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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
8章 グランドクロス ~踊り子たちの乱舞~
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少年、月夜の踊り子

新キャラ登場。増えていくのはいいんですか・・。

扱いきれるのか!!私・・。


とりあいず、冒涜は誰なのでしょうか・・?

ゴーン、ゴーン


鐘の音だけは聞こえる


あんなに、美しい音色なのに


私はとても悲しいのだ。


こんなに悲しい気持ちをしたのは、初めてじゃない


痛い・・痛い


心が破れそうになる


とても、痛くて・・。


あの鐘を見るのがとても辛いのは・・私一人だけじゃない

ことを・・。


               ****


公園に向かって旬は走り続けていた

夜は遅いからか、月だけが俺を見下ろしている


「はぁはぁ」


なんだろう・・


なんで、俺は走っているだろうな・・。


ラミアたちを起こすこともなく


走り出す俺は・・何を考えているだろう・・?


本能が俺に告げたのだ・・走れと。


無我夢中で国の中を歩けば・・気づけば


公園に着いていた


「・・・着いた。」


先ほどは、足を踏み入れたら、歌声のような音が聞こえた


もう一度聞こえるのだろうか・・?


おそるおそる足を踏み出した


だが、歌声は聞こえなかった


仕方がない


ゼノンが待っているはずだから行こう


公園の中に入った旬は、月灯りの中で闇の中を歩く


「変だなぁ・・ゼノンがいない」


周りを見渡してもゼノンはいない


それどころか、店すらない


「どういうことだ・・?」


俺が不思議に思っていると


ターンっとどこからか足ふみが聞こえた


「どこからか・・音が聞こえる?」


歌ではないみたい・・・

でも、どこからだろう


この足ふみの音は噴水の傍だった。


もちろん、鐘が見える場所で。


「・・・!!」


それは、一人の踊り子だった


優雅に踊る少女


それは、人を魅力させることができる踊りだったのだ


「ふぅ・・。」


踊り終えた所を思わず俺は拍手してしまう


「・・誰?」


その少女は、俺を睨みつける


「ご、ごめんなさい・・」


すると、俺の姿を見るなりホッとしたのか

警戒を緩める


「・・あら?こんなところに小さなお客様ね。

 珍しいわ」


少女は旬を見るなり安心したように微笑む


「すみません・・勝手に見てしまって」


俺は謝ることにした・・何故なら勝手に見たことが悪いんだ


「いいのよ。こんな小さなお客様なら歓迎するわ。

 もしかしたら野盗とかだったら私対応できないもの」


俺、子供でよかったと思った。

子供ならある程度許せる所はあるし・・。


「ん?」


俺は改めて少女を全身を眺めてしまった


目がついたのは・・。


「・・怪我している?」


そうなのだ、豆がつぶれて

足の裏から血が流れているのを見て


触れようとすると・・。


「触らないで!!」


少女は激しく癇癪を起こす


それを聞いた俺はビクっと反応して


「・・・えっ・・ご、ごめん」


スッと手から離す


「怒っているわけじゃないの。

 あなた・・私を治そうしたのでしょ?」


こくりっと頷く俺


「でも、いらないわ。嬉しいけど

 この足の傷は私にとっては勲章そのものよ」


そういって足に触れる少女


足の裏は豆がつぶれて血が滲んでいるのに


それだけじゃない青あざもある


明らかに痛いはずなのに・・


勲章という一言で彼女は俺の治癒をはねつけた


「坊やはこんなところで何しているの?

 子供がこんな時間にくる所じゃないわ。」


俺を不審そうに見る

確かに、そうかも


元々の理由は・・話せばいっか。


「・・えっと、幽霊歌姫(ファントム・プリンセス)

 ついてちょっと」


嘘はついていない。

むしろ、目的はゼノンに会って


幽霊歌姫(ファントムプリンセス)について聞く予定だったし


すると、少女は頭を悩ませながら


「・・・幽霊歌姫(ファントム・プリンセス)?きいたことないわね」


知らないのか・・・?


「えっ・・結構、有名な話だと聞いているよ?」


「私はずっとここで、踊り子として踊って

 いたから・・そんな噂聞かないわね」


そういって笑う


「まさか・・デマ?」


俺もついそう思ってしまった

だけど少女は違った


「・・・いいえ、噂に縁がないのよ私。

 それに、結構世間が疎いのよ。」


「世間が疎い?」


「ええ。私、こう見えても踊り一直線だから

 あまり世間には詳しくないの。だから、あなたが

 気に病む必要性はないのよ?」


慰められているな・・俺

でも、この人・・一体何者なんだろう?


踊り子だとしたら、もしかしたら、祭りでの踊り子なのかも


「あの・・あなたは祭りに出る踊り子さんですか?」


俺がそう問いかけると


「そうね。踊り子よ。でも、普通とは違う踊り子かな」


「えっ・・?」


普通とは違う踊り子?

じゃ、特別なのかな?


