少年、思いと力
さて、冒涜は・・?
「いいのかにゃ?」
猫が問いかける・・そのフードの人物に
「・・・・。」
もちろん、フードの人物は黙る
「そうかにゃ・・。」
それぞれが行動をしながら
始まる物語
もう・・誰も止められやしない
この世界は・・。
***
その頃、ミリカは門の方を見つめて
「どうする?旬・・あいつら、先に行ってしまったわ」
(マズイジョウタイダヨナ・・デモ、ヤドリヲヤスメナイト)
その言葉に一同は頷いた
「そうですね、身体を休めて・・少し経ったらいきましょう」
イレーヌの声に旬は、そうだなと頷き
俺達は、その門の傍で休むことにした。
体力的な所もあるが
やはり、一番はヤドリの状態だ。
「俺っちは・・大丈夫・・だよ」
「だめよ。あんたは少し大人しくしていなさい!!」
そうって、ミリカの手で強制的に寝かせられるヤドリ
「うげっ・・み、ミリカ嬢ちゃん・・き・・きっいッス
た、たすけて旬」
「我慢しなさい!!」
そのやりとりを眺めながら
俺は・・ある人物の所にいく
もちろん・・その人物は・・。
「・・あの・・・イレーヌさん。」
「?」
そう、俺はイレーヌさんに聞きたいことがあったのだ
「この天秤の能力のことなんですけど・・」
すると、イレーヌはニコっと笑って
「・・・この能力ですか?子供のころから使えるですよ。
秤の力は」
また見せられる秤
今度は、均等に釣り合っていて・・きれいな秤だ。
不思議な力だ・・これは・・。
それよりも今、イレーヌさんはこう言った
子供の頃・・だと
「・・・子供のころから?」
「・・・ええ。特殊能力なんです。」
今・・この人・・・なんていった?
「特殊・・能力?」
そう口に言葉として
「俺っちと同じだ・・・。」
ヤドリは口に出した。
自分の手を見たのだ・・・。
もう、紋章はない。
けども・・自分に湧き上がる力・・。
どう考えても・・魔法とはまるで違う。
「特殊能力というのは、魔法とはまた違います。」
「違う?」
コテリっと首を傾ける
意味が分からないし
「・・・なんていうでしょうか、元々持って生まれた・・ただ一つしか
ないその人の特有の力ですね。」
「最初から持っている力・・・か。」
思わず、イレーヌを見ると頷いて・・・
「ええ。たとえば、ヤドリさんが見せたあの力もまた魔法とはまるで
理屈が違うのですよ」
そういうと・・さんづけが恥ずかしかったヤドリが
重要な話なのに、頬をポリポリとして
「あの・・さんづけはいいから」
すると、イレーヌはう~んっと悩んで
すぐ、ポンっと思いついたのか
「そうですか?では、ヤドリ君で」
「君もちょっと・・。」
「あの・・・脱線しているわよ」
ミリカの指摘
「ごめんなさいね。うふふ。」
苦笑するイレーヌ
この人はよく見れば気付かなかったけど・・。
モスグリーンの髪と瞳をしているからか・・
中性的な姿をしていたから男にも女のひとにも見えた
今、ようやく気付いた
この人は・・・女の人・・であると・・俺は気付いた。
でも・・きれいな人であることは確かなのだ。
それにしても力か・・・。
思わず俺は・・自分の手を見つめる
「理屈が違うのか・・俺にもそういう力があればなぁ」
「あら、旬も魔法が幅広く使えるじゃない。それって
特殊能力って奴じゃないかしら?」
「そうかなぁ・・・?」
俺は自分の手をますます見つめている
魔法が仕えても俺は・・・。
あの時の光景は・・忘れられない。
「だって・・ヤドリをあんなに危険な目にあわせてしまった
一歩間違っていたら・・ヤドリは・・死んでいたかもしれない。
俺にもっと力があれば・・。」
あと一歩・・遅ければ
きっと、俺は・・自分を許せなかったかもしれない。
ギュっと手を握ると・・。
その手を見つめていたアニマや他の二人は・・
心配そうに声をかけてくれた。
(ゴシュジン・・・)
「「旬・・。」」
それぞれが反応する。
俺は・・。
すると・・。
「大丈夫ですよ・・旬」
イレーヌが俺の手を握りしめた
初めて魅せた瞳は・・。
何かを見通した瞳
そして・・それは・・。
「イレーヌさん・・?」
その手は、柔らかくて
温かい手だった。
イレーヌは旬の手を優しく握る
「力というのは、神様の贈り物なんです。
何か訳があってワタシにもヤドリにも力が存在する。
そして、あなたにも・・。」
「俺・・?」
コクリっと頷いた
イレーヌの瞳にはもちろん・・嘘も偽りもない。
