少女、闇の影
今回は、ロランの回想話です。
ミリカ達が去った・・数日後・・。
ロランは、懐かしい記憶を思い出した
メノリと初めて会った時は・・恐ろしくも強い女性だった。
ある時は、剣術で勝とうとするが、メノリにコテンパンにされて惨敗
またある時は、テストで上位から蹴落とされ愕然としていた自分の横で
ほくそ笑っているあの悪魔な顔
またある時は・・と思い出すたびに震えてしまう自分の身体
あの女はまさしく悪魔だった
しかし、同時に天使の顔を持つ悪魔でもあったのだ
ああ・・恐ろしい
でも、同時に笑いが出てしまう
なぜならでも、メノリは・・私にとっては友だ。
生涯の友であり味方だった
忘れられないあの日のことを思い出す
回想中
どこかの研究場で、話したことを思い出す
メノリはその時は既に禁忌により呪いに侵されていたのだ。
それでも尚・・学者として禁忌を調べ続けている。
ロランは問いかけた一人の学者として
メノリの奇行について聞くのだ
メノリは現在、荷物をまとめている
彼女は・・今日で研究場を去る日だった
だから・・聞くことにしたのだ・・最後に。
なぜか、メノリに会うのが最後のような気がしたからだ
(なぜ、学者を続けるんだ?そんな禁忌に手を出すまで・・!)
問いかけたのだ
ロランにとって考えられないこと
禁忌はけして手を出していけないことだ
だけど、メノリは手を出した
その結果がこれだ
メノリはもはや呪いを制御できる状況ではない
だから去る
荷物をまとめる手を・・止めて
怪訝な顔でロランを見るメノリ
(・・何言っているの。ロマン君)
面倒そうに平気で名前を間違えるメノリ
その言葉に腹が立つロラン
(ロマンじゃないロランだ!!人の名前を間違えるな!!
それに質問を遮るな!!ごまかすな!!)
その騒ぎようにメノリは急に笑い出す
(あはは・・・ごめんごめん・・。)
メノリは笑うだけだ
しかし・・次の瞬間
(やめられないだよね。)
そこには・・・どこか悲しそうな顔をしたのだ
(はっ・・?)
やめられない・・・?
(学者だからこそ・・かな。本当に馬鹿な奴だと思うかもし
れないけどやめられないんだよ。一度知りだしたら止まら
ない止まれないだから、その手を止めたら・・ただ後悔が
残るだけさ)
再び荷物をまとめる手は早める
感じるのは・・違和感。
ニコっと笑うメノリに・・さらに違和感をだく
まるで・・・。
「死に急ぐのか?」
すると・・メノリはどこか吹く風だ
(さぁね。でも、私にとって禁忌は必要なことだった。
・・そうしないと私は分からないのさ)
(分からない?)
そこには・・初めてみる・・メノリの瞳だった
かすかだが・・・どこか何か悟ったメノリが見れた気がした
(そうだよ。私には、自分が果たして何者なのか分からなくな
る。苦悩だけが続くらいなら・・・禁忌に手を出した方が
楽だ。)
苦悩・・?
(私がなぜ、ここにいるのかここにいなければならないのか
わかりたくないんだ・・それなら手を出すしかないのさ)
メノリは苦しそうに息をした
あの・・メノリが・・・?
いつも、あんなに傲慢なのに
どうして
そんなに苦しそうに言うんだ・?
(さてと、私も行こうかな。研究の引き継ぎはいないし。
ロラン君とはお別れだね。)
荷物をすべて入れ終えたメノリに・・ロランは・・。
(クランティア王国にか?)
何しにメノリは行くか知らないロランは聞くと
(それもあるけど・・私さ、最後に先生になろうとおもうん
だ)
(先生・・?)
