少年、守れなかった存在、守りたい存在
これは、ちょっとした閑話になりますね。
旬の視点で次のワープした世界に入ります。
では、どうぞ。
燃え盛る世界
そこには、誰もいない。
時代が悪かった・・というところだろうか
生まれた時代は誰も変えられない
変えようともできやしない。
生まれた場所も・・同じだ。
同じように、夢を何度見ても
その夢と同じ光景を思い出す
はたして自分は何者なのか考える
でも、自分もまた・・・
あの光の向こうへ手を伸ばして
助けを呼んでいるのかもしれない。
今も・・変わることもなく。
真っすぐに手を伸ばして
けして、誰も手にとってくれることもなく・・。
***
どこに向かっているだろうか?
俺達は・・。
旬は、ワープから出た世界を見て
胸を抑える
ドキドキと・・そして何か恐れているような気がした。
俺は・・・本当に・・どうしたいだろうか?
また・・少し、頭痛がしてきた。
気のせいだと思いたい・・この奇妙な感じは・・。
「また、次の世界やな」
そういってラミアは呟く
そう、俺達はまたワープをしたのだ
「うん・・そうだね」
頭が痛いのをどうにかして抑えていると
「・・。」
痛みは消えた
俺は頷くと後ろから
「今度は・・どこなんでしょうかね」
イレーヌは辺りをキョロキョロと見渡す
ジンが水の中の世界をのぞきこみ
「水の世界は変わりはないようだな・・」
そこには、あいからず朽ち果てた世界が沈んでいる
そこは・・変わりはないようだ
「あの例の、”朽ち果てた世界”は水の底に沈んだままやな
変わったのは・・というと、あの妙な、遺跡が見えるのは
うちの気のせいじゃないようやな」
目の前に見えるのは・・自分たちの目には見えるが
目の前ではない・・遺跡が見えた
そして、アニマは懐かしむように
(アソコハ、ニルノノコシタイセキサ・・タブン・・・
ズイブンマエニツクラレタカラ・・オソラクボロダ。)
「そうなのか?嫌に、新しく見えるが」
目の前に見える遺跡に目を細めるジンに
(・・ココカラトオイカラナ。ボロダトワカラナイハズダゾ。)
「そうなんや・・なぁ、あそこは遺跡ってことは・・。」
(ソウダ。アソコハニルガ・・アルモクテキノタメニツクラレタ
トクベツナイセキダ)
「特別なぁ・・はぁ・・。」
(トニカク、イクゾ。ココハ、ジカンガオソロシクユルヤカナセカイダ
ダカラカ、オマエタチガナガクココニイテイイセカイデモナイ)
「なんでや?」
(・・ラミアハアタマカルイノカ?)
その簡潔な言葉にラミアはムカっとしたのか
「・・・失礼な獣やな。で、結局どういうことなんや
この際、うちのことはどうでもええ、はよ説明せぇ」
すると、アニマは、難しい顔をして
(コノセカイハモトモト・・カミヲキジュンニシタセカイナノダ
ダカラ・・ジカンハユルヤカ・・ソシテ、オソロシク・・
キオクノナガレノダクリュウガヒドイ・・ノミコマレナイヨウニ
ミナハキヲツケタホウガイイ・・ドチラニシロ・・ナガイシテイイ
バショデハナイシナ)
そのアニマの言葉に面々は納得したのか
「・・・成程な・・旬、行くぞ」
「あ・・・うん」
ラミア達は俺より先に遺跡の方へと歩く
その様子を見ながらも俺は後ろを振り返って
ある人物に声をかけた
「・・ミリカ」
「・・・。」
そこには、不安そうな顔をしているミリカがいた
そう・・ミリカは不安を隠しているけど
俺には分かる。
今までいた存在がいなくなることが・・こんなにも不安になるのだ
「・・・ミリカそんなに不安?」
すると、ミリカは嘘を言うこともなく頷く
そこには・・どこか虚しい顔をしたミリカがいた
「・・・ええ。あいつが強いくらい知っているわ。
でも、長年一緒にいてくれたから・・・。」
そうか・・長年か・・。
ミリカにとっては違和感があるのか・・。
その言葉に、ヤドリがうらやましそうな顔をする
「・・・やはり、喧嘩しても仲が良いのはいいね
俺っちもそういうのないからうらやましいよ」
「あら・・貴方は・・いないの?」
そう声をかけると・・ヤドリはうつむく
そして・・ポソリっと呟く
「・・・俺っちは、いたよ・・過去に一人」
「一人・・?」
そこには、悟った顔をしたヤドリがいた
「その人は・・今、どうしているの?」
とミリカが聞くと・・とても悲しい顔をして
