少年、朽ち果てた世界
この話こそ・・アニマの秘密に少し触れます。
では、どうぞ。
泣いているようで
泣いていない
裏と表のワタシ
どこまでも、表裏一体
そして、虚しい生き物
どこまでも、恨みしかなく
どこまでも・・そこまでの人間
ねぇ、聞いている?
お姉さん・・ワタシは・・・。
****
俺達が歪みに入ると・・。
「・・・ここは?」
(”ワスレサラレタミヤコ”サ」
「忘れ去られた都・・?」
(カッテハ、ナマエハアッタガ・・イマハナイ。)
「・・・。」
そこは、古い街並みだ
でも・・・
「朽ち果てがひどい・・。」
俺はその古い街並みを眺めていると
「旬、待っていたで」
みんながそこにいた
それぞれが俺を待つていてくれたようだ
「もう大丈夫?」
ノエルが心配そうに俺に聞いていく
俺はふと、イレーヌさんを一瞬だけ見たが
なぜか、そこにはニコっと笑っているイレーヌさんがいた
何で・・笑っているのかは・・分からなかった
「旬?」
心配そうに俺にのぞきこむノエル
「うん、大丈夫だよ」
この人のこと・・かなり気になるけど
今はそれどころじゃないな
俺は誤魔化すように笑う
「それにしても朽ち果てがひどいね。」
目の前にあるのは・・家ばかりだ
でも・・どの家もそう・・朽ち果てた家だ
「ああ、我も驚いたものが・・これほど朽ち果てた家を見るのは
はじめただ」
「・・・何があったやろうな・・ここで」
どこを見渡しても朽ち果て酷い・・荒れ模様だ。
「旬、どうする?俺っち、ここで立ち往生は嫌だぞ?」
「確かにそうだな・・どうする?」
ヤドリとジンが俺に聞いてきた
「とにかく、進もう」
その言葉で俺達は、進むことにした
ジンは進みながら話す
「・・・ここは、忘れ去られた世界そのものだな
ほら、旬見てみろ・・もう何年も手入れされていない」
あちらこちらを見て・・そう感想をすると
ミリカは興味深そうに
「どのくらい昔かしらね?」
ミリカが聞くとルークはそっと、朽ち果てた家の周りを見て
「ミリカ様・・もしかしたら、世紀の発見かもしれないですよ」
「へぇ・・って・・嘘!?」
「はい。ミリカ様の頭でもおわかりになられる
素晴らしい発見でしょうね」
「あんたねぇ。嫌みったらしいわよ」
ケッっと口をとがらせる
だけど・・ルークはしゃがみこみ
「あんたどうしたの?」
「どうしたんだ?なにかみつけたのか?」
ルークの傍にジゼルが寄る
「いえ・・なんか・・違和感が?」
「違和感・・?何も感じないけど?」
「・・いえ・・それなら構いません」
急にしおらしくなったルークに
「何か気になるのか?」
ジンがルークに聞くと
「いえ・・大したことではないのです・・でも・・。」
ルークは考えこむが・・・頭を横に振る
「分からないのね?」
「はい・・ここがどういった世界なのか分からなくても
でも・・なぜか違和感があるのは確かです。」
真面目なルークの答えにミリカもふむっと考え込む
「ルークはんでも分からへんのか
ココは・・なんやろうな・・なぁ、ヤドリ
あんさんは、ココを開いたんやから
何か分からへんの?」
すると、ルークは立ち止り
「・・・俺っちにも分からない・・でも呼ばれた。」
「誰に?」
「・・・さぁ?」
「さぁって・・。」「でも・・。」
ヤドリはただ・・・空虚な瞳で
「俺っちを呼ぶ声は・・優しかった
でも・・・とても、悲しい声だった」
「ヤドリ・・?」
その頃、後ろにいる旬とノエル・・そしてアニマ
アニマはフンフンっと楽しそうだ
「旬・・ここ、なんだろうね」
ノエルが考えこんでいる俺の隣で話す
「アニマは・・ここが”忘れ去られた都”って」
「・・・忘れ去られた・・・?」
横にいるアニマは最初は喜んでいたけど
やがて、朽ち果てた街並みをずっと眺めて
無言で見つめている。
「アニマ・・・?」
その姿はまるで・・故郷を見ているかのようだ
ピンっと反応したのかノエルがヒソヒソっと旬に耳打ち
「ねぇ、旬・・アニマって何者なの?」
「えっ・・何者って・・獣じゃない?」
「いや、そういうことじゃなくて・・なんでそもそも
本の中で封印されていたことだよ」
そういえば・・アニマは本の中に封印されていた
そもそも、始まりは・・奇妙なおじいさんとの出会いだった。
あの人は俺にこの本をタダで渡してくれた
でも・・あの人の店は消えた。
あの人は・・何者だったんだろうか?