(うん、私ね、子供がいるんだよ。まだ、小さいだけどさ
その子をとある村に預けているんだ)
(お、お前がこ、子持ち)
信じられなさそうな顔をする
(本当だよ。)
その顔にはぁ~っと溜息を吐くロラン
今に、メノリの秘密主義は始まったわけでない
だから・・受け入れるしかないだろうと悟ったのだった
(とってもかわいいこなんだよね。その子のために
この最後の仕事をやり遂げるさ)
(・・・いいのか?不幸にさせるんだぞ?
お前の子を)
(でも・・どうせ、私をわすれる。)
(忘れる・・?どういうことだ)
よく分からない言葉に・・メノリはフッフッフと笑い
(・・忘れるのだよ。そういう呪いなんだ)
(・・・?)
ロランは意味が分からない
忘れる?
それは、ロランにとって最後の謎でもあった
メノリはすべての荷物をまとめて立ち上がる
(ふふっ。ロラン君。君はいつかその子に会えるさ。
その時は・・よろしく頼むね。)
こうして・・メノリは、旅立った
後で知ったことは・・彼女は妃になったこと
そして、数年後、王と共に・・亡くなったことだった。
***
ぼーっと、その時のことを思い出した
「ようやく分かったよ。君の娘に会えるとは思わなかった
これもすべて君のはかりごとなんだろう」
すべてはメノリの計算だった
メノリは知っていただろう
いつか、メノリのことを自分に訪ねてくる日が来ることを
自分はこの年になってやっと、君がなぜ学者であり続けたのか
分かった気がする・・。
ロランは初めて気付いたのだ
なぜ、自分が学者であり続けたいのか
どうして、危険をしてまで進むのか
ようやく気付いた
「・・・そして、君は私に何か用かね?」
何もないところから
突然・・怪しい光が輝く
その声に・・・どこからかホホホホっと高笑いが聞こえた
「あらあら、気付いたご様子でありんす。」
どこかで声が聞こえた
怪しい光が一つになり
そこから姿を現す
「ああ。ずっと、前からね・・さっさと姿を現わせばいいじゃないかな」
闇から姿を現したのは・・・黒いドレスと黒いブーツ
すべてが黒で統一された女性が姿を現した
髪は、青紫 瞳は、紫
どこか・・紫色と黒で連想させる・・艶をもった少女が姿を現す
「さすがは、驚くでありんすなぁ。あちきはとりあえず
うれしいでありんす」
「・・・お前は・・・誰だ?」
ロランは警戒をこめて・・問うと・・。
「あちきの所属は、皇国のとある部隊の隠密騎士という身分の者でありんす」
「お、隠密騎士!?まさか、あの皇国のバケモノ部隊か!?
お前は・・なぜ!?アード家の目はどうした!?
お前は・・お前たちは国から出られるはずがない!?」
皇国で有名な話だ
彼らは、アード家に監視されている存在だ
アード家は皇国でのもっとも抑止力をもつ家だ
あの家の者は決まって、多くのことを背負う一族
そしてそれだけの強さがある家だ
「アード家・・ああ、十年前からあちきたちは自由の身にな
ったのでありんすよ」
「ばかな・・あそこには神童がいたはずだぞ!?」
そう、若干5歳で長の道が決まった少女がいた
確か、今はもう23になってるはず
その少女は人から神童と言われ
いずれは、皇国の隠密騎士たちと対等に並ぶはずだ
彼女は天才だ
武術の腕はすでに達人級と聞いている
そんな彼女の目を逃れられるはずがない・・!?
「あー、噂では、アード家の神童は追放されたそうでありん
す。あの子は厄介な子でありんしてなぁ・・我々の脅威で
あり厄介の種でありんした」
脅威である・・確かにそうだ
しかし・・この女はまるで過去のことようにいうのだ
「今では、皇国を追放され、仲間の話ではシュネーにいるそ
うでありんすなぁただ、十年前と八年前・・あの子によっ
て我々は痛手を踏みましたなにせ、あの子によって隠密騎
士の二人が我々を裏切ったのでありんすからなぁ」
「裏切った?」
「そうでありんすよ。一人は、シュネーにいるようでありんすよ
裏切り者でありんす。もうない公爵家を今でも守ろうとしている
弓使い・・やつのことはこちらでも恨んでいるでありんす。
何せ、我々に刃を向けてきた奴でござんすから」
や、刃を向けてきた!?