事実を述べていたのだ
「その力は今のあなたが育てながら強くなっているです。
知らず・・知らずに。種が花になるように・・やがて実ができるように
どこかで貴方は、強く大きな力が少しずつ育っているのです」
そっと放された手・・俺は、見上げると・・。
そこには、優しい瞳をした・・イレーヌの姿があった。
胸が・・熱くなった・・どうしてかわからない程に
熱くて・・やけどしそうな・・熱さに・・。
そっと・・手に触れた
「俺の中で・・育っているんだ・・力が」
種がどんどん大きくなって花になるように
花はやがて実を造るように
俺は自分の心臓がある部分に手を添えて
考える・・。
そして、俺は自分の力に・・気付いていないだけだと気付いた。
こんなにも無限な力があるはずなのに
それなのに・・気付いていなかった。
「俺が・・気付けばよかったんだ・・この力を・・。」
すると・・。
そこにはモスグリーンの瞳を揺らしたイレーヌさんがいた。
「そう、貴方が気付けばいいだけ。力は他人に指摘されるのもいいんですが
やはり、重要なのは・・自分が気付くこと。」
俺が気付けばいい・・もっと・・もっと・・自分の可能性を信じないといけない
俺は・・やっと少しだけ満たされた気がした。
その様子を見ていたミリカが・・イレーヌに対して
「あなた・・まるで、先生みたいね・・不思議な人ね。」
「そうですか?」
「ええ。とても。」
そう問いかけて応えに対してイレーヌは魅惑な笑みを浮かべて
「ふふっ。吟遊詩人として世界中を歩いていたので
こういうことには精通しているんですよ」
「吟遊詩人って本当にすごいのね」
そして、ミリカはボソっと呟く
それでも、本当に謎な人だわ・・と呟いた
もちろん、俺にもイレーヌさんにも皆に聞こえたが
それでも、黙っている
「でも、ヤドリの力は本当に理屈が違うわね・・なんていうか
常識を超えているわ。」
「まぁ・・確かにそれはある。」
俺が同意すると・・ヤドリは頭を押さえながら
「俺っちもこの力不安定だからな。あまり使いたくないんだ」
「どうして?この力は便利なのに」
ミリカが言うと・・ヤドリは・・。
困惑した顔をしていた。
「・・・不安定ということは制御できていないんだ。
だから、ショック状態になることだって気付いた」
そう、ショック状態によって一時期本当に危険だったのだ
それほど・・恐ろしい力だったのだ。
旬は、何かを考えた果てに、ヤドリに問う
「あの時・・どんな感じだったの?」
そう、あの時のことを聞くと・・
ヤドリを思い返すように・・グッっと手を握ったのだ
「何かを呼び起こそうとした感じだった・・・
感情が抑えきれない・・まるで、水があふれるような
それも暴走するような・・危険な状態だったのを
俺っちは覚えているよ」
水があふれる・・力の放出か・・。
止められない力を呼び起こす・・。
「もし、そうだとすれば・・・千里の力は恐らく何かの
力を持っている・・?」
ヤドリを暴走させる程の力
もし・・その力だとすれば・・。
旬の言葉に同意するように・・。
「ええ。恐らく、何かの特殊能力で間違いないでしょうね」
「でも、ヤドリを暴走させたとはいえ、許せないわ。
旬、本当にあの人は・・あなたの友達なの?」
千里がしたことは許せることはでない。
でも・・同時に虚しい気持ちになったのだ。
「ああ・・友達だよ・・。」
(旬~、早く!!)
声が・・一瞬だけ聞こえたのだ
覚えているのは・・一緒に遊んだ記憶
こんなに近いのに
今は・・こんなにも遠い
すると、ミリカが・・。
「そう・・・友達・・・か」
それからミリカは黙った
その様子を見ていたヤドリは
重い空気に耐えられないのか
「そろそろ、行こうぜ」
ヤドリは起き上がる
「・・・ヤドリ、身体は大丈夫?」
旬がヤドリに聞くとヘヘっと笑い
「ああ・・大丈夫さ。早く追いつけないと・・。
・・・。」
元気そうだが疲労感はあるのか・・。
少し、やつれているのを隠すように笑う
「キツイくせによく頑張れるわね」
ミリカはじ~っとその様子を見ながら
皮肉すると、
「俺っちだって、早くいかないといけないんだ。
なんとなく・・早くに」
その言葉に互いは頷き
「そうだね・・俺達も行こうか」
そうして俺たちはようやく動きだしたのだった。
そして・・それぞれの思いとともに
門の中に入っていくのだった。
これからどうなるのか?
まぁ、必見ですね~




