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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
8章 グランドクロス ~踊り子たちの乱舞~
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少年、真珠の涙

今回は冒涜はなしで・・。

では、どうぞ

鏡に映っているのは・・子供の姿じゃない

俺の本当の姿


どこまでも、虚しくて


どこまでも、悲しい顔をした



真実の・・顔。



ポタ・・・ポタ


真珠が流れ落ちた・・・いや、これは・・。


「旬・・?」


俺の涙だ・・。


「・・・・。」


俺がなぜ泣いているだろうか。


俺は・・何か悲しいことを忘れているではないのか・・?


その時・・・


「旬!?」


フッと俺は頭にズキン、ズキンっと大きな痛みを襲われた


(千里!!大丈夫か!?)


何か・・俺は、したんだ。


俺はとてもじゃない悲しみを抱えていた。


(・・・千里・・ごめん・・ごめんな

 俺のせいで・・俺のせいで・・。)


俺は泣いていた


どうして、泣いていたのか思いだせない


いや・・・思い出すことはなかったんだ!!



「・・・・!!」


わすれなさい

わすれなさい


女の人の優しい声が聞こえた


俺はその声に甘えて・・逃げた?


その言葉が頭に響いた


走馬灯に・・思い出す


俺は・・・

俺はぁぁぁ


俺は、とんでもない間違いをした


それは・・・それは・・!!


俺のトラウマに埋めつけられた・・大変な出来事だったんだ


今のショックで、旬の身体は全身に震えて


「・・・旬!!しっかりしなさい!!自分を持ちなさい!!

 記憶の濁流に飲み込まれないで!!」


ミリカが、勢いよく旬に、怒鳴る

旬は震えている


その時・・・声がしたんだ。


(ごめんな・・旬。守って・・あげられなくて。

 ごめん・・・ごめんなさい!!。)


バリン、バリン・・バリーン


何かが割れる音がした。


そう・・・記憶の壁だ


真実の鏡を見て


俺は・・・気付けば両目から・・涙を流していた


自分から何かを流すかのように


まさに、その手鏡と同じように


俺が泣いたのは・・。


その理由が・・とても悲しい思いをしたからだ


「旬・・・?」


「大丈夫!?痛くないの?」


「・・・大丈夫だよ」


俺は涙を拭く


とても、辛くて・・心がとても痛い


真実の鏡は・・悲しむ俺に何を言いたいだろう

そして、この時、旬は・・・


いいようのない・・動揺をしていた


「旬・・・?」


「・・・・。」


旬の様子が変になったのをミリカとヤドリが不審げに

見た・・・そして、うわごとのように旬はぽっりっと告げる


「俺は逃げていたんだ。自分の真実から。」


逃げていた・・それを聞いて


そして・・・自分を隠していたんだ。


「・・・真実の鏡は事実を映す鏡だ。逃げていたのは

 俺の方だ・・。」


手鏡を自分を映すと、ミリカは自分の顔が鏡に映らないように

覗きこむと


「でも、これは・・あなたの子供の姿しか映していないじゃない

 タダの鏡じゃない?」


すると、旬は否定する。


「・・・それは、違う。俺自身が見えているんだ。

 この鏡こそが、この戦いを終わらせる・・かぎになるはずだ」


その確信めいた一言に、ミリカは驚いたのだ。

先ほどまでの旬は意思が弱く

この戦いには、否定的だった。


それが・・・急に人が変わったかのように・・。


「・・・旬、いきなり・・・どうしたの?」


「そうだよ。俺っち、何が何だか・・・」


すると、旬は柔和に笑い


「・・・いずれ、話すよ、それより今は・・イレーヌさんの

 所に行こう」


その笑みには・・・どこか、苦しみが入っていた


「「?」」


二人は不思議そうな顔をしていたがアニマだけは違っていた


(・・・・・。)


