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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
新章 番外編 記憶の欠片の旅①
233/485

少女、過去の夢

その少女~シリーズから割り込み更新になります。

そして、全部戻せば新エピソードを入れて

その少女の小説を削除します。

ザァァァアァ・・・。


雨がひどくてどこまでも、降っている雨


それは、人の涙のようで


儚くて・・悲しさをひそめていた。


あの人がいなくなってしまった


さびしい


さびしい


初めて、理解してくれる母親のような人だったのに


悲しい


悲しい


それだけが支配されていた


悲しくて

辛くて


このまま雨で溶けてしまえばいいのに

そしたら・・この雨と僕は一つになれるのに・・と思っていた。


そして、出会ったのだ。


「あんた、濡れるわよ。こんなところにいると」


小さな少女が、傘を差しだす

銀色の髪は、ロングだけどリボンで結んでツインテールにしている

燃え上がるような赤い瞳は、幼いけども・・きれいな瞳だった


自分の濁った水色の瞳とは・・違う色だと思った。

忌々しい・・この土の色と水色は・・。


化け物と・・言われた。この瞳を・・。


でも、その自分を恐れることもなく


その傘は小さな・・赤い傘に不釣り合いな大きな傘を持って

自分に差し出しているのだ。


「いらない。」


それだけ言ってジッと雨の中を佇む少年に、少女はため息を吐いて


「そう・・じゃぁ、こうすればいいかしら?」


そして、相合傘のように少年と一緒に傘に入る少女

小さな赤い傘は、二人で入っていると不思議と、優しく感じられた


「・・・なんで・・。」


少女は、静かに雨の音を聞きながら・・プィっと横に振って


「・・・あんた、泣きそうな顔をしているのよ。こんな冷たい身体になって

 死ぬ気か知らないけど・・濡れて倒れるのはゴメンだわ」


そういう少女に・・少年は、自虐めいた顔で・・。


「・・・偽善ですか?」


すると・・。


「・・・そうね。偽善ね。」


少女は・・雨をしか見ていない・・・。


「・・・あたし、雨は好きよ」


「・・?」


「雨は、こんなにもあたしを癒してくれる。こんなにも泣きたい自分の変わりに 

 泣いてくれる。」


「・・・!!」


「あんたも同じ。泣きたくても泣けない・・でも、雨がそれを隠してくれる

 だから好き。変わりに泣いてくれる人が・・雨なんだから」


その時、少年は・・見たのだ。


少女は、さびしそうな顔をしていたのだ。

何かに絶望して何かに恐れる顔をしていた。


少年は、そんな少女が気になったのか


「あなた・・名前は?」


「あたしの名前?聞いても別にどうもならないわよ。・・今の王宮では

 あたしの身内だれもいないし・・まぁ、名前くらいはいっか」


「前の名前は、ミリカ・カルディアよ。」


この子は・・メノリ様の・・娘?


よく見れば、メノリ様に似ていた


そういえば、メノリ様は僕に娘を見せてくれるって言っていたような気がした

結局は、その娘を見ることもなく・・・。


だけど、ミリカと呼ばれた少女は子供ながら、虚しい顔をして。


「でも・・今は違うわ。」


「ミリカ・カルディア・ラゥ・クランティア・・・この王国の第二王女であり

 継承者ってところね・・でも、私は父親と母親の顔すら知らない。

 純血という名に縛られた王女よ。」


大人ぶっている子供・・でも、瞳はどこか揺れていて儚い。


「王女ですか・・これはまた。混血のことで馬鹿にしているのですか?」


「・・・大人がそう言ったのよ。”純血”は特別だって」


「・・・。」


純血主義か・・嫌な連中の中にいるものだ。この子は。

クランティア王国は、混血と純血で別れている


獣になれるかなれないか・・の話だ。


獣に姿を変えることができる者が”純血”