今もまた・・・・?
俺は色んなことを考えて
頭を悩ませている他所にノエルは神妙な顔をして
「ボクも人の事言えないけど・・いや、獣か。
アニマ・・もしかして、誰かに封印されたじゃない?」
誰か・・・?
思わず・・自分の考えが止まったのだ
つまり、ストップってやつか?
一瞬だけ・・アニマを見た
その時・・見えたのは・・召喚士村の一件からの記憶だ。
「アニマは確か神獣だよね・・だから・・。」
その時・・・。
ゴゴゴゴゴっと何か鋭い音がした
「何の音!?」
ノエルは反応する
「向こうから・・歪みや!!」
そこには時の歪みが渦となって・・
誰かが・・そこから現れる
そいつは・・闇の瞳
すべては・・闇だらけ・・。
正直いって・・”黒”だ。
「誰・・・?」
「・・・カズラや!!」
そこから、出てきた人物に皆・・思わず
一歩引く
「カズラや・・!!」
大剣をもって挑発的に笑っている”黒”だ。
「・・・まさか、こんなに早く会えるとは思わなかったな
貴様たちを待っていたぞ」
みんなは、動こうとするがそれを制したのは
「・・・お前・・・確か、カズラ君だよね・・・」
そこには、ノエルが静かに無表情なにって問いかけてくる
もう、先ほどのノエルじゃない
「歓迎なしか・・・仕方あるまい」
だけど、その顔は、どこか淡々している
何の感情もない人間・・それこそがカズラだ。
ノエルは、それを知っている。
だからなのか、ハッと挑発的に笑うのだ
「また、懲りないの?ボクは、お前にヤドリを渡すつもりはないよ?」
そう、もう、あの時の自分じゃないのだ
「そんなのはどうでもよい。俺は再戦をしにきたのだ」
ノエルは首を傾けるさも不思議そうに
「再戦?」
「・・・ああ。これがお前と俺の最期だ。」
頷く声に・・ノエルはふと考えて
「・・・旬、みんな・・先に行って。ボクはカズラ君と最期の闘いをするよ」
「・・・大丈夫なの?」
すると、ノエルはニコっと笑って
「全然、心配ないよ」
その笑顔に思わず疑問に思ったのか
「で・・でも、あなた・・大丈夫なの?」
「・・・ああ、ボクはね。”なんの感情もない”から
そんなのは関係ないんだ」
「・・・ノエル・・?」
「さっさと行きなよ!!」
氷の呪文を使いガガガっと音を立て
旬達を時の歪みへと連れていく
クスっと笑うノエル
そこには、儚い笑みを浮かべる・・ノエルがいた
「ノエル!!」
俺は魔法を使う暇もなく、歪みへと飲み込まれる
「ノエル!!」
「君たちは、先にいきなよ・・ボクもコイツを倒したら
すぐ行くよ」
「・・・!!」
そこには、どこか、最期に見えて・・。
「うわぁぁぁ」
俺達は渦の中に飲み込まれた
すると、一人残された世界で・・。
「いいのかい?ボクについてきて?」
「もちろんだ」
ジゼルが傍にいたのだ。
そう、傍に・・。
「おれさまもたたかう・・なぜなら、そいつは
やどりやみんなをこまらせる・・おれさまは
みんなのことだいすきだから。」
「ジゼル君・・君ってやつは。危険さわかっていないね」
すると、ジゼルはニヤリっと笑って
「おれさまとおまえは・・いっしんどうたいだ・・
せいもしもおなじさ・・なぜなら・・・。」
「・・?」
「おれたちは・・なかまだから」
「・・・!!」
そして、ハッとしたのか
「ああ・・そうだね・・ボクは、仲間だ」
そこには、強い瞳をしたノエルがいた
呪文を呟くと・・杖が飛び出す
それを取るなり、笑うノエル
「さぁ、行こうか・・地獄への旅路に」
「おれさまたちのじごくへといちめいさまごあんない。
いのち・・・ほしょうなしだぞ?」
そう、脅し文句の一言に
「受けて立とう・・ただし、地獄にいくのは・・貴様らだ」
そして・・互いに拮抗するのだ・・
戦いが始まる・・・。
最後の戦いとなったノエル達
はたして・・どうなるのか?
では、またどうぞ。




