表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第2章 ~シーフ、ラミア登場~
22/485

少年、旅立ちの日 ~道化師との邂逅その④~

これで、ラミア編は終了します。

さぁ、どうぞ。

この世は謎ばかりと人は言う

俺もそう思う

謎がありすぎて頭が混乱している

いきなり、俺に力を貸してくれたあの本・・。

俺に力を貸した奇妙な魔物

俺に何がさせたいのやら

もう応えてくれなさそうだしね。

神様を恨みたいよ・・本当にね


                      *******


あの戦いが終わったと

俺たちは今、村にいる

焼け焦げた家ももう無い

なぜなら、また新しく立て直しが始まっているからだ


トン、トン、トン

と景気良い音が聞こえる


「なぁ、ジン」


俺は、ジンと共に、復興されていく家を見上げる


「どうした?」

「俺さ、やっぱ人の力ってすげぇと思う」

「ああ、我もそう思う」


くじけても何度も立ち上がる

どんなことがあってでも

俺はその人の力に驚くばかりだよ

あんな酷い目にあってもくじけずに一生懸命な所が感動してしまいそうだ。

それよりも俺は、思う


「なぁ、俺たちは要らないな」

「ああ、そのようだな。ここはもう大丈夫だ」


もう、村は次々とまた家が立ち

元に戻る、それはすごい速さなのだ。

はっきりいえばこの街の人々の労働力はすごい

俺たちが関心しながら家を見つめていると


「お~い、二人とも」


すると、向こうからラミアが来る

服は村娘風だ。

やっぱり、女の子だよな。


「旬、ジン、ご飯やで今日はおばちゃんのスープや」

「あ、今行くよ」


そういってラミアの元へと向かう俺達


この村に滞在して数日経つが、もう復興に向かって

歩きだしている

今日は、ラミアの育て主であるおばちゃんにもてなしを受けている

具沢山のスープとパンだ

美味しいご飯にありつけるのはありがたい。

熱々のスープは一口飲めばほっこりとしてしまう

それだけ美味しいんだ。このスープ。

おばちゃんは、鍋からスープをつぎながら

二人に差し出す


「旬さんに、ジンさん、本当に何から何までありがとう」


おばちゃんは笑顔を浮かべる

俺は照れくさくなり、ポリポリと頬をかく


「いえ、こちらこそ」

「当然のことをしただけだ」


二人の言葉におばちゃんはますます笑みを浮かべる


「その当然が嬉しかったよ。」

「・・・。」

「この孤児達の村は、援助も何もない・・そして、後ろ盾もない

あのまま、奴らにそのままにさせておけば私たちは、売り飛ばされ

奴隷にされる所だった・・とても感謝しているよ」


奴隷・・。

もしも、俺がラミアに出会わなかったから

きっと、その未来は確実だっただろう

おばちゃんはニコっと笑って


「さぁ、たんとおたべ。まだ一杯残っているからね。」


そういって山盛りのスープを出され

二人は、かきこむ


「もぐもぐ。美味しいね」

「ああ」

「嬉しいことだ。そう言ってもらうとね」


俺たちはスープを食べながら話を聞く

おばちゃんは俺達を見て


「お前さんたちは、どうするだい?これから」

「我たちは、これから、南に行く」

「南・・かい?」

「そうなの?ジン」


どうやら旬の方は何も知らなかったようだ


「そうだ、南には有名な御伽噺とかあるからな

 そちらに向かうと何か分かるだろうな」


「そうなんだ・・じゃぁ、行くしかないね」


そう話していると、おばちゃんは寂しそうに


「もう行くのかい?」

「そうです。俺たちの旅は急ぎなので」

「あらまぁ。残念だねぇ・・ねぇ、ラミア」


ラミアは、スープを飲んでいる手を休め


「もう、いなくなってしまうやな。」


しんみりとラミアが寂しそうな顔をする

たった数日しかいられなかったけど

とても楽しかった

ラミアと出会ってどうなってしまうだと思っていたけど

同時に、とても長い旅の一歩へとなった気がする


「大丈夫だよ、またいっか会えるって」


俺は明るく言った


「せやな・・。」


そう頷いたままラミアはスープを飲む

その日、しんみりとした会話で終わりを告げた

そのラミアの姿は何かを考えているような気がしたのだ。


その日の夜


「なぁ、ジン」

「何だ?」


ラミアと別れた俺達は、野宿していた

当然、部屋がないからだ

別にいいけどね。


「俺たち、一体どうなるだろうね」

「・・さぁな」


「・・・気になるんだよな・・。」

ゴロリっと横になる。


「なにがだ?」

「クレーエのことだよ」

「・・お前が言っていた。男の発言か」

「この本のことを知っていたからね・・重要だよ。」


旬の手にあるのは謎の本だ。

あの時、何が原因で本が一時的に俺に力を貸してくれたのか

わからないけど

あのアニマという奇妙生物は、こう言った