それは、どこか何かを知っている顔だった



         ****




旬は、手鏡を鞄の中に入れて

元の、イレーヌの元に戻る


大丈夫・・いつもの俺だ。


そう言い聞かせ、旬は


そこには、喧騒が静まって



「あら・・戦いが終わっていたみたいね」


ミリカがその場面を眺める


そこには、イレーヌがただ立ち止っていた


もちろん、そこには、茫然としているのだ


「イレーヌさん」


俺は、気になって声をかけると


「・・・・ワタシもまだ甘いですね・・はぁ」


そう呟きながら・・悲しそうにはぁっとため息をする

そして、俺達をみるなり・・


「・・・逃がしてしまいました・・」


「逃げたの?」


「・・はい。申し訳ないです」


「な・・・なんで?」


「・・・相殺され、目くらましされたので」


「・・・で、逃げたってわけだ」


ヤドリはそういうと、あからさまにイレーヌは落ち込む


「こら、ヤドリ」


「ご・・ごめん」


「でも、イレーヌさん・・ホッとしているから何かよかったことでも

 あったんじゃないの?」


すると、ニコっと柔和に笑ったイレーヌさん。

確かに・・どこか安心している


「ええ、ワタシ・・はっきりいえば、少し安心しています。

 なぜなら、敵を倒すことができなかったことです」


「・・どうして?」


「・・・憎めませんでした。何度も大きな術を一気に叩きこめば

 終わらせることができるのに・・・姉の瞳を見れば

 それができなかった・・情けない話ですが、後悔は

 ありませんよ」


ニコっと、旬たちに安心させるように笑ったのだ


「・・・お姉さんなんでしょ?」


ミリカが聞くと、イレーヌは少しだけ顔を濁らせ


「そうですね。たった一人の姉です。」


「なら・・?」


「姉だからこそ・・妹の私には、これ以上はできませんでした。

 本当に・・それだけなんです」


それ以上は何も言えなかった


場の空気がとても重くなった

それを感じ取った俺は・・。


「・・・じゃ、真実の鏡を得たし、そろそろいこう」


すると、二人とも驚いた顔をして


「でも・・旬」


その声をさえぎるように・・。


「先に行って。アニマ・・俺、イレーヌさんと話があるから」


その様子をみたアニマは頷き


(アア、ワープニサキニイッテイルナ。ヤドリ、ミリカ

 イクゾ)


二人の裾を引っ張るアニマ


「「ええ~」」


(ホラ、ハヤク)


しぶしぶとワープに向かった二人を見届けた後

イレーヌさんは・・俺に声をかけた


「・・・・旬、あなたは、何かあったんですね」


「・・・。」


すると、スッと目を細めたイレーヌ


「やはり、事実ですね。」


すると、旬は・・隠すこともないか・・と

あっさりと本音を吐いた


「・・・真実の鏡で・・俺は半分ですが思いだしたんです。」


「・・・。」


イレーヌは黙って、旬の話を聞いている


「・・・俺は泣いていました。どうして泣いていたのか

 ・・・とても悲しいことがあったから・・泣いていたんだ」


俺は自分の心臓に手をあてる


心なしか・・痛む気がした


「今は、ワタシからは何もいいません。ですが、一つだけ。」


「・・・?」


「抱え込まないで。貴女の苦しみは・・短い間ですが、分かる気がします。

 真実を知ることで重みを知るのは・・誰でもあるのです。」


俺に語りかけるその声は重く・・優しい


「・・・・。」


俺は・・あいからず黙ったままだ。

本当は・・たくさんあるんだ。


色んなことで押しつぶされそうな自分がいる

それで・・苦しい。


それを見越して、イレーヌさんは・・。


「大事なのは・・・一人で抱え込まないこと・・抱え続けると

 苦しくなって・・押しつぶされるかもしれません」


俺の気持ちに気付いている?


この矛盾して・・どうしようもない感情を支配できない自分に。


「イレーヌさんもそうですか?」


すると、コクリっとうなずいたイレーヌ

その瞳は・・嘆きの瞳だった。


「・・・・ワタシも同じです。妹なのに何も知らなかった

 知るべきことは確かにあったなのに・・・

 姉の事一番知っていると思っていたワタシが結果

 何も知らなかった。これほど・・愚かなことはありません

 話してくれるとよかった・・でも、それができなかった

 その無念は今でもあります」


その感情・・俺には覚えがある


千里と会うこともなかった

俺に語りかけることもなかった


その・・苦しさ・・俺にはある


「・・・・俺にもあるよ。無念は・・・なんで、早く

 記憶を思い出さなかったのか・・そして、どうして

 記憶が半分しか戻らないのか・・かなり、困っているんだ

 そして・・苦悩している。」


「・・・。」


「・・・俺は千里に逢わなければならない。きっと、それが

 俺ができる・・・・ことだと思う」


すると、それを見ていたイレーヌが・・。


「独り言だと思って聞き流してください。」


「えっ・・。」


独り言を俺は聞くことになる。


それはもちろん、ミリカもヤドリも知らない

何せ、俺とイレーヌさんしか知らない話となる


「あのニーヴェと名乗った幽霊歌姫ファントム・プリンセスは・・何か考えがあるようでした。

 その考えどんな考えなのか・・見当はつきませんが」


そう、その考えは俺達では分からない

分かるのは・・ソレを考えた本人だけだ


「・・・何かが動いているのは確かだね」


「・・・ええ。そうかもしれません。この世界は・・どこかおかしい」


「・・・・。」


「・・・何が目的なのか?ワタシが考えた末ですが・・・恐らく

 キーワードはニルだと思います。」


「ニル・・か」


「もしかしたら、案外ニルは・・。」

「・・・。」


一瞬一番、最悪なことを考えている俺達


「・・・最悪の場合・・ワタシは、全身全霊で挑むことを約束しましょう」


「・・・俺もだよ。」


「決着をつける千里のことを・・・そして、すべてに」


信じたいすべてに

やり残したい・・すべてに


それぞれの苦悩と

思いを抱いて・・


俺は・・歩き出す。


すべては・・・最後の時のために・・・。



涙を流した旬は・・何を知ったのか

そして、どうして泣いているのか

それが・・・とても悲しいことであったから

旬と千里の間に・・とても辛いなにかがあった

だから、両方とも謝った・・ということです。

さぁ、少しずつ明らかに・・・。

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