少年、平凡な日常 ~前編~
これは、旬達の過去のお話になります。
まぁ、ギャクが入っていますので・・あしからず
俺は、子供の頃から、泣き虫だった。
泣き虫だったから・・一人だったんだ
でも・・そこに、いつも泣いている俺に笑って
くれるやつがいた
「泣くなよ。男は泣くもんじゃないだろ?」
「・・・千里?」
俺の前でニカっと笑ってくれていたのは
たった一人の友達で・・親友だった
「そうだろ?旬」
とても強くて
そして、誰よりも一番優しい
俺の自慢の親友だった・・。
*****
いつから、千里と友達をしていたのか分からない
多分、物心がつくまえからではないかと考えたことがある
泣き虫の日生旬・・俺
活発で元気な九条千里
性格の正反対な二人だったが
なぜか、仲良くなった。
よくわからないが、馬があったということだろうか
俺は・・千里と出会って
幼、小、中、高・・まで、なぜか一緒でくされ縁で。
とにかく、楽しかった。
楽しかったといえば、俺は・・ゲームが趣味だった。
千里は、俺がゲームをしていると一緒になって遊んでくれていたが
千里は、ゲームが大の苦手だった。
だからか、俺がゲームしている所を見るとげんなりして
呆れているのだ。
「・・・なんで、お前ゲーム好きなの?ピコピコしていて」
画面を注視する旬に千里は呆れたようにため息をつく
「・・・面白いからだよ。千里、格闘ゲームで負けているよ
これで、100勝0敗だね」
画面には千里の選択した、プレイヤーが倒れていた
「ちっ・・!!お前が強いだよ。まったく!!」
嫌そうな顔をして、ゲームのコントラーを投げ飛ばしたい千里に
俺は次のゲームを探している
「次は、何をするんだ?」
すると、俺が出したのは
「RPG?」
「そっ。」
その、ゲームをセットすると
いつものようにスタートとバタンを押す
画面に映るのは・・
魔法使いの格好をした、少年だった。
その魔法使いの格好を見て、千里は
「・・・お前、なんでいつも魔法使いなんだ?」
「・・えっ。だって、魔法使いだよ?」
無理もいうこともなく魔法使いを選ぶ旬に千里はまたもやげんなりする
「・・・もう少し、マシな奴選べよ・・ほら、剣士とか騎士とか」
コマンドで選ぼうとする千里に俺は嫌がりながら
「嫌だよ。俺は断じて魔法使い!!」
「まったく・・ん?」
傍においてある何かをみる千里
「何?どうしたの?」
「・・・お前、この成績はなんだ?」
そのテストをダンっと出す
「えっ・・ひぃ!!わ、忘れていた・・隠すの・・。」
数学テストの用紙には、40点と書かれている
それをみた、千里の口元にはヒクヒクっと上にあがっている
ピコピコっとゲームをしていた俺は、恐ろしくなって
後ろに下がる
「このテストの成績はなんだ・・・?この前
一緒に勉強したよなぁ~?」
そう、そうなのだ
俺は、テスト期間中に、千里と勉強をした
いやぁ・・忘れていまセンヨ?
と、笑ってごまかしていると
「何がおかしい?旬・・?お前・・僕とちゃんと勉強をしたよなぁ?」
ゴゴゴゴっという音を聞いて
旬はすくみあがる
「ひぃ・・し、しましたぁぁぁぁ」
死にかけるような勉強をしたような気がする
いや、本当にしたんだよねこれが・・。
千里の鬼ようなあの地獄の授業をしたのにこの成績・・。
俺はふるふると兎のように震えた
「じゃぁ、なんでこんなに点数が悪いダぁぁぁぁ」
「それは・・その・・集中力が切れちゃいました・・えへ?」
と笑ってごまかすと・・千里の背後からゴゴゴゴゴっと何かオーラーが
出ている。
「・・・ハッハッハ・・僕をなめんなよ?」
最初は笑っていたがやがて、ギラリっと目を
「・・・ひぃ・・・。」
冷や汗が流れる音が聞こえた・・間違いなく
俺は、千里を恐れた・・この一瞬
「・・どうせ、お前のことだから、前の日、僕が帰った後
ゲームをして・・そして、夜中までしたもんんだから
翌日のテストには、遅刻をし、そして頭も回らないまま
受けた・・そうだろ?」
「さすが、千里!!正解」
ここにピンポーンっと音がでると思うところだ
「あほかぁぁぁぁぁぁ」
すると、俺にプロレス技を決める千里に
「ギャァァァァ、ギブギブでございます。
すみません、千里さまぁぁぁあ」
バンバンっと床を叩く俺
あいからず、怖い
勉強のことになると、百倍怖い
「ったく、俺はお前のお母さんに頼まれた勉強係なんだからな」
「母さんの奴・・千里にそんなことを頼んで」「なんかいったかぁ~?」
自分の母親の姿を思い出して、少し苦笑いをする旬に対して
千里は、ニッコリと笑って睨む
「い、いいいい、いえ、なにもいっておりません、まじで!!」
俺は、もう涙目だ
「まったく、僕が頭がよくてよかったな旬。」
