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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第9章 未来のために   ~過去と現在を結ぶ・・最後の糸~
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少年、瞳の底にあるもの

前半は旬です。

で・・後半はヤドリの視点で!!

俺にとって、千里と親友であることが一番だった。


子供の頃の泣き虫の俺は、いつも千里に守られていたんだ


だからこそ、今、この時


俺は、俺でできることがしたい。


確かに、失くしたものは多かったし


後悔ばかりだけど・・・。


今、この時を強く大きく


風を向きを変えるべきなのだ・・。


この負のスパイラルを断ち切るこの時を。



               ****


俺はすべてを思い出した時


もちろん、自然となぜか勝ち誇った笑いがでてしまった。

人形のお前は・・本当に静かなのに

どうして、笑いがでるのか・・おかしいかな。


クッっと口元を歪めながら俺は、目の前を見つめる


「・・・・・・千里、俺はあの時、遅刻したことを謝りたかった。

 俺は、もっと早く行ければよかったと・・後悔した。」


杖を出し、旬は千里や隣にたたずむガーコイルに向ける


「あの日、神様たちが俺に力を貸してくれた・・代価は重くはあったけど

 そんなことはどうでもよかったんだ。」


テレーゼとトロイは、不思議な神だった。

代償の話をされて・・もっとも、俺が子供になった理由も今

思い出したのだ・・。


”神の原理”を。


この身体は代償の証

それは、重いの軽いのか・・分からない。

でも・・・。

そう重かろうが軽かろうが関係なかった

すべては、千里のためだったからだ。


無我夢中だったのさ・・俺は。


「・・・。」

千里は何も喋らない

怒ることもない

罵ることもない


怒りという感情それこそが・・消え去ったかのようだ


その瞳は光は映らない・・俺の姿も写さない


ただの無だ。


人形のようで・・あの活発で元気だったアイツの姿だとは思えなかった


いや、思わなかった・・かな。


あの状態では、謝ることはできなさそうだ・・いや、その時は今では

ないかもしれない。


俺が謝る時は、その瞳に”光”が戻った時だ。


「・・・今は謝る時ではないね。俺は、イレギュラーとしてやらなければ

 ならないから・・君を元に戻して・・この世界の根本の元に向かうよ」


杖をトーンっと音を立てると・・目の前には雷がピシピシっと音を立てている


「・・・・。」


すると、ガーコイルがガァァァァァっと威嚇するのは見える


まぁ・・確かに怖いけど・・それどこかろでもない。


「旬・・・大丈夫なのね?」


そこには、ミリカが俺を心配そうに見上げていた


「心配させてごめんね。ミリカ」


ニコリっと笑うと・・。


「いいえ。あたしは、いつも旬の味方。

 そして、力になるくらいたやすいものよ。」


「・・・そう、じゃ、ミリカ」


「何かしら?」


「今から俺が使う魔法に・・・ついてきてね?」


「えっ・・・!!」


すると炎が目の前に、迫った途端


「ライデーィン」


詠唱をなしで、旬がトーンっと杖を地面に

大きな雷光がバシーンっと音を立てた


「えっ・・ええ!!?」


詠唱なしの姿に驚くばかりだ、しかも今の一撃は

普通のライディーンより強いものだった


しかもだ


そのたった一撃で・・・あの怖い・・ガーコイルが怯んだのだ。


旬は、走りだしている背中を見つめて茫然としているミリカに対して


(オイ、ミリカ!!オドロイテイルバアイジャナイゾ!!)


「そうですよ、ミリカさん!!」


そこには、獣のアニマとイレーヌが一喝する。


もちろん、我には変えるがそれどころではない!!


「な・・なんなのよ!!あれ・・旬は雷なんて使えるはずが」


(シンラバンショウダナ・・ツイニ、ハツドウシタヨウダ。

 キオクノオカゲダナ。バンブツノチカラガ・・・ミリカ、

 イソイデケッカイヲハレ!!)


「そうです・・・ワタシもしますから急いで!!」


結界を張れ・・?


「なんでよ!!」


(イイカラ!!シニタクナケレバハレ!!アニマモテツダウカラ

 イクゾ!!?)


