少年、始まりとともに
今回はすべてを終わって・・という回です。
守護人のささやき・・とは、なんのことなのか
それは次回で明らかになります。
では、とにかくどうぞ
俺を呼ぶ声はなんだったのか・・俺は覚えていない
でも・・あの日俺は、ゲーム帰りの時
声がした。
そして、導かれた
それだけは確かだったんだ。
その声はなんなのか
今でも分らない。
でも・・それは優しくて暖かい声であったと思う
そして同時に
どこからか愚者の声も聞こえたのも・・確かなのだ。
そう、導かれたのはなんでなのか
どうしてなのか
その答えを教えてくれるヒトは・・誰もいないのだ
***
「しゅ・・・・・ん」
誰かが俺を呼ぶ声がした。
俺はなぜか・・どこか暗闇の世界にいるような
そんな気がしたのだ。
光りもないはずなのに
でも・・声だけは聞こえる
「しゅん・・め・・を・・さませ」
誰かが・・俺を呼んでいる・・?
俺はその声に導かれるように
瞳を・・開ける・・。
「・・・く・・・。」
うっすら目を開けた世界は・・。
見えるのは・・誰かの顔
「旬・・よかった、目が覚めた・・。」
その顔は・・優しげだけどどこか憂鬱な顔をしている
見覚えのある・・顔
「ヤドリ!!」
「おう、旬、大丈夫か?」
俺は慌てて起き上がる、そこには元気そうに笑うヤドリだった
「・・・ヤドリ!!君、大丈夫なの!?」
俺は勢いで聞くと、ヤドリは頭をかいて
「・・・あ~、俺っちのことは大丈夫だよ
あのあと・・目が覚めたし」
「そ・・そっか・・」
目を覚ましたときいて俺は安心した。
心配だったのだ・・あのあとのことを
「・・その・・・さ、」
もじもじと顔を赤くしたヤドリが俺を見る
「・・何?」
「・・ありがとな・・。俺っちのために。」
どうやら感謝されているみたい
でも、俺はそれほどのことをしたとは・・思っていないよ
「・・・いいよ。俺のことは。君は・・色んなことに整理できた?」
すると、ヤドリは目を伏せた
「・・俺っち・・今、混乱しているだよね。」
「・・・混乱?」
「いろいろとね・・俺自身、まだ信じられないことが多いから」
「・・・。」
でもその表情はどこか吹っ切れたような気がする
「アデルのことや、色んなこと・・頭の中では理解はしているけど
やはり・・信じられないから・・いろいろ」
そう、仕方ないのだ
今のヤドリでも許容量が莫大すぎて・・混乱するのは無理も無い
でも、ヤドリはへへっと笑って
「・・でも、大丈夫だよ・・もう・・ね」
「そう・・。」
ヤドリは大丈夫だと言っている
確証はないけども・・。
俺があの時、言ったことはきっと・・。
ヤドリの中できっと何かを生んだキッカケかもしれないのだ
俺が何か考えているのか、見抜いたのか
「その・・さ、みんな、心配しているようだし・・行こうか」
「・・あ・・うん」
旬は立ち上がる
それはそうと・・眠気がまた襲ってくる
フラっとなっている所をヤドリが支える
「大丈夫か?」
「俺、どれくらい眠っていた?」
この間も眠っていた
俺・・どれくらい眠っていたのだろうか?
最近・・眠気が酷いな・・。
「・・二日だよ。一時は心配していた・・君は、俺っちの精神世界から
弾き出されたから」
そうだった・・俺は弾き出されたんだ・・。
随分心配させたみたいだけど
「・・・まぁ、そうだったよね」
ヤドリは俺を見てう~んと考える
「でも、不思議なんだよな・・あれから俺っちが起きて
すぐ、君のことを調べたのだけど」
う~んっと考え込むヤドリ
でも、思い浮かばなさそうだ
「・・・調べたけど?」
「どこも異常が無かったことが・・一番。
何かあったのか?弾き出されたあと」
いや・・あっただけどねもちろん
思い出すのは、アデルと名乗る女性との邂逅
あれが話していい内容なのか分らない
なにせ、夢か幻かどちらになるか
もしくは、彼女の言うとおり・・現実だとしても・・。
「まぁ・・いっか、話はここまで、みんなの所まで案内するよ」
どうやら、ヤドリは楽天的に考えているようだ
詮索されないのは嬉しいけど・・複雑だ
「はぁ・・ありがとう」
俺は、ヤドリのあとに着いていった
そういえば、キトウさんはどうしたのだろう?
ヤドリからはあれからのことは聞いていないな
「ねぇ、ヤドリ・・キトウさんは」
すると、ピタっととまる
「・・・オヤジのこと?」
ギギギギッと機械のような音でヤドリは振り向いた
「ヤドリ・・?」
「・・大丈夫だよ。旬が弾き出されたあと
俺っちは、すぐ向かったから。」
それだけ言ったのだヤドリは
もちろん、そのヤドリの表情はどこか
哀愁が込められていたことが・・一番俺が気になったのだ・・。
「・・?」
「そんな顔をしなくても・・元々は険悪な関係じゃないし
今は・・複雑すぎて顔合わせづらいだよ・・俺っち」
まだ・・複雑なんだね。
すぐには・・無理か・・。
それでも顔色変えずに案内をまた続けるヤドリ
でも、やはり、どこか変だよね・・。
何かあったのかな?