俺には足りないものがあると


「足りないものって・・何だろうね。」

「・・時がくればわかるはずだ、今はわからなくてもいずれ」

「いずれ・・か」


その時がすぐ近くなのかは分からない

でも、いずれその時は訪れる

そう信じるしかない・・か


ジンはゴロンとすぐ横になり


「さぁ、そろそろ寝るぞ」

「あ、うん」


ジンがさっさと眠りについたのに

隣からは寝息が聞こえてくる

俺は、なかなか眠れなかった


様々なことが俺の頭の中をグルグルと何かがかけめぐる

考えないほうがいいのに

だけども、頭にはずっとソレが残っているのだ。

俺は、横に寝ているジンをみる


よく寝ているよ・・まったく

狼のくせに敏感も関係なく寝つきは良い

あ~あ、悪戯書きしたくなる顔だよね

思わず笑いがこみあげてくる

・・やっぱ、俺は俺のままでいいや

さぁ、寝よう

明日ことは明日考えればいい


そして、俺は目をつぶり

今度こそ深い眠りについたのだった


そんな、俺の前にはラミアが寝ている俺達をみて

何かを決心したような顔をしていた。


翌朝

俺とジンは村の出口に来ていた


「もう行ってしまうのかい」


おばちゃんは残念そうな顔をしている

そばには何人かの村人も同様だ

でも、おかしなことに

いるはずの人間がいなかった


「あの、ラミアは?」

「あの子かい?」

「ええ・・。」

「あの子は朝からいなくてね

 きっと、別れが惜しいだろうね。」

「・・。」


そうか、なんだか会えないのは残念・・かな。

俺は純粋にそう思ったのだ


「世話になった。」


「いや、こちらこそ。」

「では、またどこかで」


俺は哀愁に漂わせる

ジンは会釈し


「旬、行くぞ」

「あ、うん。」


俺は村人に礼をし、ジンの後を負った



どんどん、村から遠ざかっていく


「村が遠ざかっていくね」

「ああ、そうだな」

「寂しくなるな。」

「・・うん。」


ジンも寂しそうだった

たった数日とはいえ

一緒に戦った仲なのにね。

別れるのもあっという間

これも仕方ないか・・。


「さぁ、そろそろだ」


そう話していると村の過ぎた所で誰かがそこに座り込んでいた


「ん?」


旬は思わずそこにいる人物を見ると旬たちに気づいたのか

立ち上がる


「くたびれたわ。あんたら遅いで」


そこにはラミアが待ちくたびれたように旬たちを見ていて

俺は思わず声を出した


「何でいるの?」

「うちもあんたらの旅についていく」


「・・・。」

「・・・。」


俺たちは一瞬の間が出る


「なぜ・・?」


するとラミアは笑みを浮かべ


「うちは、あんたらに恩を感じているんやで

 当然行くにきまっているやろ」


そう自身満々に言うラミアにジンは

肝心の話を聞くことになった


「村はどうするんだ?」


「大丈夫や、うちがおらんでも・・な」


哀愁を漂わせる


「ラミア。でも、おばちゃん心配するよ?」


すると、さっきと様子が変わり

ニッと笑みを浮かべる


「大丈夫や。書置きもしたんや。賢いやろ?」


確かに賢いけど・・。

俺は慌てて首を横に振り


「いやいや、賢いけど、村は大騒ぎじゃ」

「大丈夫や・・皆、分かってくれる・・はずや」


その頃、村では旬たちを見送った後

それぞれの仕事場に戻り仕事をしている時

家に返ったおばちゃんは書置きをみて

ため息を吐く



「まったく、あのじゃじゃ馬娘は・・」


そうプリプリと怒っていたがすぐ柔和な笑みを浮かべ


「頼むよ、旬さん・・。」


そうつぶやいたのだった

それは希望への願いだった


                   ******



「てな、わけでうちは、あんさん達の同行することにした

 何か文句あるか?」

「それは困るような・・」

思わず苦言にラミアは、旬を睨みつける


「文句あるかい?」


その恐怖に思わず旬は


「い、いや別に」


首を横に振る

さすがに俺は逆らうことができそうもなかった

女怖い・・。

ラミアはその二人の様子に上機嫌になり


「ほな行くでぇ」

「あ、ちょ、ちょっと」


元気がよい掛け声を出すラミア

俺はというとラミアに引っ張られる

ジンに至っては苦笑している


俺は引っ張られているうちに知らずうちに笑っていた


そう、一人から二人へ

二人から三人へとなり

新たなる冒険へと始まっていく


だが、それを遮るものも動き出す


「そういうわけだよ~あの本は、あの子が持っていたようだよ。」

「成程な。」


一人の道化師と何者かの会話

それは、すべての物語へと繋いでいく・・。

始まりとなる。


これにてラミア編は終了します。

今日は昼頃に、あと一話更新します。

楽しみにしていてくださいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