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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第2章 ~シーフ、ラミア登場~
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ラミアの過去  ~冷たい手~

ラミアの過去編

追加エピです。

これは、ラミアにとって忘れられない出来事

では、どうぞ・・。


うちの名はラミア・・シーフや

うちは子供の頃・・この世でもっともな地獄を味わったんや

孤児は最初からではなかった・・。


まぁ、うちは、そうやな。

普通の家で育った

普通の子供・・まぁ、世にいう平凡な家の子ということやな。


そんなに大きな村や無かったけど

幸せ・・だった・・。


お父もおってお母もいる。


でもな、幸せというのはほんまに哀しいけど

なくなるもんや。

そうやな・・ある日・・突然かもしれないな。


運が悪いその日は、賊の侵入によって始まった

この世はまだ戦の日々やった。

弱肉強食というこの世で当たり前の世界だったころや。


               ****


そこには一人の少女と、両親と見られる二人と少女・・ラミア

両親は、炎の中でラミアに逃げるように話す

炎は・・すでに、こっちまで迫っている


「あかん。はよ、逃げんと・・。」


ラミアは、両親に急いで逃げるように催促する

二人の夫婦はもう虫の息だ。

逃げるにも炎は迫っていて一人くらいしか道が無かった

二人の両親は決心して


「ラミア、お母もお父も、あんたの幸せを祈っているからね」


「な、なんや・・・まるで最期みたいな言い方・・せんでよ」


「お前が娘で良かった・・だからこそ」


幼いラミアは、二人の傍に寄ろうとすると

ドンっと音を立てる


そこはすでに出口だ。

両親は笑って


「さぁ、行くんだ。ラミア」


「嫌、嫌や!!」


「行け!!お前だけでも生き残れ!!」


強引にラミアだけを逃がした。


締め出された家は、やがて炎へと包まれる


うちは、走るしか無かった

振り返ることもできないまま


燃え上がる炎


そして逃げる人々


それは、地獄だった。


そう、この世はまだ・・存在していた戦のせい


うちは、恐怖を味わったのだ


逃げて、逃げて


そして、虫の息のように身を潜めて


火が消えるのを待った


うちは、もう・・何がなんだか分からなかった


叫びたくて泣きたくて


でも、それ以上何もできなかった


賊は、たくさんの人を殺し

そして金品を奪っていた。

それは・・うちにしては恐怖そのものやった。


どれくらい時間が経っただろう

火がおさまり

焼け野原と化した村を歩き回ることにした


ふと、うちは家へと向かって歩きだした。

かすかな希望をもって・・。

でも、もう無理だった。

家は、全焼した中には、黒い手が見えた。

うちは恐怖よりも・・悲しみが強かった。

そして、両親の遺体を自分で埋葬した。


まさか、こんな日が訪れるとは夢にも思わなかった。

これが・・現実やと・・うちは悟った


                ****



村には生き残った子らがいた。


傍で、泣いている他の仲間もおるのに


うちだけは、ただ呆然としとった

泣くこともなく・・呆然と・・や。



そう、うちは、一人やった


お父もお母も・・。


その村に生き残ったのは数人の子供と大人。

でも、大人は、さっさとこの村を出ていった

残されたのは数人の子供・・そして、うちだった


一人・・また一人


うちを置いて歩いていく


うちだけが、残った


焼け野原のような村は、美しい景色から大幅変わっていた


うちは、これからのことよりも

もう望みも無かった


餓死してもええとも思っていた


そして、出会ったのだ


呆然としている、うちに。

いつのまにか女性がうちの前におったんや。


「あんたもこの村の生き残りかい?」

「・・・。」


うちは黙る

何も話すことは無かった


焼けた家ばかり見ていた

女性は、ジッとうちの方をみて


「私の村に来ないかい?」


うちよりも年上で成熟した大人の女性がうちを見下ろしていた


「・・なんや。」


睨みつけるように威嚇した

女性は苦笑し、ポンっとうちの頭を撫でた


「泣きなさい。」

「・・・。」


なんでや?

なんで、泣かんといけんの?


「大丈夫、これからは私が守るからね。」


うちを撫でるその手はとても冷たい手だった。


「・・あんた、冷たい手やな」

「そうね。冷たい手かもしれないね。でも心は温かいのよ」


その女性の姿に

いつしかうちは涙を流しはじめた

その冷たい手は・・冷たいけど・・とても温かい

うちにとって、家族ができた

最初の瞬間だったのだ・・。


今があるのはあの出来事があったおかげや。

うちは救われた。

その冷たい手は、今でもその感触は覚えている。

それだけうちは、忘れられなかった

出来事やったからな・・。


                 *****


さてと、うちが物思いをふけっているころ


「ラミア、行くよ」

「あ・・ああ。」


旬がうちを呼んでいる

うちは今、旬たちと一緒にいる。

こいつらを信じるつもりや。

さぁ、行こう

うちの村へ。

今度は・・絶対に、守ってみせる。

旬たちといれば大丈夫

なんとなくそう思ってたんや・・。


「さぁ、行くでぇぇぇ」


「うわっ。ラミア、早い。」


そして、村へと歩きだしたのだった。



冷たい手とは、文字通り、冷たい手のこと。

でも、ラミアはその冷たい手がとても好きです。

ラミアにとっては、それは忘れられないこと

では、次からは、いよいよラミアの村に向かいます。

では、次話で。

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