。旬君。」
それはもうそのおじいさんは・・嬉しそうに笑っていたのだった
同時に俺は・・どうなっているだと・・思ったのだった。
ラグナさんは旬にとってもギルドにとっても必要な人です。
まぁ、このキャラは気に入っています。もちろん、新キャラのルリリも。
では、また次回をお楽しみに