でも、苦笑したヤドリがいた
「・・・死んだ。俺っちのせいでね・・。
守れなかったのは自分の責任・・」
「・・・・。」
ヤドリはそう・・幼いころに姉のように母のように慕った人物の死だ。
俺も・・記憶の底で会ったでも・・その人は、再構築された存在
けして・・本人ではない。
でも、本人と錯覚してしまうのは・・仕方ないことだ。
あれは・・結局はヤドリの心に宿る・・思念体かもしれない。
「まぁ、ルークさんみたけどあれほど強い人を信じないと
だめだよ・・俺っちには、もうできないし~」
そういってケラケラと笑うヤドリにミリカは呆れたのか
先ほど、ルークのことで考えていたのが馬鹿みたいだ
むしろ、この人は自分を励ましてくれる。
そんな気がしたのだ
「貴方、本当に変わっているわね・・・・そして。」
「?」
「強いわね・・よく、立ち向かっていけたのね。
その人の死から逃げずに・・真っすぐに」
そう素直に感想を述べると、一瞬だけヤドリの瞳は揺れたが
やがてニヘっと笑って
「お互い様だよ。君も強いだろ?俺っちには・・・
その行動のできるすごさに憧れるよ」
「あたし・・すごいかしら?」
ミリカはチラリっとヤドリを見上げた
すると、ヤドリは頷いた
その様子にうれしくなったのか、パッと顔をあげて
「ありがとう。あたし、ラミア達の所へ行って
この世界のこと調べるわ。」
そういって走り出すミリカを見届けるヤドリ
その様子を見ていた旬は
「ヤドリ、ありがとう」
旬がそう感謝を述べると・・ヤドリは
「・・いやぁ~俺っちも成長したかな~と思う。」
「うん。あの時以上に・・ね」
そして、ヤドリは、やはり・・何か言いたげなのだ
「でも・・旬・・俺っちは・・”弱い”よ。今も」
「・・・ヤドリ・・。」
そこには、先ほどよりも陰のある顔をしていたヤドリ
「強いのは、きっと・・あのお嬢様の方だ。俺っちよりも
覚悟があった。逃げなかった・・信じて命令した・・。
俺っちは・・その覚悟はなかったのだ・・だから・・
アデルは死んだ。」
遠い昔を思ってヤドリは悔いた気持ちを旬に吐き出した
守れなかった過去は・・ヤドリの心に深い傷を残した。
幼いとはいえ・・守れなかったこと
そして、自分に力がなかったこと
暴走したことを・・悔いているのだ。
今も・・ずっと・・。
だから、俺に言えるのは・・多分このくらいだ。
「・・・大丈夫だよ。」
「旬・・。」
「言ったでしょ?アデルさんは君を恨んでいない。
君を守れたことが幸せだったんだ・・・それに、ヤドリ
君は、自分のことを知ろうと努力している。それだけで
俺は、いいと思う」
「・・・たとえ、俺っちが人の能力を喰い物にする
”パラサイト”だとしても?」
そう、ヤドリには厄介な能力がある。
それは、本人は最近まで覚えていなかったコト
そしれは・・相手の能力を”奪う””コピー”するという
とんでもない能力だ・・。
だから、ヤドリにはこの異名がついたのだろう・・。
”パラサイト(寄生虫)”と。
その言葉に・・旬は、首を横に振り否定する
「・・・君の力は、正直言って、俺でも分からない。
なぜなら、未知数だからさ。だからこそ・・君は
どうしたいだい?」
俺は真正面でヤドリに正直にどうしたいのか聞いた。
きっとこれが・・ヤドリにこれから必要なことだからだ
「・・・俺っちは・・。」
声を出して旬に言おうとすると・・旬はニコっと笑って
ヤドリに笑いかけた
「えっ・・?」
「今はいいよ。いきなり言われても恐らく分からないはずだよ
こういったことは・・俺でも難しいから」
「旬でも・・?」
「・・・正直いえば、俺も”人の事は言えないだよね”」
そう、はっきり言えば
自分も人の事が言えない
なぜならば・・。
「・・・えっ・・?」
俺は・・。
そこには、酷く悲しい顔をした旬がいた
その姿を焼きつけたヤドリは後に・・
こうもらしたのだ
”旬は、俺っち以上に・・悩んでいた”と。
「・・・自分も”守り切れなかった”人がいる。”守りたかった人”もいる
どちらも、所詮は過去の残党にしかすぎない・・でも・・」
旬は頭を押さえる
「・・・。」
「どこか、人は、過去を求めてさまよう・・未来を見ることもなく」
「旬・・・?」
旬の様子が変だ・・。
目の色が変わった・・・?
