幕間 行方不明の旬 千里視点
幕間に入ります。
今回は、旬が行方不明になった後の話です。
千里視点で送ります
僕は子供の頃
旬に憧れていた
とても強い・・旬に
そして・・僕は、誰よりも弱虫で虐められていたのを
旬だけが・・僕の味方だった。
幼い千里を取り囲むように子供は千里を責める
(なきむし!!せんりのなきむし!!)
(ぼくは・・なきむしなんかじゃない!!)
だけども幼い千里をいじめる声は止まらない
そんな時・・ヒーローが現れた
(なにしているの?)
その子供が通っただけで他の子供が青ざめて
(うわぁ、しゅんだ!!にげろぉぉ!!)
バタバタと子供達がいなくなる
(まだ、なにもいっていないのにね。)
旬は呆れたようにその後ろ姿を見ていた
(しゅん・・どうして?)
(そりゃしんゆうだからだろ?)
(ぼくなんかのために・・しゅんは・・。)
ポコンっと小さな手で千里の頭を叩く
(いてっ。なにするんだ!!)
そこには、旬が怒った顔をしていた
それも・・とても怖い顔で
(なんかなんていうな!!だれもかわりなんていないんだ!!
それぐらいわかるでしょ?)
その言葉で・・ハッとする千里
しゅんは・・ぼくをしんぱいしてくれた
知らずうちに千里は嬉しくなった
(うん・・ありがとう。しゅん。)
(ううん。じゃ、かえろうよ。おかーさんがおかしをつくって
くれたんだ。いこうよ)
(うん!!)
遠いどこかで思い出す声
だけども・・・それは、確かに・・・懐かしい想い出だ。
****
「旬が行方不明?」
それは、突然始まったことだ
夏が始まって
今日は、旬の確か進路相談の日だった。
確か、もう終わっているはずなのに
その旬が帰ってこないことに・・親友である千里とカズラは心配していた
「ああ。今、紫苑さんが探しているようだけどどこにもいないようだ」
カズラは嫌な汗をかいている
「そんな・・まさか」
最悪なことを想像してしまう・・千里
「事件に巻き込まれた・・まではわからない。おい!!千里、探しに行くぞ!!」
「う・・うん!!!」
僕たちはどこまでも旬の居場所を探した
旬の行きそうな所を
だけども
どこを探しても旬はいなかった
「いねぇ・・旬のやつどこに行ったんだ・・?」
カズラは、汗をかいている
だけども僕の汗は・・冷や汗なのか止まらない
僕はドクンドクンっと嫌なことばかり考える
落ち着け
落ち着くんだ
僕が落ち着かなければ誰が旬を助ける?
「・・・。」
カズラはそんな千里をみて心配そうだ
「千里?」
「考えているから・・」
旬はどこに行った?
親思いの旬が寄り道をするとしても紫苑さんに電話をしないなんて変だ。
ということは、旬が事件に巻き込まれたかもしれない
だけどそれは思いたくない
・・・。
でも・・一つだけ
僕には思い当たることがある
そう、一度ここにいる人物にも当てはまること
「僕、ちょっと旬の家に行くよ」
走り出した
「ちょ、千里待てよ!!俺もいく!!」
そういいながら千里の後を追うカズラ
旬の家の前には・・紫苑のさんのお店がある。
「紫苑・・さん?」
そこには旬を探しているはずの紫苑が、店じまいの中で
コーヒーを飲んでいた
「あら、旬君・・そしてカズラ君」
そこにはやつれていた紫苑の姿があった。
カズラは驚いた
なぜ、紫苑がここにいるのかを・・
そして・・・。
「し、紫苑さん。あんた、なんで・・旬を探していたんじゃないのか!?」
カズラがそう聞くと
「・・もういいの。旬はここにはいない。」
そう簡潔な言葉を残して紫苑はコーヒーを飲んだ
「「!?」」
二人は黙り込んだ
紫苑さんが・・・旬がどこに行ったのか知っているの!?