そう思っていると、クスクスっと笑う声が聞こえた


その声もとても優しい響きを持っていたのだ。


「難しすぎたかしら?そうね・・

 あなたのような子供には驚くかもしれないけど

 私、この国の陛下に、踊ることを許された

 国一番の踊り子なのよ。」


「すごい!!」


思わず俺も、そう返してしまった

少女はますます嬉しそうに笑って


「でしょ?だから、かかせずに練習をしているの」


すると、旬はハッとして。


「だから・・勲章・・なんですか」


あの血だらけの足は・・。


「そう。踊り子は、命をかけて踊るのよ

 だから、痛みよりも傷は、勲章なの

 踊り子の証よ。だから、ごめんなさいね」


そういって自分の足を撫でる少女


「いいえ。でも、本当にいたそうですけど」


「痛いわよ?でも、消毒やら色々徹底しているから

 大丈夫なのよ。」


本当にそうなんだろうか?

なんだか、笑っているけどかすかにいたそうに見える


「ところで、貴方は誰かと待ち合わせしていたの?」


そう聞かれると俺は、周りを見渡す


やはり、ゼノンはいない。


「・・・待ち合わせというわけでもないけど・・。

 ここに来て欲しいとは言われました

 でも・・いないし。」


そう、ゼノンの店も本人もいない


なんでいないのだろう・・?


クスっと女性特有の柔らかい声が響く


「そう、でも、良かったわ。ねぇ、私の踊り見てくれない?」


「えっ・・・いいの?」


「もちろん。お客様だもの。見てほしいわ」


そういってクルンっと回るのだ。

やはり、踊り子だな・・と思う。


「私、国一番の踊りを見せてあげるのはあなたで初めてよ

 練習を見せるわけじゃない・・私の本気の踊りみなさい」


そう命令形で言われると、俺は身構えてしまう


「1、2、3・・!!」


その声と共にすると、目つきが変わる少女

先ほどの優しい瞳ではない鋭い瞳


足ふみが勢いよく踏んで踊りだす


それは、感嘆だけじゃない


息をすることも忘れるくらい美しい踊りだった。


大地が震える


空気さえも・・魂さえも


すべてを、揺るがせる踊り


気づけば・・旬の瞳から涙を流していた


「あ・・・涙が」


俺の瞳から気づかないうちに涙を流していた

どうして泣いているのかは分らない


踊りが終わると少女が嬉しそうに笑ってくれる


「泣いてくれたのね・・うれしいわ。」


「ごめん・・みっともないよね」


するとふるふると首を横に振る


「いいえ。私はとても嬉しかったの。

 感動させる踊りはとても難しいのよ?

 でも・・長かったわようやくここまで

 踊れるようになった」


「苦労・・していたんだ」


「・・もちろんよ。私ね子供の頃は、踊り・・下手だったのよ」


そして懐かしそうに微笑むのだ。


「私は踊り続けることが苦だったけど

 ここまでなることができた。それが誇りなのよ」


「誇り・・。」


踊り子にとっての誇りはなんだろう・・。


当然、俺にとっての誇りはなんだろう。


その時・・。


「ゴーン」


っと鐘がなったのだ


「あら、もうこんな時間ね」


「えっ・・鐘で時間が分るのですか?」


それは、驚いたのだ


「ええ、今の一回の鐘の音は、12を指す時間帯よ。

 私もさすがに帰らないと・・坊、あなたの待ち人は

 来ないかもね」


「・・確かにそうかもしれない・・。」


ゼノンの姿も見えないし


おまけに、幽霊歌姫(ファントム・プリンセス)についての

情報すら得られはしない。


はぁっと思わず溜息を吐いた。


結局、俺、何しにきたのだろう・・。


「俺、帰るね・・」


トボトボと歩き始める俺

すると、そんな俺に見かねた少女が


「ねぇ、明後日のお祭りまで暇だから

 あなた、明日の夜も来てくれない?」


そう声が聞こえたので俺は振り向いてしまった

そこには、嬉しそうに笑う少女の姿だった。


「明日の夜も?」


「そう、せっかく友達になれたもの。

 またお話したいよ。ダメ?」


「い、いいの?」


「もちろん、あなたがよいのなら」


「あ・・ありがとう」


そう言われるなぜか、すこしだけこそばゆい感じがした


「自己紹介ね。私は、ルインよ。あなたは?」


「俺?」


思わず自分を指にさしてしまう旬


「ええ、いつまでも坊やはないでしょうに。

 私も名乗ったのだから、教えてよ。」


そう言われると名乗らない訳にはいかないよね。


「えっと、俺は旬だよ。ここに来た旅人なんだ。」


「へぇ・・旅人かぁ・・そ、じゃ、旬。また明日、待っているわ」


そういって俺は帰ることにした


なんだか、不思議な夜だったような気がする


でも、悪い夜では無かった。


俺は、また宿に戻ることにした。


もちろん、振り返ることもなく宿へと歩き出したのだった。

結局、ゼノンは来ませんでした・・。

変わりに現れたのは一人の踊り子のルイン

これから旬と新キャラのルインの絡みを期待していてくださいね

では、次話でまたどうぞ。

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