それは驚くべきことだった
仲間同士は交戦しないという盟約の元彼らはいる
だから、それは驚くべきことだった
「もう一人は、賢者の国”アルタール”にいるという噂でありんす
一応、国と契約をかわしているそうでありんすが
いずれ、破られる可能性もある・・なぜなら
あいつは元から裏切り者であり、そして奴もまた
あちきらに刃を向けてきた奴でありんすから」
それは恨んでいるようでもあり喜んでいるようだった
複雑すぎる表情だ
ぞっとする・・。
しかし、あの神童がシュネーに?
なぜだ・・!?
まさか・・この十年でこれほどのことが変わっていたとは
何も知らなかったではすまされない
「お前たちには、悪にも正義もない集団だろ!?
皇国がいくら後盾があるかといって
お前たちは、最悪の犯罪者たちと同じだ!!」
「・・そうでありんすなぁ。あちきたちは、それはもう
あいつらと同じように悪も正義もどっちもありやしやせん
・・だけど、もう・・止まらない」
シュっとナイフで一瞬でロラン喉元に向ける女
ロランはビクっと震え・・動けなくなる
早い!?
こんなに早く・・ナイフを喉元に・・
「・・・あなたの頭脳は我々にとって都合のよいことであり
んす。あなたのその力でわれらに貸してほしいでありんす」
怪しい取引だ。
・・・ロランはもちろん・・断るつもりだった
「断る!貴様のような危ない連中のような奴に貸す必要性はない!!帰りたまえ。」
そういってロランはすぐにこの少女を追い出そうと動こうとすると・・。
少女は・・ニコリっと笑って
「やめなんし。あなたでは無理でありんす。なぜなら・・あ
なたは一歩でも動けば死ぬで・・ありんすから。」
ツゥ~っと喉元から・・血が流れる
そのナイフの切れ味は今までにもない程だ。
「ぐっ・・・。」
痛みと良く分からない感情で支配されるロラン
女性の軽やかな声が響く
「ふふっ。名声よりも学者だからって理由だけで生かされて
いるのでありんす。だから・・・・抵抗しないほうが身の
ためでありんすよ?」
「き・・・きさま・・・」
すると、ロランは・・・悔しがるのだ
今、力を使っても・・恐らくは敵わない。
この女は・・強すぎる
「やはり、学者様は有能でありんした。しかし・・。」
女は、そのまま・・笑ってパチンっと指をならして
「ぐっ・・・お前・・・。」
影に沈むのだ・・。
「・・あちきの方が百倍も千倍も上にござんした。
うふふふふふ」
ロランは・・苦しみの表情で・・。
「お前は・・・一体・・?」
「あちきは、”影”能力が使えるでありんすよ。
・・まぁ、本当の能力はまだほかにあるんでありんすけど」
ニコォっと歪に笑う姿が歪んでみえて震える
「ふふっ。また、後でありんす。では、召喚士村に行きましょうそうしましょう。ふふ・・あははははっ」
こんなに歪な笑いができる少女がいるのか・・と。
「でも、あなたは別のところでありんす」
しかし、その考えのよそに・・やがてはロランは影の海に・・沈んでいったのだ
どんどん意識が闇に・・落ちていくのを感じ取れる
ついには・・意識を手放した。
こうして、ロラン・ドランド博士は・・行方不明になった。
残されたのは・・荒らされた部屋以外に・・何も残されていなかったのだった
この話にある、神童の少女はルリリ・アードのことです。
彼女の話については、イノセントワールドにのせています
では、次回は、召喚士村の話を始めます
お楽しみに