「ハイ・・。」
何を隠そう、旬は頭が悪かった
というか、平均と言われれば・・以下だったかもしれない。
趣味といえば、ゲームだが
これが、性質が悪いもので
気がつけば夜の遅くまでするのだ
そのせいか、成績は下がる
というわけで、白羽がたったのは幼馴染兼親友の千里が俺の勉強係に
母親から任命されたのだ
目の前にいる千里はとても頭がよく
旬の学校ではわりと有名人だった。
気さくて、頭もよくそして・・まぁ、女の子に人気があるという
よくある、話しだ。
活発で明るく、そして頭もよいとなれば・・まぁ、人気がでるのも
当たり前だろう・・その黒い髪と黒眼を見れば・・かっこいいかもしれない。
俺は・・どちらかといえば・・幼顔をしている。
いつも、高校生なのに、中学生と間違われるし
千里に言わせれば・・夜更かしすぎだからと言われている
俺があからさまにシュンとしていると、千里はハァっとため息をついて
「仕方ない。僕の責任でもあるんだからな。今度は、ちゃんと、寝るんだぞ?」
「うん!!千里、ありがとう」
「気持ち悪いなぁ・・旬。そんなの当たり前さ。」
「何で?」
「決まっているだろ?」
「?」
「僕は、旬の親友だからさ!!」
そして、いつものように千里はニッと笑うのだ。
とても、強くて・・俺のヒーロ-であったのだ。
まさに、俺にとって千里は・・憧れの人物でもあったということだ
「まぁ、お前のお母さんに怒られるのは、仕方ないだろうけど」
「・・そこで、また戻るんだ・・。」
がっくりと脱力する、旬
「まぁまぁ、元気だせ。それより、旬。」
「何?千里」
「今度な、お前の好きなゲームの最新版がでるぞ?」
「えっ・・嘘!!」
「ほんと、ほんと。ほら、この広告見てみん」
そういってさしだされたのは・・最新版のゲーム
もちろん、RPGゲームの最新版だ
「うわぁぁぁ、いく、いきたい!!」
その姿に千里はニヤリっと笑って
「そうだろ?お前このゲームだけは好きだからなぁ」
そうなのだ、このRPGゲームの最新版だ
自分で職業を選べて、とても面白いゲームなのだ
しかも、このゲームの前作はもちろん俺はやっている
なにせ、面白いだけじゃない
このゲームは、物語が感動的なのだ。
しかも、ムービーがまた綺麗ではぁ・・なんていうか
一日中、遊んでいたかったのだ
「で、で、発売日は・・いつ、いつなの!!?」
そういって、千里につつかってくる旬に千里はニカっと笑って
「明日だよ。僕と旬でお金を出し合って買う
それでいいじゃないか?」
「うんうん。ああ~楽しみだなぁ。」
そううっとりしている旬に千里は笑うのだ
「本当、お前生粋のゲームマニアだな」
「うるさいよ。マニアとか別に問題ないし~」
ニヒヒっと笑う旬に、千里はため息を吐く
「じゃぁ、明日な。」
「ああ、何時だ?」
「お前でも、起きれないと思うから・・まぁ、10時ということで」
「ええ~10時?」
俺の不満の声に、千里はまたもや苦笑して
「そうそう、10時だ。お前起きれんだろうが?」
「まぁ・・そうだけど」
うっと思わず唸る俺
図星だから、当り前だ
「そして、もちろん、お前の参考書も買うだからな」
そう、ニヒっという含み笑いに思わず俺は
「いやだぁぁぁぁ、さ、参考書」
頭が痛くなる・・いやだなぁぁ
勉強のべがでるだけで頭がいたくなるというのに
その上にいく参考書となるともっと頭が痛い
その様子を見ていた千里があははははっと大笑いする
「はははっ!!冗談だよ。ほら、約束していたろ?」
「何を?」
「遊びに行くって町に」
「ああ、そういえば・・そういっていたような・・。」
「お前のうろ覚えには涙がでるよ」
はぁ~っとため息をつく俺に思わず
「ううっ・・ごめんよぉぉぉ」
そんな旬に、千里は笑う
「それに、もうひとつ、約束したしな」
「約束?」
「ああ、この最新ゲームを一緒にすること」
「ああ、もちろんだよ。今度もまた魔法使いになるさ」
「・・・あいからずそればっかりだな。」
すると、二人顔を見合わせて
「プッ」
っと互いに口元をゆがませて
「「あははは。」」
その笑い声は、もちろん俺と千里だった。
なんだか、おかしくなって
笑う。
それが、俺達の日常だったのだ。
そして、千里が、帰る時
「じゃぁ、また明日な。」
「ああ。明日。」
その明日は・・もう最後になるとは思わなかった。
果たされるはずの約束は・・もう叶わなくなるなんて。
その時の俺は・・考えもつかなかったのだ・・。
運命の日は・・刻々と近づいていることも
俺達は・・気付きもしなかったのだった・・。
旬たちは平凡な日常が当たり前でした。そんなとき・・一つの約束が果たせることもなく・・日常は非日常へと・・変革するのです・・。




