少年、神の半神の人生
時代と時代へと渡っていくある神の半神の人生を載せました
では・・どうぞ。
痛い
痛い
痛い
どうしてこんなに痛いんだ!!
血なんて流れていないのに
とても痛い
そうだ・・心なんてあるからだ
そうだ、そうに違いない
心などいらない
いらないのなら切り取ってしまえ!!
そして
そして
血だらけの中で生まれたのは・・。
皮肉にも・・自分似た・・・存在だった
その存在は・・・ただ・・ただ
泣いていたのだ・・。
それは自分の流した涙ではない。
自分ではない・・自分の涙だったのだ・・。
***
その条件は・・ヤドリ達だった。
確かに、思い当たる所はあった。
”道”の完成には、ヤドリの力が必要だった。
それだけじゃない・・。
力のあるものたちの存在
そして、それを持つ仲間・・。
これが偶然といえるだろうか・・?
千里はそんな俺の考えを読んでいるかのように
「・・・・ニルは、力があるものたちを集めた
それは、旬でも知っているはずだ。」
「・・・うん。」
色んな国を渡り歩いているうちに知っていく
事実と真実
混濁していくのは・・その世界の中の真実
「もちろん、そこにいる旬の仲間の半分は・・”力”持ちだ。
もちろん、ヤドリ君や・・ノエル君・・恐らく、あの元王太子やシーフ
それだけじゃない・・君もだ。ミリカ君」
「あたしも・・?」
納得できる場面はもちろんある。
それぞれが、それぞれに特別だと感じる場合はもちろんあるのだ。
なぜか・・素直に受け入れていくのだ。
そう、恐ろしい程・・疑いもなく。
「・・でも、それなら私たちがいかなければ発動しないということ?」
「いや、それも違う。ニルの発動条件は意識がないものたちから
力を使うこと・・つまり、無防備状態であることがつねにだった。」
「ということは・・。」
「そう、だから誘拐や行方不明、神隠し・・そう言った様々な理由によって
行方不明者がでてきたということさ」
覚えているのは・・水槽の中で浮かべられた人々
なんという哀れな末路か・・
そして、何もできない自分にはがゆさを感じた瞬間だった。
意識がなくても・・そう感じたのだ
千里にとってあの光景はトラウマの一つだ。
イレーヌは・・自分の姉のことを思い出していた。
「・・・では、ワタシのお姉さんも・・力をもっている
ということですね。」
「君のお姉さんか・・そうだね、ニルの分身体である
ニーヴェだね?」
「・・・分身体?」
「自分の魂を分けた・・存在だよ・・名はニーヴェ
この世紀に渡る間に歌姫と名乗った・・魔女さ」
「そうなんですか・・?」
「もしかして、”彷徨う歌姫”のことかしら?」
ミリガが口にだすとそれぞれが何それ?という顔をする
「彷徨う歌姫?」
聞いたこともない話だった。
「ええ、これもまた神話なのよ。”彷徨う歌姫”の神話」
「どんな話なの?」
「彷徨う歌姫には、魂はあるが実態のない存在だったみたいね。
神話では、何世紀にも渡って人間の身体を借りながらその魂を維持
を続けていたようなの・・もちろん、人間にも寿命というのが存在する
だから、歌姫は、時代が変わることで身体を入れ替えていたようね。」
ある時は、どこかの王族の王女であったり
ある時は、奴隷であったり
ある時は、巫女であったり
またある時は、平民でもあった。
様々な時代の移り変わりにその時代に合わせて
生き続けた結果。
「人は、幽霊のような存在だといった。だから、彷徨っている魂として
彷徨う歌姫と伝説化し・・その幽霊のような存在だから
この時代では幽霊歌姫と名乗っている
かもしれないわね」
今は・・イレーヌさんのお姉さんの身体を借りているというわけか
「伝説でもその歌声は、強力な魔力を秘めていたのよ・・。
当然、彼女の傍にいたものは彼女の言いなりだった。
だから、魔女のような存在といえば当たり前かもしれないわね」
「魔女・・。」
「実態がないから当然、人は知らないわ。その歌姫がどんな姿なのかを
当然よね、時代によってその姿を変えていくだもの」
だとすれば・・とんでもない存在となるよね
「でも、その後どうなったの?」
「神話では、彼女は、どうしても叶えたい望みがあったそうよ
でも、その望みを叶うこともなく、永遠に、この世を渡り歩く・・。
という形で終わっているの。」
「・・・望み・・。」
その言葉にイレーヌは考える。
あの・・ニーヴェも、何か目的があるようだった。
一体・・・何が目的だったのか?