「ほら、旬。ここの扉だよ」
案内されて、俺は入ろうとしたが
ヤドリは入る気がなさそうだ
「あ・・ありがとう・・で、ヤドリは入らないの?」
すると、ニコっと笑って
「俺っちは行く所があるから」
「・・・行く所?」
俺が聞くとヤドリは、心に手を当てる
「そう、とても大事な所さ、もし、話が終わったら
立ち寄ってくれたら嬉しい場所だよ・・・じゃぁな」
ヤドリは去っていった
立ち寄ってくれたら嬉しい場所?
コテンっと首を傾けて考えたが・・思い浮かばないのは
仕方ない
「・・・。」
あとで・・か。
とりあいず、俺は、扉を開ける
そこには・・。
ノエルはのんびりとお茶を飲んでいるのが見える
となりには、ジゼルがのんびりとくつろいでいるし
ジンは剣の手入れをしている。
ラミアは、何かの本を珍しく読んでいた
一番、最初に目が入ったのはノエルだ。
それも優雅に・・お茶を飲んでいるのが分る
でも、どこかに違和感があるのは誰だってわかるのだ
なぜなら、お気に入りのフードをかぶっておらずに
召喚士の服を着て・・のんびりと正座をしてお茶をのんでいるのだ
「目覚めたみたいだね・・旬」
ノエルは俺に気づいたのかパァっと顔を輝かせる
「あ・・うん。ヤドリに案内してくれたけど・・
ノエル・・一つ聞いていい?」
「うん?何かな?」
首を傾けるノエル・・俺は、とりあいず聞くことにした
「ノエル・・君、フードは?」
すると、ニコっと笑っていた顔になぜか、口元を歪ませる
「あ・・・ああ、フード・・破けちゃったからね・・
あとで、フードを新しく買うよ」
「・・ええっ・・破けたの・・?」
「・・そう、破けたの・・。」
にっこりと笑っているけど・・何かあったのだろうか
口元がヒクっと歪ませていて・・どこか苛立っているように見える
「・・・・・どうしたの?本当に」
すると、ノエルはカッと音を出して、俺に振り向いた
ビクっと・・俺は震える
「・・ボクねぇ・・とんでもない奴と対峙したんだよ
旬・・あいつ・・あいつのせいでぇぇ・・ボクの
フードがメチャクチャしやがってぇぇぇ」
顔を背けて怒りを持って騒ぐノエル
今、茶器がバキっと割る音がした
ビクっとジゼルが震える
「し・・しゅん。いったらダメだ」
「ええっ!!」
ジゼルは俺に向かって震えるような声で
しかも、何か嫌な音がした
「ひぃ、の・・ノエル?」
ノエルのあまりの変わりように思わず悲鳴あげる旬
「許さない・・次あったら・・ボクが報復するよ・・。」
ユラリっと揺れるノエル
「ひぃぃ、のえるがはんにゃがおに!!」
ジゼルが思わず、ジンの背中に隠れる
「ど・・どうしよ」
俺が途方にくれていると・・ポンっと誰かが背中をさする音がした
「旬、気にせんでええ」
「ラ・・ラミア」
そこには、溜息を吐くラミアの姿があった
「何があったの・・ノエル?」
すると、ラミアも口元を引きつけている
「あ・・ああ、ちょっとな。でも、フードのこと
言うたらアカンよ?うちもそれを言って今みたいになったしな」
ラミアがフードのことはNGと旬をたしなめる
向こうではフフフッと不気味に笑うノエルの姿が映るのだ
当分は近づきたくなるくなるほどだ・・。
「ごめん・・つい、気になって」
「ええよ。知らんことやし。気になってしもたみたいやしな
まぁ、ノエルもすぐとはいわへんけど立ち直るやろな。」
ラミアは茶目っぽく笑うのだ
だけど、ノエルをここまで怒らせることのことのできる人物
まず、俺たちではないとなると・・もしかして
「・・もしかして、その人物って・・”カズラ”のこと?」
すると、ラミアは神妙な顔になって頷いた
「・・どうやら、旬もカズラのことを知っているようやな」
「うん・・キトウさんとかに聞いた」
カズラ・・大戦の生き残り
キトウさん曰く・・恐ろしい子供だったと言った
アデルさんを殺し・・そして、ヤドリを奪おうとした人物
その人物の目的については・・多分俺は知らない
「・・そか。」
それだけ言って、何か考える仕草をするラミア
そして、俺に向かって言うのだ
「起きたようやし、キトウはんの所に行こうや。
うちら呼ばれているんや・・特に旬。
あんさんは必ず連れてこいとな」
「キトウさんが・・?」
「そやで、あの人が、何か旬に重大なことを伝えたいそうや」
なんだろう重大なこと・・なんて
「まぁ、そないな顔をしなくても・・大丈夫や
ほら、ジン、ノエル、ジゼル行くで」
そして、ラミアが俺を連れて出るのだ
もちろん、後ろからは、ジンたちが着いてくる
ただ・・重大な話について俺はよく分らない
何かが起ころうとしてるのが感じたのだった・・。
ノエルは、あの調子ですずっと・・よほど気に食わなかったようですね・・。
さて、次回はどうなるのか・・それはお楽しみにしていてくださいね~