「わ・・わかったわよ!!」


アニマは陣をだし

イレーヌも準備をしているのが分かった


(カゼノチカラヨ・・バンブツヲツカサドルモノノチカラニナレ)


カッと陣が発動する


(ウィドウガード)


風の強力な壁ができる


その傍でイレーヌは歌を歌う


「~♪」


そのとたん精霊が現れる


「ミニュエット」


精霊もイレーヌとともに歌い始めたのだ。


その音によって見えない壁が・・・できはじめたのだ


それは・・強い聖なる壁


そんなアニマやイレーヌをみて


ミリカはグルンっと杖を回し自分も呪文へと急ぐことにした


「汝、その大きな力に我を尽くし・・その力を我の前にさらけだせ」


ミリカは詠唱を続ける

何せ、この魔法は普通のバリアより強力な壁をつくらないといけない

しかも・・だ。


アニマがそこまで必死になるものだから

何が起こるか分からないものだ


グルンっと杖が一周する。


少しずつだが大きな力が発動しようとする

だが・・この呪文はかなりの体力と精神力がいる。


でも・・それどころじゃないわね・・。


「女神の名を借り・・ここに命じる。」


杖から大きな光が出る。


足が後ろへと・・さがろうとする。


これほど、強い魔法を使うのは・・。


久しぶりね。


その時、自身の力では足りないと気付いたミリカは


手が、赤い血で落ちていることに気付いたのだ。

もちろん、今は痛みは感じてはいない


「今だけよ・・あたしの獣の”純血”の力を解放せよ」


カリっと口から血がでるその途端・・血が地面へと落ち


たった一滴で陣が浮かび上がる。


そのとたん・・・瞳が黄金色へと染まっていく

これこそ、我が王国の神秘なる瞳。


今は緊急事態だしね・・・・。


「ウォール!!」


杖を高くあげると・・。


ゴゴゴゴっと音を出し大きな結界が張られたのだ。

その時、あたしは見たのだ


旬が、とても強い力で・・・。


ガーコイルと対峙している姿に・・。


ああ、こういう意味なのか・・と理解したのだ・・!!