そして、ハッとした旬は
「俺・・今、何を・・つぅ・・。」
頭を押さえる旬
ズキン、ズキンっとこめかみを押さえる
でも、痛みは治まらない
その様子を見てヤドリは慌てたように
「・・・どうしたんだ?旬・・頭・・痛いのか?」
心配させたヤドリに俺はくすっと笑う
安心させるための笑いだ
「・・・ああ、大丈夫。近頃、頭が痛いのは・・これで初めてではないから」
すると、ヤドリは神妙な顔をして
「・・ラミアたちにそのことは言わないのか?俺っちがなんなら・・。」
「言っていないよ・・・俺は、この戦いですべてを終わらせるつもりだから」
そう、俺はこの戦いですべてを終わらせる予定なのだ。
頭の痛みくらい・・どうでもいいんだ。
「・・・旬。」
すると、旬は、顔をうつむかせて
「・・・ヤドリ、君も俺も悩んでいるだよ・・これから、どうなるだろうって
でも・・俺もね、一応考えた・・。」
そう、俺も考えた
いくら、考えても何も浮かばなかった
多分、今の俺にはこの答えを出す資格はないだと・・思った。
だから・・・。
「最期まで戦って・・そのあとに、答えを出そうと思う。俺にはね
どうしても・・戦わなければならない相手いる・・そして、
”会わなければ”ならない存在もいる」
「それは・・旬が言っていた・・”千里”という友達のこと?」
ヤドリが聞くと旬は頷いた
ここで、嘘をついても意味がないからだ
千里・・俺の友達であり、親友だった人。
「・・・うん。千里には聞きたいことがある・・同時に・・。」
「同時に・・?」
ズキンっと今、頭の痛みが増した。
この話題に触れると最近、何か痛みで頭が変になる
「何か思い出そうとするたびに・・頭が痛くなる。
だんだん、それが多くなっているから・・恐らく
俺の頭痛の原因は・・何か”記憶”を失っている
可能性も高い」
「・・・!!」
ヤドリは驚いた顔をする
それもそうだ、旬のまさかの衝撃的な事を言ったのだ
旬は記憶が・・?
「・・・それは・・旬にとっては・・。」
「・・・きっと、千里に会うことで、今まで何で
記憶が抜けているのか・・恐らく分かると思うよ」
そう、こんなに頭が痛むのは恐らく何か忘れているからだ。
だから、思い出そうと頭の痛みが続く
「・・・・。」
「さぁ、ヤドリ行こう・・。遺跡はもう目の前だ」
「あ・・・ああ」
俺は、ズキズキっと痛みを抑えて
前へと進んだ
そう、最近だ。この頭痛は・・。
俺に何かを呼び戻そうとしている
でも・・何だろう?
そう・・・
俺の中で・・何かが・・騒いでいる・・?
(旬・・・あなたは・・。)
その声は遠い過去へと誘いそうだ
でも・・・まだ、その時ではない。
遺跡を目指して歩いている中で、旬もまさかのことを思うわけがない
まさか、イレーヌがその旬とヤドリの後姿を見ていたことも知らずに・・。
そして、とても悲しそうな顔をしていたことも・・旬は・・知らない。
旬の秘密・・いずれ、明かします。
今回は、戦闘描写はありませんが次回は、それに伴う
ことがあります。
では、またどうぞ。




