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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第9章 未来のために   ~過去と現在を結ぶ・・最後の糸~
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少年、白と黒

さぁ、ニーヴェの気持ちとは・・?

ニーヴェ・・ニルの半神


時代を通り越して


様々な姿をして生き続けた存在。


その存在には、何が目的で生きていたのか


何のために、この世にいるのか


様々な用途を持って謎が多い魔女


そんな人物が俺の目の前にいることが不思議でたまらなかった



でも、ソレはニッコリと旬に笑っていたのだった


            ***


「あの・・それで俺に・・・なんの話が・・?」


旬が首を傾けるように聞くと、ニーヴェは


「わしがニルの切り離された存在だとはご存じだろう。」


「・・・ええ。知っているも何も・・ニル自身もそう話していたから

 知っています・・。」


ニルは恋に破れて、そして悲しみを受けて絶望した境に

自分という存在である要素の一つである


”愛情”や”慈愛”を切り取ったと聞いている


でも、俺には・・そうは見えなかった。


ニルの最期の顔を見て・・俺は、深く落ち込んだ。


そんな、旬をみてニーヴェは目を細めて・・。


「君になら教えてあげてもいいかもしれない」


「えっ・・?」



ニーヴェは過去の残党を探すように思い出す

それは、遠い過去の出来事


遠い・・遠い過去だ。


「・・あの時のことはよく思い出す。ニルによって生み出されたわしはあの日のことを・・絶望した。」


「・・。」


「なぜなら、わしには、実体もなく・・魂だけの存在だったからだ

 ニルには、わしを見限った。それは、悲しかった。わしは

 ニルにとってはいらない存在だったからだ。」


せっかく、生まれた魂に、ニルは捨てた


それは絶望の始まりだった


「ニルに捨てられてから、どのくらいの月日をたったのか分からなかった

 でも、ありがたいことに、魂は憑依できる体質をもった者に

 憑依できる特別な力を授かっていた。」


「・・もしかしてそれが・・あなたが数百年・・・?」


「ああ。わしは、宿主の中で・・様々な時代を見ていった。」


それは長いようで短い時間


「辛く・・なかったですか?」


何度も別れを繰り返し


それでも・・ニーヴェは・・。


「・・・生きる方が必死だった。そんなこと考えたこともあったが

 それ以外は・・なかったな。」


酷く・・淡々していた。

俺は、ニーヴェの瞳には何か大きな光が見えたような気がしたのだ


それにしても、気になるな。


「・・・でも、ニルに捨てられたなら・・誰が・・あなたの名前をつけたの?」


すると・・。


「・・最初の宿主だよ」


「えっ・・?」


それまた遠い過去に・・身を寄せる


あの頃は、血を流して生まれた魂に名前などなかった。


でも、ある時・・わしの最初の宿主がいったのだ


そなたの名は・・ニーヴェよ。と


それから、わしは、どの時代に動いていても・・それだけは変わらない。


旬は昔を懐かしむニーヴェに対して


「・・・魂だけの存在・・それが貴方なんですか?」


「そうだ、ひたすら何のために生きていけばいいのか分からなかった。

 時代とともに宿主の傍にあり続けた。わしには詩という特別な武器があった

 からな・・だから、彼女らもわしには好意的だった。」


王女としての半生

巫女としての半生

奴隷としての半生

平民としての半生


どれも、自分にとっては大きな意味を持っていた


どの人物も時代の激しい流れと共にわしと生きてきた


でも、別れが多い。


人の身体は百年しか持たない


わしは、その身体の持ち主と死ぬ前に・・いつも、ごめんと謝り続けた


でも・・宿主は・・”ありがとう”と言うのだ。


そう、他の宿主も同じように


本当に・・本当に


「奇抜な運命だったよ。どの時代の者たちも生きることに必死だった。

 それ以上に・・時代としての悲しみもあったのだ」


「あなたもまた・・時代をみたんだ・・。」


その時代はどんなことがあったのか俺には理解は不可能だ。


でも・・ニーヴェとして・・時代の為に生きた者を

支え続けていたのだろう・・。


それは、大きなことではあったはずだ


「そして、百年も昔にニルに出会った」


「・・・!!」


「ブラック・ボックス・・それが、わしに力を貸せと頼んできた

 ・・この宿主に憑依する変わりにな」


全然、変わらないニルの瞳。

本当に元はおなじ女神だったのか判断が不可能だった


もう、そこには・・わしが止めようと思っても止められない


でも・・見捨てることはできなかった。


なぜなら・・わしは


「わしは、ニルの半神でもあり・・そして、ニルのもう一人の自分だ。」


「でも・・あなたは、違うはずだ・・同じ存在でも違う!!」


うなずくニーヴェ