巻き込まれる・・なって。


               ****


大きな結界の力を感じた俺っちは、何かが始まるのを予知していた。


だけど、今はそれどころではないようだ。


目の前の鮮やかな剣のさばきには、俺っちの思惑など邪魔をしてくれる


「他所見禁止にゃ!!」


シュっと音を立て、猫の王様・・ケット・シーだっけ。


リーフルと名乗った猫が、勢いよく俺っちに鋭いスピアーで攻撃をしてくるのだ

短剣・・いわゆる、双剣で対峙している俺っちは恐怖だ


ああ、良かった・・ちゃんと、武器の指導からさぼらなくて


実は、俺っちは寄生虫パラサイトとかいろいろ言われているけど


ちなみに寄生虫パラサイトとは・・。


俺っちの力は、暴走すればするほど、相手の力をコピーしたり

奪うこともできる。


”時”に関してもちょっと分かっては来ている


実際には自分が何者かは知らない


時一族のことを言われたことはあったが・・何も分からなくなった


ってか、現在進行中で分からない。

しかし、この力は厄介なもので


幼いころ・・発動したのだ


その力がアデルが・・殺された時に・・。。


そして、奪った力が・・”アイテム合成”だった。


それからだ・・自分の苦しみが始まったのは・・。


なぜなら・・俺っち自身


人の力を奪うことは・・・恐ろしかったのだ。


あの光景をみれば誰でもわかることだ。


しかしだ。

そうなれば自分はすべきことはたくさんあった。


一つが・・”武器”だった。


奪った力とはいえ


アイテム合成は・・武器の生成だ。


一つ間違えれば・・世界は大混乱


自分がこれからも狙われることは知っている


そこで・・考えていたことは


自分の出身は何せあの”武術”がもっとも盛んな集落だった。


俺っち自身も、そうだが・・・。


旬が来る前から・・無意識だが

自分を守るために・・習っていた


”武術”を


集落では確かに嫌われてはいたけど、中には・・俺っちのために武器を教えてくれた奴らがいた


単純にいえば、俺っちもそこまでは嫌われてはいなかったかもしれない


思うのだ。


俺っちは・・自分を卑下をしていたのかもしれない。


「にゃはーつ」


ピュッと鋭い突きをしてくるのだ、俺っちは双剣でそれを止めるか避けるばかりだ

その繰り返しだ


「本当に、まだまだ負け惜しみじゃないにゃぁ」


そう問いかける声に・・俺っちは笑うのだ


「死ぬ気ないからな・・俺っちは、前を向くため

 未来のために動きだすために」


そう漏らすヤドリに対して

すると・・。


「本当に馬鹿ばかりにゃ」


苦言をもらすリーフル


「・・・?」


ピュっと鋭い攻撃を繰り返す


「争いこそが人間たちにとっては・・仕方ないこと

 だから馬鹿ばっかりといいたいにゃ」


すると、ヤドリは聞くのだ


「どうして、争うことが好きなのか分からないのか?」


「そうにゃ・・だから、オイラは・・傍観とその援助しかしないにゃ」


なんて・・なんて悲しい獣なんだろう・・。


「お前は主のために・・尽くしている獣なんだろ・・?」


「主は好きにゃぁでも、オイラは召喚獣・・けして主とは対等でないにゃぁ。」


ピユっとくる攻撃にヤドリは避ける


「オイラには、従うにただ戦うだけニャ・・今あるのは

 オイラの意思ではにゃい」


そういうリーフルの言葉に反論する


「でも、お前は・・感情があって戦っているじゃないか!?」


すると、リーフルはため息を吐く


「・・・変な人間にゃ。お前。」


「・・ははっ、いわれっちまった。」


すると、リーフルの瞳は無の瞳に見えたのだ


「だけど、おいらはお前たち人間こそが恐ろしいにゃ。自分の思い通りならなければ

 暴力を使う・・いらなくなったら・・ポイにゃ」


「・・・。」


それは・・分かる気がするのだ。

自分もそういう世界で育ったから


「最初のご主人もそうだったにゃ・・最後まで騙されたまま死んでしまったにゃ

 愚かな・・あの村長によって」


「旬の言っていた。人体実験のことか」


「そうにゃ・・オイラのご主人は人を信じすぎていた。その結果が

 死・・にゃ」


それがどれほど辛いことなのか


人間の俺っちでも分かる


「・・・。」


何も言えなくなった


リーフルはその時のことを強く思う


(主・・!!)


何もできなくて無力の自分を・・。


「オイラにとって主は絶対にゃった・・・なぜなら、それ以上に感情を

 動かせば・・また、主は死ぬだけにゃぁ」


今・・リーフルはこう言ったのだ


「・・・・!!」


「前にも同じようなことが起こったにゃぁ・・・主の言葉を聞かずに

 したら・・主はいなくなった・・それが苦しくて悲しくて

 今度は、そうしないといけない。主の言葉だけを信じて」


それは絶対的な真実だと信じたのだ


「だから、お前はあんな奴らに手を貸したのか!?」


ヤドリは大声をあげると


「最初は違ったニャ・・皆、違ったにゃぁ・・

 優しい奴らだったにゃぁ・・でも、今は違うにゃ」


思い返すことで・・幸福だった記憶を思い浮かべたリーフル

だけど、すぐ辛そうな顔をしたのだ


一瞬の隙をついて、リーフルは攻撃をする

頬に赤い血が慕ったのだ。


「・・・!!?」


それは無常の瞳だった。


「・・・今は、そんなことはどうでもいいにゃぁ。

 大事なことは・・今お前に勝つことにゃぁ」


「・・・じゃぁ、俺っちは、全力で相手をするよ」


双剣に手に力を込めて

この悲しい獣の苦しみを終わらせよう


「・・・!!」


今あるべき力をもって


目を閉じた


「オイラからいくよ!!にゃぁぁぁぁ」


そういって攻撃を繰り返す


流れるように動きが分かる


目を開けると・・そこには・・・


ヤドリは双剣を手にもって目を閉じていたのだ


そして・・・攻撃を繰り返す前に、ヤドリは・・・


「俺っちは誰よりも魔法は使えないし、ジンのような炎だって出せない

 でも・・。」


ジャキっと音を立て繰り出す


「悲しみを断ち切るために・・俺っちはお前を倒す」


スピアを片方の剣で弾き

もう片方の剣で胸打をしてリーフルを倒したのだ


そして気絶している


ヤドリは前を見つめた。


そこには、旬と千里、ガーコイルの姿に


「・・・頑張れよ。旬」


その声を呟いたのだった・・・。

ヤドリは、どちらかといえば戦闘向きではないのですが

でも・・・温かい目でみてくれるとうれしいです。

では、またどうぞ!!

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