少年、懺悔を求める声
さぁ、今回は冒涜無しです。
ですが、楽しんでくださいね~
皇帝の短い演説はすぐ終わった
城へと帰っていく皇帝にその声援はいつまでも消えることはなかった。
その帰り道では、ヤドリは興奮が冷めない程のうきうきして
機嫌よく俺に話し出す
「旬、すごかったな。思ったよりの気迫がある王だな。」
気迫・・まぁ、確かにそうだね。
あの皇帝・・顔似合わず祭り好きか・・。
なんていうか・・うん、予想外だ。
「うん。俺も驚いたよ。」
でも・・。
ヤドリはん?っと旬の顔を見る
旬の顔は憂いを秘めた顔をしていたのだ
「・・・どうした?旬・・。」
「・・えっ。」
旬は顔をあげた
そこには、心配しているのだろうか
どこか、不安そうだ。
「・・・もしかして、気になるのか?
踊り子と吟遊詩人」
その言葉に旬はストンっと心に何か落ちたような気がした
「・・・まぁね、踊り子も気になるよ・・でも
もっと、気になったのは」
ルインのことは俺は驚いたが嘘はついていなかったことに安堵はした
だけど・・もうひとり・・。
モスグリーンの髪と瞳。
そして、中性的で、女なのか男なのかよく分らない人物
「吟遊詩人やなたしか・・イレーヌだったやな。」
「イレーヌって女の人の名前だよねぇ」
ノエルが言うとラミアが腕を組んでう~むと考える
「どっかで、聞いたことがあるんやけどな・・。
あの髪と瞳・・わからん。」
どうやら身に覚えがあるようだ
どこで、その話を聞いたのか?
もしくは、どこでその人物を知っていたのか
「きっと、吟遊詩人だから有名なんじゃない?」
「そうかもな。まぁ、ええ。
でも、不思議な人物やったな。」
すると、ジゼルも同じなのか
「おれさま、みたしゅんかんとりはだがたったぞ」
震える仕草をするジゼルに
「鳥肌・・俺っちは、逆に興奮したけど
主に踊り子に///」
ボォっと真っ赤になるヤドリに皆は
「男の子やなぁ」
うんうんっと頷くラミア
「男の子だねぇ」
ノエルはニマニマっと笑っている
「男・・だな。我には理解はできぬがな」
「男の子だね・・俺、子供だけど。」
溜息をつく旬とジン
「おれさまはじゅうだからわからない」
ジゼルは、獣なのでそもそも興奮はないようだ
「お、お前らァァァ、俺っちを馬鹿にするなよなぁぁ」
「あははは、こわ~い」
とそれぞれと走り出す
その時はそれで会話は終了した
そう、話題は終わったのだ
対してそこまで問題視することはなく
ただ、俺もその時・・もし、もっと話題を続けていたら
不審だと気づいていただろう。
今の旬でもはっきりと思い出す
そう、一瞬目があった時
かすかだが・・・奴は・・”笑っていたのだ”
なぜ、笑っていたのか分からない
でも、あの鮮やかな印象は今も忘れそうにはない。
楽しく、祭りの前を楽しんだ俺たちは
その時起きようとする何かに気づくことはなかった
その予兆すら・・。
****
その日の夜、夕飯を食べた旬たちは部屋で話をしていた
話題はもちろん、明日の祭りだ。
「あ~、明日は祭りやな」
「そうだね~、楽しみかな~」
「俺っちはこんぺいとうを食べたい」
じゅるりっとよだれを垂らすヤドリ
「ヤドリ、こんぺいとうから離れろや」
溜息をつきながらも苦笑するラミア
「じん、だいじょうぶ?」
「も・・問題な・・い」
どうやら術が切れたのかう~んと唸っているのが分る
「しゅん、どうしよう」
心配そうに俺を見上げるジゼル
「どうしようって・・ねぇ、ラミア」
ラミアは唸っているジンの傍によって容態を確かめる
そして、はぁ~っとそれはそれは深い溜息を吐いた
「あかんな。旬、水や。アルコールには、薬は効かん。
こうなってしまえば・・寝るだけやな。中和されるまで
我慢せぇ。」
「治癒・・は?」
「・・ダメや。しっかり、反省せぇ。」
すると、隣で本を読んでいたノエルがジンに視線を向けて
「そうだよね・・ジンったら、治癒魔法は一時的だというのに
あれから食事にお酒なんて飲むから・・自業自得だよね~」
ノエルはニコっと笑っているが、怒っているのが分る
しかも、今、本がミシっと音を立てた気がする
ヒィっと思わず声にならぬ悲鳴をあげた旬
でも、納得できる部分はある。
実はジンはまたあれから俺たちが止めることなく
酒を飲んだのだ。
しかも、かなり度が高いお酒
まだ酔いも残っているのにさらなるお酒を飲んだことで
ジンは悪酔いはさらに酷くなった。
これはもはや自業自得という所だ。
「まぁ、安心せぇ・・明日までは治っているはずや」
ニコっと笑うがあいからずラミアも目は酷く冷たい瞳だ。
「ヴヴ・・。」
何も言うことはなくそのまま、死んだように眠るジンに
ラミアはポリポリっと頬をかき
「・・・旬、水差しだけを置いておけばええ」
「あ・・うん」
俺は、水を出して、ジンの傍に置く
俺はさて、荷物の整理しようと思っていると
後ろから・・ヤドリが
「なぁ、旬」
不安そうな顔で問いかけてくる
どうしたの・・?