獣に姿を変えることはできないが、獣の力を解放することができる者が”混血”だ。


ちなみに、国王には妃がおり・・その人数は5人

すべてが人間だ。

なのに、生まれるのは、混血と純血に分かれている。

それも、不思議な血統だ。


今のところ、純血なのは・・三人しかいない。

一番上の兄上である、オルフェ

そして次男の、トウリ

そして・・・ミリカ


混血は、長女のアリスティア、三男のクロスの二人だ。


どの兄弟も母親が違う。


今、現在は上の兄であるオルフェは、王太子の座をはく奪され王宮を去った

そうなると、残り二名が最有力候補となるだろう。


純血は特別だ。だからこそ、これからの王族の後継者争いには

欠かせなくなるだろう。


まさか、この少女が純血だとは・・。

すると、少女はツインテールの髪を撫でて恐怖がないようなのか


「でも、別にどうでもいいの。大人が勝手にいっているだもの。

 純血とか混血とかどーでもいいの。」


「・・。」


「くす。あたしには、力がないもの。お母様もお父様もいないから

 大人たちの意見でしか・・あたしはここにいれないもの。」


くすくすっと笑っているが・・どこか、怯えている様子を見れる

この世界に恐怖を抱いて

畏怖すら抱いている・・幼い子供なのだ。


知らずうちに・・言葉を出していた


「僕が・・。」


「えっ・・。」


「僕があの人の代わりにいます。」


驚いた顔をしていたミリカ・・やがて、ニコっと笑って


「あんた・・いい度胸をしているわね。王女様に向かって。」


そう笑ったあの人の顔に似ていた。

どこか挑発的な顔をしながらも慈愛に満ちた顔


僕が次に仕えるならこの人がいいと・・思ったんだ


「あなたが一人でさびしいなら、僕がいます。僕は・・・

 強くなります・・なれます。」


すると、ミリカは少年の頬をくくって


「イテっ!!」


そこには、目を吊り上げてにっこりと笑う少女がいた。


しかも、顔は、悪徳だ。


「・・・言うわね。あんた。いーい?

