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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
8章 グランドクロス ~踊り子たちの乱舞~
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少年、眠る君の傍で

さぁ、今回は旬が宿に帰ってから・・

さて・・?

不思議な出会い後・・俺は、宿に向かって走っていた。

もちろん、静かな足取りで部屋へと向かっていた。


そろり・・そろり・・。


ビクっと物音が聞こえる


「・・・・寝ているよね。」


皆の寝顔をつい、確認してしまう旬


よし、寝ている


布団に潜りこめば・・すぐ眠れる


今日は、出会いがあった。


それは、夢か幻のようにみえた


でも、現実なのだ


その時・・眠りが強く襲ってきた


旬はそのまま深い眠りについたのだった・・。


だが・・ムクリっと誰かが起き上がった


深い眠りだからこそ気づかなかったのだ


誰かがそっと・・旬のそばによって


旬の顔を見ていることを・・。


もちろん、その顔は寝ているから気づくことはない


ただ・・じっと、眺めていたのだ・・ずっと・・。


                     ****


パァァァっと日光が当たる


「・・・朝?」


ぱちくりっと目を覚ませば


「旬、起きたんだね」


そこにはヤドリが準備をしていた

なぜか、ヤドリは急いで準備をしていたのだ


「ヤドリ・・なんでそんなに急いで準備しているの?」


なんだか、かなり慌ているけど・・?


「ああ、祭りの様子を見に行く予定なんだよ

 それと、もう一つは、良い場所を取るためだよ。」


「・・・良い場所?」


「実は、旬に話忘れていたけど・・この国の王さま・・

 つまり、陛下がな・・踊り子と吟遊詩人をお披露目するらしいんだ」


荷物を適当に詰め込みながらヤドリは話す


「お披露目・・?」


そんな話聞いていないぞ?


「ああ、もう決まっているらしいだけど・・そのお披露目が

 ”今日”なんだよ。」


「今日・・?」


なんだか、突然すぎる・・。

あ、話忘れていたと言っていたな。


「そっ。だから俺っちが場所をとりにいくのさ。あ、そろそろ

 だな・・・ラミアたちと来てくれよな。じゃぁな」


荷物を詰め込んで、バタバタっと軽快に走っていくヤドリ


その様子を見ていた


「行動的だね~」


「うわっ。ノエル」


そこには、いつの間にか傍にノエルがいた


「おはよう。旬」


「お、おはよう」


さすがに、突然、現れたせいなのか

旬の胸はドキドキっと高鳴っていた。


「よく、眠っていたね・・旬」


「あ・・うん。皆は?」


「ああ・・皆なら、もう、支度して外にいるよ

 ボクは君を呼びに来たのさ」


慌てながら走っていったヤドリを思い浮かべた

でも、ノエルがゆっくりとしているならば

きっと、ヤドリが席を取りにいったのだろう


「じゃぁ、俺も行くかな・・。」


自分も準備に追われていると


「旬。」


後ろから声をかけられる


「どうしたの?ノエル?」


そこには、なにかを言いたそうなノエルがいた。


「・・・あのね。旬」


「?」


「・・・ボクたちは、いつも君と共にある。

 例え、君が・・。」


そして口を噛み締めて・・。


「えっ・・ノエル・・?」


一瞬の沈黙ができた・・。


ノエルの瞳は・・寂しそうだったのだ。

そして、笑うのだ・・とても、悲しそうに


「・・・やはり、なんでもないよ。今の言葉

 忘れて。さぁ・・皆、待っているよ」


何かを言いかけていたのに・・そっと、言葉を濁すノエル


なんだったの・・?


今、ノエルが言いかけた言葉


(ボクたちはいつも君と共にある。

 例え君が・・。)