イレーヌは考えるが・・分からない。
千里は、ニルとニーヴェについて解説する
「なんだか、ニルとニーヴェ・・違う存在に思えるな。」
ヤドリがそういうと・・・。
「・・そうさ、ニルとニーヴェはそれぞれが違う存在であるからさ。
・・神話とかには残されてはいないけど・・ニーヴェはニルの元々あった
愛情や優しさ、を切り取った存在。」
「・・愛情や優しさ・・。」
「僕もニルと行動している時に会ったよ・・いや、会わされたんだ。
驚いたよ・・あれほど、力のある実態のない存在には驚いた。」
その時こそ本当に驚いた
歌声にあれほどの力を秘めていたことを
でも、ニルとは違う。
そう感じ取れた瞬間でもあったのだ。
「でも、彼女はとても大事な目的があったそうだよ。
僕も詳しいことは知らないけど・・とても大事な目的だったそうだ」
その目的は何なのか・・。
誰も分からない。
時代を超えてまで叶えたい望みは何だったのか
もう・・分からない。
イレーヌはボソリっと吐きだす
「・・・ワタシのお姉さんは、ニーヴェから逃げられない
とらわれていると・・思っていました。
なぜならば、姉は行方不明になってしまったのは
誰かのせいだとずっとそう・・おもっていたのです。」
お姉さんが行方不明になった時は絶望が支配した。
何が悪かったのか
何が良かったのか
「でも、なんとなく戦っているとわかってしまいました。
・・・本当の事実はどこにあるのか・・ワタシにも
分からなくなります。」
「・・・そう・・だね。」
「確かに、悪党という形は我々にしては、当り前かもしれません。
ですが・・それを憎めなかったのはきっと・・ワタシのなかで、
何かを許しているかもしれませんね・・。」
そう真っすぐ笑う姿に誰も何も言えない。
俺達の中で・・きっと、何かが変わってきているのは
俺の中でも分かる。
誰かを憎んでしまう気持ちは・・俺にもある。
でも・・いずれ、それを許すのは。
きっと・・・。
千里は、前を見え透いて・・・。
「だけど、ちょっと急がなければいけない。」
「えっ・・。」
「ニルは別の生贄を見つけたからね・・僕たちは
少しばかり急がないとね・・とは、いえ、もうすぐだけど。」
「生贄・・?」
その言葉に、皆ピクリっと反応する。
「誰ですか・・その・・生贄というのは。」
すると、千里は、一言をズバっと言った。
「・・・皇帝と踊り子」
「ま・・・まさか!?」
そういえば・・・忘れてはいけない人物たちがいたんだ。
彼らは・・どうなっていたのか?
もし・・もし・・。
「そう、アーサー皇帝と・・ルインと呼ばれた踊り子だよ
あの二人もまた・・ニルによって選ばれた・・いや、候補者として
君たちの代わりに・・ね」
「そんな・・ルインまでもが・・。」
前を見ていた千里が立ち止る
「ど、どうしたの?」
すると、千里はすぅっと目を細めて
「ほら、見えてきた」
「えっ・・?」
そこには、大きな闇に包まれた人物が見えた。
「・・・あれが・・中心なんだね?」
「・・・・ああ。」
その向こうには・・近寄り互い何かが存在した。
でも・・それは、美しいから近寄らないではない
恐ろしいから・・近寄りたくない
そんな存在だったのだ・・。
さぁ、ついに対面します。ニルという存在に。
そして・・?




