少年、勝敗の権利
今回は、旬たちから、千里の視点に戻ります。
そして・・なんとあの人たちが出ます。
それぞれの戦いには何か意味がある。
そう気付いたのは・・戦いたいという願望の中で生まれた概念だ。
そして、俺はどうしようもない現実の中で生きていた
助けてほしい
救ってほしい
その手は、誰も掴んではくれなかった。
慈悲も慈愛もない世界で、一人だ。
そんな時、俺達が出会ったのは・・。
優しい顔をした神を偽った悪魔・・・すべての元凶である
ニルだった。
俺達は・・優しい嘘によって、自分の運命が狂うことなんて知らなかった。
知っていればきっと・・避けられていたのかもしれない。
でも、これはもう・・奴という存在に出会ってしまった。
自分の運に嘆くしかないのだ・・。
*****
旬とニルが対峙して・・ゼノンが現れて
結界が壊れて・・これからという時
一方で、千里の所でもまた・・変革という異変に・・。
「・・二人ともよく寝ていますね。嘘のように何か憑き物が落ちたみたいです」
イレーヌは二人の様子を見ながらそう呟く
「・・ああ、そうだね」
その二人の様子に千里は思う
人の憎しみはどこに向かうだろうかと
僕はそう思っていた
憎しみは人間の中で育つ一つの感情であること
「・・・。」
「千里さん・・?」
ヒュっとカードが僕に向かって飛んでくるのを見て
迷わず
「プロミネンス」
すると、炎で焼かれていくカードは・・すぐ灰となり
消えていく・・。
「さすが、防げるだけの力はあるものだねぇ」
その声に・・聞き覚えも身見覚えも
「・・クレーエか。」
「千里、洗脳から治ったんだぁ・・ちょっと、ざんねん。」
「・・・僕を欺けしにきたのか?」
「いんやぁ、そうじゃない。裏切り者め!!」
急に激しい声で千里を責めるのに千里は
「どうして?」
「決まっているだろ!!お前は、ニル様を裏切った!!」
「・・・あの人の考えには賛同できない。僕を洗脳したあの人には
疑惑しかない。」
すると、クレーエは怒りの瞳を千里に向ける
「そんな訳がない!!お前は忘れたのか?あの人のおかげで
僕たちは救われたことを!!」
クレーエは千里に掴み取って、責めるし罵倒する。
「・・違う。ニル様は救い主でもなかった・・それならば」
「君の言葉なんか聞きたくないねぇ・・」
黒い霧から鴉がカァカァカァっとクレーエに従う
クレーエは鴉を撫でやがて・・。
千里へと睨みつけ
「襲え!!」
「くっ・・!!」
「千里、君はどこまでも愚かだ。ニル様を裏切るなんて
僕たちを裏切ることも・・さぁ、苦しめ」
「・・ググググ」
千里は杖を持ち反撃しようとする
でも・・クレーエの顔を見て・・。
なぜか・・できなかった。
あんなに、辛そうな顔をしているクレーエを見てしまったから
「・・・。」
「千里さん、何しているですか!!早く反撃を!!」
その時、千里はハッとした・・
目の前に鴉が迫る・・。
やるしか・・ないのか?
そう決意した時
「アンチ」
クレーエの鴉の幻覚が消えた
それも綺麗さっぱりと・・消えたのだ
「・・・!!」
千里は驚く
なぜなら、自分がしたことではないから
じゃ、誰がしたんだろう
すると、後から声がした
「それは、俺さ。」
その声は・・。
「・・・カズラ・・君?」
そこにはカズラがいたのだ。
もちろん、クレーエは驚いたようだ。
「・・・来たんだ・・びっくり」
「うちらもいるで」
「もちろん、おれさまも」
「ボクも。」
「一応、僕もいます」
後ろにはノエルやラミア達がいるのをみて
「ふぅん。蟻のたまり場じゃないんだよぉ・・ココ」
そう束になってもクレーエは笑う
「・・・・。」
そんな中で、カズラは一人、悩んでいた
自分の剣がないことに・・・。
折れた剣では戦うことができるだろうか
魔法だけで・・いいんだろうか。
その時、カズラに後ろから声をかけるジンがいた
「おい、カズラ。」
ルークの手を借りながらなんとか歩いているジンは
剣を・・カズラに渡す
「これは・・。」
ジンが持っている剣を渡されたカズラは目をパチパチっとして
驚いている
「我のこの剣を使え」
その言葉に、カズラは
「・・・・いいのか?」
剣というのは、大事にされていると主に応える
それだけ重要なモノを果たして使っていいんだろうか・・と
カズラは悩んだ
だけど、そんなカズラにジンは・・。
「お前を信じてこれを使わせる・・・カズラ、お前はクレーエを止めるだろう?