 あたしは、あんたをコキに使うわよ。それに、あんたを見下すかもしれない

 それでもいいの?辛いわよ?」


そういっているけど・・顔は、どこか優しそうで

そして・・・幼いながらチラチラっと僕を見ていた


「・・はい。」


その顔は満足したのか、ミリカ様は僕に名前を聞いてきたのだ


「そう、じゃぁ・・あんたの名は?」


「ルクウェア・アースルト」


この名は・・あまり言いたくない。

嫌いなんだ・・この名は。


すると、ミリカはん~っと考えていて

そして、ジッと少年を見つめて


「長いわね・・ルークでいいかしら?」


「ルーク。」


その時・・雨がやんだ


「雨・・やんだわね。」


「・・はい。」


ミリカ様との出会いは・・雨の中だった


でも、雨はいつかやんでくれる。


僕らは・・この時代の流れのために


互いに損失の意味を知った

互いに生きるための理由を知りたくて


前に進む力が・・欲しかった


僕はあの日から・・ミリカ様のそばにいた


ずっと・・ずっと


これからもずっと従者として共にあるべきだと信じていた


でも、ミリカ様の母親メノリ・カルディア様

メノリ様のこの黒い手帳が

新たな混沌を巻き起こすとは・・・その時の僕は思いもしなかったのだ。


黒い手帳


ニルが欲しがった手帳

だけども、その手帳に関しては謎が深い


その手帳が新たな戦いの火種になるとは・・この僕ですら思いはしなかったのだ。


始まりは、ミリカ様の母親の実家学者の町がすべての始まりだったのだ


                         ****


ここは、クランティア王国

産業もっとも発達している国であり、その国の王家は先祖から代々からの血による

獣人だという特殊な国だった。


だが、見た目は人間であり、変化することができるのは純血のみ。


その国は、純血と混血の争いがひどく


国民誰もがその争いにヒヤヒヤしていたが、第二王子のクロス

第二王女のミリカ・・混血と純血が力を合わせ

新たな国々の為に力を合わせることになった。


そのおかげか、国はようやく平穏の時が訪れていようとしていた。


そんな、中で・・一人の少女がその王宮の執務室の中で

深い・・これまた深いため息をしていた


「あ~、やってられないわね」


少女は大量の報告書の山を眺めながら

それは深い

深い

ため息を漏らした


「あたし・・なんでこんなことしてんのかしら?」


ハァ、っとため息が続く中


「ガンバッテクダサイ。ミリカサマ。」


そこには棒読みでカキカキしている少年を見て

ミリカと呼ばれた少女は、ムッとして


「・・・なに棒読みなのよ。もう少し労わりなさいな」


そういうと、その文章から顔をあげることもしないで


「ミリカ様、僕も同じ仕事をしているですよ?しかも、もう定時には

終わりたいものです。」


そう言って一心不乱で書き続ける少年に対して


「・・何言ってんの。あ・ん・たの仕事は私の補佐

 そうでしょうが!!何が、定時に帰りたいといってんの

 ルーク!!」


書類をバサっと置いて、机をバンバンっと叩くミリカ

ルークと呼ばれた少年は・・フッと笑って


「耳蛸です」


そういってごまかそうとする、ルークにミリカはブチっと切れて


「ったく、あんたってやつはぁぁ、あたしを馬鹿にすんじゃないわよ!!」


「ぎゃぁぁぁ、こわっ、そのナイフどっから・・!!」


「ふっふっふ、かくごしなさーい」


ニコニコ顔のミリカ


その騒動はすでに、王宮の名物と化して誰も止めない

それどころか、所々からくすくすっと笑う声が聞こえる


二人の騒動を皆が微笑ましそうに聞いているのだ。


そんな攻防戦の後

ミリカは、はぁ・・っとヘタヘタになり、自分の席に座る


「もう終わりですかぁ?」


「・・あんたは、避けるのがうまいのよ!!


そう悪態つきながら、ため息をつく


こいつは、本当は自分をからかっているのか?と錯覚させてしまう


その時、黒い手帳に目のついた

ミリカは、その手帳を触れた・・ザラザラして冷たい


今度は、先ほどとは違うため息をする。


「・・・はぁ・・。」


黒い手帳を眺めては・・ため息を吐く

その姿に、ルークは目を細め


「ミリカ様、まだ悩んでいるですか?この手帳のことで。」


そう指摘されると図星なのか・・本心を言う。


「・・・そうね。悩んでいるわ」


手帳は、まだ開かない。


鍵がついている。


「王家の特殊な目でしか見られないこの手帳・・・。

 開けられないのは困りましたね」


「・・・ええ。」


この手帳は先の事件にとっては重大なモノなのだ。


(詳しくは、”少年、異世界に渡る”を読めばわかる)


この手帳は、恐ろしくも、大きな秘密を持っている手帳。


何せ、これは自分の母親メノリ・カルディアの遺品なのだから。


「この手帳はニルにとって重要なものでした・・でも・・。」


「結局は、ニルはこの手帳を手にすることもなく・・ブラック・ホールで

 消えていった・・と報告を受けているわ。」


思い出すのは半年前の事件。

あの事件の中でのあの少年のことが・・。


今でも頭の中で思い出すのだ。


ミリカが、物思いにふけっていると・・。


コンコン・・っと音に気付かない。


そんな、ミリカを見て


「はい、どちら様でしょうか」


ルークが、ミリカの代わりに返事をする。


「この声はルークかい。ミリカはいるか」


その声に聞き覚えがあるが・・正直いって開けたくない。

そう思ったのだ


この瞬間に・・。


「・・・いらっしゃいますが。」


うんざりして、嫌そうな顔をしている


「ミリカ様。」


「えっ」


ハッとして、ルークを見た


「誰かきたの?」


「はい。ゼノンビアです」


すると、ミリカはこちらも嫌そうな顔になって


「えっ!!?」


「とにかく、通しますよ」


「ちょ・・ルーク」


ルークは、ガチャっと開けるとそこに姿を現したのはゼノンビアだ


ミリカは口元をヒクっと歪めて


「あら?ゼノンビア、また追加の報告書?いらないわよ。

 あんたの仕事は厄介だから・・報告書の件ならお断りよ。


そう、あの日・・王宮に帰ってから

増える、増える・・報告書やら書類やら


多すぎる仕事にうんざりしているというのに

その上にまだあるというのか


「ははっ。あたくしに怯えているのかいお嬢様は。」


そこには豪快に笑いからってくるのはこの、クランティア王国の専属占い師兼相談役

である、ゼノンビア・・ゼノンだ。


「うっさいわね。怯えるのも無理もないわゼノンビア・・いえ、ゼノン!!