自分はニルと半神であっても違う存在であることを理解している


「・・・ああ、そうだな・・でも、同じ存在だからこそ

  見ていて辛かった・・誰も救われることもない女神だ。

 憎しみもあったが・・見捨てることすらできなかった」


あんな目にあっても見捨てられない


なぜなら、同じ存在だから


同じ魂を分け合った・・双子のような・・

そんな存在だったから


「でも、ニルは悲劇で数奇な運命を辿り、それは

 多くの悲劇を招き、悲しみを運んでいた・・いわば

 死神よりも最悪な存在だ」


行方不明者は、ケン、キュウ、インにより実験にされ


村は焼けていく・・子供たちの泣き叫ぶ声が続く


そして、世界を混乱へと導いた


「それだけ、多くのことをしたニルには・・罪であるんだ。

 だけど、わしには何もできなかった・・そんな何もできない

 わしの代わりに・・貴様が現れたんだ。」


「・・・俺・・?」


旬は自分を指にさした・・すると、ニーヴェはコクンっと頷く


「わしは何もしなかった。ただ、傍観者であり続けたこと

 変わることも変わろうとも思わなかった。きっと、ニルも同じだっただろう。

 変わることは自分の受け入れ互い気持ちをさらすことになるのだから」


「・・俺も変わることには抵抗があったよ・・でも、変わることで

 できたことはたくさんあった・・・・。」


そう、変わることでできたこともたくさんあった


「・・そうだな。それができたはずなのに。いくらでも

 きっかけがあったのに・・できなかった。」


いくらでもあった・・・でも、できなかった。


でも、この少年はニルを止められた。


強い思いと強い意志の力で。


「・・・ありがとう。ニルの悲しみを知った上で力になってくれたこと

 ・・・わしはそれだけでうれしいのだ。」


「・・・。」


「少年・・何か疑問でもあるのか?」


すると、旬は今まで閉じた口を開いた


「俺には、ニルが悪とだとはいまだに分からないのです」


「・・・?」


「・・・。」


そう、今でも分からない。


ニルは確かに悪党だ・・でも、憎みきれない。


大きな犯罪をしても・・なぜか、憎めない。


「・・ニルは確かに悪党だ。だけど、君達人間も悪でもあるんだよ。

 わしもまたしかり・・だ。」


「・・・。」


「悪なんて答えようがない・・それは皆が勝手に

 それを作るものだ・・善人もまたしかり・・だ。」


そう言われた時・・俺は一人納得するのだ

なぜか・・納得したのだ。


「ええ、俺も悪ですね。何もためらうことのなく切り捨てることもできる。

 人間という存在もまた神もしかり・・悪であると。」


そう、悪というのは・・なにもニルだけではない。


俺もまた・・悪なのだ。


「それなら、覚えておけ。」


ニーヴェは、ニッコリと笑った


「本当の悪というのは、誰もが知らない純粋の上にある。

 知らない方がいい、白い悪。それこそが、もっとも重罪であり

 そして・・罪に問われることのない悪だ」


「・・・?」


「裁かれない白い悪・・そのことを知っておくといい。

 純粋であるがゆえに悲劇はつねに招かれている

 存在がいることを・・覚えておけ」


俺はなんとなく・・・わかる気がした。


白い悪・・か。


ニーヴェはニコリっと笑ったまま・・話を続けた


「その悪を見極めるのもまた人間。罰を決めるのも人間。

 決めつけられるのも人間・・神もそうだがな」


「そうでしょうね。人間にも神にもどちらもその権利を持っている

 どの悪も・・そうですね・・。」


答えが詰まった俺に・・ニーヴェの瞳は・・キラリっと光った気がした。


ちょっと、ニーヴェが怖い。


ニルは俺を見ているような・・気がした。


「これは表裏一体なのだよ・・この世界は。悪と正の表裏の世界。

 正義の裏は悪・・そして、また、悪の裏も正義なのだよ」


まさに、表裏一体・・ということか。


「わしの時代をみた答えだ・・まぁ、そんなに難しく考えなくていい

 わしの見解だから。忘れて構わない。」


でも・・俺は・・忘れられないと思う。


「覚えておきます・・。」


俺は、覚えておくことにした。


人間の正義も悪も・・表裏一体ということを。


そして、まだ俺は聞きたいことがあった。


「あの・・聞いていいですか?」


すると、ニーヴェは怪訝な顔をして


「・・・なんだ?」


俺は、聞きたいことがあった


あの時、イレーヌさんが言ったこと


この人には・・何か大きな理由があってここにいることを


「あなたの本当の目的です。この時代にいる理由もありますが

 ・・・あなたは、何か大きな目的があるように思えてならないんです。」


俺は聞くと・・。


「・・・。」


ニーヴェは黙った。


そして、俺は見たのだ・・ニーヴェが寂しい顔をしたのを


「もう、目的は果たした」


「えっ・・?」


その時見たのは・・・寂しそうで

辛そうで・・でも、優しそうな・・ニーヴェの姿だったのだ・・。


本当の目的は次回、明らかに・・では、またどうぞ!!

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