「どうしたの、ヤドリ?」
「祭りが楽しいとか、今の俺っちにもあるけど・・・
旬、明日・・すべてが決まり・・始まるだよな?」
そこには沈んだヤドリの姿があった
「・・・ヤドリ。」
始まると聞かされて
ヤドリも正直言えば怖いかもしれない
その時がもう・・・近づいているからだ
だからこそ、俺はヤドリに言えるのはただ一言だけ
「明日・・どうなるかは分からないよ。」
「・・・旬でも?」
少し、顔をあげるヤドリ
そう、明日がどうなるかわからない
果たして、何が起こるのかも・・。
すべて
「・・・もちろん、ラミアたちも同じだよね・・
すべては、何の因果関係で巡りあったのか
それは偶然なのか・・もしくは、必然なのか
よくわからない。」
「旬・・・。」
ヤドリは、ただ黙って聞いているだけだ
「旬・・・ごめんな。俺っちの運命のせいで・・。」
そこには、ヤドリがまた下向いて・・悲しそうにしているのだ
「なんで、謝るの?」
唇をかみしめてただ・・謝るヤドリ
「・・・ごめん。なんだか、謝りたくて仕方ないんだ。」
どうして、謝るのだろう?
謝る必要性なんて・・ヤドリにはないのに
そう、謝る必要性がないからこそ・・!!
「・・・謝るのは、いつでもできるよ。
俺、後悔していないから」
「旬・・?」
「旬の言うとおりや」
そこには、ラミアがヤドリの頭を撫でていた
「・・・ラ・・ラミア//」
少しだけ頬を赤く染めたヤドリ
やはり、恥ずかしいのだろう
「・・・うちらは、皆同じなんや・・後悔なんて
一つもしてへん」
「そうだよ、ヤドリ。ボクは皆と出会うまでは
何時、加速する運命に怯えていたのだから・・。」
そこには、どこか遠くを思う・・ノエルがいた
「ノエル・・?」
「おれさまもないよ」
ぐりぐりっと、ヤドリの腹に頭を置くジゼル
「わ、我も・・。」
唸りながらも懸命に答えるジン
「そう、皆同じなんだよ。後悔なんて何一つ
していない・・だから、ヤドリがそんな顔をしなくていいんだ
俺は、君が来てから皆が楽しそうにしてくれる・・それだけで
嬉しいだよ」
すると・・ヤドリは、ポタポタっと涙を流した
ギョっとしたのはもちろん旬たちだ
「ありがとう・・皆。俺っちは・・皆がいてくれて
良かったよ・・。」
それは、嬉しい涙
「どういたしまして」
ヤドリ自信・・色んなことで精一杯頑張っていたのだろう
孤独と苦しみが同時に襲ってきたのも無理もないかもしれない。
でも、今度は大丈夫
旬たちが・・いるから・・。
それからはすぐ眠気が襲ってきたのか
皆すぐ眠ってしました。
さて・・旬はといえば・・。
その夜は、皆が寝静まったのを見て
俺はガバリっと起き上がる
「寝ているな・・。」
そう、旬はルインとの約束のために公園へと行くのだ。
当然、気づかれるのはよくない
そろり、そろり、っと足音が出ないように歩く
そして、外へと出た
だけども・・。
もう一人、誰かが旬の後を追っていくのだった
当然、旬は気づくこともなく・・。
次回はまた夜の公園編です。
まぁ、不可思議な存在のルインの登場です。
では、楽しみにしていてくださいね~