「・・旬は、ここではないどこかに行ってしまったのね?」
「・・・・。」
紫苑の言葉に・・千里は、必要な情報を聞くために
紫苑に問う
「恐らくは・・」
「おい・・千里。」
「・・そう、やはり・・そうなのね。」
紫苑は寂しそうだった。その様子をみて千里は・・。
「一つだけ。紫苑さん。」
「何かしら?」
紫苑は、儚い笑みを浮かべていた
「・・どうして、貴方は最初のあの日・・旬が帰ってきた時
まるでわかっていたかのように怒らなかったですか?」
そう・・これはカズラ君も知らない話
普通なら行方不明になったなら怒るやら色んな感情が渦巻くはずなのに
紫苑さんだけは違った
僕の家では、泣いていたのに・・紫苑さんは違った
旬が帰ってきたことに・・彼女は、ホッとしていたことだ
すると・・紫苑は笑って
そしてやがて・・何かを悟った顔になった。
「それは、あの子の父親もそうだったわ。ここではない・・どこかへ旅立った」
「・・・!」
ここではないどこか・・?
「・・・旬はそんなことをもちろん知らないわ。」
その姿に・・千里はただ・・ありえない・・と
「・・・・・旬の父親は、死んだはずじゃ・・?」
「・・・表向きにはそうなるわ。でも、それは偽りの記憶
あの人もまた・・。」
その言葉に続くことはない・・。
そして・・顔を曇らせた紫苑に・・静かに千里は・・。
「・・・一つだけ聞いていいですか?」
すると・・紫苑は顔をあげる
「・・何かしら?」
千里は、ギュっと手を握って
「どうして旬はそのことを知らない・・ですか?」
紫苑は・・ただ、寂しそうに・・。
「・・旬は、優しい子だから。きっと、知れば行こうとするでしょうね。」」
それだけだ。
確かに旬の性格ならきっとありえるはずだ。
なぜなら、旬は・・。
そして、俺は口元に笑みを浮かべて
「・・・・そうですか。僕は引き続き旬を捜索します
・・・恐らく、次に会う時は必ず旬を連れ戻しますから」
「・・・そう。ありがとうね・・。」
去っていく中で紫苑は・・ただ
「ごめんなさい・・千里君、カズラ君・・。」
そうただ・・呟いていたのだった
紫苑の店から去った二人のうち・・千里は
もくもくと無言で歩いていた
もちろん、カズラはうずうずしていた
「お・・おい、千里!!」
「なに?カズラ君。」
ピタっと止まって千里は、メガネをクィっとあげた
「どういうことなのか、説明しろよ!!」
喚くカズラに千里は思い出したかのように
「ああ・・そうだった。」
「・・・おいおい。で、何かわかったのか?
あの会話で。俺はちんぷんかんぷんだったぜ?」
カズラがそう言うと・・千里は夏の夜を歩きながら
話をはじめる
今、現状でわかっていることを
「旬の母親である紫苑さんは、旬がどこに行ったのか知っている。
つまり、紫苑さんは、旬が異世界に渡ったことを知っているということになる」
「・・!!」
「・・・。」
つまり、紫苑さんは、知っている・・いや、知っていた。
「おい、紫苑さんは・・一体何者なんだ?」
「さぁ、そんなこと、僕でも理解不能だよ・・でも、一番重要なのは
旬の家族である・・淳一さんさ」
そう、キーワードは旬の父親。
僕が知る上で・・恐らく・・。
「旬のお父さんか?でも、確か亡くなったって。俺、この間
旬と一緒に、お墓参りにもいったぞ?」
そう、ついこの間の話だ。
だからこそ・・おかしな話なんだ。
ただ、これまでの話を戻して思い出していくと
「ああ・・だからさ。僕も旬も恐らく記憶の中では・・旬の父親は・・
病気だったという・・記憶がある。」
「・・・?」
そう・・その記憶だ。
とりあいず、頭の中に入れておこう・・この奇妙な状態を・・。
「・・・なんにせよまずは、旬だ。」
「だな・・・ん?」
カズラはなんか異変に気づいた
「どうしたの?」
「・・・空間がねじれているぞ・・?」
「えっ・・!?い・・いつのまに・・どうして!?」
千里は焦ると・・・
「なんだ・・あいつ」
カズラは驚いた・・捻れた空間の目の前には・・
不思議な黒のフードを着た人物がそこにいたからだ
ソレは、ニッと千里とカズラに笑いかけていたのだった。
これから起こる前触れに・・。
次回、その②・・黒いフードの男の言うこととは・・?