生半可なことではないはずだ。我にはあいつを止めることもできない
それならば・・お前に託す。できるか?」
その言葉にハッとなったカズラは・・キッとジンに向き合い
「・・・止められるさ。この剣を借りるぜ・・」
そういって剣を持って歩くカズラの前に千里が来た
「久しぶりだね、カズラ君」
「・・・千里か。あいからずだな」
「お互い様だよ。それは・・。」
二人は、長い間一緒に旅をしていた仲間だったからこそ
これ以上もちろん話すことはない
「千里」
「何?」
「良かったな。洗脳解けて。」
「・・・まぁね。じゃぁ、後のことは頼んだよ。」
「・・・ああ。」
そして、千里から離れてジンから借りた剣で、クレーエと対峙する
「クレーエ、俺はお前と戦いたくてここにきたようなものだ」
その言葉に、クレーエは笑う
「君が?あれほど、金のことしか目がなかった君が僕とねぇ~」
過ぎた日々には確かに金のことばかりだったと思う
不安だらけだったのは・・確かだった。
金があればこの世界になれることで安心した生活が送れるかもしれない
そう・・それは、自分自身のためだったからだ。
「金のことか、生きるためには仕方なかったことだ。
それは、お前も変わらないだろう。」
「仕方ない?何いっているだが・・楽しんで残虐を尽くしていたのは
君もおなじだろう。」
そう・・それは、俺にも言えることだ。
最初は残虐なんて分からなかった。
分かりたくなかった。
それは、クレーエから言われると耳蛸になりそうだ。
でも、事実は受け入れるしかない。
「・・そうだな。それだけは変わることのない。事実だ。
だが、まだ変えられる。自分の生き方や・・そしてすべてに」
すると、クックックと笑う声がひどくなった
「カズラ君、君はどこまで愚かなんだろうか、変えられる?
馬鹿な話とおとぎ話には僕にとっては笑い話しか過ぎない
君の話は・・ただの偽善さ」
その言葉に、カズラは静かに同意する
「ああ。偽善さ。命を奪ったし、汚いこともたくさんした
だけど・・気付けばよかったのさ・・俺もお前も。
そうすれば、もっと・・。」「うるさい!!」
クレーエが千里の言葉をさえぎる
「君といい千里といいどこまで偽善な話ばかりするかなぁ・・
嫌になっちゃうよ・・ホントウに。ニル様に逆らうし。」
ニル・・か。
あの人の考えには最初は俺も賛同していた
だが・・様々なキッカケで少しずつ・・疑惑が生まれてきたのは確かだ。
だから、俺は言える。
クレーエに堂々と。
「俺はもう・・あの人には協力しない。あの人のやることは
この世界に良くないことだと俺自身気付いたからだ。
あの人の狂気も。」
そう、俺は気付いてしまったんだ。
たくさんの国々で泣き叫ぶ声と悲しみの声に
耐え切れなくなった。
夜になれば・・そのことで悪夢になってうなされる。
それならば・・俺は自分のしていることに
恐怖を感じはじめたのだ。
それが・・俺がニルたちから抜け出そうと思った
本当の理由だ。
「・・・あんなに、ニル様に忠実だったのに許せないよ
カズラ君・・君はあの人を馬鹿にした」
クレーエの様子が変わった頭を抱えて
ガリガリっと指を噛んでいる
相当、イライラしているようだ
憎しみは憎悪に変わる
憎悪は・・・やがて、狂気に変わる
黒い霧がクレーエを囲む。
これ以上は・・無理・・か。
「そうだな。これ以上言葉はいらないな。」
今のクレーエに何を言っても無駄だとカズラは気付いていた
だけど、1%だけでも、クレーエが俺の話を聞いてくれたら良いとか
甘い考えをしていたが、やはり、現実は無理だな。
でも、奴の顔を見れば分かる
笑っているが・・とても、悲しそうだと気付いている
だから、止める・・それだけだ。
カズラは剣をクレーエに向け・・宣戦布告する。
「・・それならば、力で勝負を勝敗をつけようか
それならば文句はあるまい。」
カズラの言葉に、クレーエは気味悪い声で笑う
「アハハハハ、いいねぇ。それならばいいや
やはり、戦うなら勝敗があるほうがいい。」
カァカァァァっと鴉がクレーエの傍で待機する
「僕の幻想をみせてやるよ」
「・・・そうか、それならば俺は、打ち砕くだけだ」
「ダークマター」
クレーエの声が聞こえるのが先にカズラも使う
闇魔法を・・。
「アビス」
二つの技が同時に炸裂する。
カズラの魔法とクレーエの幻想が始まる
二つの技が炸裂する中で・・その時、カズラは思い出す
かってのクレーエと初めて出会った時のことを
そして、ニルと出会うまでのことを。
確かに、俺達は・・あの日、絶望をした
でも、確かにあったことは・・希望すら持っていたことを
カズラは・・思い出していたのだった・・。
千里とカズラ・・二人はどのようにして出会ったのか
そして、これからどうなるのか・・?
そんな二人を次回・・決着がつきます