 あんたが、追加してくる報告書やら書類やらハンコ押しやら

 仕事が立て込んで仕方ないのよ!!」


そう、ここ最近は、ゼノンビアのため込んでいる仕事を全部押し付けられているのだ

仕方ないのだ・・こいつには借りがあるから


「くっ・・あんたに借りさえ作らなければ・・・。」


自分に後悔をするが、今さらは仕方ない。


借りを作ったのは自分たち・・。


恩は仇では返さないし・・仕方がないのだ。

ゼノンは困った顔をして


「すまない。なかなか、こちらも仕事をため込んでいてな」


「・・あんたが、さぼっていたからでしょうが。」


呆れてため息しかでてこないのだ。


「ところで、何の用?」


ミリカが用件を聞こうと乗り出す。


「・・・ああ。そうだ。ミリカ。あの手帳のことだけど」


ふいにこの空間がピリっと何か空気を一瞬で変えたのだ。


「そう。調べておいてくれたのね・・それで、何かわかったの?」


実は、ゼノンに頼んでいたのは、この手帳についてだ。


母親の遺品であり・・この、黒い手帳のことだ。


ゼノンは、見た目は20代後半だが、歴とした婆だ。


しかも、若づくりをしている化け物だ。


だが、その知識と魔力はケタはずれ。


そんな年齢不詳だけど、頼りになる魔女だ。


だが、いつもよりか自信なさそうだ。


「あたくしがこの手帳を調べた結果だけど」


「どうだったの?」


「魔女として、様々なことをしてみた。だが・・解けないね。」


「・・・あんたでも無理か。」


ミリカはやはり・・っと呟いている。


「だが、一つだけ分かったことはある。」


「何よ、分かったことって」


すると、メノリがニコっと笑って


「この手帳は、言霊で成り立っている。」


「言霊・・。」


「ああ。ある言葉を呟けば・・恐らくこれは解ける可能性が高い。」


「ふぅん・・言葉ねぇ。なんかあるの?こう、開け~ゴマとか?」


「・・どこで覚えたんだ。そんな言葉」


ゼノンが呆れている、ミリカは口元を緩ませ


「あははっ。お母様が昔言っていた言葉なのよ。意味は知らないけど。」


そう、幼いころ母親が言っていた言葉なのだ。


今でも、意味が分からないけど。


最近、少しずつだが、記憶は蘇っていく。


断片的ではあるけども・・思い出は近く遠くだ。



そんな中、ゼノンは・・私に問いかけてくるのだ。


「・・お前さんは、メノリの言ったことの中で疑問に思ったことあるだろう?」


「・・・そうね、お母様はこの手帳は”手に届かない”といったわ。」


すると、ゼノンビアはククッと笑って


「手の届かない。どういう意味なんだろうな。この意味が

 一番重要なこと・・だろうね。」


「ええ。意味が分からないことが一番難しいわね。」


そう、意味が分からないのだ。

手の届かない・・という意味が・・。


「・・・お母様が異世界人であるからかしら?」


どうにもしっくりこないな・・。

母親についてはあまり情報が少ない


少なすぎる・・。


ゼノンは、そんなミリカにあることを助言をする。


「それなら、お前・・母親の実家にいってみればいいじゃないか」


「・・・お母様の?」


コクンっと頷く

考えたことがなかった、実家なんて・・。


「そうだ。学者たちの町だ。あいつの実家があるはずだ。元々はあいつはそこの出身だからな

 育て親もいるはずだ。」


「育て・・親?」


「ああ、あいつの育て親は有名な学者のスタイン・カルディア博士だ。

 会ってみても損はないぞ」


会ったことのない、母の育て親・・。

どんな人なんだろう・・。


会ってみる価値はあるかもしれない。


「そう・・ね、会ってみるのもいいかもしれないわ。」


「それに、スタイン博士は、歴史学も研究されていたから

 もしかしたら、この黒い手帳についても何かご存じかもしれない。

 行ってみることだな。」


それなら、何か分かるかもしれない。

研究者なら、生前のお母様について何か知っているかもしれない。


「・・・成程ね。でも、この報告書と書類が終わらない限りは無理よ。」


ミリカは大量の報告書と書類の束を見てため息をつく


「それなら、あたくしが半分受け持ってあげようか?

 この報告書。」


ニヒっと悪戯っぽい笑いをするゼノンにミリカはまたもや

怒りの沸点が上がり


「・・あんたね、自分がこの書類をもってきたんでしょうがぁぁぁ」


騒ぐミリカに、ケラケラと笑うゼノンビア


「まぁ、とにかく、この半分はもらっていくよ。」


そういってゼノンは書類の半分を持って

そのまま、執務室から去って行った


残されたミリカ・・そして、ルークが呆気なく去った

ゼノンの後姿を眺めながら


「嵐のようでしたね。」


「・・・ええ。嵐のようだったわ」


吹き荒れた嵐のようだった。

まぁ、暴風ではなかったけども・・。


「はぁ・・先が思いやられるわね」


互いに顔を見合わせてため息をつく二人であった・・。



章管理は反映後します。

少々、お待ちください

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