そこから・・続く言葉は聞くことはなかった

いや、聞けなかったというのが正しい答えなのかもしれない。


多分、俺にはこの先聞くことが怖かったのだ・・。


おそらく、答えるのが・・難しくなるはずだから・・。


           ****


「旬、待っていたで?」


外では、ラミアたちがにっこりと俺を待っていた

だが、ジンだけは違った。


顔が酷く青白い


「ジン・・大丈夫?」


「・・ああ・・・。」


顔が青白いのか・・病人のようだ。


「酒が・・な。二日酔いだ・・。」


ジンはニコリっと笑おうとするが・・口元が歪んで笑えそうもない


「自業自得やな・・。」


はぁっとラミアは溜息を吐く


「おれさま、みずもってきたほうがいいと思う?」


と、ジゼルが聞くと


「・・・ん・・。大丈夫だ・・ありがとな。ジゼル」


ジゼルの頭を撫でるがジゼルは心配そうだ。


「・・だいじょうぶ?ほんとうに・・。」


ジゼルはジンにはよく、懐いている。

おそらく、ジンは純血の獣人だからだろうか

同じ獣同士・・なにか、通じることがあるのだろうと思う


「・・・ああ」


そう言うだけで、顔色の悪さは良くなっていない

それを見かねた旬が


「俺が・・・キュアかけようか?」


そう聞くと、ふるふるっと拒否して。


「いや、いい。さぁ、旬・・行くぞ」


顔色の悪いまま、ジンは歩きだす


それをみたラミアが、旬の傍でコソっと耳打ちする


「旬、あかんごとになったら、回復系の魔法を使うんや

 ええな」


「ボクも使おうか?キュアくらいボクもできるし。」


「ああ、頼むわ。ノエル」


そんなことで話がまとまった


さて、俺たちは広場の方へと歩いていく


「ヤドリはどうして席取りにいったの?」


「ああ~ヤドリはな・・あいつ、えらくイベントが好きみたいでな

 今日、あるイベントにぜひうちらと一緒に見たいそうや。」


「なるほど・・。」


昨日、こんべいとうのイベントだけでも喜んでいたから

こういうイベントも好きそうだよね・・ヤドリって。


「まぁ、うちとしてはどちらでもええし。

 でも、気になるわな」


「何か気になることあるの?」


「ああ、踊り子と吟遊詩人や」


「・・・どこが気になるの?」


「顔・・見てみたいと思わへん?」


「・・・まぁ、確かに・・ボクも思うね。

 主役さえ顔をみていれば後に困らないし」


そうノエルとラミアが話をしている他所に


「じん~、しっかり」


「あ・・・ああ」


向こうでは、あいからず今にも倒れそうなジンと

それを介抱するジゼルの姿があった


「・・やはり、治癒魔法したほうがええな

 あのままはあかんやろ。人に見せる顔やない。」


「・・・確かに。」


そう呟いた旬たちだった。


             ****


広場方へと向かうと

たくさんの人が騒いでいて動けそうにもなかった


「ところで、ヤドリどこにいるの?」


俺が聞くと


「えっと・・どこだろう」


ノエルは目を凝らしてヤドリを探そうとするが

この喧騒の中では見つけられなさそうだ


「どないしようか。」


ラミアが困っていると


「旬!!」


向こうからブンブンっと、手を降っているヤドリの姿があった


「ヤドリだ、お~い」


「旬、俺っち、動けないからこっちに来てくれ!!」


「あ、分かった!!」


俺たちがヤドリの元へと向かうと


そこには・・。


「すごいね、場所取りできている」


ヤドリはへへんっと笑って自慢気で


「俺っち、なんとか皆の分の席は取れたぞ」


「偉いけど、すごいな・・あんさん最前列やん。

 もう取れたんか・・普通にありえへんな。」


確かにラミアの言うとおり


「へへんだ。俺っち、こういうのは得意なんだ。

 なんていうか、運?」


確かに、運が強そうだ

なにせ、二度に渡り命の危機を乗り越えているからこそだろうか


こういう、運だけじゃなく全般に強いかもしれない


「そろそろ・・・始まるぞ」


「あ・・行進だ。」


そう、それは王の行進。


そして、向かう先はもちろん・・この広場の中心


先頭で、馬に乗っている勇ましい男が見えた

だが、ここから見ても


その強い意思の瞳には・・圧倒される。


「あの人は・・?」


すると、ヤドリがペラペラっとメモ帳を開き


「旬、あの人が、俺っちが調べた・・この国の皇帝

 アーサー・ガルベキアン皇帝だ。例のお祭り好きな

 王だよ。」


「・・・アーサー皇帝・・か。」


来るべき祭りは・・明日。

だけど、その前に行われる大事なお披露目


俺は知らずうちにゴクリっと唾を飲み込んだのだった。

ノエルは何を言いかけたのか?

そして、眠っている旬に近寄ったは誰だったのか

皆さん、ぜひ推理してみてくださいね~

では、また次話で。

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